1. 電子書籍TOP
  2. 三田誠広の小説教室
このエントリーをはてなブックマークに追加

三田誠広の小説教室
三田誠広 (みた まさひろ)
1948年、大阪府生まれ。早稲田大学文学部卒業。高校在学中に『Mの世界』で作家デビュー。1977年、『僕って何』で芥川賞を受賞。『いちご同盟』『地に火を放つ者』など著書多数。日本文藝家協会副理事長。武蔵野大学文学部教授。
三田誠広先生の作品一覧はこちら

※このページで紹介されている作品は、すべて無料です。

武蔵野大学で、三田誠広先生に小説創作を学んでいる学生の皆さんによる小説です。三田先生に講評と評価をしていただきました。 10個で芥川賞候補作レベルの小説になります。

4/14追加
判子
判子
大石南

昂ぶる感情と抑えた描写の妙味
大学でぼくが教えているのは、書き手のモチベーションの大切さと、センチメンタルにならずに抑制した文体で、油絵のように丹念な描写で塗り固めていくことです。大石さんはぼくの歴代の教え子の中でも、最優秀の優等生だと思います。この作品のヒロインは、高校生のころに勉強を教えてもらった親族の男性に、ほのかな恋心を抱いています。村役場の受付という仕事に就いていますが、その村に、くだんの親族の男性が引っ越してきて、可憐な同居人がいます。その女性とも親しくなるのですが、いよいよ入籍ということになって、書類がヒロインの前に差し出されます。判子を受け取って、かわりに捺印する。それだけの話なのですが、そのカタストロフともいうべき結末まで、緻密なプロットと重厚な描写で、ヒロインの心情が表現されます。その描写の分厚さには鬼気迫るものがあります。それでも、感情を爆発させるのではなく、感情を封じ込めて、文体を抑制しています。この抑制が、作品の密度となり、緊張感を生み出しているのですね。すごい作品だと思います。



4/14追加

人生の切断面を描く文章の切れ味
短篇二作で卒業制作としています。まずは「イージー☆ライダー」から。ポールダンスの描写から物語は始まります。ぼくは小学生のころ、登り棒が大の苦手だったので、この描写だけで圧倒されてしまいました。何のためにこんなつらいことをやるのだろうと、胸が痛くなります。苦労のわりに、ポールダンスに対する世間の評価も高くありません。介護士を目指す男のつきあいも、どうやらぐうたらのような父親との会話も、何ともさえないものです。でも、それが人生なのですね。さえない人生の一瞬の切断面を、見事な切れ味の文章で切り取っています。 次に「封筒」。こちらも見事な作品です。最初に封筒が出てくるのですが、この封筒というものがキーアイテムになっています。その封筒の使い途がわかった時に、たぶん読者は、胸を打たれると思います。何とも哀しい、人生の切断面です。



4/14追加
あしあと
あしあと
高岡千紘

丹念に描かれた少女の出発の物語
学校になじめずフリースクールに通う中学生の話です。なぜ学校になじめないかを、小学生のころのエピソードから、丹念に描いています。こういう子どもが、たくさんいるのだろうなと思います。教育評論家みたいな人が高みから批評したり、テレビのドキュメンタリー番組などでも取り上げられる世界ですが、どことなく上から目線で語られることが多いように思います。この作品は、少女に寄り添い、少女の目線で描いています。それでも過剰にセンチメンタルになることはなく、冷静な描写に徹しています。書き手の立ち位置が絶妙で、とても爽やかな印象を与えます。しっかりとした文章と、丹念な描写。危なっかしい時期の少女を描いているのに、描かれた世界は安定しています。これくらいの文章が書ければ、いろんなテーマにトライできるのではないかと思います。



4/14追加
MI5SION
MI5SION
キムダソン

不思議な味わいの前向きな小説
キムさんは韓国からの留学生です。一年生のころから担任をしていましたので、彼女のことはよく知っています。はじめのころは、間違いだけらけの文章を書いていました。この卒論小説はパーフェクトな日本語になっています。それだけでもすごいと思うのですが、話の内容もミステリアスで魅力的です。男に逃げられて引きこもりになっている女性がいます。いわば絶望のどん底にいるのですね。どこからか謎のミッションが届きます。ミッションのスペルが違っているところが何とも謎めいています。そのミッションに従って、女性は行動を開始します。そして、少しずつ元気になっていくのですね。その前向きな感じがいいと思いますし、プロセスが丹念に描かれているところもすばらしいと思います。で、このミッションは、誰が何のために発信しているのか。これが最後までわからないところも、謎めいていていいのではないかと思います。






▲トップに戻る

男性マンガ女性マンガマンガ雑誌ライトノベルキッズ文芸ビジネス・実用雑誌・写真集
電子書籍はeBookJapan