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  • 「鳩よ、お前はおれの生き甲斐、青春──」 こんなマンガがあったなんて…! 伝書鳩のレースを描く超マニアックな作品なのですが、連載時は鳩レースのブームの発端になったとのこと。鳩の飼育や生態などすごく本格的に描かれています。途中から鳩たちにセリフがつくようになるのですが、そうすると一層おもしろくなりますね~。そこは『銀牙』と一緒です! レースのシーンでは、海を渡ったり、ワシやフクロウなどといった猛禽類に襲われたりと、なかなかハードな内容でございます。あまりに珍しい漫画だったので、ご紹介させていただきました! (2012/9/11)
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    投稿日:2012年09月11日
  • まるで、お笑いの幕の内弁当のような本、それがこの『俺に血まなこ』(おおひなたごう)です。まず、書名からしてただならぬ気配を放っているのですが、有名人や漫画家、漫画作品のパロディがあるかと思えば、ユーモアやエスプリあるいはサイケデリックを効かせたり、と次々に飛び出すびっくり箱のようです。一過性として大笑いするよりも、プッと吹き出してにやけた表情のまま読み続けさせられる、そんな中毒性のある本です。(2012/9/11)
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    投稿日:2012年09月11日
  • 人工衛星の打ち上げと称してミサイル発射の実験を行い(見事に失敗してしまいましたが、それはそれで恐いことです)、なにより、多くの日本人を勝手に連れ去っておきながら、「拉致問題は解決済み」と主張する国――北朝鮮はいま、大方の日本人の目には好感度最低、わけのわからない困った国と映っているのではないでしょうか。中断していた日本と北朝鮮の交渉・協議が8月29日から3日間にわたって北京で行われたということで、拉致問題の解決に道が開けるのかに注目が集まっていますが、外務省実務レベルの話し合いを伝えるマスコミ報道もどこか醒めているように見受けられるのも、北朝鮮に対する日本人の意識が反映しているのかもしれません。しかし、本書『「金正恩の北朝鮮」と日本 「北を取り込む」という発想』は、私たちの「北朝鮮観」――国交なき、不可思議な国に対する「日本人の常識」を打破する見方、考え方を提示しています。著者の辺真一さんは1980年代以降、朝鮮半島情勢を分析する情報誌「コリア・レポート」を主宰する一方、テレビなどマスメディアにおいても積極的な発言を繰り広げているコリアウオッチャーです。評論家の高野孟さんや歳川隆雄さんらと議論を重ねることで鍛えられてきた情勢分析力、情報ネットワークを備えた朝鮮半島問題の第一人者として、いま最も気になる「新しい金正恩時代」をどう見ているのか。辺さんの指摘は多岐にわたりますが、そうだったのかと目からウロコの思いがしたポイントを二つだけ紹介しましょう。一つ目は、金正恩は8歳の時、兄の金正哲とともに日本を訪れ、ディズニーランドに行ったという事実です。金正日の長男で、金正恩の異母兄の金正男が2001年5月に妻子らとともに偽造パスポートで日本に入国しようとして露見。一時身柄を拘束された金正男は「ディズニーランドを見物する予定だった」と供述したことは記憶に新しいが、金正日の後継者となった金正恩はそれよりも10年も前の1991年5月に密かに来日して、ディズニーランドに行っていたというわけです。その時、金正恩はブラジル人「ジョセフ パク」名の偽造パスポートを使っていたことが明らかになっているそうです。5月12日から22日まで11日間滞在し、1960年頃に北朝鮮に帰った母・高英姫(大阪生まれの在日朝鮮人)が途中で合流して、新幹線で母の出身地である大阪にも行ったということですが、小学生の金正恩の目に、日本はどんな風に映ったのでしょうか。目からウロコの第二は、北朝鮮は困窮の極にあり、中国の支援があるのでかろうじて崩壊をまぬがれており、その意味で中国は北朝鮮にとって絶対的な存在だという「常識」が必ずしも正しくはないという点です。辺さんはこう書いています。〈ウィキリークスが暴露した米外交文書によれば、金正日は2009年8月に訪朝した現代(ヒュンデ)グループの女性オーナーである玄貞恩(ヒョンジョンウン)会長に「中国は信用が置けない」と洩らしていたと言う。このことを、玄貞恩会長から聞いた米国のキャスリン・スチーブンソン駐韓大使(当時)が、本国に打電していたことで明らかになった。金正日が対中不信を口外したのは一度や二度ではない。(中略)日本のマスコミがよく書いているほど、中国と北朝鮮が強い絆で結ばれているわけではないのである。例えば、これは日本が北朝鮮を唯一評価しても良さそうなものだが、北朝鮮はこれまで中国に基地を貸すこともなければ、中国軍を駐屯させることもなかった。もし、そんなことになっていたら、日本の安全保障は極めて重大な局面に向かうことになっていたに違いない〉竹島をめぐって日本と韓国が対立し、尖閣諸島をめぐって日本と中国の主張がぶつかり合い、日本とロシアの間では北方領土問題に解決の兆しすら見えません。この混沌状況下で、北朝鮮と日本の間には領土問題がありません。中国にとって北朝鮮の港は日本海への出口として喉から手が出るほどほしい戦略拠点ですが、北朝鮮はこれまでそれを中国に対して提供してきませんでした。世襲とはいえ権力構造が大きく変わる過程にある北朝鮮にどう向き合っていくべきか。拉致問題の解決にはどうすればいいのか――本書は次第に明らかになってきた「金正恩体制」のキーマンを示して、新たなアプローチを示唆しています。偏狭なナショナリズムに酔うことなく、極東アジアの地政学を冷静に見極めてこそ、日本の活路が開けるということを痛感させられました。(2012/9/7)
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    投稿日:2012年09月07日
  • 作品冒頭に出てくる「レエ……オグロアラダ……ロゴ……」という言葉。何のことやら意味不明で、響きといいとらえどころのなさといい、何とも言えない不安感をあおられませんか。ミステリーの導入としては秀逸だと思います。実際、私はその意味を知って安心したいがために、ページをクリックするマウスを止められませんでしたよ。で、読んでも読んでもどんどん不安感は増していくばかり。いやあまんまと術中にはまってしまった訳です。白峠村を訪れた作家の道尾秀介は児童の神隠し事件を知り、遺体が見つかった場所で奇妙な声を聞く。帰京した道尾は友人の霊現象を探求する真備庄介に相談。偶然にも真備の元には、自殺する前にとられた複数の写真に写る眼についての相談が舞い込んでいた。ここまでは1巻の時点でわかっていることなんですけど、これが霊現象なのかは明らかにされないのがミソなんだよなあ。原作は直木賞作家のデビュー作。で私の大学・学部の後輩ということをこれを書いた後に知って、期せずして前回と大学つながりになっちゃいました。う~ん、ミステリー。(2012/9/7)
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    投稿日:2012年09月07日
  • 修羅に生きる最強の野球チームとして、純粋培養された少年たちがいた…! そう、これは少年版『あずみ』なのです。衝撃なんだぜ(゚∀゚) 1979年から少年誌で連載された、巨匠・小山ゆう先生の伝説の野球コミックです。物心つかない頃からボールを与えられ、山中で祖父の特訓を受けながら育った少年・武蔵三郎。そんな彼の前に若狭潮という少女が現れ、三郎と同じように史上最強のナインとなるべく育てられた少年たちが日本各地に散らばっていることを知らされ…!? いわゆる一昔前の、少年向けの「魔球モノ」ですが、小山先生です。やっぱり一気読みしてしまいました^^ 「魔球モノ」については、こちらでもご案内しておりますのでご覧ください~→「野球漫画特集」  (2012/9/4)
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    投稿日:2012年09月04日
  • かつて、日本にも「島流し」という刑罰がありました。逃げ場のない絶海の孤島に罪人たちが集められるのですから、考えただけでぞっとしますね。『天獄の島』(落合裕介)は、近未来の日本で死刑廃止の替わりに島流しが復活して、「天獄島」が物語の舞台となります。主人公の御子柴鋭(みこしば・えい)が、家族を惨殺した旧友の榊を追ってこの島にやってきます。流刑地なので、罪人でなければこの島には入れません。御子柴はあえて罪を犯して、島流しとなります。「天獄島」…意味深なネーミングです。冒頭から重々しく暗い場面で進みますが、途中から、この物語が単なる復讐劇ではなく、壮大な背景に裏打ちされたサスペンスであることがわかり、一気に読み終えました。世の中にはいろんな島がありますが、こんな島には行きたくないものですね。 (2012/9/4)
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    投稿日:2012年09月04日
  • 本書『最終退行』は、東京の下町工場地帯である大田区羽田の銀行支店を舞台に展開される男たちのドラマです。一種の社会派ミステリーといっていいでしょう。組織の呪縛にあえぎ、もがく銀行マン、彼らに生殺与奪を握られて追い込まれていく中小企業経営者、そして私欲にまみれた銀行トップをつけ狙う得体の知れない集団が絡み合うスピード感あふれる展開で、読み出したら止まりません。日本のモノ作りを支えてきた町工場の技術や職人魂を描いた『下町ロケット』で、第145回直木賞(2011年上期)を受賞した池井戸潤が2004年に発表した作品で、下町の町工場、中小企業経営者へのまなざしは、『下町ロケット』に受け継がれています。物語は〈朝日新聞 一九四六年四月二〇日(土曜日)[芝浦沖に金塊百三個 米海軍引揚ぐ]〉という新聞記事に始まります。記事の内容はこうです。〈米海軍潜水夫の一隊は一九日東京商船学校敷地に近接する東京湾芝浦沖の海中から八十ポンド金塊百三本を引揚げた、価格にして六万一千八百ドルではあるが、第二騎兵旅団の語るところによれば最初東京湾には二億ドルの価値ある金銀プラチナなどが埋められていたといふ予想は誇張されてをり、現在までにはプラチナや銀は一本も発見されず、また銀がどのくらい海中に埋没されているか予想の限りではないといふことである〉前年の8月に第二次世界大戦が終わり、日本の占領統治が始まって8か月経過した時期に東京湾から大量の金塊が引き揚げられたという記事(一部の旧字を現在のものに置き換えたほかは本で使用されている当時の表記のまま引用)に続いて、32年後の昭和53年に作成された銀行の内部文書が引用されています。〈 [調査報告シキ五三一九七番 参考添付文書] /昭和五十三年三月二十五日/東京第一銀行取締役会御中/審査部 企画室 次長 久遠和彌・・・・・・〉と題され、親密先山友電機の副社長がM資金融資話にのせられて多額の約束手形を振り出したあげく首吊り自殺に至った経緯を詳細に報告する内容で、昭和21年4月に東京湾から引き揚げられた金塊にも言及。M資金の実在可能性を示唆する報告者の久遠次長は、後に東京第一銀行のトップに上り詰め、物語の一方の主役として登場してきます。「M資金」は戦後日本の経済社会の裏側で語り継がれ、さまざまな事件の背景となってきた謎の闇資金話ですが、本書は亡霊のようなM資金をめぐる奇々怪々な展開を縦軸に、バブル崩壊で変質していく銀行の中で銀行マンとしての矜持を保って生きようとする副支店長・蓮沼鶏二の孤独な闘いとそれをとりまく人間模様を横軸に編まれていきます。池井戸潤の作品に共通している正義感は、本書でもいかんなく発揮されていて、作品の強いモチーフとなっています。副支店長の蓮沼の上司、支店長の谷は田宮金属工業に対し「融資予約」をエサに返済を迫ります。支店長の「融資」の言葉を信じた田宮社長はなけなしの3億を返済しますが、結局期待した融資は受けられず、不渡りを出してあっけなく倒産に追い込まれ自殺してしまいます。あろうことか谷支店長はその死亡保険金を差し押さえようとします。その時、蓮沼は初めて「ノー」を言い放ちます。〈「保険金は、田宮さんの遺族が生きていくために必要最低限の金だ。田宮さんはそれを遺すために死んだ。それは差し押さえるべきではない」「くだらん温情か、副支店長。そんなことをしてどうなるかわかっているんだろうな」「「どうぞ。好きにしたらいい。だが、田宮さんの保険金を差し押さえるようなまねは絶対にさせません」蓮沼は断言し、谷と睨み合った末、身を翻して自席に戻った〉倒産会社に対する債権回収を阻害したという理由で、人事から「副支店長失格」の烙印を押された蓮沼は、しかし「銀行員である前に私たちは人間ですよ」とだけ言って人事部をあとにします。書名の「最終退行」とは銀行支店で最後の最後に戸締まりをして退出することを言うそうです。副支店長兼融資課長の蓮沼はいつもいつも「最終退行」となっていました。経営サイドの一員として自身の本当の思いは胸の奥にしまい込んで銀行のための人生を送ってきたのですが、すべてに踏ん切りをつけてコースアウトに踏み切ります。誤魔化し続ける人生にピリオドをうった銀行マンは、人生を賭けて何をするのか。緊迫のラストシーンで何が待っているのか。一気読みした私は、東の空に太陽が昇り始めるなかで衝撃のエンディングページを開きました。なお、電子書籍の場合、紙の文庫にはある解説が削除されているのが一般的です。しかし本書は松原隆一郎・東大大学院教授の「日本型金融システムの崩壊を背景にした社会派ミステリー」と題した解説を収録しています。得した気持になります。(2012/8/31)
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    投稿日:2012年08月31日
  • 2012年12月に実写映画化で話題のこちらの作品!マジメが取り柄のダサダサ女子高生、「昭和女」ことつばきは、高校の入学式の日、同じ名前で学校一のモテ男・椿京汰と隣の席になる。ある事件で、彼にファーストキスを奪われ、京汰はつばきを彼女にすると言い出した。はじめは京汰のことを最低最悪な奴だと思っていたつばきだけど、京汰の隠された一面を見て、次第に惹かれていく。初めての恋をすることで徐々に変わっていくつばき。京汰は過去、女性に2回裏切られたことがトラウマで女性不信になっており、「わざとマジメ女子をオトしてこっぴどく振る」という遊びを繰り返してきた。しかし、今回のターゲットであるつばきの裏表のない素顔に触れ、つばきなら信じてみてもいいと思い、紆余曲折を経て、晴れてちゃんとした彼氏と彼女に。う~ん、まずタイトルが直球でいいですよね!なんかホント……青春です(*´∀`*) 高校時代って、長い人生の中でたった3年間しかない特別な時間なので、大事にしてほしいですね。恋をするトキメキがぎゅっと詰まった高校生同士の純愛ストーリー。精一杯恋愛をして、成長していく二人の姿がまぶしいです(ノ∀`*) 少女漫画のドキドキ感を大事に描かれている作品で、とても好感が持てました。恋するトキメキを感じたい!という大人の方にもオススメです。恋愛面だけでなく、友情や勉強、進路など、高校生ならではの悩みや葛藤などが、丁寧な感情描写と綺麗な絵柄で描かれ、とても読みやすく仕上がっています。
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    投稿日:2012年08月31日
  • 島本和彦の「アオイホノオ」と同様、自身を投影した主人公が活躍する漫画家漫画。ただし「アオイホノオ」の焔燃がゴリゴリのプロ志向なのに対し、こちらの八吹ジューベエが向かうのは同人誌の世界。高校の漫画研究会の延長のような、素人っぽさの抜けないアマチュアなのです。漫画化を目指す、というよりさらにマイナー、しかも設定は80年代で、今よりもさらにおおっぴらにできない趣味の分野。青春時代にそんな世界と関わった著者ならではのけっこう赤裸々な話が興味深いです。また、著者はコスプレアイドルのはしりでもあり、女性じゃないとわからにエピソードもあって、ここまで描いちゃうのかーと思うくらい。いろんな意味でよくぞ漫画化してくれたというところです。もう時効だと思うのでついでに書いてしまうと、この著者は私の大学の先輩。で、ある日、同じ授業に出席したことがあって、そこである事件が起きて、その日から彼女(著者)の姿を学校で見なくなってしまって…。そのへんもちゃ~んと描いてくれますかね。(2012/8/31)
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    投稿日:2012年08月31日
  • 惣領冬実さんは少女漫画誌でヒット作がたくさんありますが、『ES』とか『チェーザレ 破壊の創造者』などなど、「モーニング」を読んでいる方にはお馴染みですよね。この華麗な絵。記憶力のまったくない私ですが、この短編集に収録されている作品、どれも読んだ記憶があります。どれもトラウマティックな部分をはらんでいるからでしょうか。美しいものとドス黒いものがちらほら見え隠れするような。はたから見ればごく普通の日常風景でありながら、当事者はサイコな中にいる・・・っていう世界観でしょうか。好きな方はすごくハマると思います。 (2012/08/28)
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    投稿日:2012年08月28日
  • 時は幕末、普段はなまくら侍にしか見えない荒場城一膳(あらばき・いちぜん)ですが、剣を持たせれば鮮やかに敵を斬り倒します。相手をやっつけることは、わが身を削ることと同じ、削った分は食事で補う…『けずり武士』(湯浅ヒトシ)は、勧善懲悪と江戸グルメをモチーフとした時代劇コミックです。現代のように飽食とは無縁で、豪華な料理や珍しい料理が登場するわけではありません。しじみ汁と握り飯、香々(こうこ)といった飾り気のない食事場面でも、これがすこぶる美味しそうなんです!! 荒場城は貧乏侍ゆえいつもお腹を空かせ、目の前の料理をわしわしと平らげるので、そう思わせられるのかもしれません。やはり、空腹こそ最大のご馳走でしょうか。勧善懲悪と前述しましたが、それは取次役の由麻が悪人退治の依頼をするからです。ただ、本を読み進めるうちに物語の奥深さに気付かされます。そのひとつは、荒場城の脱藩にまつわる話だと思います。身分制度にあぐらをかいて搾取するものがいれば、理不尽に虐げられる者がいることを描いた話なのですが、胸を打つ展開です。時代劇の醍醐味が凝縮された、とてもおいしい本です。(2012/8/28)
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    投稿日:2012年08月28日
  • 2012年8月の67回目の「原爆の日」は、これまでの66回とは大きく異なるものとなりました。2年前からはアメリカ政府代表が平和記念式に参列していましたが、2012年は原爆投下を命じたトルーマン元米大統領の孫のクリフトン・トルーマン・ダニエルさんが初めて参列しました。日本と戦った連合国側、特にアメリカ側では原爆投下を戦争終結のために有効な手段だったという考え方が根強く、人道上の問題としての「原爆」を直視しない風潮さえありました。そのことはノーベル文学賞を受賞したチャーチル元イギリス首相も回想録『第二次世界大戦』で率直に語っていますが、それが長い時間の経過の中で少しずつ、少しずつ変わってきました。アメリカ政府を代表して駐日大使が参列するようになったのは3年前です。今年は核保有国であるイギリス、フランス大使も参列し、そして原爆投下を命じたトルーマン元大統領の孫も広島を訪れ、遺族と手をつないで、犠牲になった人々に思いをはせたのです。それはまだ小さな一歩で、私たちの未来を楽観するわけにはいかないのでしょうが、多くの人々が「原爆体験」を語り継いできた、その積み重ねの上に刻まれた「変化」です。今回紹介する『いわたくんちのおばあちゃん』も被爆体験を語り継ごうという広島の人々の活動がきっかけとなって、被爆から60年目の夏に生まれた物語です。そして67年目の2012年8月、電子書籍になってイーブックジャパンからリリースされました。著者は広島在住の作家・天野夏美さん、絵を担当したはまのゆかさんは1979年生まれの気鋭のイラストレーター。協力者として名を連ねる岩田美穂さんは被爆体験を後世に語り継ぐボランティア活動を行っている広島の女性です。その活動の一環として岩田さんは一葉の写真――写っているのは岩田さんの母・智津子さん、父母、3人の妹たち――にまつわる母・智津子さんの体験を子どもが通う小学校の平和学習の時間に語りました。この岩田さんの話がきっかけとなって、絵本が作られたのです。だから書名は――『いわたくんちのおばあちゃん』。こんなくだりがあります。原爆爆心地近くの小学校で開かれた運動会の場面です。〈「おばあちゃんも/どうぞ ごいっしょに」/ところが/いわたくんちのおばあちゃんは/「いやーよ」/にこにこしながら そう言って/手をふって ことわる。/「そうお? どうしても おいや?」/「いやーよ」/お兄ちゃんも ごいっしょに、/こっち向いて、はい、ピース!」/カシャ!/ほーら、やっぱりね。/いわたくんのおばあちゃんは/ぜったいに/家族と いっしょに 写真をとらん。/やっぱりね。/ぼく、/いわたくんのおばあちゃんが/なんで いっしょに 写真をとらんのか/知っとるんよ。〉ここから物語は、いわたくんのおばあちゃん、智津子さんが戦後60年たったいまもなお、家族写真に一緒に入らないのはなぜなのか――原爆が広島に投下された8月6日の朝の出来事にさかのぼっていきます。父と母、4人姉妹の家族6人のうち、生き残ったのは智津子さん一人でした。〈八月六日。/ちづこさんは ひとりぼっちに なりました。/(中略)/「家族みんなで 写真をとった あの日。/でも、写真を 見ることが できたのは/ちづこさん ただひとり だったのです」〉空襲が激しくなってきた8月始め、智津子さんの家族は疎開することにして、家財道具を運び出した家に近所の写真館の人を呼んで記念の家族写真をとりました。戦後、智津子さんが大事にしてきた奇跡の一葉ですが、そこに写っていた家族は、智津子さんをのぞいてその写真を見ることなく、8月6日の朝、原爆の犠牲となりました。この残酷でかなしい家族の物語を、しかし二人の著者、天野夏美さんとはまのゆかさんは、不安を昇華させた希望の物語として、子どもたちに語りかける絵本に仕上げることに成功しています。天野さんは本書のあとがきにこう記しています。〈いわたくんのお母さんは、子どもたちに原爆の話を伝えるとき、こんなふうに結びます。「『戦争なんてずっとむかしの話』、なんて思わんでね。ひょっとしたら、『未来の話』になるかもしれんのよ。『未来』、それは、君たちみんながつくっていくものだからね」〉同感です。このあとがきの隣のページには、物語の元となった一葉の家族写真がそれぞれの名前・年齢とともに添えられています。父・重美45歳、母・光子39歳、智津子16歳、香代子14歳、裕乃6歳、君乃3歳。一瞬にして5人の家族をなくした智津子さんは、戦後、家族を、孫を得ますが、家族写真にはけっして入りません。その理由(わけ)を優しい語り口と絵によって表現した絵本。子どもとともに、ぜひ大人にも向き合ってほしい絵本です。(2012/8/24)
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    投稿日:2012年08月24日
  • あ~アツい、アツ~い。いや気温じゃないですよ、この作品のことです。夏に読むには少々暑苦しいかもしれないですが、少年漫画はこれくらい熱がないといけません。応援が生きがいのフク。応援団長としての最後の夏を終え、夏期講習のために上京したものの、新宿になぜか居つくことになり、ホストやキャバ嬢に囲まれて…。って設定はまるでネオン街漫画見たいですけど、フクはまっすぐであか抜けない純情高校生でまさに少年漫画の王道主人公。夜の新宿という地方出身の高校生の身からしたらまるで異世界を舞台に、そこに集まるさまざまな人に騙され助けられ驚き感動しながらも応援する。わずかの期間にいろんな事件が起きて、それがぎゅっと詰まってる話はやっぱり少年漫画のほうがしっくりきますね。また、この作品にはアブナイ人や気持ち悪い男、イイ女に外国人といろんな人が出てきます。それがフクと交わるとなじんでしまって、クラブ活動の付きあいのような感じになる。大人になると冷めた部分も出てくるこういう関係を、少年の眼を通してストレートに熱く見せてくれるのが心地良いです。(2012/8/24)
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    投稿日:2012年08月24日
  • 『ピース』懐かしい!(゚´Д`) 館野とお子さんも私のBL青春時代に大好きだった漫画家さんの1人です!さらっとした絵柄に、生活の一部のような淡々とした日常ストーリーで、ゆったりとした穏やかな時間が流れます。どちらかというと地味目で、エロもさっぱりしてるのに萌えはたっぷりで、読後も幸せな気持ちにさせてくれる。そんな独特の雰囲気で読ませる作風です。館野とお子さんの作品は他にも色々ご紹介したいのですが、手始めに思い出深いこちらの作品を!ヽ(*´v`*)ノ 大学生の湊は隣に越してきた先輩・溝口に口説かれ、酒のイキオイで寝てしまい、それ以来、何かとかまってくる溝口にイラつき引越しを決意するが、無理をしすぎて倒れてしまう。紆余曲折の末、本当の自分の気持ちに気づいた湊は――。うーん、青春ですね!これ、当初は1巻までしかなく、自分的にはちょっと消化不良なところもあったのですが、2巻が発売されたことで物語や二人の関係性に厚みが増しましたね~!2巻は1巻から一年後のお話です。はじめは溝口との関係に抵抗を感じていた湊も、少しずつ素直に溝口を受け入れ始めていた。人一倍体裁を気にする湊が、溝口とのことは絶対バレたくないと思っていた時、同じアパートの住人で大家の息子の桜に二人の関係を知られてしまい…二人はどう変化するのか?元々ノンケなので男同士で付き合うことにグルグル悩み、付き合っても世間体を考えふらふらしている受と、じっと待っていてくれている優しい攻。この攻は本当にいい男ですwゆっくりとしたスローテンポのストーリーで、若者の素朴な恋愛をじっくり描いています。
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    投稿日:2012年08月24日
  • 世界のあちこちに突如出現した迷宮(ダンジョン)。そこに眠る究極の秘宝を求めて、2人の少年アラジンとアリババが冒険へと旅立つ──。アラビアンナイトの世界をモチーフに描くファンタジー巨編が登場です! 迷宮ではいったいなにが待ち受けているのか? そして、アラジンがいまだ知らぬ、その身に課せられた使命とは!? 息つく間もない冒険、そして、謎、また謎…! アニメ化も決定し今秋放送開始予定という、今いちばんの注目作です! (2012/08/21)
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    投稿日:2012年08月21日
  • 放射能の影響で、チョウの羽や目、遺伝子に異常が認められたという記事を見ました。昆虫に影響が出ているようですが、大丈夫なのでしょうか……。ご紹介する『インセクツ』(杉山敏)は、巨大化した数々の昆虫が市街地にやってきて人間を襲うというパニックマンガです。恐ろしいです。防護服の研究者達が異常な姿の昆虫に襲われる冒頭のシーンから目を奪われ、最終巻の最後のページまで一気に読んでしまいました。で、何が怖いのかといいますと、次第に巨大化して凶暴になっていく昆虫なんですが、カミキリムシやバッタが人間を超えるサイズだとしたら、目にしただけでゾッとしませんか? ヤスデやムカデは現状サイズでも十分に気持ち悪い形状ですが、それが巨大化したら…うわあああああああああっっっっ!!!!! でも、この作品を読んでいて最も背筋を冷たくさせられたのは、昆虫をそんな姿に変貌させた人間です。テルバイド化学という製薬会社によるウィルス開発の失敗が招いたという風を装って、実は政府筋のとんでもない黒幕が関係しています。人が昆虫の姿を変えて巨大化させてしまう…夢にまで出てきそうな恐怖のマンガですが、こういった話は本当にマンガの世界だけであってほしいです。(2012/8/21)
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    投稿日:2012年08月21日
  • 〈心を一つにする。厳しく濃密なトレーニングにも高い集中力で取り組む。崖っぷちに追い込まれても絶対に諦めない。どんな相手にも、臆することなく普段どおりの自分を表現する。そして何より、大好きなサッカーをとことん楽しむ。これら日本の女性に備わるポジティブなパワーを、僕は「なでしこ力(ぢから)」と呼ぶ〉なでしこジャパンを率いた佐々木則夫監督は、『なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう!』の続編となる最新著『なでしこ力 次へ』にこう記しています。サッカーの聖地・ウエンブリーに8万人を超す観客を集めて行われたロンドン・オリンピック決勝。アメリカと互角の戦いの末、2-1で敗れたとはいえ、準々決勝でブラジル、準決勝でフランスを撃破、初めての決勝進出を果たしての銀メダルです。日本サッカー初の快挙であり、日本のサッカー史に残る偉業です。アメリカの監督をして「なでしこのサッカーにこれからの女子サッカーの姿がある」といわせるほどそのパス・サッカーの質は高く、戦いぶりも感動を呼びました。なでしこジャパンは、いかにしてつくられ、成長を続けてきたのか。その秘密は、内実はどうなっているのか・・・・・・なでしこたちが「ノリさん」と親しみを込めて呼ぶ、佐々木則夫監督がオリンピックに臨む直前の2012年4月に講談社より出版、時間をおかずに電子書籍化されたのが本書です。前著『なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう』出版後の2011年7月にドイツで行われたワールドカップで優勝、文字通り世界一になったところから、ロンドン・オリンピックに向かう時期を中心に綴られているのですが、特に印象的なのは、「なでしこのサッカーとは何か」を懇切丁寧に教える段階から、選手たちが自分で考え、そして考えていること、感じたことを自分の言葉で表現することを重視する姿勢に転じたところです。少し長くなりますが、引用します。2010年5月、ワールドカップ予選を控えての合宿の合間に行われた壮行試合後の記者会見で宮間選手が記者の質問に答える場面です。〈「このチームに足りないのは、自分の考えを仲間に伝えることだと思います」一部の記者は、その言葉を「遠慮なしに言いあいをする」という意味だと解釈した。だが宮間はすぐに「そうじゃないですよ」と、説明を補足した。「言いあいじゃないんです。自分はこういう意図でプレーした、とか、この場面で私にどうしてほしかったですか、とか、こうしたらもっとチームがよくなると思うよ、とか。そんなふうに、思っていることをみんなが言葉にして、共有する作業が足りないと思っているんです」宮間の説明をさらに補足すると、こういうことだ。選手はみな、先輩や監督の言うことをただ聞いているだけでは不十分だ。誰かの指示や判断に従って練習したり、試合をしたりするばかりでなく、自分自身の判断や知恵をチームに向けて発信すべきだということだ。他人の意見を自分の中にインプットするだけでなく、自分も自分の意見をアウトプットし、チームメイトと問答すること。その問答が、すなわちチーム自体に新たなインプットをもたらすことになる。なでしこジャパンは、まさしくそのようにしてチームの「集団的知性」を高めるべき段階にあった〉集団的知性。聞き慣れない言葉ですが、社会学において、多くの個人が協力したり切磋琢磨しあったりすることで、その集団自体に知能や精神が存在するかのように見える知性のことを指すそうです。北京オリンピックのベスト4の壁を破って世界一を目ざすためにはこの「集団的知性」が絶対になくてはならない要素だと考えた佐々木監督はチームの意思決定の裁量を6割程度、選手に与えるように変えたそうです。その一環として、絶対的な存在だった澤選手から中堅の宮間選手へのキャプテン変更の模索を始め、ドイツワールドカップ優勝後に実行に移しました。宮間キャプテンを先頭になでしこジャパンはロンドンに乗り込み、すばらしい結果をだしたことはご存知の通りです。ロンドン・オリンピックでなでしこジャパンが見せたひたむきさ、サッカーの質は本当にすばらしいものでした。北京からロンドンまでの4年間――なでしこの進化の過程を指揮官自身が包みかくさずに綴った本書は、サッカー戦記としてばかりではなく、組織論、マネジメント論としても傑出しています。女子力を生かすことが問われている時代の実践ビジネスの書として読んでおきたい一冊です。(2012/8/17)
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    投稿日:2012年08月17日
  • 昨今の教育現場の悲しい報道を見るにつけ、この作品の主人公、大岩雄二郎のような先生はもう絶滅してしまったのかと思います。昭和40年代生まれの私の感覚だと、たしか中学校のときに金八先生が流行りましたから、高校ぐらいまではこんな先生が残っていたんですけどね。水道が止まってしょうがなく風呂の残り湯でラーメンを作ったとか、エロ本で英語を覚えたとか、そんな話も聞きましたし、結婚前に自宅のアパートに遊びに行ったりしたこともあったし。スケベで野蛮で声のデカい、だけど心はあったか。まさに”ソーリ”のような先生には何人か巡り合ってきました。いまや漫画でもヤンキー上がりや任侠関係者、へたすると人間ですらない、という先生ばかりになってきて、時代は流れているのだと感じます。でもたまには超人でない兄貴分的な先生も見てみたくなるんですよね。先に生まれると書くくらいですから、それが本来の先生の姿なのかとも思いますし。現代ふうに設定を変えてリメイクすれば、むしろ今求められてる先生像ができあがるような気がしてなりません。(2012/8/17)
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    投稿日:2012年08月17日
  • 連載当時、社会現象をも引き起こした名作『ぼくの地球を守って』の次世代編です!ぼく地球ファンにはたまらない!これは本当に嬉しい続編です!! ぼく地球から16年後、輪くんと亜梨子(ありす)の子供、蓮が主人公の物語です。不思議な力を持つ両親に育てられた蓮が、様々な体験を通じて成長していくストーリー。輪くんと亜梨子はもちろん、月基地メンバーの16年後の姿も見られるので、当時を懐かしく思いながら楽しんで読めました。例えるなら同窓会で十何年ぶりに旧友と再会した気分でしょうか(笑)とにかく感激です!絵柄が当時と大分変わっているので、初めは違和感を感じましたがすぐに慣れました。ぼく地球はシリアスでダークな印象が強かったわけですが、次世代編はほんわかのほほん日常コメディという感じで、ぼく地球とはまた違った優しくて幸せな空気を楽しめます。大気になった紫苑と木蓮が度々現れては、蓮を助けてくれるという、ちょっと不思議なファンタジー。二人にとっても蓮は子供みたいなものですからね。背景を考えればちょっと切ないですが…。元々は前作に区切りをつけるための番外編的な単発作品として描かれたそうですが、ファンの反響が大きかったことから、さらに続編をということで、1話のみの読切り→単行本1冊のみ→シリーズとして継続、という形で現在に至るそうです。私はショタコンではないんですが当時から本当に輪くんが大好きで、辛い前世の記憶や過去の出来事を思うと、大人になった輪くんが、幸せで温かい家庭を築いていることにもう涙が出てきますね…(ノД`)。ぼく地球ファンは絶対楽しめる作品だと思うので、是非ご覧ください!
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    投稿日:2012年08月17日
  • 夏休みシーズン真っ盛りです! 昔はよく虫とりやりましたよね~。子供たちに負けてないで、久しぶりにやってみましょうかね、昆虫採集。お、早速そこに……おおお!? なにこの虫!? デカすぎて…デカすぎてカゴに入らんよ! いや、むしろ逆に採集されてしまいそうな雰囲気! これはやばい!!! このたび全4巻発売となりました『インセクツ』です。あるウイルスの実験で被験体の昆虫に異常が発生。そして巨大化した虫たちが、人々に襲い掛かります! ご覧ください、この表紙。秀逸です。虫どんどん巨大化してる!! 1巻ではカラス大。2巻では自動車大。3巻ではビルを踏んづけるほど大きくなり、4巻に至っては、もはや第10使徒レベル\(^o^)/ 5巻以降がもしあったらどうなってたんだろう~^^ それにしても、グロいです。おぞましいです。見たくもないけど、見てしまうんだよね! はい、またまたツボな漫画がきましたので、やっぱりとり上げさせていただきましたm(_ _)m (2012/08/14)
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    投稿日:2012年08月14日
  • 『火災調査官 紅蓮次郎』(原作:鍋島雅治 作画:田中つかさ)は、テレビドラマ化としても話題を呼んだ作品なので、読んだことがなくてもタイトルだけは知っているという人もいると思います。鎮火した火災現場にやってきて、出火の原因を調べるのが紅蓮次郎の仕事なのですが、その優秀さから「消防庁のホームズ」の異名を持ちます。紅は焼け跡を調べてその原因が失火か事故か放火なのかを判明させるのですが、毎回明かされる、その論拠というか科学的な証明の仕方に読み応えを感じます。また、火災そのものが非日常的な悲劇ゆえ、現場に渦巻く当事者達の感情の波に左右されることなく、いつも冷静で真実を突き止める姿が頼もしいばかりです。そんな紅の決めゼリフは「真実は必ず灰の中にある!」…本を読みながらあなたも出火の原因を探ってください。思わず熱くなりますよ!?(2012/8/14)
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    投稿日:2012年08月14日
  • ハワイに布地を初めて紹介したのは、探検家として歴史に名を残した英国海軍士官ジェームズ・クック、通称キャップテン・クックでした。1778年にキャップテン・クックがヨーロッパ人として初めてハワイ諸島を訪れたとき、ハワイでは布地らしいものといえば、ワウケの樹皮を叩いてなめし、模様をつけたタバ(カバ)か、バンダナスの葉を干して織ったラウハラマットくらいのものだったそうです。クックは1979年に先住民との争いで命をおとしますが、その後1820年以降、キリスト教の布教を目的にニューイングランドから移ってきた宣教師の妻たちによってハワイに裁縫技術がもたらされ、それとともにたくさんの種類の生地がハワイに入ってきたようです。木綿、絹、ウールなどが主だったもので、これらを用いてキルトがつくられるようになります。「ハワイアンキルト」の誕生です。本書『キルト・ストーリー』は、19世紀半ばに始まるハワイアンキルトの歴史・文化的意味からそのデザイン意匠、作り方までをコンパクトに解説した入門書です。著者の藤原小百合アンさんはオハイオの高校に留学していた時にキルトに出会い、後に大学を卒業してハワイでの生活を始めて、ハワイアンキルトに魅せられて以来、かれこれ20年以上もの間「ハワイアンキルト中毒」にかかっているという筋金入りのキルトデザイナー、キルターです。アメリカ本土のキルトが端切れを幾何学模様につなぎ合わせたピースワークに綿と裏地を重ね合わせて三層として縫い合わせるのを基本としたのに対して、気候的に温かさを重視する必要性がなく、また端切れもあまりなかったハワイでは、ピースワークができないため、1枚の生地を切って作る、現在のようなスタイルが出来上がってきたそうです。面白いのは、ハワイではもともと暖を取る必要はありませんから、キルトは実用の品としてつくられてきたわけではなく、手法の細かさからアートとして発展してきたという点です。特別な日のベッドカバー――嫁ぐ娘のために、あるいは生まれた孫のためにと代々伝えられてきた手作りのアートだというのが著者の見方です。〈伝統的なハワイアンキルトには3つの原則があります。1.2色の生地を使うこと。2.雪の結晶のようなシンメトリーのデザインを使う事。3.波の波紋のようなエコーキルトを施すこと〉もともと実用性よりも装飾性が大事とされるアートであり、それゆえある種の精神性を帯びてきます。〈伝統的なハワイアンキルトのデザインは植物の花、葉、実などが主に使われます。他には、歴史的な出来事、宗教的な要素、美的なもの、抽象物などもデザインには使われました。反対にタブーとされたのは、四足の動物や人間などのデザインです。これらはデザインに描き、キルトをしていくうちに、魂がキルトに宿ってしまうとされ、縁起が悪いものとされました〉ハワイアンキルトの最もポピュラーなデザインはパンノキ(ulu)です。パンノキはポリネシアンの人たちにとってとても大切な食料源であったのですが、大きな木にはたくさんのパンノキの実がなるところから、「成長」「グッドラック」の意味をもっており、そんなところからハワイアンキルトの標準的なデザインとして広く使われるようになったのではないか、筆者はこう推定しています。こうしたデザイン上の由来も含めて、ハワイアンキルトからは「ハワイ」の原像が見えてきます。もう一つのハワイを知ってしまった著者による『キルト・ストーリー』はそのまま、ワイキキやノースショアといった観光スポットとはまったく別の、もう一つのハワイに私たちを誘う格好のガイドになっています。そして、本の内容と同時に注目していただきたいのは、この本が紙では出版されずに、まず電子書籍として世に出たという点です。多種多様なハワイアンキルト、そのデザインの元となった花や葉の写真もふんだんに収録されています。しかもすべて、きれいなカラー画像。それがきれいなレイアウトでわかりやすく配置されています。ここでその一端をご紹介できないのが残念ですが、まず紙から出そうと考えていたらカラー写真は使えなかったのではないでしょうか。しかしせっかくのカラー画像をモノクロに変換して印刷したのでは、キルトの価値、デザインや意匠の美しさ、楽しさを読者に伝えることが難しくなります・・・・・・著者や出版者のこだわりが結実した本――電子書籍です。7月20日発売のebookjapanオリジナル書籍のハワイシリーズ、同時にもう2冊『ウクレレの誕生』『ハワイ諸島の自然』もリリースされています。(2012/8/10)
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    投稿日:2012年08月10日
  • またまた山本小鉄子作品のご紹介です!こちらは紙で発売された時『晴れてボクたちは』と2冊同時発売だった作品で、山本小鉄子ファンとしてはもちろん2冊とも購入したわけですが、内容もキャラも雰囲気も真逆な印象を受けました。『晴れてボクたちは』がウブな元気キャラに、純情ピュア全開ラブの明るい話だったのに対し、こちらはどちらかというと大人しくて色っぽい子が主役のエロスでシリアスな内容となっています。こういう暗くて重い話は小鉄子さんにしては珍しいなと思いました。小さい頃からいじめの対象になりやすい持田真紀は、自分を守ってもらうため、力を持っている強い相手に自分の身体を与え、助けてもらうという生活を送っていた。心のない割り切った関係で、身体は何度も相手に提供しているものの恋をしたことのない真紀が、高校のクラスメイトの相原に初めての恋をし、変わっていく。身体は慣れていても、好きな人としたことがない真紀は、初めての恋愛の仕方も分からずに戸惑うばかり…。晴れて~がピュアラブという話をしましたが、こちらもそういう意味で言うと不器用なピュアラブですね(ノ∀`●)真紀ちゃんはホントに乙女で、生まれたての仔牛って感じで可愛いw こちらの「恋と罠」シリーズ3篇+描き下ろしと、読み切り2作品が収録されています。個人的には読み切りの「花咲けるボクたち」が大好きだったので、あとがきで続きを描いているというのを見て、とても嬉しかった記憶があります!こちらの作品もコミックス化されてますので、そのうち配信するのかな~とワクワクしておりますo(^ω^)o
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    投稿日:2012年08月10日
  • 散歩、というか探検なのかな? 今はもう無理ですが、昔は2年ごとに引っ越しをしていて、そのたびに新居の周りを歩き回っていました。人が多く住む場所には必ず商店街があって、眺めて歩くだけでも楽しいし、ちょっと大通りを外れると、雰囲気のある喫茶店やカウンターだけのおいしいラーメン屋を見つけたりして、得した気分になったり。ワクワクしながら半年くらいかけて歩き倒したものです。そんな経験があるせいでしょうか、この作品の世界観はとても心地良いものでした。勤務中の空いた時間や休日に、主人公が歩いた都内各地。吉祥寺や井の頭公園など、人気スポットではあるけれど観光目的ではなく、あてもなく歩いておもしろそうな路地があったら横道にそれる。そこには時代にとらわれない一角があったり、懐かしきものがあったり。ただ淡々と描かれた八話の小編ですが、なかなかの掘り出しものです。欲を言えばあとがきにある中野ブロードウェイの屋上庭園も描いてほしかったですが、これを読んだ後ではあてもなくという趣旨に反してしまいますね。少し残念。(2012/8/10)
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    投稿日:2012年08月10日
  • 祝・金メダル!!! あの内村航平選手が、子供の頃に愛読していた漫画として話題になっている『ガンバ!Fly high』。いま、すごく売れてます!! 『ガンバ!Fly high』は、体操を扱っているかなり珍しい漫画で、熱血、そして超本格派! 原作は、ロサンゼルスオリンピック体操の金メダリスト・森末慎二さんで、内容は、そのまま教本になりそうなぐらいです。みなさん逆立ちってできます? やっぱり、知る人ぞ知るコツがあるそうなんです。漫画の中でとっても詳細に教えてくれますよ! ちょっと練習すれば自分にもできるような気がしてくる…! はじめは何もできない藤巻駿が、練習を重ねて少しずつ少しずつ色んな技を体得していく姿に、読んでいるほうも「できた!」って感動しちゃいます。連載終了から12年ひと回りして、いま再び注目を集める旬の漫画です!! (2012/08/07)
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    投稿日:2012年08月07日