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  • 「この作品の最後にあるのは絶望だ。」とプロローグの一節に著者が記す本というのも珍しいと思います。『さよならもいわずに』は上野顕太郎が愛する妻・キホを失ってからの数週間を克明に描いた自叙伝です。見ず知らずの他人の死というものは、なかなか共感を得にくいものですが、このマンガは冒頭からただならぬ気配を放ち続けて、最後まで一気に読んでしまいました。書名からもわかるように、ある日突然キホが亡くなってしまい、上野は余りにも大切なものを失ってしまったことに愕然とします。それは、生前のキホが「ケンタローさんが死んだら あたしは 涙と鼻水とよだれと 体中の穴という穴から水分を垂れ流して」しまうほど、お互いを心から愛し合う仲だったのですから、胸中は推して知るべしです。キホが亡くなる「たった一日」がキホと上野、そして小学4年生の娘とを「永遠に隔ててしまった」のです。鍋にはキホが作った最後のカレーが残り、娘が書いたクリスマスカードは渡す相手を失ってしまいました。続かなくてはならない幸福な日常の線がぷつりと途絶えてしまったのです。圧倒的な筆力は、まるで読者自身の最愛の人が亡くなったような錯覚に陥らせます。そして、どんな結末となるのか気になりつつ読み続けて、最後の章にやられました。ぜひ読んでほしいので詳述しませんが、見開きのカットが目に飛び込んだ瞬間に胸が熱いものでいっぱいになりました。強烈なカタルシスを感じながら、冒頭の引用文の続きを思い出しました。それは、「だがその先に希望があることを今の私は知っている」という言葉です。この作品に出合えて感謝しています。(2012/5/15)
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    投稿日:2012年05月15日
  • グルメコミックは数ありますが、『麺屋台ロード ナルトヤ』(馬場民雄)の主人公はなんと小学生です。小林斗也(トウヤ)は妹と両親との4人家族なのですが、母親が病気で入院しているため家事を手伝ううちに料理の才能に目覚めてしまいます。ふとしたことで、屋台を引く牧村成美(ナルミ)というちょっとだらしない青年と出会い、この屋台でラーメンを作ることになります。小学生だからといってあなどれません。昆布やかつお節、干ししいたけなどのうまみ物質をうまく組み合わせてこしらえたラーメンは、「懐かしくて 体の芯から暖かくなるような」美味しいラーメンなのです。そして、より美味しいラーメンをつくろうとして、トウヤは熱心に打ち込むのです。二人の屋台「ナルトヤ」は、やがて「屋台レース」に出場するのですが、ここからの屋台グルメバトルが見所満載。東京・日本橋から京都・三条大橋まで宿場で屋台競技をしながら、より多くのカードを集めた者が優勝するというもの。ヤンキー屋台や東大ラー研、源義経をほうふつさせる鞍馬小太郎など、キャラのたった者たちと腕を競い合います。なかでもトウヤが作った「さくらラーメン」がすこぶる美味そうなのです。これは、桜の木片を燃やした煙による、くんせいチャーシューが桜色のメンにのったラーメンで、澄んだスープに桜の花びらがよく似合うという屋台の風情を活かした逸品です。ラーメン通をうならせる本格コミックをぜひご賞味ください。(2012/5/15)
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    投稿日:2012年05月15日
  • さあ、ひとりのおっさん読者を狂わせてしまった罪な漫画家、タアモさんのコミックスがまた増えましたよ(゚∀゚) その名も『いっしょにおふろ』。い、いっしょにおふろって、一体…(;´Д`)ハァハァ あ、なんかもう変質者ですね。このコーナー2年以上やってきて今や完全に迷子です。さて内容ですが、このコミックスも、ときめきと切なさいっぱいな短編4つ入り。う~ん、ほんとに切ない。ぜひご一読いただきたい作家さんです。シェアしたい……この感動を! 倒置法にしてみました(*゚д゚*) ところで、おまけページに描かれているのですが、この本のカバーイラストについて担当の編集者さんから「とにかく寒そうに!! 僕があたためてあげたい(ハート)みたいな感じで!!」という指示があったのだそうです。もとから男性もターゲットに含めてつくっているのかな? よくわからないですが、バッチリやられています(●ゝω・)b(2012/5/15)
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    投稿日:2012年05月15日
  •  幕末期から明治維新、近代国家への道を歩む日本にあって、土佐の下級武士の出身ながら、日本最大の財閥、三菱グループの礎を築き上げた創始者、岩崎弥太郎を描いた作品は少なくありません。
     代表的なのは、司馬遼太郎『竜馬がゆく』(文藝春秋、全8巻、2013年6月21日~2013年8月7日配信)、本宮ひろ志『猛き黄金の国』(サード・ライン、全4巻、2006年12月22日配信)などですが、経済学者でもあった直木賞作家・南條範夫による『暁の群像 豪商 岩崎弥太郎の生涯』(上・下)は、岩崎弥太郎を激動期に現れた英傑の一人としてではなく、煌めく元勲や政府要人との接点を徹底的に利用して商機を巧みにつかんでいったこと、そしてその商才がどう研ぎすまされていったのかを描いている点に大きな特徴があります。
     若き岩崎弥太郎の商売人としての才覚を最初に見抜いたのは、奉行を批判する落書きを咎められて牢にたたき込まれていた弥太郎と同房となった瀬左衛門という商人。禁制の品を売った咎で入牢してきた瀬左衛門が取り調べもないにもかかわらず、平然として焦慮の色もないのを不思議に思って「獄から出たくはないのか」と声をかけた弥太郎は、商人の思いもよらぬ答えに少し呆れると同時に少し感心します。これが商売人としての弥太郎の原点となる出会いです。少し長くなりますが、引用します。

    〈「ご禁制などと言うものは、事実そのままに守られましたならば、とても我々商いをやってゆけるものではありません。袖の下を使えば、いくらでもおめこぼしがあればこそ、商売も成り立つのでございます」
     ふーん、そんな考え方もあるものかと、弥太郎は少し呆れると同時に、少し感心した。
    「岩崎さまのことはだいたい、存じています。お若いこと故、無理もありませぬが、短気は損気でございます」
    「しかし、私は正しいことをしているのだ」
    「正しいことをしているお積りでも、こうして牢に入れられて、いつご赦免になるのか分からぬ有様では仕方がありますまい」
    「その通りだ」
    「外におられる方々に連絡して、お役人衆に、袖の下でも何でも使って、早く出していただくようになさいませ」
    「そんな曲がったことは出来ん」
    「世の中は、曲がったこと、間違ったこと、馬鹿げたことばかりでございます。あなたさまが、それをご自分で、叩き潰(つぶ)すだけの大きな力をお持ちでない限り、それに逆らうのはむだでございます。少なくともご損でございます。私ども商人は、良い悪いよりも、損か得かで、物事を判断して参ります。それより他に方法がございません。お武家さまとて、結局、おなじことなのではございませんか」〉

     こいつのいう通りだと思ったものの、それを口に出して是認するのは忌々しい。「壁に向かって何を考えているのか」弥太郎が聞くと、瀬左衛門は「算用の稽古をしている」と答えて、「一から百まで足すといくつになるか」と弥太郎に答えを求めます。暗算を試みたものの頭がこんぐらがるばかりで一向に答えが出てこない。

    〈瀬左衛門が微笑して、
    「五千五十でございます」
    「お前は、はじめから、その答えを知っているのだろう」
    「その通りでございます。しかし私が申し上げるようにお考えになれば、あなた様にも、一呼吸の間に計算できます」
    「どうするのだ」
    「一から百までを足すとしますと、一と九十九で百、二と九十八で百、三と九十七で百、こう考えてゆけば、四十九と五十一で百まで、四十九の百ができます。これで四千九百となりましょう。後に残ったのが、最後の百と、真ん中の五十、これを足しますと、五千五十となります」〉

     弥太郎は続けて問われた一から千までを足すといくつになるかを難なく暗算して見せます。
     算用問答だけではありません。牢中生活で瀬左衛門は「自分が正しいと言う信念だけでは世の中を渡ってゆけないこと、権力と言うものはむやみに抗(あらが)うよりはこれを利用する方が遥かに得策であること」などなど、実例を以て諄々と諭します。後年、瀬左衛門は弥太郎を引き立て商人への道を歩むきっかけをつくることになります。
     岩崎弥太郎は、明治維新後に廃藩置県、藩札廃止、西南戦争に際して巨額の利益を手にし、また饗応の手練手管を駆使して明治政府を牛耳っていた大久保利通、大隈重信に取り入り、結局日本の海運を制覇することに成功します。これが大三菱の基礎となっていくわけですが、その始まりが若き日に牢内で学んだ「商売人の心得」だったというのですから、人の人生、何がどこで幸いするかわかりません。
    (2012/5/11、2018/2/20追補)
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    投稿日:2012年05月11日
  • どんなに踏みつけられへし折られても、まっすぐに空を見上げ続けていれば、いつか花を咲かせることができる。まるで演歌のような主人公・コージの生き方に勇気づけられる人は多いと思います。私はリアルタイムで読んでいた世代なもので、当時まさにそう感じていました。この作品が連載されていた時期はちょうど私が社会に出て働きはじめたころ。田舎出身のマイノリティであるコージやオキナワに自分を重ねたりしていて、未来への不安定な感情とともに存在している思い入れ深い作品です。なので、著者の訃報を聞いて真っ先に読み返したのがこの作品でした。泥臭くて暑苦しくも、一直線に心の叫びが伝わってくる力強い作風。鼻の穴とか服のしわとかどうしてここまで描き込むのかと思える自己主張の強い墨っぽい絵柄。ひとコマひとコマにやっぱり気持ちが入ってしまいますね。こんな思いにさせてくれる作品には、これからもなかなか巡り合えないじゃないかと思います。つきなみですが早過ぎるよ土田さん。この場を借りてご冥福を心からお祈り申し上げます。(2012/5/11)
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    投稿日:2012年05月11日
  • 現在連載中、今市子さんの大好きな作品!今市子さんの作品は、絵柄が本当に美しい。まるで芸術作品のようです。キャラクターそれぞれに味があり、きちんとしたストーリーの中にコメディ要素も満載で、読み応え抜群です!柏原聖は、二丁目デビューした夜はじめて本当の恋を知った。お相手は「千人斬り」と名高い二丁目の王子。でもキスをされた直後、父危篤の連絡が入り、聖はホテルを去った。ところが数日後、大人達の事情で同居することになった義理の兄・鉄平が王子と同一人物だったのだ!! 聖の母と実兄もひとつ屋根の下で過ごす生殺し生活。果たして恋は進展するのか!? ドタバタ☆ファミリーラブコメディです!ラブの部分は少な目ですが、そこはストーリーで読ませてくれます。まるでホームコメディドラマを観ているようで、本当に面白い!とにかく家族構成が複雑!! 主人公・主人公の腹違いの兄・主人公の母・母の前の旦那の連れ子の4人で同居生活…ってなんじゃそりゃ!!w そして登場人物の中でも特に目立っているのは、聖のじいちゃんズでしょう!二人の関係性も謎です。健全な関係だとは思いますが、昔何があったの!?と妄想してしまいそう…w曾じいちゃん、スラっとしててカッコいいっす☆一度読んだだけでは人間関係が複雑でよくわからないかも。二度三度読み返して理解できる作品ですね。でも読み返すだけの価値はあります!何度も読んで面白さがわかってくる、スルメみたいな作品です。3巻の人物相関図は必見です!(`・ω・´)ぜひ今市子ワールドをご堪能ください♪
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    投稿日:2012年05月11日
  • 余命一年。こう告げられたら、私は一日中ダラダラ寝て過ごしたあの日を悔み続けるだろう。やり残した事、やりたい事、会いたい人、想いを告げたい人をおそらくリストにして日数を逆算し、綿密に計画を立てて出掛ける準備をする。それを達成した日からは一分一秒をかみしめながら好きなものでも食べて残りを穏やかに過ごすのかもしれない。お金の心配なんてしないで気の向くままに旅行でもして、開き直ったように人にフレンドリーになってみたりするのだろう。でもそれは残り時間が一年だった場合。残り一日だとしたら?おそらく私は嘆き悲しみ、ごめんなさいと言うことくらいしかできない気がする。24時間はあまりにも短い。ここに、それぞれの24時間の物語がある。
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    投稿日:2012年05月11日
  • 近所のコンビニエンスストアに、やたら愛想よく接客する店員がいます。男性なので看板娘にはならないでしょうが、コンビニの店員さんというと無機質的なマニュアル対応のイメージなので、ちょっと暖かい感じがします。『コンビにマリア』(三浦みつる)のヒロイン花巻まりあは、東北の農村からやってきた明るく素直ながんばり屋さん。亡くなったばあちゃんの遺志をついで、コンビニのロージー美咲ヶ丘のオーナーを訪ねてきたのですが、縁あってこの店で働くことになります。オーナーの祖父は痴呆症気味で、妻に先立たれた主人が店を何とか軌道に乗せようとしています。長男は不倫が原因で銀行を退職して店を手伝い、次男は売れない小説家、そして三男はお気楽に素人のバンド活動をしています。そんな、ちょっとさえない感じの男ばかり5人家族の中で住み込みで働くことになるのですが、一生懸命なまりあを家族は暖かい目で見守ります。何よりも家族経営のコンビニに、まりあの笑顔が咲くことで、店の雰囲気ががらりと変わります。中でも私が好きな話は、作業員が嫌がらせのように毎度店を泥だらけにする話です。まりあが嫌な顔ひとつしない理由を問われ、泥だらけがどうして汚いかわからないと答えます。田舎でばあちゃんと毎日畑仕事をしていたと思い出話を始め、ばあちゃんが話していた回想シーンが描かれています。「(働いて)泥まみれになって 人様がら何言われようと 恥ずかしがっごどない」「こうして一生懸命 汗して働いている姿が 一番きれいなんだぁ」と、まりあに教えるのです。5人家族と店に暖かい陽だまりのような存在となって働くまりあの話を読んでいると、読者の心も暖まっていくような気がします。(2012/5/8)
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    投稿日:2012年05月08日
  • 今週は趣向を変えて、ちょっとマル得な情報をお届けしますよ~(・∀・) 『ポーの一族』、『トーマの心臓』『残酷な神が支配する』などなど漫画史に残る傑作を数々発表し「神」と崇められる萩尾望都先生。これら名作の電子書籍版ですが、実は文庫版が元本になっているのです。そのためページ数がとっても多め。これはお得です……。未読の方も、もう一度読み返したい方も、これを機に永久保存版としてあなたのweb書庫にストックなされてみてはいかがでしょうか。(2012/5/8)
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    投稿日:2012年05月08日
  • 「私、プロレスの味方です」という、直木賞作家の著書を知っている世代なら、この作品にも絶対ハマれるはず。舞台は昭和、格闘技ブームが到来する前のプロレスがおおらかだった時代。海外武者修行から帰国するも所属団体はすでに潰れており、成り行きでライバル団体のマスクマンとしてデビューすることになった男のアクションコメディです。とはいえ決してプロレスを茶化しているのではありません。血が滴り、肉が裂け、骨が軋むハードな試合場面や、興行の裏側にある大人の事情、アウトローの切なさなどを描くのが本筋。それに行き当たりばったり、意味不明なハッタリ、過剰すぎる演出などが挟み込まれる構成。娯楽要素が満載ってわけです。ドタバタもシリアスもひっくるめてこれがプロレスの醍醐味、と料理して出してくれるところが、私のような昭和からのファンにはたまりませんよ、ホント。しかしアグネスの名前の由来にはあきれましたね。ブラジルからの刺客だから…、ってそこで間違えるか! しかも実は何で間違えたかというとトホホな理由が。ま、それもプロレスですな。(2012/5/4)
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    投稿日:2012年05月04日
  • 軽い気持ちで読み始めたら面白くてハマってしまい、続きが気になって毎日寝不足になりながら読破した作品ですw100巻超えの長編ですからね…!本当に時間も忘れてドンドン読み進められちゃいますよ(笑) 昼は下着会社で働く平凡なサラリーマン、夜は関東最大の暴力団・新鮮組総長という二重生活を送る近藤静也が、恋に仕事に裏稼業に大奮闘!の極道アクションコメディ。「新鮮組」という名前からわかるように、登場人物は幕末歴史上の著名人の名前をもじったパロディなんですが、そこはギャグ漫画(笑)なので、個性的でおかしなキャラばかりです!W でも不思議なことに、読んでいるとどんどんドンの世界にのめり込んでいき、まるで本格極道の抗争アクションを目の前で見ているみたいに興奮しますっ!! 中でも私は新選組の鳴戸組組長・鳴戸兄貴が大好きで!! 鳴戸兄貴が…兄貴が…【ネタバレ】でしまった時は、ショックを抑えきれず「うおおおアニキー!!(TДT)」と夜中に泣き叫んだ記憶がw(完全にキチガイです)でもその後、鳴戸組二代目・龍宝の登場に、私の落胆していた心は完全復活しました!だって龍宝ったら、イケメンの上に鳴戸兄貴ラブなんだもの!!!!(´∀`*)妄想しないわけないじゃない!そういう腐った目線で見てる人っていないのかな!? 絶対いるよね!! そして実は鳴戸兄貴が【ネタバレ】てた時は本当に嬉しかったなあ~ヽ(‘ ∇‘ )ノ笑いあり、涙あり、人情ありで興奮度満点の長編大作なので、ぜひ長期休暇中にまとめて一気に読んで欲しい作品です!
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    投稿日:2012年05月04日
  • 池田清彦著『虫の目で人の世を見る 構造主義生物学外伝』は、奇書である。小学4年の頃に蝶の標本づくりを始め、高校生物部をへて、大学院の頃にカミキリムシにはまり、以来、日本国内のみならず、遠くオーストラリア、ベトナムなどアジア各地にまで「虫」を求めて通い続ける歴戦の「虫屋」である生物学者が、日々の「虫」との付き合い、それに関わる「人」との交流(何でも「虫友」というらしい)を徒然(つれづれ)に綴った新書版の本をそのまま電子化したものですが、ここに書かれている「虫と人の世界」が、面白い。凄まじく面白い。そもそも「虫屋」とは? 著者によれば、〈魚屋は魚を売って商売する人であり、肉屋は肉を売って商売する人であるが、虫屋は虫を売って商売する人ではない。生きた虫を売る人を何と呼ぶかはよく知らないが、虫の標本を売る人は昆虫標本商と言い、虫屋とは言わない。虫で商売をしている人は他にもいて、たとえば、研究と称するほとんど何の役にもたたないことをしてお金を儲けている人は、昆虫学者と呼ばれる。(中略)虫屋というのは虫を商売にしている人ではなく、趣味で虫を集めている人のことだと理解してくれればそれでよい。虫屋の中でも蝶を専門に集めている人は蝶屋と言い、カミキリムシを専門に集めている人をカミキリ屋と言う。〉養老孟司さんも著者と一緒にベトナムまで虫採りに出かける「虫屋」で、「虫友」だそうです。趣味に生きる人たちとしては「鉄ちゃん(テッチャン)」が有名ですが、その純度、熱烈さにおいて「虫屋」は鉄ちゃんの上をいっているかもしれません。たとえば、こんな具合です。ハノイの南西100キロのクックホンという森の中でのこと。〈フタオチョウを採るにはトラップをかけるのである。腐ったカニが一番とのことだが、これはすさまじく臭い。次善の策は水たまりに小便をかけておくことである。これも西村君(引用者注:案内役でクックホンの蝶の大家)に教わったのである。ナガサキアゲハやミカドアゲハ、スソビキアゲハ、無数のシジミチョウやシロチョウが群がる水たまりを見つけ、しめしめと思って放尿をする。待つこと数分、弾丸のようにフタオチョウが次々飛んできた。そっと網をかぶせて採る。中には網をかぶせようとする刹那に逃げる奴もいる。いきおい、こちらも網を振り回すことになる。網は水たまりをかすり、飛沫が顔にかかる。少し臭いような気もするが、自分のだと思えば気にもならない。そこへ西村君がやってくる。「フタオ、採れたでしょう。さっき細工しときましたから」「細工ってまさか。小便したの」と恐る恐る聞く私。にっこりほほえむ西村君。〉虫屋への道をまっしぐらに進み、様々な虫との出会いをしてきた著者が生涯忘れることのできない特別な日。山梨大学に赴任した著者が甲府の西にある明野村の正楽寺にオオクワガタを採りに行きます。〈黒々とした森の中に入っていく。昼間はオオムラサキやスズメバチやカナブンたちでさんざめいていた森は、魔物のすみかのように生きものの気配だけがして、老婆の手のようなクヌギの大枝からは妖気が立ち上がっていた。目が闇に慣れてくると、それらの枝の所々、多くはコブ状になって樹液がにじみ出ているような場所に、巨大なオオムカデが音もなく歩いているのが見えた。さらに目をこらすと、オオムカデの向こうに漆黒の戦車のような影がうごめくのが見え、これが目ざすオオクワガタなのであった。手のひらに載せると脚を全部縮めて死んだふりをする。見慣れている同行の瀬田さんはともかく、生きたオオクワを初めて採った私は、こうなるともうオオクワをもっと採ることしか考えられなくなる。森にすむ魔物も、恐ろしげな妖気も、下草にひそむマムシも、こわいものは何もなくなる。この日は、オスのオオクワガタを十匹以上も採り、生涯忘れられない日となった。〉他にも、ゴキブリを素手で捕らえ、ゴミ箱に捨てるまで0.8秒という、飛んでいるハエを箸でつかんだという宮本武蔵並みの技など、紹介したい話がまだまだありますが、最後に巻末に「カッパの系統と進化」と題する研究論文が収録されていることに触れておきます。報告者は「国立河童研究所特別研究員 井桁希世」。本書著者・池田清彦の別名であることは察しのいい読者の皆さまにはすでにお分かりかと思います。騙されたと思ってお読みください。(2012/5/4)
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    投稿日:2012年05月04日
  • 手塚治虫先生の業績を記念し1997年に創設された手塚治虫文化賞。先日、今年の受賞作が発表になりました。賞を主催する朝日新聞社さんが設けるサイトで、各受賞作品とコミックの表紙画像が紹介されています。ふと見ていると、一連の受賞作品の中に「あのジャンプ」というタイトル」があります。「あの」って…? さらに横には、しわくちゃになった少年ジャンプの画像が…。一体なんだろうと思い、続きを読んでみると、これは昨年の震災のとき、被災地の仙台で、子どもたちがみんなで回し読みしたという、あの「少年ジャンプ」そのものの画像なのだそうです。実際にその場に立ち会った塩川書店の塩川さんという方のコメントが掲載されていました。「子どもがマンガを読んで笑えば、大人も笑顔になる。マンガは人々をあったかくしてくれたんですよ」。子どもたちを元気づけるという偉大な仕事をなし終えた一冊の「少年ジャンプ」。ボロボロになってしまったその姿が、すごく輝いてみえます。(2012/5/1)
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    投稿日:2012年05月01日
  • 今年、2012年はロンドン五輪が開かれる年。女子バレーボールチームの出場に期待したいですね。バレーボールマンガの名作『サインはV!』(作画:望月あきら 原作:神保史郎)は、東京オリンピック開催直後が舞台と年代を感じさせる作品です。当時は、「東洋の魔女」として日本の女子バレーボールチームが世界にその名を轟かせ、空前のバレーボール人気が背景にあったようです。このマンガは、社会人チーム立木大和の天才的プレイヤー朝丘ユミが主人公なのですが、椿麻理とのライバル対決が軸となります。ふたりは元々同じチームに所属していたこともあって、負けたくないという意地のぶつかり合いによってお互いを磨きます。私が好きな選手はこの二人ではなく、ジュン・サンダースです。黒人の血を引くジュンは、幼少のころから不運な環境で育ってきましたが、持ち前のガッツで立木大和を朝丘とともに支えるようになります。しかし、不運にもジュンは難病に侵されてしまいます。ここからラストにいたるまでの、ジュンの不屈の精神が素晴らしいのです。ジュンは椿打倒に燃え、アメリカにいる母に会うため、勝利の切符をなんとかもぎ取ろうとして力を振り絞ります。ボロボロの体にムチを打って、試合に出させてくれと泣きながら訴えるジュン。そして監督の牧が「和泉にかわってジュン・サンダース!」とコールし、試合は大詰めを迎えるのですが、いやあ、鳥肌が立ちました!! 実はこの作品をまともに読んだのは今回が初めてなのですが、時代を超えて、人の気持ちを熱くさせるマンガです。いつの時代も、ナデシコは本当に強いですね!!(2012/5/1)
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    投稿日:2012年05月01日
  • 毎年、5月は新選組ファンにとって特別の月。新選組の支柱だった土方歳三が生まれ、没した月ということもあり、生誕の地である東京・日野市には多くのファンが足を運びます。日野は聖地ですからね。でも、鬼として恐れられた土方歳三や粛清に吹き荒れた新選組に対して冷たいイメージを抱いている方もいるかもしれません。『風光る』(渡辺多恵子)は、少女マンガ誌に連載中の作品ですが、男性の目にも抵抗のない絵のタッチと内容です。キャスティングや大筋は、よく知られている史実に沿った形なのですが、主役が架空の人物富永セイです。長州藩に対して、父と兄の仇を討つ目的で新選組に入隊したセイなのですが、実は女性。もちろん、隊には自分が女であることを隠しています。セイの世話係の沖田総司とセイの二人を中心に物語は進みますが、全体として爽快でありながらコミカルなシーンも散りばめられ、新選組につきまとう冷たいイメージを払拭しています。そして、前半の見どころは、やはり池田屋事件。この場面で沖田が持病で吐血、こん倒することは知られた事実ですが、この作品では沖田が敵の刃に倒れたとばかり思い込んだセイが鬼神のごとく剣を振りかざします。今後、新選組の終焉が物語ではどのような展開で描かれるのか、非常に注目したいところです。男性にも、ぜひおすすめします。風光るような季節に読み始めてみてはいかがでしょう。(2012/5/1)
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    投稿日:2012年05月01日
  • イーブックジャパンの人気小説の一つ「三姉妹探偵団シリーズ」や「三毛猫ホームズシリーズ」、「セーラー服と機関銃」など多くのベストセラー、ロングセラー作品で知られる赤川次郎のユーモア小説の傑作が、今回紹介する『上役のいない月曜日』です。五つの作品を収録した短編集ですが、もともとは『幽霊列車』でオール読物推理小説新人賞を受賞して1976年に作家デビューを果たした赤川次郎が3年後の1979年に「週刊文春」に連載した小説を集めた本で、表題作と『徒歩十五分』、『禁酒の日』の三作品が第83回直木賞候補になっています。受賞したのは向田邦子、志茂田景樹で、赤川次郎については選考委員の源氏鶏太が「三作のうち、『徒歩十五分』がいちばんよかったのだが、何としても軽過ぎた」と評していますが、以降、赤川次郎は「軽い」作風を武器に大ヒットを連発、大多作作家になっていったのはご承知の通りです。人気ミステリーとはひと味もふた味も違う味わいの短編集『上役のいない月曜日』は、働くサラリーマンやOLの悲哀や日常の出来事をユーモアにくるんで軽いタッチで描く、もう一つの赤川次郎の世界の原点となった作品です。とくに表題作――「上役のいない月曜日」という設定がいい。赤川次郎は作中でこんな会話をさせています。〈「土曜の夜と日曜の朝」という映画があった。これが一日ずれて、「日曜の夜と月曜の朝」となると、「最低の気分」の同義語になる。だが、この日ばかりは――「最高の月曜だなあ!」長谷川はゆっくりお茶をすすった。「偶然とはいえ、珍しいですね」と寿子が言った。「十年来初めてだよ! こういう時に羽をのばさなきゃな」「何かあったらどうします?」「何か、って」「課長の決裁を仰ぐようなこと・・・・・・。その時は誰が代理するんですか?」「さあね、課長と名の付く人が一人でも来てればともかく、誰もいないとなるとね・・・・・・。でも大丈夫さ。何もあるはずないよ」〉休暇や急な病気などですべての課長が不在となった月曜日朝のオフィス。おまけに社長からも「頭痛がするから休む」と電話連絡があったから、管理職全員が不在という事態。典型的なサラリーマンとOLがお茶をすすりながら、上司のいない気楽な気分に浸っている時、電話が鳴った。「M文具を告発する会」の会長を名乗る女性からで、「いまからお伺いする」とだけ告げて、すぐに電話は切られた――この電話を合図にしたかのように、「最高の月曜日」は文字通り「とんでもない一日」に一変していきます。上役のいない日に限って次々と起こる「とんでもない出来事」に困惑する社員、OL。「とんでもない出来事」が重なり合って事態をさらに混沌とさせていくあたり、サスペンス風ドキドキ感もあって楽しませてくれるのですが、ここではトラブルの詳細にはふれません。ただ、窮地に追い込まれた時に、しぶとく、頼りがいのあったのはOLたちで、男はどこか逃げ腰で、責任逃れのホンネが見え見えなところは、いかにも赤川次郎らしい風刺が効いています。直木賞候補作の表題作を始め、信じられないほど贅沢三昧の九州出張を終えて帰社したら、自分の席に見知らぬ男が座り、自分は辞表を出して退社したことになっていた――30歳のサラリーマンを襲った不可解な出来事の顛末を描く『花束のない送別会』、公団の分譲住宅に引っ越した翌日、つまり新居からの初出勤の日、偶然出会った隣人の車に同乗したため、帰宅時に駅から徒歩15分が不案内で団地内を歩き回り、住民の思わぬ事件に巻き込まれて午前4時に帰宅するまでを描いた『徒歩十五分』(表題作とともに直木賞候補作にあげられた)、やはり直木賞候補作の『禁酒の日』、そして『見えない手の殺人』の5つの短篇を収録。いずれもサラリーマンの日常を風刺の効いた切り口で描く秀作です。(2012/4/27)
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    投稿日:2012年04月27日
  • アニメに続きテレビドラマも始まって、見た人も増えたってことで、ようやく書くふんぎりをつけました。自分が初見で感じた驚きをこれから読む人に先入観なく感じて欲しかったのですが、もう書いてもいいでしょう。私が読んだときは、解説に「殺人ゲーム」なんて言葉があっても、ちょっと萌えっぽい絵柄に、ほわんとしたタイトルだから…、と常識的な見当をつけていたのです。でもそれは大間違いでした。この作品、私が今まで読んだ漫画の中で5本の指に入る凶悪な漫画といってもいい。主人公・雪輝の仮想世界に居るはずだった神=デウスが仕掛けた、未来を予知する日記を巡る12人によるサバイバルゲーム。勝ち残れるのはたったひとり。味方も信じられない闘い、というのはよくある設定ですが、特筆すべきは雪輝の絶対的な味方である由乃という女性。彼女がこの作品のキーパーソンであり、めっちゃクセモノなのです。こんなヒロインみたことない。イッちゃってるどころではない。具体的なことはばらさずにおきますが、首が飛んだり串刺しになる描写よりよっぽど怖い。心して読むべし。(2012/4/27)
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    投稿日:2012年04月27日
  • これまた懐かしい!大好きな作品です!!数年前に実写映画化されたのも記憶に新しいですね。高校卒業後、恋人同士になり、一緒に暮らす立花と大谷。同じ大学に通う二人の前に、ある日、高校の時の同級生・ゆきが現れる。以前から、立花とゆきの仲を疑っていた大谷にとって、それは面白くない再会だったが…。本当に普通の子達の恋愛と日常なんだけど、不思議な魅力があります。女の子がうまく物語に絡んでくるBLは面白い!というのが自分の中で鉄則なんですが、紺野けい子さんの作品はまさにそれ。クリニークの「ハッピー」とか懐かしいなあ~^o^ 紺野けい子さんの作品はどこかオシャレで、等身大のカッコよくて可愛い男の子達が出てくるので大好きです。1巻は同棲中の大学生編、2巻は時間が遡って高校生編です。私は2巻の高校時代の話の方が、大学時代の話により深みが増したようで好きでした。あの過去があって、現在の二人がいるんだなと。まだ友達同士だった二人が、徐々に恋に落ちていく…やっぱり過程はいいですね!BLの醍醐味だと思います^ω^「オレのこの愛の言葉の数々に、いつか言霊が宿るといい――」言葉には言霊が宿るといいます。言い続けていればいつか叶うとか。言葉にはそれだけの力があるのですね。紺野けい子さんの作品はどれもモノローグが詩人っぽくて、魂に直接訴えかけるような、はっとさせられる言葉が沢山あります。心にすっと入ってきて、妙に納得させられて、読後は幸せな気持ちになれるんです。個人的には1巻の「世界の果てまで」という読み切りも好みでした!とにかく全部オススメなので是非読んでみてください!^^
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    投稿日:2012年04月27日
  • 会社に新しくコミックスが届いてないか、発売が予定されてる漫画が並ぶ本棚に「タアモ」の字を探すこの頃。この漫画家さんが描く女の子が衝撃的にかわいいのです。こういう仕事をしながら、今までなんとか折り合いをつけてきたのですが……二次元の女の子って、いいね!! ストーリーもすごく面白い! 仕事中、完全に現実逃避しながら、タアモさんは男性が読んでも絶対おもしろいと確信しました。少女漫画の枠を超えた漫画、ではなく、王道のようなザ・少女漫画だと思うのですが、男性もムリなく受け入れられるストーリーばかりだと思います。この漫画家さんなんか違うぞ~と、初めて読んだ時から思っていたのですが、新たに別のを読んだところ、完全にハマりました。『ライフル少女』と『あのこと ぼくのいえ』という作品ですが、実は現在eBookJapanでは未発売で、来月(5/25)eBook版の発売を予定しております。この2作は本当に素晴らしかった…!! 絵もかわいかった…!! もう、紙の本でもいいから買っちゃって!! できれば来月まで待って!! 今年のイチオシ少女漫画です。現在扱わせていただいてるコミックス2冊をぜひ先にチェックしてみてください。(2012/4/24)
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    投稿日:2012年04月24日
  • 開業が間近とあって、東京スカイツリーの名をひんぱんに耳にします。タワーが立つ下町界隈には、大勢の観光客が押し寄せそうですね。『あんどーなつ 江戸和菓子職人物語』(原作:西ゆうじ 作画:テリー山本)は、浅草にある和菓子屋・満月堂を舞台に職人を目指す安藤奈津(あんどう・なつ)の物語。元々は洋菓子の職人を目指していた奈津なのですが、縁があって満月堂のベテラン職人の梅さんたちの元での修業が始まります。和菓子作りに魅せられた奈津のひたむきな姿と明るくて人をひきつける優しさから周囲の人々に応援され、「なっちゃん」と愛されています。梅さんも真剣に応援するが故に、時にはなっちゃんに厳しく接します。特に印象的なのは、なっちゃんが作ったあんこを梅さんが失敗作だと叱責する場面。「捨てるのだけは勘弁してください。悪いのは私なんです!!」となっちゃんは、梅さんがあんこを廃棄しようとするのを止めます。そして、誰もいないところで「ごめんなさい…すみません…」とあんこに謝りながら、泣いて食べます。思わず「なっちゃん、がんばれ!!」と応援したくなる、下町の職人気質と人情味あふれる作品なのです。東京スカイツリー見物の前に読んでおくと、より一層下町めぐりが楽しくなりそうですよ。(2012/4/24)
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    投稿日:2012年04月24日
  • あらためて、ああだこうだとここで書く必要もないほど有名な野球マンガなのですが、野球に興味のない人のためにもと思い、『キャプテン』(ちばあきお)を紹介します。本作のファン同士が語るときに、よく取り上げられるのが、「どのキャプテンが好きか?」だと思います。舞台となる墨谷二中には谷口、丸井、イガラシ、近藤の歴代4人のキャプテンが登場しますが、それぞれのキャプテンがしっかりと個性を持っているので、興味が尽きないテーマです。私が好きなキャプテンは、イガラシ。熱い闘争心を持ちながらも状況を冷静に把握し、正しいと思ったことは相手が誰だろうと堂々と口にする性格の持ち主、それがイガラシです。なによりも、小さな体から繰り出される速球が、強豪チームの大きな選手をきりきり舞いさせるシーンに胸をすく思いをします。中学や高校野球のチームは、監督や指導者次第でチームカラーや強弱がはっきりすることがよくあるようです。墨谷二中の場合、キャプテンがけん引して選手自身が強いチームになろうと自発的に努力します。もともとは普通の少年たちの集まりが、頂点を目指そうとするのですから練習も度が過ぎるほど猛烈になります。でも、自分たちで律しているところが面白いのです。野球を詳しく知らなくても、感動場面が随所にあふれる野球マンガです。(2012/4/24)
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    投稿日:2012年04月24日
  • 〈「来月、また来ますよ」私は言った。「そう、来月ね」母は笑顔を見せたが、私が誰であるかも、来月来るというがそれがいつのことであるかも判らない風であった。十時にくるまが来た。「じゃ、おばあちゃんも元気で」私が言うと、「もうお帰りですか」母は玄関まで送って来た。土間に降りようとしたので留めると、「では、ここで」と母は言って、玄関の上り框の上に立っていた。くるまに乗る時、母の方へ眼を遣ると、母はこちらに顔を向けたまま、両手で襟を合わせていた。一生懸命に襟を合わせているといった、そんな仕種に見えた。着物の乱れを直して送ろうと思っていたのであろう。これが私が見た母の最後の姿であった。〉昭和の文豪・井上靖は自伝的作品『わが母の記』三部作の、3作目にあたる『雪の面』に、母との別れの時を静かな筆致でこう書き残しています。アフガニスタン、イラン、トルコの旅から6月末に戻った井上靖が、夏を過ぎてようやく郷里の家に母を見舞った9月のことです。半年ぶりに同じ屋根の下に二泊した井上靖と89歳になる母。二人は明日東京に帰るという前夜、こんな会話をします。〈「雪が降っていますね」母は言った。雪など降っていないと私が言うと、非を咎められでもしたように神妙な顔になったが、こんどは声を低くして呟くように、また、「雪が降っていますね」と、同じことを言った。私は母を寝室まで送り、自分はそこにはいらないで洗面所へ行った。雪が降っていよう筈はなかったが、洗面所の窓を開けて、戸外を覗いた。戸外は暗かったが、空の一部には星が見え、裏庭の叢ですだいている虫の声が聞こえていた。私は二階の部屋に戻る途中、母の寝室を覗いた。寝床は敷かれてあったが、母はそこにはいらないで、昼間の母のように炬燵の前に坐っていた。(中略)私は母の錯覚が何によって引き起こされたか、それを知ろうと思って、母の前に坐ったのであったが、私が口を開く前に、「雪が降っていますね。一面の雪」と、母はまた言った。「雪が降っているような気がするの?」「でも、降っていますもの」「雪なんて降っていない。星が出ている」すると、母はそんな筈はないといった表情で何か言おうとしていたが、いい言葉が思い浮かばないのか口を噤み、暫く間を置いてから、「ほら、雪が降っています、ね」恰も戸外の雪の音にでも耳を傾けているようなしんとした表情で言った。私も母を真似て耳を澄ましてみた。戸外からも、家の内部からも、何の物音も聞こえていなかった。〉もう四十年以上も雪の夜を知らないはずの母。その脳裡にはかつて暮らした地の記憶があるのか。旭川、金沢、弘前・・・・・確かめるように聞いていく井上靖に、母は「みんな忘れてしまいましたね。惚けてしまって」と言う。「もういいの、思い出さなくても」母が昔のことを思い出そうとしている表情や、首をかしげたり、顔を俯けて自分の膝の上に目を落としたりしている仕種に、何か懺悔でもさせられているような虔(つつま)しさと痛ましさを見た井上靖は母に昔のことを思い出させる権利はないと思い至ります。『花の下』で80歳の母を初めて書き始め、85歳のときに『月の光』を、そして89歳の母を『雪の面』に――老い、壊れていく母を見つめた作家が綴った『わが母の記』三部作。家庭の事情から、幼くして父や母と離れて祖母(実際には曾祖父の妾で、血のつながりはなかった)の手で育った井上靖と妻、孫、そして兄弟姉妹たち――井上家の人々は、自らの記憶を消していくように壊れていく老母(祖母)にどう向き合っていったのか。井上靖没後21年の2012年、井上靖自身が「小説とも随筆ともつかぬ形で母の老いた姿を綴った」という作品は、原田眞人監督の手によって映画化され(4月28日公開)、再び脚光を浴びています。「老い」をどう生きるのか、親と子の絆とは? 私たちに突きつけられている永遠のテーマを抑制のきいた文章で綴った名編です。(2012/4/20)
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    投稿日:2012年04月20日
  • 話題沸騰の都道府県擬人化ギャグコミック!! ストーリーと4コマの両方でお届けします★チーム関東を皮切りに、チーム北国、チーム中部、チーム関西、チーム中国、チーム四国、チーム南国、と47都道府県すべてが出演♪ それぞれの県の特徴が上手く擬人化で表現されていて、これを読めば県民性が一発でわかります!(^◇^)ギャグセンスも抜群で、読みながら「あ~なるほどね~」と納得しながら本当に楽しく読めますよ(*´∀`)例えばチーム関東では…東京は俺様な傲慢キャラで、みんなの憧れの存在。でも他の県には意外と無関心。チーム関東での千葉と埼玉の熾烈な第3位争い(1位:東京、2位:神奈川は不動)。千葉と茨城は互いに「ちばらき」と同一視されるのを嫌う。などw 他にも、チーム関西のチーム関東への敵対心や、チーム北国の皆さんはシャイ揃い(ただし宮城だけは例外)、でもみんな酒豪!などなど、すっごいわかるwwwわかって楽しい!!(●^o^●)特に私の地元は北国・秋田なので、地元の話とか出てくるとテンション上がりますっ!! 関東では、エスカレーターで歩く人は右だけど、関西では逆だとか。。そういえば修学旅行で関西に行ったときにそんな話聞いたことあった!とか思い出しながら読んでました。ちなみに秋田ではそんな概念自体がないですけどね(笑)田舎なので人も少ないですし…。とにかく各都道府県に色んな発見があって、日本ってこんなに楽しい素敵な国なんだ!って再確認できます。I love JAPANの心得!いかなるときも「ジャポニズム」を胸に生きるべし!日本人なら必見ですよ~☆みなさん地元を愛してますか?必ず郷土愛に覚める素晴らしい作品です!
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    投稿日:2012年04月20日
  • この本、北海道テレビ制作のバラエティ「水曜どうでしょう」のファンならどう思うかな? なんて、わりと疑問を感じながら読んでみました。だって、目次をざーっと見たところ、番組のディレクター2人が、温泉に行って酒を飲みながら語り合っている体の構成にしか見えなくて、これをどう料理すれば表紙に書いてある「もうひとつの水曜どうでしょう」になるんだと。#1ではいきなり宗教の話をしていて、正直、「これどうなんでしょう」てなもんです。しかし「温泉の発想」という項目あたりで、がぜん興味が出てきまして。ぐいぐい押し始める藤やんに、もの静かながら急に的確なことを言ううれしー。徐々に2人のキャラクターが出てきて、楽しい番組を作るのに不可欠な信頼や愛情、阿吽の呼吸も行間からにじみ出てくるんですよね。そうそう安田くんはそういう扱いだよねとか、大泉洋のすごいのはそこだよね、とまるで自分もその場にいるかのようにうなずいてしまいましたよ。制作側から見たらあの番組はこうなんだろうなあ。なので「もうひとつの~」というフレーズは認めましょう。(2012/4/20)
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    投稿日:2012年04月20日
  • これはめちゃくちゃおもしろいです! 表紙の主人公とか、パッと見、どぎついヤンキー漫画を想像させますが、ハッキリいって中身はサワヤカな青春漫画! 主人公が数年ぶりに生まれ育った町に帰ってくるところからストーリーは始まります。ケンカ最強でちょっとバカキャラのハルト、ごくごくフツーなバイクオタク高校生・トモキ、外見が怖すぎて誤解されまくりの不器用な男・ケンジ。元・親友の、この3人が再び出会い、それは熱い友情ストーリーが繰り広げられていきます。くそー、こいつら……かっこいい! この漫画のテーマは「友達っていいね!」だと思います(笑) ときにもらい泣きしながら、一気読みしてしまうおもしろさ! 今年いちばんのオススメ漫画です!!!(2012/4/17)
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    投稿日:2012年04月17日