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中野晴行「まんがのソムリエ」特別コラム - キミはマンガ革命の瞬間を知っているか?



 70年代半ばから80年代にかけて、それまでのマンガマニア向けのマイナー誌に代わって、新しい才能を発掘したのは、「エロジェニカ」「エロトピア」などのいわゆる「三流エロ劇画誌」だった。
石井隆や湊谷夢吉(みなとや・ゆめきち)といった希有な才能が登場したのだ。その後、その役目は美少女コミック誌に移る。岡崎京子らをデビューさせた『漫画ブリッコ』は現代の「おたく」文化のルーツとなった。

■中野晴行の「これを読め!」
湊谷夢吉 『湊谷夢吉作品集』   

 湊谷夢吉は、70年代にはミュージシャン、映像作家として活動。一方で、マンガ誌「銀河画報」を発行するなど多彩な才能の持ち主だった。80年代に入って「DXエロトピア」などに不思議なレトロ感あふれる短編を発表するようになった。81年には北冬書房のマンガ短編集「夜行15」に、昭和の帝都を舞台にした幻想作品『魔都の群盲』を発表するなど、マンガファンの注目を集めたが、88年に38歳という若さで早世した。

  太平洋戦争中の中国大陸を舞台にした『虹龍異聞』、日本軍が開発したロボット兵と慰安婦の不思議な交流を描く『ブリキの蚕』など、まるで見てきたようなリアリティを持つ優れた画力と、奔放な発想力は、時代を経ても褪せることがなく、今なおカルトな人気を持つマンガ家である。