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中野晴行「まんがのソムリエ」特別コラム - キミはマンガ革命の瞬間を知っているか?



 朝日ソノラマ(現・朝日新聞出版)が1976年に創刊した「月刊マンガ少年」は「COM」の後継を意識して、手塚治虫『火の鳥 望郷編』を創刊連載に据えた。石ノ森章太郎、松本零士ら、ベテランの作品を連載する一方で、新人の発掘にも力を入れた。そのころ、メジャー誌でも新人賞を設けるところが増え、マンガ表現の革新に挑む新人の発掘は、マイナー雑誌から少年週刊誌、青年誌などのメジャー雑誌にまで拡散していった。発表する場が増えたことで、マンガ家たちは次々に斬新な絵柄やテーマに挑戦していくことができた。

■中野晴行の「これを読め!」
士郎正宗 『アップルシード』  

 関西大学SF研究会の創始者で、マンガファンサークルの先駆けとされる「まんがの虫」創設メンバーのひとりでもあった青木治道氏が興した大阪の出版社青心社から、描き下ろし単行本として出版されたのが、士郎正宗(しろう・まさむね)の『アップルシード』だった。発売の当時、マンガマニアたちが受けた衝撃はただ者ではなかった。大友克洋の影響を感じさせながらも、大友の硬質な線とは違った、独特の柔らかさを持った描線はワンアンドオンリーのものだった。大友調が画風を席巻する時代に、大友調の画風でも個性を生むことができることが証明されたのだ。

  第5次世界大戦後に人類が築いた理想郷・オリュンポスで特殊部隊の一員として暮らすことになった少女デュナンと戦闘サイボーグのブリアレオスが、理想郷に隠された陰謀に巻き込まれていく、という設定やメカも斬新で、86年にはSFファンが選ぶ星雲賞コミック部門も受賞。後に発表された『攻殻機動隊』と共に、海外でも大きな人気を誇っている。