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  •  大沢在昌の人気作『語りつづけろ、届くまで』の講談社文庫版がようやく、2017年11月3日に配信されました。底本の紙書籍が文庫化されたのは2016年2月で、定価は820円(税別)。ここで思わぬ問題が発生しました。紙書籍なら820円で手に入るようになった作品が、電子書籍だと1,143円(税別)出さなければ読めない――紙書籍と電書の“価格逆転”です。この関係がほぼ1年半以上続いたのですから、やっぱり「ようやく」と言うべきなのです。
     もともとは2012年4月25日発行の単行本を底本に電子化され、同年7月13日にリリースされました。人気ベストセラー作家の最新作が紙版発行から2か月ちょっとで電子書籍で読めるようになる時代が到来していることを実感したものです。しかも紙版の定価1,600円(税別)に対し、電子書籍版の価格は1,143円(税別)。電子書籍が457円安くなっていました。紙・電子同時発売がトレンドになっていましたし、早く、安く本が読めるようになると期待が膨らみました。しかし、紙・電子同時の条件が欠けると、価格の逆転が起きることがわかってきました。それが1か月、2か月のレベルであればまだしも、1年を超え、2年を上回るとなると、電子書籍の魅力は薄れていきます。紙書籍よりも高くても、電書を選ぶ人はそうそういません。この問題は、講談社に限らず、多くの出版社で発生しています。本書の場合、価格の逆転は2017年11月3日に文庫版の電書が紙書籍と同じ820円(税別)で配信されてようやく解消されたわけですが、このように紙書籍と電書リリースの間にタイムラグが生じる場合には電書の価格を下げるなどの工夫をできないものか。電書の課題のひとつです。
     さて、価格が下がり電書としての魅力が回復した『語りつづけろ、届くまで』の内容です。映画化もされたシリーズ第1作『走らなあかん、夜明けまで』(講談社、2012年11月24日配信)、第2作『涙はふくな、凍るまで』(講談社、2012年1月24日配信)同様、主人公の菓子メーカー宣伝課に勤めるサラリーマン坂田勇吉がどういうわけか、暴力団がらみの犯罪に巻き込まれていき、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれていくという展開。
     大沢在昌といえば、何といっても「新宿鮫」シリーズです。大沢在昌は『新宿鮫』で日本推理作家協会賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞、さらに『無間人形 新宿鮫4』(光文社、2014年5月16日配信)で直木賞を受賞しています。キャリアでありながら警察内部の抗争に巻き込まれて「はぐれ状態」になり、新宿署の刑事として単独行動する鮫島警部を主人公に展開される緊迫シーンに魅せられている大沢在昌ファンにとっては、サラリーマン坂田勇吉の物語は少し趣がちがった印象を持つかもしれません。
     物語の展開テンポも幾分ゆっくりしている感じです。なにしろ、坂田勇吉は、名前こそ勇ましいけれど、ケンカをしたことなどないし、宣伝課員として東京下町の老人会に参加している好青年です。新商品のセンベイの草の根宣伝が目的ですが、仕事を越えてボランティア活動に精を出しています。
     そのサカタには密かな楽しみがあります。ボランティアの一人で、言葉は悪く化粧気はないけれども、老人たちに優しいサッコこと小川咲子の存在です。サカタはサッコが気になってしょうがないのです。そんなサカタに健康枕販売のセールスマン教育の講師をやってもらえないかという話が持ち込まれる。若者にしては老人とのコミュニケーションが巧みだというのがその理由。サッコの冷ややかな視線が気になりつつも人の良さ、優柔不断な性格から断り切れずに、打ち合わせの場所に出向いたサカタは、誰もいない部屋で死体を発見する。殺人事件に巻き込まれていくサカタの緊張のシーンです。

    〈足が止まった。
     教壇の上におかれたテーブルの向こうから二本の脚が見えたからだ。黒っぽいスラックスに先の尖った茶色い革靴をはいている。
     誰かが横たわっている。
    「あのう――」
     声をかけた。玉井(引用者注:講師のバイトを持ちかけた男〉が横になって寝ているのだろうか。
     返事はない。
     さらに前に進んだ。左を下に、横を向いて寝ている男の姿が目に入った。玉井ではない。玉井より小柄で、髪型も異なる。
    「嘘だろ」
     思わず声がでた。横たわっている男は黒っぽいスーツを着ていたが、その下から黒い染みが教壇に広がっているのが見えたからだった。心臓がいきなりふくれあがり、全身でドクンドクンと脈を打った。〉
     新宿鮫とは違う雰囲気、キャラクターといいましたが、そこは大沢在昌です。緊迫シーンの描き方はうまい。徐々に事態が明らかになっていくにつれてサカタの緊張が増していき、そして頂点に達していく。死体を目の当たりにしたサカタは、がらんとした「教室」のなかにいるのは、自分と死んだ男の二人だけという状況に驚愕しつつも、どこか醒めたところがあります。
     追い込まれたサカタが発揮する土壇場のチカラ、強さ。ここが鮫島警部とは異なる、サラリーマン坂田勇吉の魅力かもしれません。
    〈坂田さんには、何か極道(ごくどう)をひきよせる磁石のようなものが備わっているのかもしれませんね〉
     冗談めかして言う担当刑事。しかしその目は笑っていない。死体となって発見された男が暴力団の構成員だったとあっては、もはやその状況から逃げることはできません。
     極道がからむ事態は二転三転し、生命の危機にすら直面していきます。極道犯罪に巻き込まれたサカタの命運は? 人に媚びることを嫌って不器用な生き方を選ぶ、愛すべきサッコとの恋はどうなる?
     新宿鮫シリーズとはひと味もふた味も違った、大沢在昌の新しい世界をお楽しみください。(2012/7/13、2017/11/3改訂)
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    投稿日:2012年07月13日
  • 『大市民』シリーズは著者の柳沢きみお本人が、ライフワークとして描き続けるエッセイ調のマンガです。『大市民』に始まり、『大市民Ⅱ』、『THE大市民』、『大市民日記』等、場を変えて発表されたそれぞれの作品が電子書籍化されています。主人公である小説家・山形鐘一郎が作る酒のつまみがこの上なく「美味し!!」と、そそられることでも知られていますが、作品によって内容のテイストもちょっと違っているようです。今回ご紹介する『THE大市民』では、お馴染みの「美味し!!」の名場面よりも、山形が物申す場面がちょっと多めのような気がします。いたるところで人生プラス・マイナス論を披瀝するかと思えば、高校の教壇に立って人生訓を語ったり、幸福論を展開したりするのですが、お説教臭くなく逐一なるほどね~、と頷いてしまうセリフが出てきます。例えば、山形が脱臼したときに、身の回りの幸福に気付きます。「蛇口をひねれば 当たり前のように 水が出る」「ガス栓ひねれば 普通に火がつく」「これって実はすごい幸せな事なのに 誰も感動しないし 喜びもしない」「人間の不幸は 幸せが当たり前になる 悪いクセがある事だ」といった真理と思えるような言葉を口にします。かと思えば、深夜にカップめんの焼きそばを口にして冷えたビールで「バカ美味しだァ」とくるのですが、一冊の中で陰影が濃いので、たかだかカップめんが本当に美味そうに見えるんです!! それにしても、数ある「美味し!」の中からカップめんを例に持ち出す私はやっぱり小市民。目指せ、大市民!!(2012/7/10)
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    投稿日:2012年07月10日
  • ちょうど63年前の今日――1949年(昭和24年)の7月6日、松戸行き終電の運転士が綾瀬駅助役に「轢死体らしきものがある」と伝え、確認に走った駅員が運転士の言葉通り四分五裂になった男の轢死体を発見した。男は初代国鉄総裁に就任した下山定則。7月5日の朝、日本橋の三越に入った後消息を絶っていた下山総裁が翌6日午前0時30分過ぎに轢死体となって発見されたという「下山事件」の発生です。時はアメリカ軍を中心とする占領下にあった日本で、自殺とも他殺とも結論がでないままに、その年の年末には捜査本部が解散され、占領期の謎の事件の一つとされていましたが、松本清張は事件から11年たった1960年に雑誌『文藝春秋』連載「日本の黒い霧」で、「下山国鉄総裁謀殺論」を発表。アメリカ軍防諜部隊(CIC=Counter Intelligence Corps )による謀殺という松本清張の結論は自殺説・他殺説の2説の間で揺れていた当時の社会に大きな衝撃を与えました。この連載を通じて松本清張の探求は、下山事件の他、「もく星」号遭難事件(日航機が大島の三原山に墜落。乗客33名が死亡。羽田離陸後20分後に消息を絶ったが、当初アメリカ軍サイドから救助したという情報が流された)、二大疑獄事件(昭電・造船汚職)、白鳥事件(札幌市中央警察署の警備課長が射殺された)、ラストヴォロフ事件(ソ連元代表部二等書記官が失踪。捜索願が警視庁に出されたが、後に米国ワシントンで開かれた記者会見の場に現れた)、革命を売る男・伊藤律(日本共産党からスパイ行為によって除名処分)、帝銀事件(帝銀椎名町支店に現れた男が行員に赤痢の予防薬と偽って毒を飲ませた)、鹿地亘(プロレタリア作家で、アメリカ軍の諜報機関によって拉致された)、松川事件(福島-松川間で国鉄の列車が転覆)、追放とレッド・パージ、謀略朝鮮戦争など多岐に及び、連載をまとめて『日本の黒い霧』として出版され大きな反響を巻き起こしました。社会派推理作家・松本清張がその調査力、分析力・推理力を駆使して、アメリカ軍が日本を占領していた間に起こった数々の事件の真相に迫ったノンフィクションの金字塔といっていいでしょう。松本清張はこう書いています。〈私はこのシリーズを書くのに、最初から反米的な意識で試みたのでは少しもない。また、当初から「占領軍の謀略」というコンパスを用いて、すべての事件を分割したのでもない。そういう印象になったのは、それぞれの事件を追及してみて、帰納的にそういう結果になったにすぎないのである。(中略)下山事件は、それ(引用者注:帝銀事件)よりもはるかに大きな意図の下に行われた占領軍の謀略であった、と私は考える。(中略)下山氏はなぜ殺されたか。すべて殺人事件には相手を消すことによって利益を受ける者が必ず存在する。すなわち、この事件では、その利益の享受者はアメリカ占領軍(正確にはG2)だったと考えても大した間違いではないように思っている〉当時、国鉄労組は日本最大の労働組合で、組合運動の中心でした。就任早々の下山総裁の緊急かつ大きな課題は大量の人員整理で、これはGHQの日本政府に対する勧告に基づくもので、「勧告」の形を取った命令と見なされていました。十二万もの大量解雇に直面した国鉄労組は当然、激しい闘争を開始しようとしていましたが、下山事件が起こったことで、この闘争は、清張の表現によれば「台風の眼の中に原子爆弾を打ち込んだように衰弱し、雲散霧消」してしまいます。最大の利益配当を受けた者はGHQ――米ソの冷戦がようやく激しくなりかけたこの年は、この事件によってどれくらい占領軍が当初自ら煽(あお)った日本の民主勢力を右側に引き戻したかしれなかった。丁度この時期に、アメリカ側は一年後の朝鮮戦争を予測していたと想像される、と松本清張は指摘しています。その結論は単なる政治論ではありません。「かなり時日を費やした」と清張自身が自負するように綿密な調査と徹底的な事実の検証のうえで、大きな時代背景を踏まえて到達した「推定」です。日本の占領時代に何があったのか。半世紀以上の時を経た今も『日本の黒い霧』は現代史、占領史の一級の資料としてぜひお読みいただきたい一冊です。下巻巻末には、占領が始まった1945年(昭和20年)8月から1954年(昭和29年)までの10年間の年表が参考資料として収録されていています。「首相」「政治」「経済」「社会」の動きなどが簡潔に記載されていて、時代の流れを大づかみする助けとなります。(2012/7/6)
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    投稿日:2012年07月06日
  • いや~もうさすがというかなんというか…夏目イサクさんは本当にブレがないですねヾ(@~▽~@)ノ素晴らしいです!こちらは職業ものBL。週刊誌記者の尾上は、異動先の張り込み班でカメラ担当の同期・蕪木とコンビを組むことに。密かにライバル視していた相手である上、スクープのためなら手段を選ばない蕪木のやり方が正義感の強い尾上には納得できず、最初は衝突ばかり。けれど共に事件を追ううちにお互いが気になり始め……?ライバルで相棒なふたりのシーソーゲームラブ☆ うーん、やっぱりツンデレはいいわあ!(*´∇`*)イサクさんといえばツンデレよね!! ツンデレな尾上が可愛いったらないです!しかもライバル同士ってのがまた萌えますよね!( *´艸`) まあライバルだと思ってるのは尾上だけなんだけどw この二人は「ケンカップル」という言葉がとてもよく似合いますね☆受け・攻めともに、恋に落ちる瞬間や過程が丁寧に描かれており、読んでいて胸キュン×100です!尾上が蕪木のことを「好きかも…」と思った瞬間から意識しまくりでドキドキが止まらなくなり、蕪木も「あれ、こいつ俺のこと好きなんじゃ?」と気づいたら、ドキドキが伝染して尾上のことを好きになってしまう…ちょっとここまで萌えるのはなかなかないですね!(*´д`*)キュンキュンで萌え死にそうになります!!ホント可愛いよこの二人!ケンカしつつドキドキしつつなんだかんだで上手く出来上がっちゃった二人ですが、今後さらなるラブ展開を期待しつつ…2巻が楽しみです!ヽ(=´▽`=)ノ
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    投稿日:2012年07月06日
  • 古武術・陸奥圓明流の継承者、陸奥九十九を主人公とした『修羅の門』の外伝で、千年不敗の歴史の中で活躍した各時代の陸奥継承者を描くシリーズ。本編は現代劇ですが、外伝はほぼ時代劇ということもあって、より何でもありの内容。明朗活劇としては断然こっちのほうが楽しめます。何せ相手は宮本武蔵に柳生十兵衛、新撰組に西郷四郎。時代も幕末、鎌倉時代、さらにはアメリカ西部開拓時代と相手も時代も男子なら血沸き肉躍る設定ばかり。著者のストーリーテラーとしての才能がこの中で存分に発揮されています。その極め付けは2、3巻の幕末風雲編。著者の坂本龍馬への思い入れが半端じゃなく、また龍馬と陸奥出海の関係が青春ストーリーのようで、ついのめり込んでしまいます。本編、外伝通じてここまでまっすぐに友情を描いているのは珍しんですよね。結果、陸奥が主人公らしくなくて、まさしく外伝という体裁になっています。幕末ファンの方はひと言いいたくなる内容かもしれません。ですが、あとがきにあるように「この物語は史実である」と思って読んでもらいたいですね。(2012/7/6)
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    投稿日:2012年07月06日
  • タイトルを見て、思わず懐かしくなってページをめくり始めたら、最後まで読んでしまいました。『コメットさん』にマンガ版があるとは知りませんでした。私が子供のころに見ていたテレビドラマ版は、コメットさんを大場久美子が演じるホームドラマ。バトンを使っていろんな魔法を繰り出し、そのバトンの玩具がちょっとしたブームとなった記憶がありますが、ドラマの内容はほとんど覚えていません。マンガの『原作完全版 コメットさん』の主役は、かなり活発な女の子。ベータ星から地球に勉強のためにやってきたのですが、縁があって浩二と武兄弟の住む河越家にお手伝いさんとして、居候します。そして、バトンの魔法を便利に使いこなすのです。この本を読んでいると、何でも願いをかなえてくれる魔法のバトンが欲しくなってくるほど。でも、作中でも描かれていますが、地球人がこういった魔法を使えるとなると、ロクでもないことばかりしでかしそうですね。あっ、これはコメットさんが失くしたバトンを悪いヤツが手にするという話なのですが、普通の人がバトンを手に入れてもこんな使い方をしそうな気がしました。何に使ったのかは本作でお楽しみください。私がバトンを手にしたら、アレに使って人々を幸せにするのだがな…ってか!?(2012/7/3)
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    投稿日:2012年07月03日
  • 少しばかり気が早いですが、2013年の大河ドラマ『八重の桜』は「幕末のジャンヌダルク」こと会津藩出身の新島八重の生涯を描きます。戊辰戦争時には男装して戦闘に加わったという、まさに劇画から飛び出したような人物。非情に楽しみです!! 現在「ビッグコミック」に連載の『兵馬の旗』(かわぐちかいじ 協力: 惠谷治)も舞台は幕末の戊辰戦争。主人公の宇津木兵馬は幕軍として銃を取るのですが、敵となる薩摩の軍に恩人ともいうべき新田新八郎がいて、二人の運命の交錯がみものです。第1巻の冒頭からハイライトシーンの連続で、この作品の虜にさせられました。とりわけ、この巻で会津・桑名・新選組の旧幕府軍が淀堤に背水の陣を組んでいたところに、薩摩軍に世に有名な「錦の御旗」が掲げられるシーンは圧巻です。ついこの間まで諸藩大名のトップとして君臨していた徳川家旧幕府軍がなぜ負けたのか、勝負時の人の心の動きをこれほど鮮明に描いた作品は少ないと思います。そして、肝心の兵馬と新八郎なのですが…、第2巻がどうなるのか気になって仕方がないラストのくくりです。いやあ、またまた幕末がマイブームになってしまいました。(2012/7/3)
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    投稿日:2012年07月03日
  • 今年も少しずつ蒸し暑くなってきました。もうすぐ本格的な夏ですね。暑いの大歓迎なのって、ゴマちゃんぐらいかな~と思ったんですが、逆でした。ゴマちゃん、寒いところの生き物でした。アイス食ったり楽しくプールで水遊びしているイメージが強かったもので。。。それにしても『少年アシベ』はほんとにおもしろい&深い! もう20年以上も前に連載が始まった漫画でありながら、現在でも余裕で通用する笑いがあります。笑いながら、そのまま読んでいくこともできるんですが、たまにすごいブラックユーモアが入ってて、「うーん…」て別のこと考えさせられたり。結構哲学的な面があるんですよね~。森下裕美さんの漫画って、「そばに置いておきたい」という評価されることが多いように思うんですが、『少年アシベ』はまさに同感! ずっと大事にしたい宝物のように思えてくる漫画です。 (2012/7/3)
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    投稿日:2012年07月03日
  • 今夏、ノイタミナ枠でアニメ放送予定!2011年度「このマンガがすごい!」オンナ編第4位を獲得したこちらの作品。オリジナリティあふれる表現力とストーリーテリングで、マンガ界のアンファン・テリブル(恐るべき子供たち)と称され、今最も期待が高まる気鋭の女性漫画家・河内遙の描く大人気コミックです。目つきは悪いが純情一途な花屋のバイト青年・葉月亮介がひそかに恋するのは、8つ年上の店長・島尾六花。でも彼女は恋愛を諦めている様子。ある日、とある用事で花屋の2階の彼女の自宅に呼ばれて行くと、そこにはなんと上半身裸の男。予期せぬ事態に半ば憤り、半ば呆れる葉月だったが、その男は六花の同棲相手ではなく、すでに亡くなった彼女の旦那の幽霊(島尾篤)だという…。病気で亡くなった旦那の島尾(幽霊)は、六花に未練たらたらで、葉月の恋路を邪魔してばかり。島尾(幽霊)は死んでも成仏せずにずっと側で見守っているほど強く六花を想っているのに、幽霊ゆえに何もできない歯がゆさが切ないです。六花には見えないけど、恋敵の葉月にはなぜか島尾(幽霊)が見える…この関係性もなんとも不憫です。低温一途青年×さっぱり未亡人×草食系執着霊の3者が紡ぐ、奇妙で切ない純情三角ラブストーリー。絵もとても綺麗で、表現が本当にお上手です。まだ1巻までしか読んでないので、この三人の関係が今後どうなっていくのか、続きが非常に気になるところです。
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    投稿日:2012年06月29日
  • とにかく、面白い本だ。著者はホリエモンこと、堀江貴文。書名はずばり『刑務所なう。』「ホリエモンの獄中日記195日」の副題。IT時代を先導する時代の寵児が証券取引法違反の疑いで逮捕され(2006年)、2007年に懲役2年6月の実刑判決。2011年、最高裁が上告を棄却、6月20日に収監され、現在長野刑務所で服役中のホリエモンが、東京拘置所に収監された日から毎日書き続けている獄中日記が週単位でまとめられている。1週目の6月20日(月)に始まり、29週目の大晦日、12月31日(土)で終わっている。ホリエモンは毎日のメニューを淡々と記録し続けることで、195日の「塀の中の日常」を切りだしていく。収監4週目。まだ独房生活が続いている。〈7月12日(火〉今日も暑いな。朝は麦飯、みそ汁、豆昆布佃煮、ふりかけ。作業開始。室内運動はいつも通り。んで、差し入れの運動靴が届く!これは履きやすい。その運動靴を履いて室外運動をする。メニューはいつもどおり。しかし暑い。炎天下である。マジでベビーパウダーが役立つ!んで、4分間のシャワー。でも、気持ちいい。んで、昼メシ。みそすき煮、麦飯、シューマイ、ゆかり和え、漬物。午後もいつもの作業だが突然告知が。「何だ?」と思ったら、6月の作業報奨金の告知だった。その額、なんと267円。数日間ではあるが、予想通り安っ!てなわけで、事前告知したとおり東日本大震災チャリティしようと思う。でも、267円の寄付というのもなんなので、その100倍にあたる2万6700円寄付することに。(中略)夕メシは、チキンビーンズ、中華風炒り卵、削り節の佃煮、麦飯。(中略)しかし、夕立がない日は夜になっても暑いったらありゃしない。深夜はマシなんだけどねぇ〉収監20週目。〈11月2日(水)朝は麦メシ、みそ汁、納豆、味付けのり。納豆食わねーと本当に粗食なので午前10:45~の運動の時間にはおなかペコペコ。昼メシは麦メシ、コーンラーメン、高野豆腐五目煮、厚焼き卵、ジョア。初のラーメンだったのだが、しょうゆ味で麺はのびのびと正直期待外れ。味も薄いし・・・・・・(後略)〉納豆は苦手なようで、繰り返しぼやいています。とまれ、収録日記最終日、2011年最後の日のホリエモンです。〈12月31日(土)いよいよ大晦日。来年の大晦日もココかと思うとウツ。朝は麦メシ、みそ汁、とろろ芋、味付けのり。午前中は映画『プリンセス トヨトミ』。昼メシは麦メシ、豆と鶏肉のカレートマト煮、ほうれん草といんげんのごま酢あえ、厚焼き卵。正月休みの特食(おやつ)が配られた。みかんが4つ、コイケヤポテトチップス(のり塩)、宝製菓のニューハイミックスビスケット詰め合わせ。うーむ、1月3日の夕食のときに回収なのだそうだ。午後は映画『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』。驚くなかれ、私はパイレーツ・オブ・カリビアンを観るのは初めて。夕メシは麦メシ、新巻き鮭焼、やながわ風煮、角煮佃煮、いもっこ汁。その後、点検が終わったら待望のカップそば。しかし・・・・・・、午後のお菓子を食べ過ぎたのと、ご飯を食べたばかりなので途中からお腹いっぱいになってしまい、最後は苦行に。半年の規則正しい生活で胃が縮んでしまっているようだ。19:15から『NHK紅白歌合戦』を観る。紅組司会の井上真央ちゃんがカワイイ。大みそかだけは、紅白と『ゆく年くる年』の終わる時間までTV視聴が許されている。完全に夜9時就寝に慣れている身としては、減灯(9時以降は照明が暗くなる)後はちょっと眠くなる。が、年越しまで起きて2012年を迎えた。希望ゼロの2012年。暗黒の一年が幕を開けた。一人ぼっちの大晦日なんて何年ぶりだろうか。紅白歌合戦を全部観たのって小学生のとき以来かも!〉刑務所の3食の合間に好奇心旺盛な素のホリエモンが視(み)えてくるという内容もさることながら、本としての工夫がいい。日記のハイライト部分は実録マンガに仕立てられ、「まるで山下清」の坊主頭のホリエモンを楽しませてくれます。また、獄中ダイエットの過程も何ページかおきに配された体重計の上のホリエモンのイラストで示されてわかりやすい。巻末に収録されている獄中読書ベスト150冊の書評。これがまたいい。マンガから文芸書まで実に幅広く、最高五つ星の評価も面白い。そしてこれら多彩な内容が読みやすいページデザイン、構成で一冊にまとめられています。(2012/6/29)
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    投稿日:2012年06月29日
  • おおおおおおおお、これは匂う…匂います! なになに、ツチノコ、UMA…………きてます! 確実にきている!! こりゃーオカルト・パニックファンにはたまらん漫画だ! ツチノコ捕獲に、とある無人島へと乗り込んだハンターたちを待ち受けるものとは…!? ぜひ本編をご覧ください。この手のパニック系の漫画ほんと好きですねー。ホラーはまったくだめなんですけどね。幽霊とかキョンシーとかだと、とても自分の手にはおえなさそうなのですごく怖いのですが、実態がある生物だったら、少なくとも対象との物理的な距離が測れますから、なんとかなりそうな気がしてきませんか? それに、未知の生物ほんとにいるかもしれないですから、それ考え始めたら楽しいですよね!  それにしても、webを通しての情報が、今ものすごいことになってきていて、この頃つくづく世の中にある謎が減っていってるんじゃないかという気がします。だからこそ、こういう漫画が楽しくてしょうがないのかな~? (2012/6/26)
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    投稿日:2012年06月26日
  • 久しぶりにこのマンガを読み直して、圧倒的なパワーがやはり衝撃的でした。『トイレット博士』(とりいかずよし)のことなんですが、ここまで徹底して描かれていたことに、あらためて脱糞じゃなくて脱帽しました。まあ、食事前に本作を読むのはおやめください。あらためて読んで驚いたのは、「トイレット博士」という主人公がいたことです。当時の小中学生を中心に、爆発的な大ヒットを記録したマンガなので、当時小学低学年だった私も夢中になって読んでいました。が、記憶にあるのはスナミ先生をはじめとしたメタクソ団と「マタンキ」の合言葉、そしてMKバッジなど。肝心の主役であるトイレット博士やダラビチ博士が記憶にないのは、多分大ヒットになった火付け役がメタクソ団の登場以降だからかもしれません。さて、そのメタクソ団が繰り広げるドタバタ話のなかでも忘れられないのが、スキヤキで忘年会をするお話です。当時の多くの小中学生にとって、スキヤキは一般的な料理ではなく、かなり贅沢な食事だったはず。スキヤキの前には、メタクソ団が誇る「団結」「友情」「努力」「勝利」も形無し、私たち読者もスキヤキ食いてぇ~と強烈に思わされたものです。いま思えば、この書名にしてスキヤキの印象が一番強かったというのも妙ですが、著者が読者の本能的な欲求のツボを心得ていたのかもしれません。まだ、読んだことがない方も、作品の世界観をちょっとのぞいてください。(2012/6/26)
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    投稿日:2012年06月26日
  • 夏の甲子園を目指して、各地で予選が始まりました。高校野球ファンには、たまらない時季ですね。野球マンガもずいぶん増えましたが、『戦後野球マンガ史 手塚治虫のいない風景』(米沢嘉博)は、お気に入りを選ぶ一助となるでしょう。この本には、『ちかいの魔球』(ちばてつや)、『巨人の星』(原作:梶原一騎 画:川崎のぼる)、『キャプテン』(ちばあきお)、『タッチ』(あだち充)ほか、有名無名の野球マンガがふんだんに紹介されています。読んでいて面白いのは、系譜や誕生時の隠れたエピソード、発表当時の読者の反応などがつぶさに記されていることです。意外に思ったのは有名な「消える魔球」が究極の魔球として様々な作品に登場しているという事実でした。また、『巨人の星』が発表当時に「ワザとらしい泥臭い表現は当時から笑いのネタにされ」、「臭いヒロイズム」もシニカルに笑われていたという側面もあったようです。もちろん、『巨人の星』のその圧倒的なドラマツルギーとパワーによって、不朽の名作となっていった経過も忘れずに追っています。なにより、野球マンガをほとんど描いたことがない手塚治虫が、『巨人の星』に夢中になるアシスタントたちに「何処が面白いか教えてくれ」と怒鳴ったのだとか。マンガの神様も嫉妬するほどの名作が、ズラリ並んだフィールドのナビゲーターのような本なのです。(2012/6/26)
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    投稿日:2012年06月26日
  • オトナのストレス解消漫画といっていいのかなあ、これ。主人公・南部十四郎は、世を乱す不埒な輩をばったばったと斬り殺すというバリバリの愛国主義者。タイトルから連想される通り、その正体は第二次世界大戦時に東京憲兵隊に所属していた旧帝国陸軍の大尉で、時の首相と政界の実力者によって降霊された、世直しの使者なのであります。そりゃあ軍人さんの眼から見たら、20世紀末の日本人は万死に値する存在なのでしょう。この作品は、ケンペーくんの正義の鉄槌を襟を正してしかと見届ける漫画…などと思ったら実は大間違いなんですけどね。だって制裁を加える相手が巨悪じゃなくて小物ばかりなんですもの。うるさい暴走族や、軽薄なサーファー、後先を考えずに行動する若者に、日本語もろくに使えない適当な大学生。はてはパンクロックカーや嫌煙活動家、六本木ギャルまでもが制裁の対象になる。つまりは疲れたオジサンがイラっとくる相手ばかりなんですよね。で、これが意外とツボにハマって爽快に感じてしまうという。あ~あ、こんなんじゃ私もすっかりオジサンですなあ。(2012/6/22)
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    投稿日:2012年06月22日
  • 野田政権は6月16日、関西電力大飯原発(福井県)の再稼働を決定し、続いて四国電力伊方原発(愛媛県)、北海道電力泊原発(北海道)、九州電力川内原発(鹿児島県)、北陸電力志賀原発(石川県)の再稼働に向けて動き出そうとしているそうです。2011年3月11日の大地震・大津波による原発のメルトダウン――「フクシマ」を契機に「脱原発依存」へと大きく舵をきったのはついこの間のことです。それを忘却の彼方としたかのような野田政権の「決断」を目の当たりにして、この人の不在の大きさに思い至りました。高木仁三郎。1961年東京大学理学部卒業、日本原子力事業勤務、都立大学助教授を経て、1975年に原子力資料情報室を設立。「市民科学者」として反原発運動を担い、自らの体験に基づいて「原子力村」の「議論なし・批判なし・思想なし」の構造を厳しく批判し続けた実践の人でした。ここに、一冊の本があります。高木仁三郎著『原発事故はなぜくりかえすのか』です。1999年9月、茨城県東海村のJCO社のウラン加工施設でだれしも予想だにしなかった臨界事故が発生しました。二人の現場作業員が被曝して死亡、地域住民に待避要請が出されるなど日本全体が原子力事故の恐怖に包まれました。ガンに冒されていた高木仁三郎はその時、死期を意識しつつ、最後の力を振り絞って録音テープを残しました。62歳で永眠した高木仁三郎の遺稿テープは岩波書店の担当編集者たちによって起こされ、2000年12月に出版されました。20111年4月、4刷版を底本に電子書籍化、緊急リリースされたのが本書です。その意味、価値、そして怖さは、何よりも書名そのものに現れているといってもいいと思います。原発事故はなぜくりかえすのか――高木仁三郎はこう綴っています。〈この事故は単独の事故としてあったわけではなく、一九九五年一二月の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市、動燃=動力炉・核燃料開発事業団)のナトリウム漏れ事故に始まり、九七年三月の同じく動燃(九八年改組、現・核燃料サイクル開発機構)の東海再処理工場のアスファルト固化処理施設における火災爆発事故につづく、いわば三段階のステップの中で起こってきた事故でした。(引用者中略)その後、JCOの事故調査委員会(原子力安全委員会「ウラン加工工場臨海事故調査委員会」)が九九年末に終わり、国会で原子力関係の法改正等がそそくさと行われ、省庁の再編がそれにつづいています。安全規制や原子力防災の部分などが若干変わりつつありますが、私に言わせれば本質的なことでは何の変化も起こっていません。それどころか、原子力の事故という恐るべき事故でむしろ影に隠れてしまったけれども、その周辺ではもっと忌むべきこと、心配になるようなことも大変多く起こっているのです。そういうことが隠されてしまって、あれだけ大きな事故が起こったのに、“大山鳴動してねずみ一匹”のたぐいで、結局旧態依然たる原子力行政に戻っていくのではないでしょうか。いや、その旧態の原子力行政すらなくなってしまいそうです〉どうでしょうか。「動燃」を「東京電力」という具合に関係会社・機関などの固有名詞を置き換えてみれば、高木仁三郎がここで指摘していた原子力をめぐる状況は、12年後の今日の状況にそのまま当てはまり、原発再稼働に向かう野田政権の有り様を正確に言い当てていることがわかります。繰り返しますが、民主党政権が「脱原子力発電依存」を唱え、国民に相応の協力を呼びかけたのはつい数ヶ月前のことです。フクシマでは多くの人々が先祖伝来の土地を追われ、帰る見通しも立たない状況にあります。核爆発や核分裂のときに“チェレンコフの光”と呼ばれる青い光が発します。「青い光が光った」というJCO臨界事故の報に衝撃を受けた高木仁三郎は、日本人はこの光を一般の人が浴びるという形で三たび見ることになったと書いています。〈第一は、広島で一九四五年八月六日に起こった被爆でした。このときは、青い光は、まさにピカドンという象徴的な言葉で呼ばれました。第二が、同年八月九日に長崎で起こった被爆でした〉そして第三がJCOの臨海事故というわけですが、その後フクシマという未曾有の危機的状況を招いた「原子力村」にすべてを任せ、原発依存の経済を維持することにひた走る政治と行政をどう考えればいいのか。高木仁三郎がフクシマ後を生きる私たちに残したラストメッセージとして、本書と、同じ岩波新書の電子書籍版『市民科学者として生きる』をぜひご覧ください。(2012/6/22)
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    投稿日:2012年06月22日
  • うわあ~懐かしい…私が受験生の頃かな。受験の時って、勉強しないと…と思っているのに、無駄に部屋の掃除しちゃったり、うっかり漫画を読んで止まらなくなったりしますよね?私も漫画を読んだら止まらないタイプで、このまま部屋に(BL)漫画を置いてたら勉強できない!と判断した私は意を決し、受験が終わるまでの間、漫画を段ボールに詰めて取り出せないように車庫にしまったんですよ。でも全部しまってしまうとあまりにも私が可哀想…ということで、何冊かは部屋に残したんですね。その残された本の中に入っていたのがこちらの作品です!(前置き長くてすみませんっ)受験が終わるまで擦り切れるほど何度も何度も繰り返し読みましたよ…。本当にお気に入りの作品でした。「俺、おまえ見てるとなんか欲情する」。密かな恋心を抱いていた親友の涼司に、突然そう告げられた透は!? これ、一般的には「あれ?両想いジャン?」って思いますよね。でも涼司は透への想いが何なのかわかってません。そのくせ身体には正直で、抱きたいから抱いてみた→想像以上に良かった→また抱こう…という最低男なんですね^^というか頭が弱いアホなのかな?W透は涼司のことが好きだから結局流されてしまう。でも気持ちがない身体だけの関係は虚しくて切ない…。透の気持ちを思うと本当に可哀想です。そんな時現れたのが当て馬こと透の先輩。先輩とつき合ってるふりをして、涼司の誘いを断れるように仕向けます。二人がつき合ってると聞いて初めて涼司は、あれ?男同士でも恋愛できるの?と考え始めます。あとは…まあ実際読んでみてください!こちら続編を含む小説版も同時発売なので、是非合わせてご覧くださいませ☆本当に切なくて胸キュンで萌えます!!(*^▽^*)(2012/6/22)
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    投稿日:2012年06月22日
  • 東京スカイツリーが完成して、お膝もと界隈ではちょっとした下町ブームとなっています。西岸良平の代表作である『三丁目の夕日』は昭和三十年代、東京タワーを建設している頃の市井の人たちを描いたマンガで、世に知られた名作です。今回ご紹介する『西岸良平名作集』は、絵のタッチこそ『三丁目の夕日』を思わせる安心感のあるほのぼのとしたタッチなのですが、物語の運び方がまったく違っていて驚かされます。早い話がSFをベースとした短編や連作が中心で、展開の予想を軽く裏切ってくれるところに惹きつけられました。私が好きなお話は怪人・蜃気郎シリーズのひとつ「魔法の犬」。ケガをした犬を浩ちゃんという少年が家で飼うことになるのですが、ラッキーと名づけられたこの犬が、恩返しとばかりに浩ちゃんの欲しがるものを次々と持ってくるのです。ラッキーが品物を調達するシーンをみて驚かされ、最後のシーンに心を温められました。『三丁目の夕日』が、ちょっと貧しいながらも明日に夢膨らませる人々が現実の中で生きているのに対して、この作品は現実と虚構の世界を行き来する人々が織り成す素敵な物語集です。そして、読み終えて「短編集」ではなく「名作集」のネーミングが極めてマッチしていることに気付きます。西岸良平の隠れた代表作をぜひお楽しみください。(2012/6/19)
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    投稿日:2012年06月19日
  • 日本人ほど温泉が好きな民族はいないのだとか。ものの本によると、鎌倉時代にはすでに温泉が人々に利用されていた記録が残るそうです。最近では、スーパー銭湯という温泉モドキの施設がブームですが、手軽に温泉気分を楽しめて快適ですよね。『風呂人』(漫画:
    立澤克美 原作:大原利雄)は、「究極の温泉 全国地図を作ってちょうだい」という雑誌編集長の指令で、フリーライターの小原晴彦が各地にある秘湯を訪ね歩くというストーリー。登場する温泉は実際のもので、ルポ風に描かれているのがこのマンガの醍醐味です。小原が目指す温泉は、ふだんは人がなかなか足を踏み入れない、というか人を寄せ付けないような場所にある温泉ばかりで、冒険を思わせるような描写もあります。あげくの果てには、火口湖のようなカルデラの温泉にガスマスクをつけて入湯します。読んでいて、なんで、そこまでして…と思わされますが、「温泉ってやつは人が苦労すればするほど 優しく受け入れてくれるもの」だから、究極の湯に浸かった瞬間はたまらないものなのでしょうか。いやあ、参りました。小原の「苦労人」じゃなかった、『風呂人』ぶりが伝わってくる、究極の秘湯気分を満喫できるマンガです。(2012/6/19)
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    投稿日:2012年06月19日
  • いや~、『坂道のアポロン』おもしろいわー。いい話だわー。続きの巻を読んでますますハマっています。青春、友情、恋……眩しすぎる!! 『坂道のアポロン』は前にもご紹介しましたので、今回は作者・小玉ユキさんの別のコミックスを読んでみたいと思います。『Beautiful Sunset 小玉ユキ短編集II』 なんと、デビュー作『柘榴』が収録されています! デビュー作読みたい! では早速。………………うーん、さわやか指数ゼロですw 『坂道のアポロン』のドキドキとはだいぶ方向性が違います! ドロドロしてます! いまどきの世界というのでしょうか。でも考えてみたら、あんなさわやかなストーリーを描けるのは、1960年代を舞台にしているからかもしれないですねえ…。設定が現代であんな素敵なお話をやったら、もう不自然なものになってしまうのかなあ…。この短編集では「さくらんぼうの宴」というお話が好きでした。というか、すごかった!  若いカップルが、ある日突然、ひとりの寝たきりの老人と暮らすことになり……という説明しても説明っぽくならないんですが、そういう話です。雰囲気系? 不思議な物語です。実はこの話、禁忌とされてることを、さらっと目いっぱい描いてないですか?w 妙な気分になる、というのが感想です。この短編集を読んでいると、衝撃のあまり時々「あれ、なにが起きてるんだろう?」とか一瞬分からなくなることがあります。なんだかアートな匂いに満ちた一冊です。それにしても、こんなにふり幅がある小玉ユキさんすごい!(2012/6/12)
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    投稿日:2012年06月19日
  • 綾辻行人・井上夢人・逢坂剛・真保裕一・乃南アサ。作風も違えば、推理小説に関するスタンスもそれぞれ異なる選考委員5人が揃って推し、いわば満票で第51回江戸川乱歩賞(2005年)に選ばれたのが、本書『天使のナイフ』。1969年生まれの薬丸岳が2年がかりで書き上げた、初めての小説でした。「少年犯罪」という、エンタテイメント小説として取り上げるには決してやさしくはない、極めて重いテーマを処女作として選択した薬丸岳の試みは一癖も二癖もある5人の作家たちから社会派小説の側面と本格ミステリーの要素を兼ね備えた力作と評価され、ここに一人の作家が誕生しました――。物語はこう始まります。〈愛実(まなみ)が泣いている。朝食の準備をしていた桧山貴志(ひやまたかし)は、慌てて寝室を覗き込んだ。床一面に愛実の服が散乱してる。衣装ダンスの一番下の引き出しを引っかきまわしている愛実を見て、桧山はあっと思った。「パパ。ももちゃんは?」娘の悲痛な眼に射すくめられ、ばつの悪い思いでベランダを指さした。ももちゃんとは、娘が大好きなウサギのキャラクターで、それを胸にあしらったTシャツは、保育園で一緒の勉くんの次に大切な、愛実の友だちである。数日続いた雨の中、物干しに吊したままになっていた。ベランダを見つめながら、愛実はさらにボリュームを上げて泣いた。きっと自分の大切な友だちを雨ざらしにする、なんてひどい父親だろうと思っているに違いない〉桧山貴志はチェーンのコーヒーショップのオーナー店長、愛実に母親はいない。3年10ヶ月前、ベビーベッドの愛実の目の前で、母親は金ほしさにマンションに押し入ったものによって殺された。事件の後、娘と二人で暮らす桧山貴志にとって何よりの気がかりは、愛実の意識の底に、今もこびりついているであろう、あのおぞましい記憶だ。愛実が時折見せる表情に、桧山は凍りついてしまうことがある。静止してしまったような愛実の瞳を見ると、背筋に冷たいものが這い、喉の奥が戦慄(わなな)いて、一瞬呼吸の仕方を忘れてしまうのだ。だから――桧山は一分でも長く愛実のそばにいて、ふたりで楽しい時をたくさん過ごして、少しでもあの記憶を薄めたいと思っている。そんな桧山のもとに、埼玉県警の刑事が訪ねてきた。妻を殺した犯人の一人が桧山の店の近くで殺されたという。桧山の妻を殺したのは13歳の中学生3人で、したがって「殺人犯」として逮捕されることも、また裁かれることもなかった。「少年A」「少年B」「少年C」として補導されたのち保護観察の対象となり、家裁の審判・施設への収容などを経て社会に復帰していた。刑法41条に「14歳に満たないものの行為は、罰しない」と規定されていて、14歳未満の少年は刑事責任能力がないとされているのが日本の実情なのだ。したがって13歳の中学生は人を殺害するという刑罰法令に触れる行為をしても犯罪を行ったことにはならない。桧山の妻を殺した13歳の少年たちは刑法41条によって逮捕・処罰を免れていたが、その一人が殺されたのだ。しかも殺害現場は桧山の店から歩いて10分ほどの大宮公園。桧山は犯罪被害者としてかつてマスコミを前に「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」と発言したことがある。その彼のところに事件の翌日に刑事がやってきて――「八時半を過ぎると桧山さんはお一人でお店にいらっしゃるんですね」何気なく聞く。桧山には十分すぎるくらいの動機があり、しかも犯行のあった時間、桧山は一人で店に残っていて、アリバイを証明できる人はいない・・・・・・。そして残る二人のうち一人が池袋駅のホームから転落した。ホーム下の空洞に逃れてかすり傷程度で済んだが、少年は誰かに押されたような気がすると警察に語った。さらに三人目の少年が刺殺体となって発見された。その少年の携帯電話の最後の発信記録は桧山の店だった。翌日、警察は桧山に出頭を求める。これは愛児の目の前で母を殺しておきながら罪に問われることなく生きている少年たちに対する犯罪被害者による復讐劇なのか。物語はここから衝撃のラストへと急展開していきます。その謎を解く鍵は「少年犯罪」についてまわる刑法41条問題――「14歳に満たないものの行為は、罰しない」という条項です。新人離れした緻密なプロット、二重三重の仕掛けが施されたドラマチックな仕上げで、一気に読み終えていました。(2012/6/15)
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    投稿日:2012年06月15日
  • 松本零士作品の中では珍しい部類である、実在の人物・平賀源内を題材にした物語。微妙にSFテイストも入っており、ある意味、とてもロマンチックな作品になっています。というのも、この作品は源内の親友である赤松の精蔵の視点で描かれていて、その目線というのが、著者の思い入れまるだしなんですね。著者の特徴であるモノローグのせりふもいつもより気持ちが入っていて、どんだけ詩人なんだよっ、て突っ込みたくなります。ストーリーも、冒頭こそ新しい技術に胸を躍らせる青年時代の源内と、彼といっしょに伊予から出てきた少々抜けてる精蔵と、わかりやすい主人公と脇役という設定なのですが、やがてこの関係も思い入れが強すぎて微妙に変化。2人が歳を取ってからはなんとなく関係が逆転してしまうことに。読めば精蔵は著者の分身であることは明らかで、まるで「俺が友を語るんだ」といわんばかり。この辺、あとがきにネタばらしがありますが、たとえ書いてなくても「昔からの知り合いのような気がしてきた」なんて気持ちだだ漏れですよ。(2012/6/15)
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    投稿日:2012年06月15日
  • 『ドラフト1位 九人の光と影』(澤宮優)…タイトルだけでなんとなく中身の予想がつくような気がしますが、実際に読みはじめると想像の域をはるかに超えていました。そもそも野球の競技人口の膨大さを考えると、プロ野球選手になれるのはほんの一握り。しかも「ドラ1」の指名ですから、この本に登場するのは並大抵のプレイヤーではありません。例えば、中京高校を経て阪急にドラ1を指名された野中徹博投手は、甲子園での通算記録が10勝3敗、しかも防御率が0.79という脅威的数字を残した投手。同期には西武に進んだ渡辺久信や巨人の水野雄仁、近鉄の吉井理人等数多くのスター選手が顔を並べる、当たり年の選手でした。これらのスター選手がプロに入団して活躍したのに対して、野中は出だしでつまずきます。詳述は避けますが、本を読む限り人との巡り会わせに運がなかったようです。間もなく退団して一度はプロ野球を去った野中ですが、実は彼の第二のプロ野球人生はここから始まったようです。素人のチームから台湾のプロ野球を経て、再度日本のプロ野球のマウンドを踏んだ野中は、もう一度脚光を浴びます。そのうちの1試合が、巨人VS中日の伝説の「10.8」のマウンドです。野中はその後も起伏の激しい野球人生を送ります。この野中をはじめ、それぞれの野球人生に深く感動せずにはいられません。そして、一時はスポットライトを浴びながらも、後に倒れても腐らず、何度でも起き上がる男たちを賞賛せずにはいられないのです。(2012/6/12)
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    投稿日:2012年06月12日
  • 『光の王国』は、SF大作『暁星記』で知られる菅原雅雪が電子書籍用に描き下ろした作品です。ある日、「世界中の夜空から暗闇が消えた」瞬間から、物語は始まります。主人公の小学生ワタルとのの子がふとしたことでホームレスおじさんと出会い、「暗闇が消えた」真相を知ることとなります。少しだけ踏み込んで内容を記しますが、その原因は宇宙人たちによる「実験」だったのです。元々家庭内暴力を受け続けて居場所を失っていたワタルは、抑えきれない好奇心も手伝って宇宙人に連れられてゆくのですが、ここからの展開に惹きこまれました。ワタル同様に地球を後にした人々の姿が描かれているのですが、それは、宇宙人たちがいう「二足不安定型知性体」そのものの行動と思考のようです。高度文明の宇宙人たちからすれば、地球人は不安定な情緒の上に成り立った思考の持ち主のように映るようです。そんな中でワタルはどう生きていこうとするのかをご覧ください。かつて「大人になんかなりたくない」と口にしたワタルとのの子は、未来への希望を見いだすことができるのかどうか…まぶしいエンディングです!!(2012/6/12)
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    投稿日:2012年06月12日
  • わんこ大好き少女の樹里ちゃんのもとにやってきたのは、愛嬌たっぷりの白パグ犬、ロミオくん。初心者の樹里ちゃんが、生後75日の子犬のロミオくんの子育てに日々奮闘! これはすごくオススメです。樹里ちゃんとロミオが名コンビすぎて、みているだけで微笑ましい! 基本的にゆる萌えギャグなのですが、この漫画のすごいところは、樹里ちゃんのお母さんがプロ顔負けの知識を持つベテランで、実用書並みに犬の育て方を教えてくれるところにあります。犬を飼えば、ただかわいいとか、楽しいとかということばかりでなく、こんな大変なこともある(おもにシモの世話)ということを、笑いをまじえつつ、しかしなかなかシビアに教えてくれます! 犬を飼いたいな~と思っている方は、この漫画で一度疑似体験してみることをおすすめします。……たぶんますます思いは強くなると思いますが(笑)(2012/6/12)
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    投稿日:2012年06月12日
  • 門地先生大好きですー!!! さすが!門地節が効いてますね!! 見た目イモっぽくて、何もかも「並」としか思えない生徒会長の国斉。でも電車では毎朝(男に)痴漢されて、今までの副会長(男)は国斉を押し倒したという噂、先生にもセクハラされている…「このイモのどこに魅力が!?」と思ってたハズなのに、天然男たらしチャーム炸裂の国斉生徒会長に振り回されつつも面倒を見ているうちに、不覚にもきゅきゅんと惚れてしまった副会長の知賀クン。でも会長は激ニブで…!? 国斉が男にモテる理由、わかります!とにかく仕草やら何やらが可愛い!!(*´∇`*)無防備で鈍感で、つい手が出てしまうとはこのことですね…そしてなんかエロい!!!! 門地先生の描く、手つきやら腰つきやら何やらがとにかくエロくて濃厚です!! 門地作品の中でもエロ度はかなり上位に位置するんじゃないでしょうか。しかしこの二人、お互い両想いなのに、体の関係が先行し、なぜか心がすれ違っていて、とってももどかしいんです!>< お互い鈍すぎだろーと突っ込みたくなるけど、なかなか進展しない二人がとても初々しくて可愛くてそれも良し!互いの心が通じ合った時の感動はひとしおでしたー!(*´▽`*)これ本当に面白くてエロくて胸がきゅんきゅんして萌えるのでオススメです!このシリーズのスピンオフが『第二ボタン下さい』になります。国斉も知賀も出てきますよ~(^∇^)こちらもギャグ満載で本当に面白いので、是非合わせてご覧ください!ヾ(@~▽~@)ノ
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    投稿日:2012年06月08日