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  • 第153回直木賞(2015年上半期)を「選考委員満場一致」(選考委員の林真理子の選評=『オール讀物』2015年9月号より)で受賞した東山彰良『流(りゅう)』。5月22日の配信開始時より注目されていましたが、受賞を経てここへきてじりじりとダウンロード部数が伸び続けています。最近の文芸書ベストセラーランキングでも、『火花』(又吉直樹)などと並んで上位にランクインしています(丸善丸の内本店/9月3日~9日)。選考委員の北方謙三を「20年に1回の作品。たいへんな商売敵を選んでしまった」とうならせた書き下ろし長編です。本好きの関心と支持が集まるのも自然な成り行きでしょう。
     物語の舞台は、台湾――1949年から続く戒厳令下の1975年、偉大なる総統、蒋介石の死の直後、愛すべき祖父が何者かによって殺された。中国の山東省生まれの祖父は、抗日戦争の時代に国民党に加担して共産党と戦い、1949年に蒋介石の軍隊とともに台湾に渡ってきました。心の奥底に中国への帰還願望を秘めた外省人です。ちなみに1949年は蒋介石軍を破った毛沢東が中華人民共和国を樹立、中国大陸を制覇した年です。
     第一発見者は「わたし」。制服のボタンをみんなよりひとつだけ多く開けて着流すような、ちょいとばかり粋がった高等中学校の二年生の葉秋生(イエ・チョウシェン)。著者は天真爛漫に生きる主人公を「男子なら丸刈り以外認められていなかった時代に、襟足をほんのすこしだけ長くのばしていた。心配事いえば、生活指導部に自慢の襟足をちょん切られることくらいだった」と描いていますが、17歳の少年が目の当たりにした、祖父の死とは?

    〈・・・・・・奥にある洗面所の扉を押し開けた。便器、そして洗面台の先にある浴槽の表面が、廊下から侵入した明かりを受けて鈍く光った。縁まで水が張られた浴槽は、まるで黒い鏡のようだった。蛇口から水滴がしたたり落ちると、水面に金属質な水紋が危なっかしく広がり、その下にある得体の知れないなにかの輪郭をゆらめかせた。
     浴槽に目を奪われたまま、手探りで壁のスイッチを押す。
     天井から蛍光灯の光がパッと降りそそぎ、黒い鏡のなかに閉じこめられているものを映し出した。ぴちゃっという音が、まるで手榴弾のように炸裂した。揺れる水面に平衡感覚をたぶらかされ、洗面所が溶けた麦芽糖のようにぐにゃりとゆがんだ。
     わたしは目を見開き、吸い寄せられるように足を踏み出した。浴槽をのぞきこむと、水面に映る自分の青白い顔と目が合った。わたしは魚みたいに口をぽかんと開けていた。 
     目の焦点がずれる。
     わたしの顔の下に、もうひとつ顔が沈んでいた。その頭にわずかに残った髪が、まるで海藻のようにゆらめいていた。鼻孔のまわりに小さな泡をいっぱいくっつけている。口は大きく開かれ、充血した真っ赤な目は虚ろだった。後ろ手に縛められ、足首にも端切れが幾重にも巻かれている。
     祖父は体を「く」の字に曲げて、水の底に沈んでいた。
     頭が現実に追いつくのに、百年くらいかかった。ひっ、と声を呑んで、思わず跳びすさってしまった。かかとを敷居にひっかけ、ひっくりかえった拍子に廊下の壁で後頭部を強打した。〉

     まだプロローグだというのに、死を表現する迫力、比喩の巧みさ、自在さに思わず引きこまれていました。著者の東山彰良は1968年台湾生まれ、9歳の時に日本に移り、現在は福岡在住。日本の大学を卒業し、「母国語は日本語」というほど日本語になじんでいる一方、中国語の世界にも通じており、それが作家としての強みにもなっています。
     漢字文化を創り出してきた中国という社会に生まれて文章を書くようになった東山彰良は、戦争に翻弄され、大陸から台湾への流浪の歴史を生きた一家の軌跡に自らの青春を投影した物語で、まさにたたきつけるような言葉を読者につきつけています。中国語と日本語の微妙な差異を巧みに織り込んだ暴力的な言葉が文章の力に転じていくとき、そこから思いもかけない面白さが生まれてくるかのようです。
     
     祖父の死の裏で何があったのか。青春の只中にある主人公は、深い疑念を抱きながら、中国大陸に足を伸ばす一方、仕事で日本との間を行き来するようになります。そして、愛すべき女性(ひと)との別れと新たな出会い。ダイナミックな展開、スピード感溢れる青春の物語は、掛け値なしに面白い。加えてもうひとつ、文章に勢いをもたらしている中国語、台湾の言葉の存在に注目しておきたい。

    〈「幹(くそ)!」わたしは足を蹴り、なおもうしろへ退がろうともがき、あがいた。「くそったれ、なんなんだよ……なんだってんだよ!? 幹! 幹你娘(くそったれ)!」〉

     体を「く」の字に曲げて、水の底に沈んでいた祖父に狼狽した秋生。頭が現実に追いつくのに、百年くらいかかった秋生。ひっ、と声を呑んで、思わず跳びすさってしまった秋生。その瞬間(とき)に、あがく秋生の口から呻き出た言葉が、「幹你娘!」。ルビには「くそったれ」とあります。中国語の発音「ガンニニヤン」をルビとしてふるのが普通でしょうが、著者はそこを日本語で「くそったれ!」としました。文字は小さいルビですが、秋生の狼狽ぶりを読者の目に焼きつけるルビの使い方のインパクトは圧倒的です。「幹你娘」は本来、おまえのお袋さんを犯してやるぞというほどの意だが、喧嘩沙汰の場面ではいろんな意味に使える便利な言葉だ、著者はこう綴っています。
    「幹你娘」は10か所以上出てきます。先頭の「幹!」一文字でも「くそ!」や「くそったれ!」とルビがふられていますが、こちらは20か所あります。喧嘩の場面だけでなく、自分に嫌気がさしたというような場面などでも使われています。
     
     まだあります。
    「放屁」=嘘つけ
    〈・・・・・・わしはおまえのじいさんといっしょにこの目で見たんじゃが、馬大軍は劉黒七の手下をひとり殺したことがあるんだぞ」
    「放屁(嘘つけ)!」李爺爺が吼えた。「劉黒七といやあ、泣く子も黙る盗賊の頭だぞ。手下がひとりやられりゃ、やったやつの村を皆殺しにせずにはおれん狂犬じゃった。おまえは馬大軍がその劉黒七の手下を殺したってのか?〉

    「鶏巴」=ちんこ野郎
    〈「ざまあみやがれ、鶏巴(ちんこ野郎)!」〉

    「王八蛋!」=ばか野郎。
    〈・・・・・・小戦は所信を述べた。「感化院なんざ屁でもねえや」「だれがおまえの心配なんかするか!」わたしはやつを乗せて走り去る警察車両に石を投げつけた。「二度と帰ってくるな、王八蛋(ばか野郎)!」〉
     イーブックジャパンに今年4月に入社した台湾出身の李ユンルイに聞いたところ、亀という意味の「王八」と発音がほぼ同じ「忘八」という言葉があるそうです。これは「八徳」の八番目の「恥」を忘れた人の意味を持つところから、「忘八端」とよく似た発音の「王八蛋」が「ばか野郎」の意味で使われるようになったというわけです。言葉の面白さを感じます。

    「臭三八」=ブス
    〈八歳にしてすでに極道の片鱗を垣間見せていた小戦は、仮借ない罵詈雑言を女子たちにぶつけた。陳雅彗(チェンヤアフィ)、臭三八(ブス)、你給我下来(降りてきやがれ! 陳雅彗、すなわち毛毛(引用者注:主人公の葉秋生の幼馴染み、初恋の人)たちは腹を抱えて大笑いし、石つぶてで反撃してきた。汚い言葉を使ったわね、趙戦雄、先生に言いつけるからね!〉

     さらに「藍調」のルビに「ブルース」、「没時」に「大丈夫」、「西瓜の皮」に「おかっぱ頭」、「男子漢大丈夫」に「男一匹」、「草頭王」に「ならず者の王」などなど。ふつう、さほど気にとめることなく、なんとなく読んでいるルビですが、本書では大事な役割を担っているようです。
     じつは、本書は先頃公開が始まったブラウザ楽読みで読みました。リーダーアプリによらずにブラウザで手軽に読書を楽しめる新サービスですが、もうひとつ画期的機能が加わっています。ルビに専用フォントが使われている点です。本文と同じ游明朝系のフォントで、電子媒体でのクリアな文字表示を追求したルビフォントです。従来の本文用フォントを使ったルビと比べて数段読みやすくなりました。難読語の読みを示すだけでなく、中国語・台湾語の意味を文章のスピード感を減殺することなく効果的に伝えるという重要な役割をルビが担う本書では、その意味はさらに大きいと思います。ぜひ一度、試してみてください。(2015/9/25)
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年09月25日
  • 短編の集まりなので仕方ないかもしれませんが
    表題カプの短編を一冊にまとめてあります。だから仕方がないのでしょうが、ストーリーがなんだかもう急展開です。
    ただ話しかけてHな夢を見て、屋上で寝込みを襲って、好きでも何でもなく、自分の感情がわからないと変に悩むわけでもないです。攻めがあまりにも曖昧ですし、受けもいきなり襲われてもただ何なんだあいつって言う感じです。
    ただ絵はとても綺麗で好みです。攻めはともかくチビヤン受けが、カワイイです。なんだかヤッてばっかり感がありますが、楽しませていただきました。
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年09月23日
  • ネタバレあり
    異世界観光もの?
    いわゆる異世界転生ものですが、1巻範囲のメインは異世界観光です。原作小説の異世界観の作り込みをしっかりとコミックに反映しています。美麗な背景、町並みなどがしっかりと描き込まれていて、それを見るだけでも充分面白いです。
    なお連載雑誌はエイジプレミアムでしたが、先月廃刊となり、現在はドラゴンエイジに場を移して連載を継続しております。コミックウォーカーでも無料閲覧可能ですので、興味を持たれた方はそちらで試し読みすることをオススメします。
    • 参考になった 7
    投稿日:2015年09月23日
  • リアルBL
    きっと本当のBLは、こうなんだろうと思う。好き→両想い→ラブラブなんて簡単に進まない。物分かりの良くなった大人じゃない、思春期の男子の残酷さと衝動は。だからこそ、この本のなかにはリアルなBLがある。そんな気がしてならない。劣情を帯びた奏真の目。贖罪を抱えながらも奏真に傾倒していく隼人。周囲の目。学校という閉鎖的空間のなかでのBL。その結末を期待して待つ日々。
    • 参考になった 22
    投稿日:2015年09月23日
  • 匿名希望
    誤字があまりに多すぎる
    ストーリーは面白い。
    続巻を購入しようと思うのだが、ただ誤字が多すぎて萎える。シリアスなシーンで「ばかめ」が「ぱかめ」になっていたり。
    販売するのであるのだから、校正はしっかりしてほしい。
    • 参考になった 6
    投稿日:2015年09月22日
  • 続きものです
    作家買いです。「知ってるよ。」みたいなストーリーが好きなんですが、今回は少し違います。過去の償いのために他人を傷つけることを恐れる少年とゲイが故に苦しむ少年のお話です。勘違いから始まる二人の関係は歪みながら深くなっていきます。心に傷を追った者同士ですが片方は謝罪のため片方は恋をします。ストーリーが少し重いです。悪くはないですが読んでいて胸がモヤモヤしてすっきりしません。二人の今後が気になります早く続きが読みたいです。
    • 参考になった 4
    投稿日:2015年09月22日
  • ほっこりまったり甘々ごはんBL
    絵柄もストーリーも綺麗で、レビュータイトル通りほっこりする作品です。
    ひとつのカフェを中心に複数カップルが出てきますが、どの2人も可愛くてカッコよくて素敵でした。
    エロは少々ですが、それが気にならないくらいラブが溢れています。笑
    切なさとかきゅんとするとかの起伏は激しくないので、まったーり優しい系が好きな方は是非。

    他の作品もあるなら是非読みたいです!
    • 参考になった 3
    投稿日:2015年09月21日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    知る人ぞ知る傑作
    作品の内容についてだけレビューします。いわゆるタイムパトロールものですが、さすが長谷川裕一先生、随所にオリジナリティーのあふれるストーリーとなっています。ただ、この作品が傑作となっているのは、最後の最後で今までの設定を覆す大どんでん返しがあるところです。そして明かされるクロノアイズ設立の真の理由。某SF作家がこれは思いつかなかったと言わしめる理由で、なるほどと納得します。ややマイナーですが、一読に値する傑作です。
    • 参考になった 0
    投稿日:2015年09月21日
  • 匿名希望
    実は戦争マンガでも被爆マンガでもない
    最近ではまともに読まれない方が居られるようで残念なほど、屈指の作品です。
    間違ったことを歪まず淀まず訴える作品です。

    確かにクセの強い画調と、国粋主義を否定してるところから最近は受け付けない人も多いようですが、せめてこのぐらいは読みつけないと被爆や戦争の実態の入り口にも入れません。

    テーマはマンガ界でもっとも重い。気軽には読めない。
    そもそも広島弁が濃い。
    ソコはともかく被爆の惨状をかなりまとめながらもむごく描写してるし、いつまでも絶えず死に逝くキャラが登場、殺人や窃盗などを(贖罪こそ描写してるが贖い切らず)正当描写してるところもありますが、そんなもんじゃないのが戦中戦後です。

    このマンガが秀逸なのは、「戦争で酷い目に遭った」「被爆は地獄だ」で終始せず、そう言う境遇を世間がどう冷たくあしらったかをこまめに描いていて、
    「実は昔話じゃない」
    と言う意味をちゃんと通じて描き切ってることです。
    「常識と良識との戦い」
    と言う表現も見ましたがそんなマンガです。

    是非このマンガぐらいは直視して、激甚災害の頻発や原発問題が横たわる今も似通った状況があることを思い返して欲しい。
    • 参考になった 32
    投稿日:2015年09月21日
  • 匿名希望
    日本人として気づかされる本
    戦後70年に渡って日本人の洗脳のプログラムが機能していた。そろそろ目覚めよアメリカ人の著者が言うくらいだ。
    • 参考になった 5
    投稿日:2015年09月20日
  • 匿名希望
    アレ?
    完結マーク付いてるけど、8巻で完結では??
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年09月20日
  • ネタバレあり
    思春期の少年たちの心を
    二組のカップルのお話です。一つは幼い頃から触りあいっこしていた二人が思春期になり好きだたという感情に悩み始めます。身体を求めることイコール好き?なのか相手のことを信じられなくて苦悩します。もう一つのカプはゲイにストーカーされてトラウマになった親友を、これまた好きになってしまいゲイは嫌いだと言うのを側でずぅと聞き続け、それでもいいと自分の思いをひた隠します。相手を思いやる心の描写がとても丁寧に書かれています。もっと早く素直になれたらもっと幸せになる事を教えてくれます。Hシーンは2カプとも最後にあります。それほど激しくはないですが、キュンキュンします。可愛かったです。
    • 参考になった 0
    投稿日:2015年09月20日
  • 匿名希望
    ちゅーかと言うより夫婦オタク漫才
    書籍版からの感想で恐縮です。
    一応カルチャーギャップ作品として読めるんですが、4コマ展開的に中国は関係ないです。
    (内容として中国事情はたくさん盛り込んでありますがネタで終わってる)

    話としてはどオタク業界人と世話好きのチャイナワイフの生活という感じでその立場自体も読者からはギャップです。
    だから嫁が中国人とか言う前に色々思うところが出てしまう。

    どっちかというと変な先入観を持たなければけっこう人柄のほうで充分笑いが取れる。
    冗談が通用しないとか勘違いを貫徹してしまうとか。

    あと絵柄的に基本はスーパーデフォルメ・SDですが時々リアルスケールになるのも笑えます。なまじ絵の切れはいいものなので。
    • 参考になった 1
    投稿日:2015年09月20日
  • ネタバレあり
    ヤンデレ、わんこ、先輩後輩物です
    何不自由なく誰からも愛されてきた攻めと、環境に恵まれずややボッチの先輩受けです。お前なんか嫌いだと言う受けを好きになります。こんな始まりは典型中の典型ですが、攻めがサイコです。いつもヘラヘラして只側に居ながら見守ってきたのに、先輩の結婚話にブチ切れします。そして後輩を必要としながらも、好きだという事を認めたくない受けです。
    ヤンデレわんことツンデレ受け、カワイイです。大好きです。二人共多少歪んでます。何故歪んでしまったのかその辺の経緯をもう少し詳しく掘り下げてくださればと思いました。
    少しだけ切なくて、エロもあります。黒髪美人エロくて好きです。一冊丸々表題カプです。書き下ろしも可愛かったです
    • 参考になった 3
    投稿日:2015年09月20日
  • お役人の愛情
    霞ヶ関の国家公務員。その部下と上司の話。かなりの仕事をこなしながら、部下は上司をサポート。食事の世話から何から何までとにかくサポートする。底に尊敬以上の感情がもちろん存在していて、時々ソレが溢れてしまう。愛だけではお腹はふくれない。仕事の大小なんか関係無い。自分の仕事を忘れない男は格好いい。尊敬は愛に変化すると納得です。
    • 参考になった 3
    投稿日:2015年09月19日
  • 匿名希望
    すごい!
    とってもいい作品だと思いました。学校でも読んでいて、続きが気になっていたのでこれから買おうかな~と思っています。
    • 参考になった 4
    投稿日:2015年09月19日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    手抜きもいいとこ
    中身もストーリー性もほとんどない話でした…シリアスっぽいあらすじだけみて惹かれて買ったのにとちゅうでギャグに転じてそのまま終わり。好きな作者さんだったのでかなりショック。
    • 参考になった 5
    投稿日:2015年09月19日
  • 衝撃的によかった。
    長い間に購入するかどうか迷いました。割引があったからようやく購入した。すごくよかったです。
    • 参考になった 12
    投稿日:2015年09月18日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    何事もない日常的なおはなしですが
    ゲイのクロとノンケの赤松くん。一緒にいるのが楽しくて
    いつの間にか好きだということを自覚して、告白。戸惑う赤松くんですがこれまたいつの間にか、というお話。
    想いが通じたあと初Hに至るまでのお互いの微妙なズレが丁寧に書かれています。ノンケに対するゲイの引け目?みたいなものと、好きになったからただ触れ合いたいと思うノンケ
    赤松くんの方言もなかなか面白くて、えっ?ナニ?って思う箇所もいくつか。
    穏やかで、頑張れって思うストーリーでした。
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年09月18日
  • 〈私はあなたに生前お世話になりながら、一言もお礼を言ったことがありません。それは肉親以上の関係であるあなたとの間に、お礼を言う時に漂う他人行儀な雰囲気がたまらなかったのです。あなたも同じ考えだということを、他人を通じて知りました。しかし、いま、お礼を言わさせていただきます。赤塚先生、本当にお世話になりました。ありがとうございました。私もあなたの数多くの作品の一つです〉

     2008年8月7日、東京都中野区中央の宝仙寺。タモリは赤塚不二夫を送る弔辞を「私もあなたの数多くの作品の一つです」と締めくくりました。赤塚不二夫に対するオマージュ(賛辞)として、これ以上のものはないでしょう。

     1945年(昭和20年)8月15日、昭和天皇による「ポツダム宣言受諾」の玉音放送――終戦のちょうど1週間後の8月22日に生まれたタモリの足跡を通して戦後ニッポンを振り返る好著『タモリと戦後ニッポン』を著した1976年生まれのライター・近藤正高はこの弔辞を紹介した上で、こう続けています。
    〈居候・タモリが家主・赤塚不二夫に初めてお礼を言った瞬間だった〉

     タモリは、早稲田大学第一文学部哲学科を除籍になった後も、モダンジャズ研究会の公演の司会などメンバーとして活動を続けますが、1970年に郷里の福岡博多に帰ります。そして1972年、山下洋輔トリオと出会い、持ち前の密室芸で山下らを魅了し、1975年の夏に山下らの熱心な誘いに応じる形で再上京。山下らの行きつけだった東京・新宿歌舞伎町のスナック「ジャックの豆の木」で、赤塚不二夫に出会います。
     二度目の東京行きを果たしたとき、タモリは30歳。3月に博多-東京間が全通していた新幹線の切符代8,710円を山下らがカンパしてくれての上京でした。
     戦後30年目の節目の年であった1975年は、戦後生まれが人口の49.4%に達し、それを反映して若い戦後世代がさまざまな分野で台頭していきます。〈井上陽水、小室等、吉田拓郎、泉谷しげるがレコード会社「フーライフ・レコード」を設立し、若手ミュージシャンが自分たちの手でレコードを制作し流通させる試みとして注目を集めた〉〈マンガ批評集団「迷宮」の実質的な主催により第一回コミックマーケットが三〇あまりのサークルを集めて開催されたのもこの年のこと〉と、同書にあります。
     仲間内で芸を披露することから出発したタモリが、やがて表舞台に引っ張り出されていったのもそうした流れのなかのことでしたが、その詳細な過程は本書『タモリと戦後ニッポン』をお読みください。ここでは、タモリと赤塚不二夫の運命的出会いの瞬間、そしてタモリの衝撃のテレビデビューの顛末を紹介しておきます。
     まず「ジャックの豆の木」で開かれた独演会です。この日は、タモリの噂を聞きつけた作家・筒井康隆も神戸から駆けつけていました。

    〈独演会当日、店内には山下洋輔をはじめ、詩人の奥成達、マンガ家の上村一夫や高信太郎、それから長谷(引用者注:マンガ家で、赤塚不二夫のブレーンやマネジメントを担当していた)に同伴して赤塚不二夫も顔をそろえていた。赤塚は当初、長谷からタモリについて聞いても「そんな芸達者だったら、とっくにプロになっているはずだろう」と信じようとしなかったという。しかしとにかく行こうと長谷にうながされ、いやいやついてきたのだった。
     会が進行するうちに筒井から、中国人のターザンをやってくれとのリクエストも飛び出し、タモリはこれに見事に応じてみせた。しかし筒井の要望はとどまることを知らない。さらに「大河内伝次郎(映画俳優)の中国人ターザンが、宇宙船のなかで酸素漏れに苦しんでいるところをやってくれ」とむちゃくちゃな設定が与えられる。だがこれにもタモリは一瞬たじろぎながらも挑んでみせ、《「およ。うよ。すうしほ。ごよごよごよ」などと言いながらノドをカキムシリ、苦悶の表情物凄く、それでも必死に操作盤(コンソール)を手さぐりしようとする》その演技は客人たちを圧倒する(『ピアノ弾き翔んだ』)。こうしてリクエストに応えるがままに即興で演じるなかから、「四ヵ国語麻雀」など、のちに「密室芸」と呼ばれることになる初期タモリのレパートリーができあがっていったという。その様子を目の当たりにして、店に来るまでは渋っていた赤塚もいつしか惹きこまれていた。
     すっかりタモリに惚れこんだ赤塚不二夫は、目白にある自分のマンションの部屋に泊まっていけと申し出た。カーサ目白というそのマンションは、妻との離婚時に土地も自宅も譲ってしまった赤塚のため、事務所側が探してきたものだった。しかし淋しがり屋の彼は一人暮らしが苦手なうえ、仕事も忙しくてほとんど帰っていなかった。ようするに空家も同然だったわけで、まるでタモリのために用意されていたのではないかとさえ思わせる。〉

     1975年当時の家賃が月17万円――目白の高級マンションでタモリ自身が「日本史上、最後の居候」といった、デビュー前夜の助走生活が始まります。福岡から妻を呼び寄せ、赤塚のベンツを自由に乗り回し、金がなくなれば、都度3万円くらいの小遣いが手渡される。何から何まで赤塚不二夫によって支えられた居候暮らしが始まり、夜な夜な、新宿の「ジャックの豆の木」に現れては密室芸を披露するタモリ。
     そのタモリがテレビという表舞台に衝撃のデビューを果たします。1975年8月の最終土曜日正午からの「土曜ショー」という1時間番組。そこで「マンガ大行進!赤塚不二夫ショー」という企画が組まれており、長谷はこの番組の冒頭でタモリを出してしまうことにしたという。同書によれば、赤塚マンガの人気キャラクターを使ってデタラメな場面を七、八枚描き、それを紙芝居仕立てで、完全なアドリブで演じる、というのがタモリの役回りでした。赤塚もこれに同意します。出演時には牧師に扮装してもらおうということで、テレビ局の衣装部に発注した。引用します。

    〈番組は生放送、しかもリハーサルなしのぶっつけ本番。だがタモリは真骨頂であるアドリブを発揮し、その紙芝居口演にスタッフ一同はすっかり聴き惚れ、司会の高島(引用者注:忠夫、俳優)にも驚きが走った。
     高島はタモリを高く評価し、当初流す予定だった赤塚のアシスタント総出演のVTRを自らの判断でとりやめ、タモリにほかにも芸を演ってみせてほしいと頼んだ。進行の変更は、CM中に赤塚とタモリから了承を得て、カメラにも高島から指示を出す。
     こうして番組内容は赤塚マンガの話題から離れ、タモリにスポットが当てられた。タモリはカメラを前に、「ジャックの豆の木」でやっていたネタを視聴する層に合わせて短縮しつつ、四人の外国人がゲームを繰り広げる芸(「四ヵ国語麻雀」をアレンジしたものか)などをここぞとばかりに演じてみせた。スタジオは爆笑の渦に包まれ、エンディングで出演者全員が並ぶシーンでも高島はタモリに芸をやらせながら番組を終えるよう指示を出し続けたという。〉

     反響は番組終了と同時に返ってきました。黒柳徹子です。再び、引用します。
    〈テレビでタモリの芸を初めて見たタレントの黒柳徹子が、すぐさまテレビ局の受付に電話をかけて赤塚を呼び出し「あの人は誰!?」と訊ねたという話は、彼女が司会する『徹子の部屋』(テレビ朝日)でもたびたび語られている。黒柳が見たのがまさに『土曜ショー』のこの回だった。
     黒柳と赤塚不二夫は六〇年代後半、NETの『まんが海賊クイズ』という番組でそれぞれ司会者と回答者として共演して以来のつきあいだった。わざわざテレビ局まで「あの牧師さんは、スゴイ!」と電話をかけてきた黒柳に、赤塚は「あれがいつも話していた九州のモリタだよ。面白かった? 伝えるよ。喜ぶよ。初テレビで、本職の芸能人からほめられてさ。黒柳さんが最初だよ!」と我がことのように喜んでいたという(『赤塚不二夫のおコトバ』)〉

     電話してきた黒柳に対して赤塚が「あれが九州のモリタ」と言っているように、30歳になったばかりの森田一義はこのテレビデビューをきっかけに姓をひっくり返した「タモリ」への道を歩み始めました。しかし、タモリの居候生活は、このあと東京12チャンネル(現・テレビ東京)の『空飛ぶモンティ・パイソン』への出演――タモリ初のレギュラー番組出演が決まる翌1976年4月まで1年近く続くことになります。赤塚にさんざん世話になりながらも、けっして礼をいうことのなかったタモリ、そして礼をいわれることを嫌がった赤塚不二夫。二人の真情は、葬儀の席上タモリの弔辞によって初めて明らかにされたことはすでに述べた通りです。

     タモリは30年以上にわたって『笑っていいとも!』――日本の昼の番組の顔としてテレビの世界で並外れた存在感を保ってきました。その芸、人的交流、足跡は、戦後ニッポンという時代をそのまま表現しているようです。
     昨年秋に始まった『ヨルタモリ』が日曜夜の秘かな愉しみになっています。湯島辺りにあるというバー「ホワイトレインボー」で繰り広げられる初期タモリを彷彿させる「密室芸」。ママの宮沢りえやリリー・フランキー、高橋幸宏、福山雅治などの客(ゲスト)とトーク、即興のセッションなどで盛り上がるタモリの番組です。篠山紀信が『サンタフェ』に載せなかった宮沢りえの未公開写真をもって登場したときは、思わず乗り出して見入りました。もっとも『ヨルタモリ』は9月で終了。タモリの「密室芸」もしばらく見られなくなると思うとすこし残念なのですが、そのルーツ、変転・発展の歴史、そして「タモリ」という存在を日本の戦後史と重ね合わせながら検証する本書は、戦後70年を迎えたいま、特に興味深い一冊です。
     タモリの70年はどこを切り取ってもほんとうに興味深いのですが、早稲田時代のタモリの一面を紹介して終わりとします――タモリは1965年春に早稲田の文学部に入学しますが、女優の吉永小百合も同じ年に早稲田の第二文学部に入ります。中学の時に週刊誌で写真を見たのをきっかけに吉永小百合の熱烈ファンとなったタモリにとって、吉永小百合は映画スターという次元を超えた「いてくださればいい」という存在だったそうです。
    〈その憧れの人が自分と同じ大学に進んだことを知ったのは入学直後だったという。(中略)学生食堂でラーメンを食べていたところ、たまたま前の席に吉永が座り、トーストを食べ残して立ち去った。それを持って帰ろうか迷っているうちに食堂のおばさんが片づけてしまった〉

     吉永小百合の食べ残したトーストをじっと見つめ、息を詰めるタモリ青年の姿が目に浮かびます。本書で知ったタモリの青春の断面です。(2015/9/18)
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    投稿日:2015年09月18日
  • かつて、タモリが埼玉県のことを「○サイタマ」(○に入る文字、わかりますよね!?)と言ってからかった頃から、とかくネタにされがちな埼玉県。『埼玉最強伝説』…書名からして、なんだか期待してしまいますねぇ。その期待に違わぬ内容なのですが、犬木加奈子が描いた!という点にこの本の絶妙さが現れています。代表作『不思議のたたりちゃん』『不気田くん』で知られるホラー界の女王が、埼玉をどう描くのか! 恐る恐るページをめくるのですが、読み始めは違和感を拭えませんでした。描いている内容はギャグなのですが、登場人物の絵のタッチがあの背筋ゾクゾクの犬木ワールド! いつ目玉が飛び出たり、脳が割れるんだろう…この女は実は口裂け女なのか…てなことを頭の片隅に置きながら読み進めるんですが、ご安心あれ!? この本に恐怖シーンは登場しませんでした。埼玉在住の犬木が郷土自慢と卑下を繰り返すのですが、面白いのはライバル千葉や憧れの神奈川、東京との対比の場面です。また、埼玉県内の各市の擬人化にも笑わされます。読後、私も素敵な埼玉の虜になってしまった、と埼玉県まで徒歩1分以内の住人は感じたのでした。
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    投稿日:2015年09月18日
  • 「世界最高の職場」グーグルの人事・福利厚生の仕組み
    世界でいちばん多くの人が日常的に使うインターネットの検索エンジンを開発し、今ではメガネ型のウェアラブル端末や、自動運転車など、独創的で最先端の製品やサービスを提供する、最強のクリエイティブ企業、グーグル。40カ国に70以上のオフィスを置き、約6万人の従業員を擁する同社は、米国をはじめ、さまざまな国で「最も働きたい会社」に指名されてきた。本書では、そんな“憧れの会社”であるグーグルの人事トップが、同社の採用、育成、評価、福利厚生などの仕組みを惜しみなく紹介している。どのような理念のもと人材を選び、それぞれの社員にどんなチャンスを与えているのか、同社ならではのノウハウを学びながら、経営のあり方や働き方を考えるヒントを得ることができる。
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    投稿日:2015年09月18日
  • 会社を継ぐ人、子どもに継がせたい経営者、必読!
    規模の大小、業種を問わず、企業を永続させていくためには、事業承継をスムーズに行うことが欠かせない。二代目、三代目といった「後継者」の手腕が、企業の持続的成長や存立そのものの鍵になることは間違いない。本書は、あらゆる企業に共通する「後継者」にスポットを当てる。先代(中小企業では肉親であることが多い)が経験からつくりあげてきたものをいかに継承し、発展させていくか。先代や古参の社員たちとどのように接するべきか。経営者としての資質をいかにして高めていくか。「事業発展計画書」作成など具体的な手法も含め、後継者が“なすべきこと”“考えておくべきこと”を指南。その内容は、後継者以外にも応用できる優れたリーダーシップ論にもなっている。
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    投稿日:2015年09月18日
  • 匿名希望
    ネタバレあり
    最後の落ちがない
    テーマは、ブラックジャックのような天才医師ではない研修医がひたすら治療法のない病気に感情任せに立ち向かう話です。医者と言うより、正義の見方とか救世主の類いかな。
    私も、病気持ちなので、知っていますが、医者が治せる、いや、有効な治療手段のある病気は想像以上にあまりありません。
    私の感覚的には、たぶん半分もない。歯科医、眼科、外科とかは治療法がある。内科は半分はまじないレベルで、自然治癒の補助だけ。精神科は、効果的な対処薬があるが、根本治療薬はない。一番ひどいのは耳鼻科で原因はおろか聴覚から発信されている電気信号ではなく、患者が感じている聴力でしか病状把握できない。つまり、全く何が起こっているかわからず、あてずっぽうの治療をしているイメージ。当然、難聴の原因も不明だし、治療法は全く無し。まあ、人工ないじくらいかな。
    病気の多くはどちらかというと、医者にかかっていると安心というだけの場合が多い。
    その現実を主人公はひたすら行動で変えようとします。答は、今現在の医学では回答のないものばかり。つまり、善意の押し付けすれすれです。回答がないテーマなので、当然漫画の落ちがありません。
    漫画のせりふにもありますが、たぶん救いは宗教とか哲学とか、、いや、まじないとか、占いとかの類い、いや、愛とか、家族とか友情とか医学の外にしか回答がないと思います。
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    投稿日:2015年09月17日
  • 匿名希望
    ピンチョンの解説はついていません。
    内容は星五つです。
    旧訳版既読の方は気をつけてください。
    • 参考になった 2
    投稿日:2015年09月17日