yuu_yuuさんのお気に入りレビュアー
yuu_yuuさんをお気に入り登録しているレビュアー
1人
参考になった総数
4

【yuu_yuu】さんのレビュー一覧

表示形式
  • 表示件数
  • 表示順

1~3件/3件 を表示

  • 1
  • 襲名犯
     事故死した双子の兄の身代わりとして同じ家に養子に出された南條仁。だが、兄の死はただの事故死ではなかった。兄を車で轢いたのは、故意か偶然か街を恐怖のどん底に陥れていたブージャムと呼ばれる連続殺人鬼だった。兄を轢き殺したことがきっかけでブージャムは逮捕され、その14年後、死刑に処された。
     義理の親は既に亡くなっていたが仁はその街に残り図書館で司書として勤める日々を送っていた。そんな折り、”ブージャム”を襲名した殺人鬼が現れる。襲名犯の出現に落ち着きをなくし怯える街。兄とブージャムとの因縁。自分には関わりの無い事件だと思いながらも襲名犯の連続殺人に神経をすり減らす仁。ある“形”にこだわり殺人を行う襲名犯。様々なピースが仁を事件の渦中に追い込んでいく。
     否応なく追い込まれていく運命と闘う仁。しかし、一本調子で闘う意志を固めたわけではない。ブージャムがかつて居た、そしてその襲名犯のいる街から逃げようともした。仁は自分の意志でこの街に来たわけではない。だが、間違いなく仁という人間を育んでくれた街。その街が危機に瀕している。街を救えるのは事件の渦中にいる自分のみという自覚と決意が仁を奮い立たせる。この作品の最高潮はこのシーンだろう。
     この作品を読んでいる間、惹起されるイメージが流される血液以外、モノトーンだった。こんな経験は初めてで、それは文体によるのか表現によるのかストーリーの落とす陰のせいなのかよく分からない不思議な感覚だった。けれども、様々なシーンを思い返す度に少しずつ色が付いてくる、とても興味深い作品だった。
    • 参考になった 3
    投稿日:2016年04月22日
  • デフォルト
     ある地銀の不良債権問題とそれに絡む金融行政批判を自身の信念に基づいてレポートしたエコノミスト。そのレポートを快く思わない政治家、金融庁官僚、日銀行員、そして彼らパワーエリートの意を酌んだ会社からの圧力によって追い込まれたエコノミストは非業の死を遂げる。彼の死を悼む友人たちは政治家、金融庁、日銀相手にリベンジを決意する。ホスト、記者、ハッカー、ディーラーなど多彩な経歴を持つ友人たちが総力を挙げて敵を追い詰めていく流れは秀逸。また、ひとつひとつのシーンが丁寧に描かれており充分に納得のいく仕上がりになっている。さらに、デフォルトの刻限が迫るなかで繰り広げられる行き詰まる頭脳戦、心理戦は圧巻だった。
     最近、経済問題に興味を持ち始めていて、経済的な知識が土台となり且つ充分に楽しめそうな娯楽小説はないかと探していて見つけたのが本書だった。本書が相場氏のデビュー作であるということも気に入った。デビュー作は作家にとって重要だが、読者にとっても強い意味合いを持つからだ。デビュー作には作家の才能、というよりも作家たらんとする動機、情熱といったオリジナリティの本質が強烈なメッセージとして作品に顕れているケースが多い。本書を読んでいると常に頬をじりじりとした熱にさらされている感覚があった。稀に出会うデビュー作特有のこの熱気が読者の惹きつけに重要であり、作品の面白さと共に2重の悦びを味わうことができるものになっている。
    • 参考になった 0
    投稿日:2016年04月04日
  • 黒い羊の仮説
    世間的に立派な家庭からある確率で生まれてくる凶悪犯罪者(黒い羊)。
    黒い羊になるには家庭環境といった後天的な要素に加え、遺伝という先天的な要素も
    重要だとする仮説。
    発端はペンションで働く青年の失踪である。彼は少年期に自分の家族を皆殺しにする事件を起こして世間を騒がせた。特殊な人物の失踪ということで広域捜査専門のSROに捜索要請が為された。立派な家庭に咲いてしまった徒花のような青年をSRO室長の山根は黒い羊に例える。
    黒い羊の話を聞いたSROメンバーの針谷は自分も黒い羊なのではないかと思い悩む。幼い頃より優等生の兄と比較され家族の中で浮いた存在の自分。犯人射殺経験があり、そのことで家族に迷惑をかけ足を引っ張っている自分。針谷家に流れる血脈の負の因子が自分のなかで発現してしまったのではないかという不安。
    犯人は次々に殺人を犯し殺した人物に成りすましながら本懐を遂げようとする。犯人がただのシリアルキラーではなく、犯人なりの根源的なテーマに根ざした心理や動機があり、それを的確に見抜いたのは針谷だった。
    シリーズ4作目となる本作は主人公格として針谷に焦点が当てられていて、彼の存在なしに事件の本質に辿り着くことは不可能だった。そして新たな業を背負うことになる針谷に救いの日が来るのか今後気になるところだ。
    SROの宿敵であるモンスター型シリアルキラー近藤房子のエピソードも添えられており、再び彼女との対決も近いと予感させるものになっている。
    • 参考になった 1
    投稿日:2016年02月21日
  • 1