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中野晴行「まんがのソムリエ」特別コラム - キミはマンガ革命の瞬間を知っているか?



少年マンガにやや遅れて少女マンガの世界にも新しい風が吹き始めた。学園を舞台にした恋愛ものや、バレーボールやテニスなどのスポーツ、バレエなどが主なテーマだった少女マンガ界に、SFやファンタジーにもチャレンジした少女マンガが登場するのだ。この新しい風のひとつの核になったのは、萩尾望都(はぎお・もと)と竹宮惠子が共同生活をし、そこに同世代の仲間が集った大泉サロンだった。彼女たちの新鮮な完成あふれる作品は男性読者の心も掴んだのだ。

■中野晴行の「これを読め!」
水樹和佳子  『樹魔・伝説』  

 79年に集英社の雑誌「ぶーけ」に発表された水樹和佳子(当時は水樹和佳)の中編『樹魔』は、70年代にマンガ界を席巻した女流マンガ家によるSF作品のひとつの到達点であった、と言えるだろう。大流星群の接近で壊滅的な打撃を受けた近未来の地球を舞台に、進化する植物の謎を追う研究者たちが出逢う事件を追うSFファンタジー。生命の進化という困難なテーマを描きながらも読者の心をはなさない語り口は、月並みな言い方になるが、すばらしいというしかない。

 さらに、翌年には続編となる『伝説』を同じ「ぶーけ」に発表。宇宙の中で、人類はどのような存在なのか、という命題を読者につきつけることになった。水樹は『伝説』で、81年の星雲賞コミック部門も受賞している。