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  • 「故郷は遠きにありて思うもの」…故郷を持つ人なら、一度や二度はこのフレーズを噛み締めたことがあるのではないでしょうか。たまに故郷に帰ると、その暖かい居心地に、Uターンして田舎に住もうか、なんて惑わされますからね。近藤ようこの名作『遠くにありて』は、遠くから故郷を思うのではなく、東京から故郷に帰った主人公が、東京への憧れを捨てきれずに田舎暮らしを続けるお話。中山朝生(あさみ)は東京の大学を卒業したものの、希望する職に就けなくて、故郷の私立高校の教壇に立つことになります。自分の夢への再チャレンジを期して、教師は一時的な腰掛けと思いつつ葛藤の日々を過ごすのですが、その揺れ動く心の機微が実に丁寧に描かれています。アパートの大家である老婆と同級生の男性とのふれあいとを中心に物語が進むのですが、この老婆…おばあちゃんが素敵。達観したような笑顔を絶やさずに一人暮らしを続けています。やがて三人は、落ち着く場所へと、向かいます。後半、中山が家族と一緒にアルバムを見ながら家族についてポツリとつぶやく言葉に、ぐっと胸に沁みこむように癒されました。五月病がなかなか治まらない人にも読んでほしい、心のクスリのような本です。(2015/6/12)
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年06月12日
  • 故ゴシャール教授による世界標準のリーダーシップと経営の指南書
    目の前にある日々の雑務に忙殺され、本当に自分がすべき重要なことができていないと感じる人は少なくないのではないか。本書では、そうした個人の状況を「アクティブ・ノンアクション(行動的な不行動)」と呼ぶ。そしてその状態から脱し、「アクション・バイアス(行動によって物事を成し遂げようとする姿勢)」をもって「目的意識を伴う行動」をするための方法論を紹介。その中心になるのは、モチベーションを超えた「意志の力」を育むこと。経営者として個々のマネジャーの「意志の力」を発揮させ、組織の推進力を得るにはどうしたらよいか、著者らの調査をもとにした具体的な方策を、豊富な事例とともに紹介している。なお、本書は2005年に刊行された『意志力革命』(ランダムハウス講談社)を再編集したものである。
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    投稿日:2015年06月12日
  • ケーススタディは経営学の最強スキルである
    予期せぬ「ありえない」事象のことを「ブラックスワン(黒鳥)」と呼ぶ。企業経営の実務や理論でも、ブラックスワンといえるような事実や法則が判明することは決して珍しいことではない。アカデミックな経営学の世界では、そうしたブラックスワンは統計分析ではなく事例研究によって発見されることが多い。本書では、具体的な「ありえない」事例(ケース)を挙げながら、現在、学術研究の場で行われている手法をわかりやすく紹介。さらにそれを実務に役立てる方法にも言及している。本書の各章で紹介されているケースはいずれも『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル(AMJ)』掲載論文から選ばれる「ベスト・アーティクル・アワード(最優秀論文賞)」の受賞作。AMJは、世界でもっとも権威があるとされるマネジメントの学会「アカデミー・オブ・マネジメント」の学会誌である。
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    投稿日:2015年06月12日
  • 児童書のような読みやすさ
    算数・数学がこれでもかと盛りだくさんの話です。
    でもあとがきで作者さんがおっしゃっているとおり、小難しい感じはしません。
    こういうジャンルなのに、読みやすさはピカ1です。

    人らしさを育てたい・・・そんな教育理念のもと、
    社会や道徳の授業が増えた代わりに理数学習が極端に減ってしまった、
    そんな日本。
    それに異を唱えた数学の奇才が反旗を翻します。
    このあらすじだけで、数学がもりもり出てくるのだろうなと予想されるでしょう。

    そのとおりです。
    しかもタイトルの“浜村渚”は数学大好き少女。
    数学の授業が消えてしまったため、得意な科目がなくなってしまった少女。

    でも、目線は数学が苦手な刑事です。
    それがまた数学が苦手な自分とリンクするので
    刑事とともに「なるほどなるほど」と思ってしまうところに
    読みやすさ、というよりは親しみやすさがあるのだと思います。

    ストーリーの展開にとても驚くような仕掛けはないのですが、
    不思議と「面白い」と思ってしまいます。
    まだ活字というものに慣れていないし数学も得意ではないという中学生あたりが読むと
    「本って面白い!人に何かを教えるって楽しそう!」
    と思ってもらえるのではないでしょうか。
    もちろん小難しい本を読む方で数学が苦手な方にもオススメしたい作品です。
    • 参考になった 1
    投稿日:2015年06月11日
  • 注意が必要です。
    大変好きなシリーズです。発売からずっと買い揃えました。
    基本的に一冊完結ですが、話が盛り上がり、最後の巻が、さぁここからクライマックスに行くぞという期待感を持たせたまま、作者様がご病気でお亡くなりになられ、シリーズとして未完となっています。
    多くの謎を残したまま終わってしまったシリーズです。その謎を想像するのも面白さの一つかもしれません。
    面白さでは星5ですが、未完のままですので星4にいたしました。


    • 参考になった 7
    投稿日:2015年06月11日
  • 匿名希望
    黒塗り多数
    小さな写真だけでなく、半ページ載ってるようなコーディネートまでもが黒塗りなのがたくさんありました。
    残念です。
    • 参考になった 10
    投稿日:2015年06月10日
  • 榎田せんせい祭り
    タイトルは立て続けに二冊購入したからってそれだけです。「nez[ネ] -Smell and Memory-」一年待ってもどこも電書化してくれないから紙で買っちゃおうかと思ってましたよ。ありがとうebookさん。
    1巻2巻と、お互いにどうしてこうなっちゃうんだっけ?と首をかしげながらもずるずると匂いの罠のせいか関係を続けていた千里ちゃんと鷹目。ここに来て鷹目のほうが少し目覚めつつあるようです。だけど、甘い雰囲気ばかりではなく千里ちゃんのほうに暗雲が立ち込めてきます。アイデンティティー崩壊の危機、なくなった記憶に隠された過去。そして今巻は「何でそんなところでええええ」というところでぶったぎれていますのでこれから読むかたは注意です。
    チャラチャラと軽い男千里ちゃんのどんより暗い過去が見え隠れして、鷹目がその前で戸惑います。他人の面倒ごとに首を突っ込むタイプではない鷹目が迷ってるその事実が「もうそれ、恋だからねえええ」と突っ込みたいけど届くわけもない(笑) 次巻がラストらしいのでこのモヤモヤはそれまでお預けということですね。待ちきれません。
    • 参考になった 3
    投稿日:2015年06月09日
  • 匿名希望
    山岳漫画の最高峰
    初めて書きこみます。。
    スタッフの方々、電子化していただきありがとうございます。
    僕の中では、一番好きな漫画です。


    • 参考になった 3
    投稿日:2015年06月09日
  • 匿名希望
    医者は大変だなぁ。
    奇を照らうことなく、医療現場の実態を人情劇で仕上げている。また主人公の古風な言い回しが味がある。5人に一人が医科歯科系に進学する高校にいたせいか、医者に対して大した尊敬を持っていなかったが、自分が難病で1年も入院して、献身的な医者の偉大さを確認したせいか、この物語に深く共感する。
    • 参考になった 0
    投稿日:2015年06月07日
  • 久しぶりにジャンプで熱い漫画です!
    最近だとジャンプではハンターとバクマンをコミックスで買って本誌もたまに買って読んでましたが、どちらも終わるか休載?wしたので、久しぶりにとても嬉しいですね♪アニメから入ったのだけど、続きがどうしても待ちきれなくてw電子書籍で大人買いしちゃいましたw最初は主人公がヘタレ過ぎて嫌でしたけど、段々立派になって来てとても嬉しいです。やはり主人公が成長してこそのジャンプ漫画ですし。これでハンターが再開したら本誌を毎週買わないといけなくなっちゃいますわw
    • 参考になった 4
    投稿日:2015年06月07日
  • 三人一組
    切れ者やくざの辻が顧問弁護士財津と舎弟菊地にどっぷりハチミツ漬けで愛されている日常、突然トラブルに巻き込まれます。悲しかったり悔しかったり、やるせなかったりするのに、表面上辻はなにも変わらない。自分だけが大事で自分だけを愛していると嘯く。そんな辻をラストでザブザブに甘やかす二人がいい。受け入れる辻もかわいく見えてくる。ええっ?3人?!と毛嫌いならさず、これはこれで愛の形(しかも、誰一人欠けちゃダメな)。そしてイラストが美しい!!辻の美しさにどうかなりそうです、こんなのがウロウロしてたら、財津や菊地じゃなくてもくらくらします!菊地も財津もかっこよくて、この事務所はどうなってるんでしょう、けしからん(笑)
    • 参考になった 6
    投稿日:2015年06月06日
  • うわー
    割引版でポチったら虜になった
    立ち読みで見れる可愛さがいっぱい詰まっています
    • 参考になった 4
    投稿日:2015年06月06日
  • 1巻から読んでみてもらいたい
    最終巻に続く最後のページは感動で震えました
    • 参考になった 5
    投稿日:2015年06月06日
  • 泣けてしまう…。
    最初の話だけでは悲しすぎて辛かった。でも、その後に続く話でSHOOWA作品ならではの笑いがあり、辛さが薄められて良かった。この作家さんは悲哀を描くのが本当に上手い。
    • 参考になった 4
    投稿日:2015年06月06日
  • 匿名希望
    素晴らしかった!
    最初は表紙とタイトルで買いまさたが後悔はなかった!
    銃や軍に関しての説明はちょっと長い気がしましたけど、分かりやすく書いて感心しました。
    キャラクター達も良くてスノーとエル先生好きです!
    続巻も買ってきます!
    • 参考になった 1
    投稿日:2015年06月06日
  • 匿名希望
    えろい!!
    表題作が特にいいですね。愛され主将は愛しいですし、攻めの相川くんも犬っぽくてかわいいです。

    乱交ではなく複数人からの視姦プレイ、いいですね!!

    読みごたえがありました。
    • 参考になった 0
    投稿日:2015年06月06日
  • ダメダメだから可愛い
    勉強はできるお兄ちゃん。なのに、ホンとにダメダメで可愛い過ぎる。こんなに必死に愛されたら嫌いになれない(笑)弟になった夏央が可愛くて、好きすぎて仕方無いお兄ちゃんの必死な不憫さが可哀想で可愛い!
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年06月05日
  •  僕の地元・長野県には、中学校集団登山という拷問のようなイベントがありました。一学年240人がみんなで3000m級の山に挑むという荒行です。しかも、登る予定の山で起きた遭難事故を描いた新田次郎の「聖職の碑」の映画版を見せられるという、嫌がらせとしか言いようのないオマケもついていました。とはいえ、このイベントで山に目覚めた人もいないわけではなく、それなりに意味のある行事な気もします。僕は下山中に便意に襲われ、6時間死ぬ思いで我慢するという、これまでの人生で一番の苦行を味わったので、二度と山には登らないと決めています。
     とはいえ、山ものの作品を読むと、山もいいかもしれないと思ってしまうのです。『神々の山嶺』は数多い名作を生み出し、海外でも評価の高い谷口ジローのまさに最高峰だと思っております。 
     『神々の山嶺』には羽生丈二という一人のクライマーの姿が、カメラマンの深町誠の視点から描かれます。
     この羽生丈二、初登場シーンから圧倒されます。「その時…むっと獣の臭いが店内にたちこめたような気がした」。この存在感がどこからくるのか、深町は彼の過去を調べていくのです。
     羽生を関係してきた様々な人に取材していくうちに、彼の孤高としか言いようのない半生が明らかになっていきます。
     羽生は可愛げのない、根性はあっても鈍重で無口な男でしたが、クライマーとしては抜群の才能を発揮。しかし、全てを山に集中する羽生は、普通の生活を送る人間と温度差がうまれ、山岳会でも孤立していきます。誰もが登れなかった壁を登り、山岳界の話題をさらうものの、羽生自信は不遇のまま。海外の山に挑戦することができません。
     誰よりも山を想っているのに資金や人脈や名声がないだけで、挑戦できない苦しみを味わい、自分を慕う人間の死があり、やがて羽生は自分から孤立していきます。そして消息を断った羽生がなぜカトマンズにいたのか?彼がなにをしようとするのか、物語は加速していきます。
     羽生の姿は、新田次郎の小説ではないですが、まさに「孤高の人」なのです。孤高の人は、人の共感は求めません。自分でも言葉にできない衝動に突き動かされるまま、「これしかない人生」を送るのです。
     羽生はいいます「いいか。山屋は山に登るから山屋なんだ。だから山屋の羽生丈二は山に登るんだ!!」また、なぜ山に登るのかという問にこう答えます。「そこに山があったからじゃない。ここにおれがいるからだ」
     「これしかない人生」を送る男の寂しさと美しが同時に描かれ、僕もこのような生き方に強く憧れるのです。
     いや、既に僕は僕にとっての「これしかない人生」を歩んでいるかもしれない。この、マンガとゲームにあふれた人生は。
    • 参考になった 8
    投稿日:2015年06月05日
  •  明石家さんま、大竹しのぶ、片岡鶴太郎主演のTV連続ドラマ「男女7人夏物語」(1986年)、「男女7人秋物語」(1987年)が大ヒットし、西武の工藤公康(福岡ソフトバンクホークス監督)、清原和博(元プロ野球選手)、渡辺久信(元西武ライオンズ監督)を指して使われ始めた「新人類」が流行語になった(1986年)。同じ86年に登場したハイレグ水着が大流行し、1981年に販売が始まったハッチバック型乗用車、ホンダシティが若い世代の熱い支持をていた――そんな1980年代の若者を乾くるみが描いた『イニシエーション・ラブ』(文藝春秋)が、映画(堤幸彦監督、主演:松田翔太・前田敦子・木村文乃)の大ヒットもあって売れ続けています。
     読者の間でかわされる話題の焦点は「必ず2度読みたくなる」ところにあります。私自身、実際2度読みをしました。1度目は、1980年代の社会や風俗がふんだんに盛り込まれ、80年代の匂いが懐かしい、まっとうな恋愛小説として。そして、その最後の場面――恋愛の成就を期待して読み進んだ最後の場面で、「え、どうなっているの? そんな話はなかった・・・・・・」期待されたエンディングは裏切られ、物語はふいに閉じられます。
     読者に残されるのは、戸惑いと混乱です。いったいどこで、読み間違えたのか? 物語の始まりに戻って読み直すのは、自然の成り行きというべきでしょう。ミステリー作家である乾くるみは、そうなることを計算して「恋愛小説」に周到な仕掛けを盛り込みました。
     その術中にはまって2度読みに進んだ私の前に表れたのは、「恋愛小説」の装いをまとった「ミステリー」の傑作――恋に落ちた男女の一途なやりとりと見えていたことが、2度目に読んだ時には、ミステリーとしての重要な布石となっていたことに気がつきます。仕掛けられた布石がいくつも連なって、1度目とはまったく異なる物語の世界が見えてきます。

     謎を解く鍵は、本書の構成(スタイル)がアナログレコードのA面、B面を意味する「side-A」side-B」に分けられているところにあります。
    [side-A]
     揺れるまなざし(小椋佳、1976年)
     君は1000%(オメガドライブ・杉山清貴、1986)
     YES-NO(オフコース、1980)
     Lucky Chanceをもう一度(C・C・B、1985)
     愛のメモリー(松崎しげる、1977)
     君だけに(少年隊、1987)
    [side-B]
     木綿のハンカチーフ(太田裕美、1975)
     DANCE(浜田省吾、1984)
     夏をあきらめて(サザンオールスターズ/研ナオコによるカバー、1982)
     心の色(中村雅俊、1981)
     ルビーの指輪(寺尾聡、1981)
     SHOW ME(森川由加里、1987)

     いずれも1975年~1987年にヒットしたラブソングのタイトルです。Side-A1「揺れるまなざし」は、数学科4年の鈴木くんが友人に頼まれて参加した合コンから始まります。4人の女性が入ってきた時、合コン初体験の鈴木くんの目が2番目の女性に瞬間的に吸い寄せられます。

    〈髪型に特徴があり、男の子みたいに思い切ったショートカットにしていた。そのせいで色白の顔が額の生え際まで見えている。その顔にも特徴があった。いつもニコニコしていたら、それが普段の表情として定着してしまいました、というような顔立ちで、世間的にはファニーフェイスという分類になるのだろうか。美人ではないが、とにかく愛嬌のある顔立ちだった。外に比べたらはるかに薄暗い店内の一角で、彼女のその顔の部分だけが、パッと輝いているようだった。
     スタイルは小柄でほっそりとしていて、女性というよりは女の子といった感じに見えた。涼しげな白のブラウスに、紺色で膝丈のスカートを穿いていて、原色や黒を基調とした他の三人のファッションと比べると、印象はいたって地味なのだが、自然体な感じがして、僕には好感が持てた。
     彼女がマツモトユウコ(引用者注:鈴木くんを合コンに誘った友人・望月が付き合っている文学部2年生)ではありませんように──と瞬間的に願った。ということは、つまり僕はその瞬間にはもう、恋に落ちていたのだろう。自分でそのことに気づくのは、もう少し後になってからのことだったが。〉

     舞台は1987年の静岡市。ショートカットの彼女――成岡繭子(なるおか・まゆこ)さんは、市内の歯科クリニックで歯科衛生士として働く20歳。
    鈴木くんと成岡さんが初めてかわした会話――。
    〈自分一人では女性を楽しませることができない。だから女性は苦手だと今まで思っていた。しかし今回のようにグループで接するのであれば──望月たちが一緒ならば、そして女性を楽しませる役を彼らに任せてしまえるのならば──そうした義務感さえ伴わなければ、やはり女性と一緒にいるというのは基本的に楽しいことなのだと実感できた。
     特にあの、成岡さんのような、表情を見ているだけでこちらがウキウキしてくるような、そんな女性がメンツの中にいる場合には。 
     などと考えながらトイレを出たら、すぐそこの暖簾(のれん)のところで本人と鉢合わせしてしまった。僕は必要以上に慌ててしまい、会釈だけしてやり過ごそうと思っていたら、彼女のほうから声を掛けてきた。
    「あの、鈴木さん?」
    「はい」不思議な表情を見せるあの目に間近から見据えられる形になって、僕は少しだけうろたえる。
    「あの、ここを出た後で、みんなでカラオケに行こうって話が出てたんですけど……鈴木さんも一緒に行ってくれますよね?」
    「あ。はい」と反射的に答えていた。その後で、そうか次もあるのか、と思った。もし店を出たところでそういう話になったのであれば、たぶん僕は、一次会だけで義務は果たしたからといって、その手の誘いは断っていたのではないかと思う。
    「よかった」と言って成岡さんはほっこりとした笑顔を見せた。彼女との距離がたったの数十センチしかないことを不意に意識する。僕は彼女の表情に見とれていた。それが不躾な行為だったと自省するのは、彼女が小さく会釈をしてからその場を離れ、女子トイレのドアの向こうに消えた後のこと。〉

     2週間後、同じメンバーで海へ。女性たちが車から降りたっところで、鈴木くんは息がつまりそうで、眩しすぎて彼女を直視できません。盗み見るようにしてその姿を見る。

    〈成岡さんは麦藁帽子を被っていた。肌を露出した肩のあたりに、網目模様の影が落ちている。赤茶色のタンクトップに、その下にはすでに水着を着ているのだろう、白い肩紐が首の後ろで結ばれているのが見えた。白地に模様の入ったロングスカートが微風になびいていて、足元は白のサンダルを履き、毛糸を編みこんだような造りの手提げを左肘にかけて立っている姿は、そのまま写真にして飾っておきたいほど魅力的に見えた。場所は駐車場ではなく海がいい。右手は麦藁帽子を押さえ、空を眺めるように顔をあお向けて、他には誰もいない砂浜を歩いているところを、左側からカシャッと撮る……。〉
     
    (彼女と再会できたという、ただそれだけのことが、これほどまでに僕の胸を熱くするなんて)目を閉じ、息を大きく吐くことで何とか鎮める鈴木くんですが、そんな彼に成岡さんが語りかけます。ほかのメンバーは海の中です。

    〈「・・・・・・数字を覚えるとかも得意?」
     そう言って、彼女は不意に六桁の数字を口にした。僕は言われるまま、数字を一度頭の中で復誦した。
    「ええ、大丈夫です。憶えました」
    「じゃあ言ってみて」僕は暗誦してみせた。「もう一回」僕は繰り返す。
    「じゃあそれ、忘れないようにしておいてください。それ、ウチの電話番号だから」
     顔を寄せて、そんなふうに彼女が囁いた・・・・・・

     ケータイのない時代。電話はいうまでもなく、1人1台ではありません。もし彼女以外の人が出たらどうしよう。鈴木くんは悶々とした日々を送り、やっと記憶の岩盤にしっかりと刻み込まれた六桁の数字をプッシュした時、すでに1週間が過ぎ去っていた。実家を出てひとり暮らしの彼女とデートの約束をして、二人の交際が始まります。
     2回目のデートの時、彼女のアドバイスに従ってメガネをコンタクトに換え、流行のファッションを身にまとって現れた鈴木くん。二人は「マユちゃん」「たっくん」とよびあうようになります。鈴木くんは「ユウキ」が普通だろうけれど、「夕樹」がカタカタの「タ」に「き」(樹)だから「たっくん」という少し強引とも思える命名なのですが。
     とまれ、最初の合コンメンバーとテニスをして別れた9月15日の夜――鈴木くんとマユは電話で告白します。
    〈「・・・嫉妬するってことは、相手をそれだけ愛しているってことの表れだし」
     彼女はそうして「愛している」という言葉をサラリと口にしてのけた。聞き流してしまいかねないほどさり気なく――しかしその言葉は確実に、僕に向けて発せられたものだった!
     胸がカーッと熱くなる。自分の全身から彼女に対する愛情が溢れ出しそうな気がした。頭の中が飽和状態で、とにかく何か言わないと、という気持の中で、「マユちゃん」と言葉が自然に出ていた。
    「え?」
    「――僕はあなたのことが好きです。・・・・・・愛しています」
     気持はずっと前から抱いていたが、ちゃんと言葉にしたのはこれが初めてだった。
     こめかみで血流がドクドクと脈打っているのが感じられた。
    「ありがとう、たっくん。・・・・・・私もたっくんのことが好きです」〉
     
    「部屋に来て」と繰り返した彼女の言葉を耳にした鈴木くんは、ジョグの鍵を引っ掴んで部屋を飛び出し、彼女のアパートに駆けつけます。初めてのセックスの後、鈴木くんはそのまま彼女の部屋に泊まります。二人とも裸のままで過ごし、裸のままで眠った。部屋にいる間中、二人の身体は常にどこか触れ合っていた。乾くるみは「80年代の恋愛」をこんなふうに描きます。
     鈴木くん(たっくん)とマユは、クリスマスイブをホテルで過ごします。
    〈今夜は、世界中の恋人たちがそれぞれに幸せな時を過ごしいることだろうが、それでも今の僕たち――僕とマユの二人には、誰もかなわないだろうと思った。〉

     乾くるみはside-Bで、タイトルの「イニシエーション・ラブ」について、「イニシエーション」とは「通過儀礼」の意味、つまりこの世の中には絶対などということはない、それをわかるようになって初めて大人になるのだと書いています。大人になるプロセスとしての「恋愛」。
     鈴木くんとマユが至った「幸せ」の絶頂の先に、乾くるみが用意したミステリーへの転回――アナザー・ストーリー。あなたはいま、ようやくその入り口に立ったところです(2015/6/5)
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    投稿日:2015年06月05日
  • みうらじゅん×リリーフランキーによるグラビアアイドル評論トーク「グラビアン魂」と青木雄二のヒットマンガ「新・ナニワ金融道R(リターンズ)」が看板企画の「SPA!」で、猪瀬直樹さんが力の入った連載「民警」を開始した。5月連休直前の5月5日・5月12日合併号が第1回で、創刊27周年記念号となった6月9日号で早くも第5回を数えています。医療法人・徳州会からの資金提供問題で東京都知事を辞任して以来、沈黙を保ってきた猪瀬さんが作家活動再開の第1弾に選んだテーマは、「民間警備会社」。

     猪瀬さんは復活のノンフィクション作品を次のように書き始めました。
    〈渋谷駅前のスクランブル交差点にしばらくたたずんでいるだけで我われは定められたルールにのっとった秩序のなかにいると自覚できる。交通信号が切り替わるといっせいに人が波となって動き出す。電車や車が発する騒音が聞こえない無音の世界なら、整列行進は神に操られているかのようにすら見える。
     もしそこに異物が、隕石であっても爆弾であっても、いきなり炸裂したら均衡は一気に崩れるのである。
     ・・・・・・再開発の工事が進捗中の渋谷駅とそれを跨ぐ首都高速が接近して見える雑居ビルの一室で、僕はこの「もし」について考えていた。〉

     猪瀬さんと向かい合う二人の男――一人は白髪混じりの短髪、やや小太りの体躯で年齢は60歳に近い。もう一人は痩身で浅黒い顔、薄いグレーに花柄斑点のウエスタンシャツの下に筋肉質で敏捷な身体能力が隠されていると察知できる。実年齢は50歳の男。

    〈「実際に地中海のマルタ島で民間武装警備員の訓練をしたのですが・・・・・・」
     小太りの男、民間の警備会社ライジングサンセキュリティーサービスの八木均社長は、秘密を打ち明けるように慎重に口火を切った。(中略)
     八木社長は隣に坐っている人物、伊藤祐靖(すけやす)氏を紹介した。伊藤は元海上自衛隊2佐で、自衛隊初の特殊部隊「特別警備隊(特警隊)」の創設に関わった人物である。伊藤は1999年に北朝鮮の「不審船」追撃に従事した経験から、米海軍シールズなどと交流を進め、特警隊の先任小隊長を努めた。その後、「自分がやらなければならないことがある」と自衛隊を退職している。〉

     1964年の東京オリンピックの2年前に設立され、選手村警備を担当したことが業界1位のセコム(当時の社名は日本警備保障)その後の飛躍のスタートとなった。業界2位の綜合警備穂書はオリンピックを挟んだ1965年の創業です。東京オリンピックの時代に生まれ、戦後日本の重大事件の裏面に深く関わってきた「民警」。安倍首相が推し進める「安保法制」とも無縁ではいられません。昭和史と「民警」の裏面史に猪瀬直樹さんはどこまで迫っていくのか。いま、SPA!から目が離せません。(2015/6/5)
    • 参考になった 5
    投稿日:2015年06月05日
  • 鼠除けの「猫絵」を描く絵師、十兵衛と元猫仙人のニタが色んな人間や猫と出会い、彼らの物語に少し関わっていくヒューマンドラマです。口の悪いニタが憎らしくも男前で、十兵衛との会話のやりとりは楽しいです。人間の生活に溶け込む猫やご主人様に恩返しがしたいと願う猫…猫ばかりの視点ばかりではなく人間からみた猫たちの物語など多種多様な暮らしが描かれています。猫だらけのマンガではありますが、ペットを飼われている方もそうでない方でも思わず涙してしまうのではという物語がたくさんです!短編が多いので少し時間が空いたときにお薦めです。その少しの時間にくすっと笑って、ほろりと泣いて、ほっこり優しい気持ちになってみてはいかがでしょうか。
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    投稿日:2015年06月05日
  • 沁みる。
    久々に沁みる本でした。
    「人として何かを捨て去る事で得るモノもある」
    日本一を求め続け それを指導した恩師 何かと問題のあったお方で自分たちの指導を最後にどこかに消えて行かれました・・・・

    心の隅に引っかかっていた事を形にして掘り起こしてくれた 個人的には名作。
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    投稿日:2015年06月04日
  • 匿名希望
    永久保存版
    萌えではない、ただのエロでもない。「エロス」を求めるジェントルマンに贈る八月薫先生の傑作。消費されがちなアダルトコミックの中で、なが~く楽しめる珠玉の1冊。
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    投稿日:2015年06月04日
  • 兄妹コメディー
    ぐうたらで要領のいい妹と器用貧乏なお兄ちゃんの日常コメディー。
    お兄ちゃんは妹にかなり振り回されて大変な思いをすることもあるけど、妹がかわいくて仕方がない。それでついつい甘やかしてしまう。妹の方はそんなお兄ちゃんのやさしさに付け込んで色々とトラブルを持ち込んだり仕掛けたりしてお兄ちゃんを振り回します。
    けれどお兄ちゃんはそんな妹に振り回されるのも案外面倒に感じながらもまんざらでもない様子。仲の良い兄妹がおりなす日常コメディーです。
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年06月04日
  • SM・やくざ・ヨネダコウ作品
    どんだけ凄いんだろうかとビビり過ぎて、今まで手が出せませんでした。完結してない作品を身悶えしながら待つのはツライ。でも、ついに、手をつけてしまった。やっぱり凄い。人の内面をエグり、グイグイ惹き付けて一気に読ませます。切ない、切ない、切ない。愛しいのに愛しさを知られては側にいられない。ぶれない真っ直ぐな愛情。商業誌同様であろうカラーページが収録されていたのが購入者としては救いになりました。早く、3巻も入荷させて下さい。御願いします。
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年06月04日