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三田誠広の小説教室
三田誠広 (みた まさひろ)
1948年、大阪府生まれ。早稲田大学文学部卒業。高校在学中に『Mの世界』で作家デビュー。1977年、『僕って何』で芥川賞を受賞。『いちご同盟』『地に火を放つ者』など著書多数。日本文藝家協会副理事長。武蔵野大学文学部教授。
三田誠広先生の作品一覧はこちら

作品募集は、2017年3月30日で終了いたしました。 たくさんのご応募、ありがとうございました。
※このページで紹介されている作品は、すべて無料です。


今回は、2017年3月末までに応募いただきました作品を選考の上、配信いたします。 10個で芥川賞候補作レベルの小説になります。

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物語にリアリティを持たせた筆力
 タイトルがものものしすぎます。でも中身の作品は、いい話ですね。以前の投稿で、同じ作者が書いた、少年と少女が遠くの海岸に星を見に行く話が記憶に残っています。今回はその話を下敷きにして、大人になった主人公が、小学生で別れた女の子と再会する物語なのですが、主人公は挫折していて、その傷ついた心が、過去によって癒されるという仕組みになっています。話の導入部と終わりに出てくるホームレスのおじさんも効果的です。よくできたいい話なのですが、少しだけクレームをつけるとすれば、話ができすぎているかなと思います。でも、絵に描いたモチみたいなこの話に、しっかりとリアリティーをもたせた筆力は、なかなかのものだと思いました。



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読者の心を動かす面白さとは
 平凡で地味な男が、チケットが余ったということで親しくもない女性からコンサートに誘われます。食事をしてからコンサートに出向くのですが、その先には何もありません。これでは小説はふくらんでいかないのですが、何か起こるだろうという読者の期待を裏切って、わざと何事もないままに小説を終わってしまう手つきが確信犯的で、鮮やかだという感じはします。でも、ぼくはその鮮やかさを、素直に褒める気にはなりません。だってこの小説、やっぱり全然、おもしろくないからです。ひとりよがりの苦いお茶を飲まされたような気分です。



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分厚く、迫力のある描写を
 ケアマネージャーをしている主人公と、バーで時々会う男との、現実離れした会話があり、やがて二人で屋久島の縄文杉を見に行くことになる。そういう話です。おもしろい着想ですし、構成もうまくできています。残念ながら描写力が不足しています。うすいエンピツで概略の設計図が描かれているだけで、色がありません。こってりとした油絵具を塗っていくような、迫力のある描写がないと、ただの図式に終わってしまいます。とくに縄文杉の場面。ここは作品の山場です。このシーンを厚い描写で描かないと、この作品を書く意味が見えてきません。



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五時のアオイ
五時のアオイ
芳田とき

出来事をきちんと書き込んでいく
 設定が平凡すぎます。「僕は色々なことがあり、あまりに疲れすぎていた……」。出だしにこんな文章があると、読者は読む気をなくしてしまいます。その「色々なこと」の一つでもいいから、ちゃんと書く。そういうことをめんどうがらずに書き込んでいかないと、小説は上達しません。逆に、その「色々なこと」を何一つ書かずに、主人公のちょっとした反応や言葉遣いだけで、「色々なことがあったんだろうな」と読者に感じさせる、そういう技法もあります。いずれにしても、「色々なこと」という表現で済ませてしまうのは、それだけでレッドカードです。



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僕らの魔法
僕らの魔法
渡辺祐介

無意味でオシャレな小説
 これは初期の村上春樹みたいな、まったく無意味な小説ですね。無意味だけど、オシャレだね、といった効果を狙っているのでしょうが、何となくそれらしいムードを出してみた、という程度で終わってしまっています。村上春樹を、あるいはカート・ヴォネガットを超えよう、というくらいの意気込みが感じられません。せめて、少し違った感じを演出する、といったくふうも見られないので、ただひたすら無意味な作品になってしまっています。この種の作品を書く場合は、きっちりと戦略を立て、狙いをはっきりと示す必要があります。




鵲橋
加賀屋乃梨香


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ひふくめ
関谷俊博


詳細
島の指笛
岡村恵理香


詳細
夜を越え
渡辺祐介


詳細
奈落詣り
関谷俊博


詳細
殉教
関谷俊博


詳細
監視
黒田圭


詳細
壁
宇平六


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薄墨
岡本夢太


詳細
童貞
茉莉花


詳細
Dr東野
秘野みゆき


詳細
迷宮の艶女
森数琉部琉


詳細
夏の兆し
清水健司


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 ぼくは武蔵野大学で小説創作のゼミを担当しています。このイーブック・ジャパンのサイトをお借りして、学生たちの作品を皆さんに読んでいただいています。未熟な作品ではあるのですが、作品に付けたぼくのコメントとあわせて読んでいただければ、小説のおもしろさのポイントや、小説を書くコツみたいなものがわかるようになっています。
 今回から新たな試みとして、このサイトの読者の皆さんからお寄せいただいた作品にも、ぼくのコメントをつけて、サイトにアップすることになりました。作品が多数寄せられることになれば、ある程度セレクトして掲載することになるでしょうが、今回はまだ作品の数が少ないので、応募された方全員の作品に目を通しました。作品のよいところを指摘し、こうすればもっとよくなるといったポイントも指摘しました。読者にとっても参考になると思います。
 小説は読むのも楽しいですが、自分で書いてみると楽しさは倍増します。書く楽しさだけでなく、読む楽しさも倍増するはずです。書く立場になって読むと、小説の奥行きや作者の苦労が見えてきます。書くことは人生の大きな喜びです。より多くの皆さんに、自分でも書いてみるという体験をしていただきたいと思います。

2014年5月9日
三田誠広




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