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  • 2014年春、しりあがり寿が紫綬褒章を受章して話題となりました。おめでたい限りです。しりあがりの代表作といえば、『ヒゲのOL薮内笹子』『エレキな春』等のギャグマンガが知られていますが、『あの日からのマンガ』を忘れるわけにはいきません。出版当時にも大きな話題となりましたので、「あの日」が2011年3月11日を指すことはわざわざ説明が不要かもしれませんが、あらためてこの本を読むと、胸をどきりとさせられることばかりです。この本の構成は「朝日新聞」夕刊連載でもお馴染みの4コマ漫画『地球防衛家のヒトビト』と7篇のショートストーリなのですが、いずれも「あの日」が題材です。それで、何にどきりとさせられたかというと、「あの日」に驚き、悲しみ、目の前が暗くなり、そして祈ったことが自分の心の中で風化しつつあったことです。いずれもの作品が、ギャグタッチながらもシリアスに「あの日」に多くの日本人が感じたのではないかという、当時の気分が描かれているようです。後ろ向きに生きるわけにはいきませんから、忘れてしまうこともあります。しかし、「あの日」を境に決して忘れてはいけないことが、現出したことがあると思うのです。この本は、忘れてはいけない貴重な資料的な側面も備えているようです。(2014/5/16)
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    投稿日:2014年05月16日
  • 著者の辻原登は最新刊『寂しい丘で狩りをする』のとびら裏に掲げるエピグラフ(銘句)として、ヘミングウエイの『青い海で―メキシコ湾流通信』から次の一節を引いています。〈たしかに、狩りをするなら人間狩りだ。武装した人間を狩ることを長らくたっぷりと嗜んだ者は、もはや他の何かに食手を動かすことは決してしない。〉この銘句は、「寂しい丘で狩りをする」というタイトルとあいまって重要な意味をもつことになるのですが、ここではこれ以上言及することは控えます。さて、ヘミングウエイのエピグラフのあと、本書はある判決文から始まります。〈主文 被告人を懲役七年に処する。但、未決勾留期間日数中百六十日をその刑に算入する。 理由 [罪となるべき事実] 府中刑務所を仮出獄の後、東京都中央区晴海に事務所のある落合建設で住込みの建設作業員をしていた被告人(引用者注:押本史夫(ふみお))は、平成二年(一九九〇)二月十九日、大雪で都内の交通機関がマヒする中、午後十時頃、日本橋交差点付近で、タクシー待ちの長い列の前にいた野添敦子(当時二十六歳)に声を掛け、同女の帰宅先が江東区東陽町であることを知ると、自分も東陽町だと詐って、合乗りを提案した。同女は快くこれに同意し……(中略)午後十一時十五分頃、四ツ目通り東陽二丁目交差点付近の区立東陽図書館前でタクシーを降りると、被告人は同女と別れ、いったん反対方向へと歩き出したが、同女が東陽図書館の角を曲って姿が見えなくなるやただちに引き返し、同女のあとをつけた。その間に被告人は上着のポケットに入れていた作業用の軍手を左手にはめている。被害者が自室のあるファミリーハイツ東陽への近道で、いつも利用するコミュニティ広場の林の中にさしかかったとき、被告人は被害者の背後から襲いかかり、軍手をした左手で口を塞ぎ、右腕で頸部を強く絞めつけて失神させた上、三十メートルほど離れたファミリーハイツ東陽のゴミ集積所に引きずり込んだ。さらに被告人は、姦淫中の性的快感を高めるため、付近に落ちていた電気コードで被害者の頸部を強く絞めつけるなどの暴行を加えて強姦した。その際、被害者に全治二週間を要する頸部縊創等の傷害を負わせるとともに、財布等の入ったショルダーバッグ一個を窃取し、その二日後、強姦したことを種に金員を喝取しようと企て、被害者に電話を掛け、「あんたの秘密を十万円で買ってくれ。あんたの出方次第では、強姦されたことを会社の人に言うよ。警察に言えばどんな目に遇うかしれんぞ」などと言って脅した。 被害者は失神していたため、警察に行くかどうか悩んでいた矢先、先に述べたような被告人からの脅喝電話によって事実が明らかになり、警察に届け出た。(後略)〉求刑10年に対し裁判官は7年の刑を科し、検察官、被告弁護人とも控訴せずに刑が確定。平成2年(1990年)10月15日、押本史夫は福島刑務所に収監された。それから7年――平成9年(1997年)4月26日(土)、押本史夫が福島刑務所を出所した。その情報は、野添敦子の依頼をうけて福島刑務所を見張っていた横浜の探偵事務所の女性探偵・桑村みどりによってもたらされた。張り込みを始めて6日目だった。問題は、押本が被害者である野添敦子に対し「仕返しをする」と繰り返し公言していたことでした。公判の場でも、検察官の「約束とは何ですか」との質問に対して「警察に届けないという約束です。約束したんですから、私は彼女に裏切られたんです。この仕返しは必らずします」と答えています。福島から東京へ出た押本は、野添敦子に対する「狩り」を開始します。探偵・桑村みどりは尾行を続けますが、押本は狡猾な手段を用いて転居先をたどり始め、数日後にはあと一歩というところまで肉薄していきます。追いかける男と逃げる女の間の緊迫、戦慄が本書の見どころですが、それは野添敦子と押本史夫の一組だけではありません。野添敦子を守ろうとする探偵の桑村みどりもまた、以前付き合っていた男から執拗に追われているという恐怖を人知れず抱えこんでいるのです。桑村みどりを追いかけるのは、久我(こが)春彦。父親は高名な洋画家で東京芸術大学教授。写真家で代官山に小さなデザイン事務所を持っていた。貴種に生まれたのに、それを周囲が認めてくれないと鬱屈した思いを抱えている男ですが、初め久我は文句なく優しかった。だがその優しさは仮面にすぎなかった。みどりをうっとりさせるセックスのあとに、一転して攻撃的で下劣な行為を強要しはじめた。言葉尻を捉えて、執拗に彼女を責めつづけ、反論しようとすると物を投げつける。空手の心得のある久我は、みどりの鳩尾(みずおち)に突きを入れて気絶させて彼女を抱く。煙草の火を乳首に押し当て、髪を切る。しかたなく、彼女が美容院で短く切り揃えて出社したとき、上司がおっと声を上げ、なつかしげに目を細めて、セシル・カットだねといったこともある。みどりは何度も別れようとした。その都度、久我は泣いて詫び、もう二度と暴力をふるわないと誓った。僕をそこまで怒らせるのはきみだけなんだ。それぐらい深い愛だと知ってほしい。しかも、彼には別に女がいた。一ヶ月前、みどりはこっそり下丸子から根岸のアパートに引っ越し、久我から行方を晦ましたつもりだった。その久我から買い換えたばかりの携帯電話に連絡が入った。以来、みどりは久我というモンスターの影に悩まされるようになります。「肉体をカメラのレンズで削りに削って、最後にあの女のからだの芯が剥き出しになるまで、撮り倒す」久我は別れる条件に「ヌード」を撮らせることをみどりに迫ります。ひたひたと近づいてくる押本から逃れる道を探す野添敦子と、久我の影におびやかされながら、敦子を守ろうとするみどり。みどりと敦子の切羽詰まった会話――。〈「追われている者は、追いかけてくる人間を前方に捉えることができないけど、でも、追いかけているほうはつねに前に向かって、敵の背中をみながら進んでくる」「でも、その追いかける人間は、あなたに尾行されている」「そうなの。だから、この勝負はいまのところフィフティ・フィフティかな。ただし、追いかける側が追いついてしまったら……」敦子は、放心したようなまなざしを、テーブル脇に飾られた模造の牡丹の花のほうへさまよわせた。(中略)「いま、野添さんは、押本から逃れることしか念頭にないでしょ。……逃げるというのは、先程も言ったように敵に背中をみせるということです。でも、いつか背中をみせるのをやめなければいけないときがくる。向き直って、正面から対決しなければならないときが……。わたしはそのときまで野添さんをフォローしないといけないんじゃないかと考えはじめたんです」「なぜ、なぜそう考えるんです?」みどりは視線を落として黙り込み、返事をしなかった〉黙り込んだみどりの視線はどこに向かうのか。久我に追われる女でありながら、敦子を追う押本を追っているみどり。みどりを結節点に四人の女と男がクロスして、事態は思いもかけない結末に向かって一気に動き出します。初出は講談社の文芸誌『群像』連載(2013年1月号~11月号)、2014年3月に単行本が書店平積みになるのとほぼ同時に電子書籍化された、芥川賞作家・辻原登の最新刊。クライム・サスペンスの秀作です。(2014/5/16)
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    投稿日:2014年05月16日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    痛快!美麗!そして、至純。
    「修羅の子」雪はひとり、どこに行ったのだろう―?幻の続編があったことを知り、本編を読み終えてすぐに手に取りました。
    今度のお雪は復讐を遂げ、若者の健康な成長のためスエーデン式体操を教える教師になっていたのでした。
    美しく優しい鹿島先生は女生徒にも大人気で、この辺りは嵐の前の静けさというよりも、小池さんと上村さんからの雪へのプレゼントとも思えました。袴にリボン、ニッカボッカーと、さらにファッショナブルな雪を楽しめるのも嬉しい限り!
    実は若者にスエーデン式体操を広めようという動きには、国民のための福祉国家を作るという理想があったのでした。それを崩壊させんとする権力との闘いに巻き込まれていく雪。つかの間ではあってもある女性運動家との友情を育み、非業の死を遂げた彼女らのために白刃を閃かせる姿が美しくも痛快。今回の雪は純真さ、優しさをやや強く打ち出しているように思いました。
    世の中が危険な「かつて来た道」を辿ろうとしている今、色々な方に読んでほしい娯楽作です。
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    投稿日:2014年05月15日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    修羅の華!!
    生まれ落ちた時から両親の怨念を託され、凄腕の刺客として殺しを請け負う謎の美女・修羅雪。とにかく彼女の美しさから目が離せません!!楚々とした佇まい、流れるような剣技……上村一夫の描く雪は激しくも艶やか。浮世絵や絵巻物を思わせる画面にはうっとりすること請け合いです。そして雪がクールなだけに、時として人の情けに涙する姿にグッときます…。エロスとバイオレンス満載ですが、決してそれだけでは終わらない、魅力的な時代劇です。
    • 参考になった 0
    投稿日:2014年05月15日
  • 匿名希望
    いい
    よかったとおもいます
    何回も読みたいです
    ぜひ読んでください
    • 参考になった 0
    投稿日:2014年05月13日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    懐かしくも新しい
    私が小学生のころ読んでいたあさりちゃんが完結したことを知り、懐かしくなり購入しました
    割と新しい巻を何冊か購入したのですが、私が読んでいたころよりも絵柄が今風でした
    ハイスクールあさりちゃんの美大和くんが気になる!恋愛マンガになってて、ぜひ続きが読みたいです
    100巻完結のようですが、まだ99巻までしか刊行されてないようで、最終巻の刊行を楽しみにしています
    • 参考になった 1
    投稿日:2014年05月13日
  • 決め顔が決まらないのにかっこいい
    表紙を見ていただいたらわかる通り、主人公がなんとも言えない顔です。
    作中では“カエル面”と言われたり、舌を引っ張られたり、なかなか散々な扱いをされます。
    それもシリアスな絵柄で描かれるので、ギャグのようでいて真剣なバトルが魅力的な作品です。

    主人公、風助は“忍空”と呼ばれる武術の使い手。
    忍空とは、忍術のような空手のような、それでいて自然に認められないと使えないちょっと不思議な武術。
    この作品は、同じ武術を学んだ仲間とともに過去を背負い、未来へと歩いている途中を描いたストーリー。
    離れ離れになった仲間を探しに行ったり、まったりと川に流されてみたり。

    台詞が無いコマで自然やギャグを表現することが多いので、
    ちょっとまったりしたいけどバトルな熱い要素も欲しい、熱く深くなりすぎず読みたい、そんな人におすすめです。
    • 参考になった 1
    投稿日:2014年05月13日
  • インド人は毎食カレーを食べているという話を聞いたことがあります。そんなはずないだろと思いませんか? だとしたら日本人は、ほぼ毎食テリヤキを食べていることになります。だってそうじゃないですか。醤油と砂糖で甘っからく味付けしてある料理って結構あります。牛丼とか、きんぴらごぼうとか、煮魚とか。言うなれば日本の味付けのスタンダードです。それを外国の人が食べて「日本の料理はほとんどテリヤキ味だな!」って思われたら、ちょっと悲しいですよね。みたらし団子だって外国の人からすれば、きっとテリヤキの仲間入りですよ。「日本じゃティータイムもテリヤキだったぜ!」ってなもんですよ。まぁ何が言いたいかというと、外国の文化を本当の意味で理解するのは極めて難しいってことです。どうも、ご清聴ありがとうございました。さて本作『ニッポンのリア先生』です。日本の中学校に赴任してきたアメリカ人のリア・ブライト先生がいろいろな日本文化と触れ合う物語です。非常に興味深く読ませていただきました。このマンガを通して、改めて日本文化の奥深さに気付かされたような気がします。そして悲しいのが本作が1巻完結という点。もっと読みたいと思いました。
    • 参考になった 0
    投稿日:2014年05月13日
  • 匿名希望
    金がもったいなかった・・・・
    面白いのは前半のみ・・・・中盤は地震で後半はアイデア無しの恋バナ~つまらん
    • 参考になった 2
    投稿日:2014年05月12日
  • 真性孤立特異点である自己意識としての私
    夏目漱石の『こころ』を読んでいるときだった。高校二年のときだった。
    そのことに気がついてしまったのだ。


    どうしようもない真性孤立特異点として
    自己同一の独房に幽閉されている
    〈わたし〉


    03.10
    08.06
    08.09
    08.15
    的時空間に晒され
    自己同一も糞もありゃしねー
    と呻くような〈わたし〉




    ゆらいでいる
    〈わたし〉
    がいることを。

    漱石は
    私が
    そういう
    世界にいきつくことに
    気がついていたのだ
    と私は思った。

    先生の愛と自死は、
    そんな〈わたし〉としてある自己意識の寂寥に由来するものだろう。それは寂しいなんてもんじゃない。
    あの当時
    国家や天皇への殉死ぐらいを持ってこなかったら埋めようのない寂寥。
    多分家族愛は破綻していた漱石のこの時期だから。

    モーツァルトにはまだ音楽という宇宙があった。
    バッハには音楽を捧げる神があった。
    ベートーベンは最後に人間をいや人類を信じることができた。

    カフカは?

    カフカは、
    自己自身の自己同一性を
    信じようとしたカフカは、
    それが無惨にも瓦解していると審判され、無限遠点にある城への軌道を歩かされ、
    しかも断食芸人の笑劇を演じさせられ、
    そして一匹の毒虫を仮装させられ
    死に絶えた。

    復活も
    救済も
    ありはしない。

    リセットさえ
    許されない

    やはり
    あいつは
    神の子に
    いや
    大工の子に
    すぎなかったのだろう

    であるならば
    こんな私たちに
    何が残され
    何ができるというのだろうか

    泣きながら
    歌い
    笑い尽くし
    あなたを
    とことん
    愛すること
    いがい
    何ができるというのか

    漱石の
    こころ

    そんなことを
    思わせる
    • 参考になった 1
    投稿日:2014年05月09日
  • いやあ、最近は優しい作品が多いですね。人が人を思いやり、思いやりがゆえに傷つけてしまう……。そんな、ナイーブな作品が話題になるので僕もよく読んでいるのですが、どこか違和感を感じています。プランクトン男子と呼ばれた“俺の中の獣性”(そんなものがあったんだ!)が、ナイーブ作品をどこか鼻で笑っているのです。
     この『ナポレオン ―獅子の時代―』を読むと、思いやりとか人を傷つけないとか、どうでもよくなってきますね。ホント。なにしろ男も女も、自分の欲望に忠実な、サイコーにファッキンな野郎しか出てこないのです。 その中でも最も欲望が強いのが主人公のナポレオン・ボナパルト。フランス革命に乗じて徐々に頭角を現す彼は、ぶっちゃけフランスのことなんてどうでもよいと思っています。彼が求めるのは、ただひたすらに名誉と栄華なのです。それまでの王制では決して出世することができなかったナポレオンは、フランス革命の混乱に乗じて出世していくことになりますが、このフランス革命の描写もすごい。
     様々な政治派閥が割拠し権力者がくるくる変わる状況のなか、たくさんの血が流されます。みんなが大好きなロベスピエール(童貞)が、その清廉さ故にたくさんの人を殺し、恨まれ、結局は処刑されてしまうテルミドールのクーデターは大スペクタクル。結局その後釜となったのがポール・バラスという、女とお金が大好きというクソ野郎というのも皮肉です。そんな内憂外患なフランスで、ナポレオンは対外戦争の勝利という功績をもって、軍人としても政治家としても出世していくのです。
     ナポレオンの覇道を支えるのが一癖も二癖もある将校たちです。「マッセナは奪うのだ!」と略奪大好きなマッセナ。小男のちんちくりんで非常に細かい性格をした参謀・ペルティエ。上半身素っ裸で自分のことを「おり」というオージュロー。ベッドの上と馬の上以外ではボンクラな伊達男の騎兵・ミュラ。重厚な身体と性格、そして禿頭が特徴の「不敗のダヴー」などなど。どいつもこいつも人の生命・財産など、どうでもよいと思っている奴ばかり。そんな人間的にはどうしようもない彼らが、美しい戦争芸術をやってのけるのです。
     なかでも惹かれるのがランヌという将校。他の将校と比べて、真面目な性格をしています。しかし、その実直さは度を越していて、一旦糸が切れてしまうとどんな残虐な行為もできてしまう男です。部下からは「絶対この人は変だ」と言われながらも慕われています。
     エジプト遠征の時のランヌとナポレオンのエピソードは秀逸です。ナポレオンの妻ジョセフィーヌは敵国イギリスの新聞にも書かれるほど、放蕩生活で有名な女。遠征先のナポレオンは気が気ではありません。ランヌはナポレオンに「俺と女房は 愛で結ばれている 俺にとって女房が世界一いい女だ」と持論を述べます。そんな、彼にも、現地民が反乱を起こし、絶体絶命の最中にさらに最悪な連絡があります。「フランスから……女房に子供ができたそうだ」彼らは戻る手段もないエジプト遠征の最中。1年も会っていません。ナポレオンとランヌは言います「結論――女なんてクソだ」「そうだ」この描写になんともいえない笑いを感じました。
     彼らは戦争という大きな国家の問題も自分の女の問題もすべて“自分の欲望”という一つの土俵で考えているのです。この『ナポレオン ―獅子の時代―』が描いているのは個人の欲望です。清廉潔白な思想も、「法律は守れ」と叫ぶ男たちも、「マッセナは奪うのだ」という叫びも、それは彼らの欲望から生まれたもの。だから揺らがないし、魅力的なキャラクターとなっていくのです。
     授業では教えてくれない、欲望から見たフランス革命とナポレオン史を学べる稀有な漫画です。人々の欲望の連続こそが歴史なんだったんだ!
     
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    投稿日:2014年05月09日
  • 「70%オフ」「ポイント10倍」・・・値引きしなければモノ(商品)が売れない状況が続いています。その時代に登場した『100円のコーラを1000円で売る方法』(中経出版刊)という、目からウロコのような書名の本が静かなブームとなっています。『100円のコーラを1000円で売る方法2』、『100円のコーラを1000円で売る方法3』とシリーズ化され、この4月25日には三冊の内容をコンパクトにまとめた図解版もリリースされました。コミック版、ミニッツ版も出ています。著者は日本アイー・ビー・エムで長くマーケティング施策を担当している永井孝尚(ながい・たかひさ)氏。ビジネス現場での経験に裏打ちされたマーケティング理論を大学卒業10年のイケイケ女子を主人公とする物語に仕立てあげたところが、類書にはない本書のユニークなところです。巻末には各章で展開されているマーケティング理論についての短い解説とその裏打ちとなっている参考文献が紹介されています。これを見れば、MBA(経営学修士)レベルのマーケティング理論のエッセンスが面白くてわかりやすい物語を読み進めるうちに自然に身についていく最適の入門書だということがお分かりいただけると思います。今回はシリーズ第1巻の『100円のコーラを1000円で売る方法』を中心に見ていきます。宮前久美――新卒で会計ソフト会社に入社、数ヶ月の新人研修を経て地方にセールスとして配属。以来10年間、営業の最前線で大型案件を次々にまとめ、その実績をひっさげて東京本社の商品企画部に異動した本書の主人公は、もともとワンマンプレー傾向の強い自信満々型。営業最前線で実績を積み上げてきた自分ほど「顧客」を知り抜いた人間はいないという強い自負を持っています。対する商品企画部の与田は、部長の信頼厚いマーケティング理論家。「与田スクール」と呼ばれる勉強会を主催しています。正式名称は「商品企画部ナイトスクール」で、商品企画部のほとんど全員が参加。新商品企画はこの場でプレゼンをして与田の賛同が得られなければ企画承認にならないという重要な位置づけになっていて、この場での宮前と与田との間で繰り広げられる議論が、最新マーケティングの考え方のレッスンとなっていくという仕掛けです。転勤初日、部長に言われて宮前久美は会議室で開かれた与田スクールに参加します。「事業とは何か」がその日のテーマでした。宮前久美にとっては10年間の営業経験からわかりきった自明のことで、内心何をいまさらと思った彼女と与田の間で何が始まるのか。少し長くなりますが、以下に引用します。〈「ではみなさんに質問します。当社の事業って何だと思いますか?」何人かのメンバーがそれぞれ自分の意見を述べていった。久美は首をかしげながらしばらく黙って聞いていた。だが、そのうち我慢し切れなくなったようで、手を挙げた。「商品企画部って、いつもこんなことやっているんですか?」参加者は一斉に久美のほうを見たが、久美はかまわず質問を続けた。「10年間ずっと現場でセールスとしてお客さんと接していた私からすると、顧客視点から見たウチの事業なんて当たり前すぎて、何を今さらって感じなんですけど──」いつもは和やかな与田スクールの雰囲気が一変した。だが、与田は一人だけ動じることなく、逆に久美に問いかけた。「なるほど、当たり前ですか。では、宮前さん、その当たり前だという答えを、差し支えなければ教えてくれますか?」「はあ」久美は大きくため息をついた。「ウチの事業は、〝お客さんのお役に立てる会計ソフトを開発して、提供すること〟に決まっているじゃないですか」そう言って久美はそれまで開いていたノートをこれ見よがしにパタンと閉じると立ち上がった。「この勉強会、ちょっとだけ期待していたのに、正直言ってがっかりです。部長、せっかくお誘いいただきましたけど、次回からの参加は遠慮させていただきます」帰り支度をはじめる久美を見ながら、今度は与田がため息をつく。「ふっ。なるほど、やっぱり思ったとおりの退屈な答えでしたね。0点です」そのひと言を久美は聞き逃さず、帰り支度をしていた手をピタッと止めた。「気のせいかしら? 0点って聞こえた気がするんですけど――」「あ、ちゃんと聞こえなかったようですね。もう一度言います。0点です。わかりやすく説明すると、あなたの考えは、きわめて、とても、すごく“あ・さ・い”ってことです」与田からあからさまにバカにされ、久美は頭に血が上った。「”あ・さ・い”ですって? 失礼ね! ウチは会計ソフトの会社。だからお客さんの役に立つ会計ソフトを提供する。どこが間違っているんですか!」「幼稚園児でも考えつきそうな答えです。とても10年間もの経験を積んだ方の意見とは思えない。そんなことを言っている会社は確実に潰れます。まっ、帰るのでしたらご自由に。私が出席してくださいとお願いしたわけじゃないですから」久美の顔が怒りでみるみる赤く染まった。「もう全然わかんないわ。“お客さんのためになる会計ソフトをつくって提供する”という考えのどこが間違っているんですか!」与田は腕時計を見ながら、少し厳しい口調で言った。「宮前さん。あなたはもう5分もみんなの時間を使っているんですよ。この勉強会には、仲間が貴重なプライベートの時間を割いて参加しています。私はあなただけを相手に話しているわけじゃない。何も学ぶつもりがないのなら、どうぞご自由にお帰りください。ただ、わからないことをちゃんと教えてもらいたいと思うのなら、黙ってそこに座りなさい」〉与田はなぜ、宮前久美の答え――「お客さんのお役に立てる会計ソフトを開発して、提供すること」を0点と断じたのでしょうか。幼稚園児でも考えつきそうな答えだ、そんなことを言っていたら会社は潰れるとまで厳しく指摘したのでしょうか。お分かりになりますか?与田は正解へと導くプロセスとして、アメリカの鉄道会社が衰退していった理由をメンバーに示します。〈(与田は〉先ほどからずっと自分をにらみつけている久美の前で立ち止まった。「宮前さん。さっき、『ウチの事業は、お客さんの役に立つ会計ソフトと開発して提供すること』だっておっしゃっていましたね」にらみ返す久美の視線を軽く受け流しながら、与田は言った。「アメリカの鉄道会社も、宮前さんのように『ウチの事業は、お客さんの役に立つ鉄道サービスを提供すること』だと考えたんです。だから、自分たちの問題じゃないと考えた。その結果、鉄道会社は衰退していったんです」〉自分たちの事業は「輸送事業」ではなく「鉄道事業」と考えていた鉄道会社の人たちが、鉄道の利用者が鉄道以外の輸送手段を使うようになっても、気にしなかったというわけです。良い鉄道サービスを提供することが自分たちの使命と考えるかぎり、顧客がどんどん飛行機や車に乗り換えていくことの意味を推し量ることはできません。そこからアメリカの鉄道会社は輸送市場の「敗者」となってしまいました。「製品志向」にとらわれていた宮前久美は、ここで市場志向、つまり顧客中心の考え方の一端に触れることができました。そして本格化する与田との闘いを通して、顧客満足のメカニズム、値引き戦略といったマーケティング理論のステップを積み重ねてついに大ヒット商品を生み出すに至る久美の成長。それはそのまま、読者であるあなた自身の成長です。マーケティングの奥深い世界に挑戦してみてください。(2014/5/9)
    • 参考になった 2
    投稿日:2014年05月09日
  • 「気になるんだよね。藤代さん系って。」真面目で一生懸命。テストも頑張っても平均点。いわゆる、どこにでも居る、“普通”の女の子、藤代さん。ある日、同じクラスで隣の席になった、成績優秀なのに遅刻・サボりの常習犯・久世くんから話しかけられ、なにかと構ってくるようになります。自分とは全然違う考え方も行動も、藤代さんの良い所で面白いと言ってくる久世くん。誰にも見てもらえなくても、一生懸命に頑張る藤代さんがけなげでかわいいです。メガネを取れば実は美少女とか、痩せたら可愛くなるとか、お化粧をちょっと施せば大変身!という少女マンガ的どっきりはどこにも出てこず、本当にただただ平凡で“普通”の女の子とマイペースS系男子久世くんとのやり取りが面白いです。
    • 参考になった 2
    投稿日:2014年05月09日
  • 匿名希望
    面白いが
    内容的には非常に面白い!
    でも40巻で半年分って?高校3年間だと200巻超え・・・驚愕
    後30年ぐらい読まないといけないって・・どうよ?
    • 参考になった 3
    投稿日:2014年05月08日
  • ネタバレあり
    美しきかな♪
    樹要さんの絵柄に惚れ込んでいるので、許してしまうのですが、
    ストーリーとしては物足りなさが漂います。

    幾つか含みのある台詞が見受けられるのですが、
    そのことについては本編ではそれ以上触れられないという。

    花降楼の顧問弁護士さんに「玉芙蓉は元気ですか?」などと尋ねる場面とか、
    「岩崎家とは手打ちになったけど、岩崎本人はどうだか・・・・・・」という思わせぶりな台詞とか。

    調べてみると、原作「花降楼シリーズ」では、様々なペアが主人公で描かれており、
    その内の一組が綺蝶&蜻蛉でした。

    なので、原作の方を読めば、岩崎さんのその後も、
    玉芙蓉と弁護士さんのお話もきっと知ることができるのでしょう。

    私は、北之園家のじいさんに会いたかった。
    明らかになった綺蝶の出生の秘密!
    色子上がりの孫を引き取ることにしたじい様。
    孫が愛する色子・蜻蛉も一緒に引き取ってしまうじい様。
    樹要さんが描く、そのじい様に会いたかったww
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    投稿日:2014年05月08日
  • 主人公が食事をしながら「食べること」に関する自問自答を繰り返すという、分類するならば「食マンガ」なのですが、驚くべきことに読むと食欲が失せます。ブタ肉を食べながら「うまいか?ブタの死体は」などと自問自答する食マンガなんてあります? 斬新すぎるでしょ……。「鬱」ごはんというタイトルに偽りなしです。なかでも14話は強烈で、読んだ人に強烈なトラウマを残す可能性があります。みんな大好きなあの食べ物が……ああ思い出すだけでゾワゾワと……。しかしその穿った「モノの見方」こそ、「サナギさん」や「オンノジ」等で独自の言語感覚・世界を繰り広げた施川ユウキの真骨頂と言えましょう。主人公の自問自答は哲学的かつ思索に溢れ、普段何気なく行っている「食事」について(ある意味どうでもいいことを)これほどあれこれ考えられるのかと、ちょっと感心してしまいます。
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    投稿日:2014年05月07日
  • 縁は切るもの繋ぐもの
    縁結びの神様コトリが修練のため、人間の世界で聡香(さとか)の家へ居候したことから始まる日常を描く。
    この作品の良さはなんといってもコトリの天真爛漫さだ。ただ軽い気持ちで笑顔を振りまくのではなく、複雑なもの、相対するものすべてを理解する、理解しようとしたうえでそれでも笑顔を絶やそうとしないそんなキャラクターが魅力的な作品。
    私は少しフルーツバスケットの本田透と重ねてみているのかもしれない。
    本編の物語は、雑誌休刊のあおりを受け終わったのか終わってないのかわからない結末にはなってしまったが、できることなら彼女たちのその後もぜひ見届けていたい作品だ。
    ※eBookJapanでは他の電子書籍店にはないカバー裏、カバー下を収録しています。素敵な絵を描く人なので全て堪能してください。
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    投稿日:2014年05月06日
  • 匿名希望
    あーウザかわ 犬飼くん
    とてもウザくて、とても前向きな犬飼くん
    いつの間にかこのウザったい犬飼くんが、可愛く見えちゃう受け。ありがちなストーリーですが、
    面白楽しく見させていただきました。エロもエロいです。やっぱり個人的にリーマン好きです(^^)
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    投稿日:2014年05月05日
  • ネタバレあり
    ダラダラどんどんつまらなくなる
    面白かったのは1巻だけ。1巻につられてポイントがお得な全巻購入したが、
    後悔。すごく後悔。中だるみ感、24巻もいらない内容が薄い。イライラする。
    何もないところでコケる、交通事故、妊娠のお決まりパターンで、
    本当に時間もお金も損した。1巻ずつの購入をオススメします。
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    投稿日:2014年05月04日
  • 神奈ちゃんと愉快な総合タワーリシチ
    神奈ちゃんの入学した高校の総合学科はヘンテコ揃い。だけど、みんな運動に美術に裁縫に音楽にそして勉強に何かしらのオンリーワンを持っていて、何でもできる子だと思ってた神奈ちゃんはそんなヘンテコさん達と一緒に高校生活を過ごしながらそこそこ何でもできる自分を見つめ直すのでした。ふん!だからってあんなちゃらんぽらんな人間にはなりたくないわ!と彼女たちの一挙手一投足にツッコミを入れるのも神奈ちゃんの役目。総合科の同志(タワーリシチ)たちの日常はとてもドタバタと騒がしいのです。
    ※eBookJapanのコンテンツには、他にはないカバーやカバー下のコンテンツまで余すところなく収録されています。
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    投稿日:2014年05月04日
  • う~ん
    リンかけ「1」扱いなので特に前半にカットや台詞改変などが多いです。
    旧JC版で台詞を丸暗記するほど読み込んでいた身にはちょっとつらい。
    まあ後半は多少の台詞変更があるくらいでほぼ旧版通りなので星3つにします。
    将来的にオリジナル版の電子化を希望します。
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    投稿日:2014年05月03日
  • 匿名希望
    立ち読みで十分
    手軽さを売りにしてる割には実用的じゃないレシピが多い気がする。経営するコワーキングスペースで行列ができたって触れ込みだけど、あんな狭い所でやれば行列はできるの当たり前だと思う。
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    投稿日:2014年05月02日
  • 匿名希望
    なんか……
    最後の展開が「は?」っていう感じで腑に落ちないというか、納得できない、という感じでした。
    そこまではとてもよかったです。
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    投稿日:2014年05月02日
  • 〈「なあ、細川君。野球で一番おもしろいといわれているスコアがいくつか、知ってるか」突然、青島にきかれ、細川は首を傾げた。「さあ、私はあまり野球には詳しくないので。三対二ぐらいの試合でしょうか」「八対七だ」青島はこたえた。「ルーズヴェルト大統領が、もっともおもしろいスコアだといったというのがそもそもの起源でね。ルーズヴェルト・ゲームだ」「ほう。打撃戦ですね」細川は、四対四のままのスコアボードを眩しく見上げながらいった。「ここからさらに三点と四点をそれぞれ取り合うわけですか」「だが、どう得点するかによって試合の印象はまるで違う」青島はいった。「一点ずつ取り合うシーソーゲームもいいが、私としては点差を追いつき逆転するところに醍醐味を感じるんだ。一点ずつそれぞれが加点して四対四になったのではなく、最初に四点取られて追いついたから、この試合は余計におもしろい。絶望と歓喜は紙一重さ。まるで、なにかと同じだな」〉直木賞作家・池井戸潤の『ルーズヴェルト・ゲーム』の一節です。3月にリリースされて以来、ジリジリと売上げを伸ばしてきた話題の本で、先日連続ドラマの放送も始まりました。物語の舞台は、ビートルズが来日した昭和41年に創業者の自宅ガレージで産声をあげ、オイルショックなどの荒波にもまれながらも、年商500億円、社員1500名、派遣労働者を含めれば1700名の従業員を抱える電子部品の中堅企業に成長した青島(あおしま)製作所。引用中の「青島」は創業者の青島毅(たけし)会長。ドラマでは山崎努が演じています。「細川」は5年前、外資系コンサルティング・ファームにいたとき取締役営業部長にヘッドハンティングされた細川充(みつる)。2年前に青島から指名され、生え抜きの役付役員を飛び越して青島製作所社長の座につきました。唐沢寿明演ずる理論家の若手経営者です。絶望と歓喜は紙一重――。青島と細川が野球場の応援席で交わした会話には、池井戸潤の作品作りのエッセンスが凝縮されています。細川は大口納入先からの仕入れ大幅削減の申し入れに直面、業績低迷、収益力の低下を危惧するメインバンクからは融資の条件として大幅リストラを迫られるという経営上の大ピンチに立たされています。一方、かつては都市対抗野球の東京都代表の常連で歴史ある青島製作所野球部も細川の代になって力を落とし、再建途上にあります。シーズンオフに監督が主力選手を引き連れて宿敵のミツワ電器に移ったあと、無名の新監督を迎えて一からの出直しのシーズンが開幕したところです。ミツワ電器は野球部のみならず、本業でも青島製作所の前に立ちはだかるライバル企業で、青島の技術力に及ばないという判断の下、青島の納入先に対し優位な資本力を背景に価格引き下げ攻勢をかける一方、細川に提携(吸収合併)を働きかけます。さらに秘密裡に未上場の青島製作所の株主を籠絡して経営権を掌握しようと画策しています。かつてない苦境にあることがはっきりして、大幅な人員整理が避けられない以上、いかに名門の野球部といえども、年間3億円もの経費がかかるとあってはもはや聖域ではなく、廃部論が浮上してきています。絶体絶命の窮地に追い込まれた青島製作所。奇跡の大逆転[ルーズヴェルト・ゲーム]はあるのか――。会社の存亡を左右する開発の責任を負いながらも技術者魂を守り通して安易な妥協を拒む技術者、その頑なともいえる姿勢を否定することなくひたすら待つ細川社長ら役員たち、そして野球部監督、選手たち、応援を買ってでた社員たちがそれぞれの人生を賭けて奇跡の大逆転に挑んでいきます。野球部部長を兼ねる取締役総務部長の三上文夫(みかみ・ふみお)は人員整理を断行する立場にあります。その三上が人知れず試みた「挑戦」のエピソードです。〈製造部から解雇候補者の一次リストが上がってきたところだ。製造部は、いうまでもなく青島製作所の中心部門であり、抱えている社員数は最も多い。リストアップされた解雇候補者数は約百五十人。総務部の仕事は、この中から最終的に退職勧告すべき者と社員として留め置く者との振り分けをすることだ。部下に仕事を振る前、とりあえず三上は自分で人事ファイルを当たり、果たしてこの者たちを本当に整理対象としていいか、それを検討してみようとした。リストから無作為にピックアップしてみる。真鍋和孝、二十九歳。府中第一高校卒。派遣会社を経て、三年前から正社員──。リストの上位にある男だった。製造部の所感曰く、〝勤務態度に熱意がなく、コミュニケーション能力にも疑問がある。スキルアップも期待レベルに程遠く、当社にとって必要な人材とはいいかねる〟。「コミュニケーション能力か……」ひとりごちた途端、そういえば以前、製造部で喧嘩した奴がいたな、と思い出した。仕事のやり方を巡ってライン長と若手がとっくみあいになった事件だ。確かあのときの若手が真鍋じゃなかったか。案の定、真鍋の人事ファイルにはそのときのレポートが挟まっていて三上の記憶が正しいことを告げていたが、呆れたことに、製造部の真鍋評は、そのときのレポートの受け売りに近かった。レポートを作成したのはグループ長の今西で、喧嘩の当事者だ。喧嘩の相手が都合よくまとめたものが果たしてフェアといえるか? それをろくな検証もせず解雇理由に挙げてくる製造部の評価態度も問題ではないか。リストラの人選がそんな杜撰であっていいはずはない。「真鍋にだって家族がいるんだぞ」人事ファイルによると、一昨年結婚して、今年の一月、赤ん坊が生まれたばかりだ。(中略)三上は、人事部がいままでに行った様々な研修や技能講習での真鍋の成績を見てみた。「悪くないじゃないか」いや、それどころか優秀だ。一方、真鍋にダメ出しをした今西のほうは、研修結果を見ても種々問題が多い。好き嫌いで解雇リストになんか挙げられたんじゃ、たまったもんじゃない。生真面目だが熱血のところがある三上は、舌打ちをひとつ洩らすと、「真鍋和孝」の名前を赤ボールペンで強く消し、真っ先に解雇リストから外したのであった〉通り一遍、深い検討もなく「たかが工員」と数合わせの切り捨てを図ろうとする製造部のリストを前に、切られる側の立場になってやれるのは自分だけだ。人事システムを運用する自分は所詮、組織の歯車かも知れないが、組織のために回る歯車であると同時に、それは社員に寄り添う歯車でもありたいと思う。そう考えた三上は、ただちに人事課長を内線で呼んで、製造部があげてきた解雇リストを全面的に見直すように命じます。三上は総務部長としてリストラの指揮をとる一方で、野球部の部長として銀行からも突きつけられる「廃部論」とリストラのはざまで悩み抜きます。生真面目な熱血漢の姿・・・・・・。熱くなって思わず「頑張れ」と声をかけているシーンが少なくとも4回はありました。そんな積み重ねの先にどんな「奇跡の大逆転」が待っているのか。絶望と歓喜は紙一重の池井戸ワールド。「グラウンドでひとつに!」を合い言葉に、青島製作所の男たちが巻き起こす[ルーズヴェルト・ゲーム]にとっぷりとつかってください。(2014/5/2)
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    投稿日:2014年05月02日
  • またまた東村アキコ先生の作品ですが、こちらの『かくかくしかじか』はいつも通り面白いのに、切ない、とっても胸に来る作品です。女性漫画家版『まんが道』を想定した自伝エッセイ漫画とのことで実話に基づいて描かれており、やっぱりなぜこの作家さんにみんな惹かれていくのかが、分かってしまったような気がしました。なんといっても恩師の「日高先生」がどんどんと影響力が出てくるのですが、ほんと、時間がたたないとわからない、感謝ってありますよね。今思うと「恥ずかしすぎる!」という若かりし頃の言動の数々。ああ!先生、先輩、お父さん、お母さん、こんな私を許して!と叫びたくなる時があります。あの時なんで私はわからなかったんだろうって、そんな気持ちを代弁してくれている作品です。ダメな時の自分を包み隠さず東村先生が描いているので、本当に自分もそうでした!と漫画家を目指してはいませんでしたが、本当にそう思いました。そして今を頑張ろう!と元気をもらえるそんなマンガです。東村アキコ作品を読んだことがない方のきっかけによい作品なのではと思いました。
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    投稿日:2014年05月02日