電子書籍の漫画(マンガ)・コミック品揃え世界最大級!

  1. 電子書籍TOP
  2. おすすめまんが・電子書籍まとめ!
  3. まんが家まとめ
  4. 思春期の隠された欲望が顕にされる『美しい犬』ハジメ(施川ユウキ)インタビュー

ハジメ(施川ユウキ)インタビュー

憧れの巨乳同級生と親密になり、兄の彼女に迫られ、そして妖しい魅力を放つ犬と出会う……。一見羨ましい(?)状況に思えるが、そうではない『美しい犬』で描かれるのは、主人公・森澤フミオの日常が、二人と一匹によって壊されていく様だ。
翻弄されながらエロスに見せられていくフミオの姿を見ていると、懐かしいという言葉で済まされない、思春期の【気持ち悪さ】を思い出させる。この居心地の悪い物語は、どのようにして生まれたのか? ハジメとして『美しい犬』原作を執筆された施川ユウキ氏に話を伺った。

『美しい犬』原作者・ハジメ(施川ユウキ)インタビュー

エロとエロじゃないものの融合

――『美しい犬』は全編通してエロスが漂っていますが、どのような経緯ではじまったのでしょうか

「原作でなにかやりませんか」というオファーがあって、原作でやるからには、カワイイ女の子とか、自分の絵じゃ描けないものをと考えていました。だから当初からテーマとしてエロスはありました。

――『美しい犬』というタイトル通り、謎の犬がエロスを漂わせていますよね

最初に、「エロっぽいニュアンスがある【なにか】を登場させる」というぼんやりとしたイメージがあったんです。ただ【なにか】がなんで犬になったのかというところなんですけど……なんでだろう(笑)。
 ……思春期には、エロスを変なものに結びつけてしまうことが、あるんじゃないかと思っているんですが、その対象として犬なんです。猫も考えてみたんですけど、猫って小さいじゃないですか。やっぱりでっかいほうがいいかなというのがありました。

――大きいほうがいいというのはどういうことでしょうか

『美しい犬』は【さわる】ということもテーマのひとつになっていて、でっかいほうがモフモフ感というか、触り心地があるかなと。人のサイズに近いといいますか。

(『美しい犬 (上)』より)

『美しい犬』の主人公フミオは、目の前の野良犬が放つエロスに魅せられてしまう…(『美しい犬 (上)』より)

――エロスのイメージはご自身の体験をもとにされているのでしょうか

犬とかではなかったですけど、「これで謎の興奮をしているのって俺だけじゃないだろうか」ということはあったと思います。
 打ち合わせでもそういう話をしていました。

――他人に言えない秘められたエロスですね

エロってごく私的なことだから、本当の意味で明るくはならないじゃないんですかね。人と話せるシモネタは「よそいきのエロ」で人に見せる用。人に見せない用の、ものすごい内向きの隠されたモノは別にあるんだろうなって思います。

――同級生の副乳を触るシーンも、ストレートではないからこそのエロスがあります

副乳こそ、まさに【隠された乳房】なんです。

――『美しい犬』のストーリーはどのように構想されたのでしょうか

『美しい犬』の場合は、主人公フミオがどんな風にヒナコに近づいて、それから距離が離れていくのか。それと同時に、犬がやって来てフミオの心をかき乱していくというのを、まず考えていました。そして、最終的に破綻すると。どう破綻するかまでは、最初は考えていなかった。

(『美しい犬 (上)』より)

フミオが憧れる同級生ヒナコ。巨乳でカワイイ普通の女の子。一部の女子グループからは嫌われている(『美しい犬 (上)』より)

――『美しい犬』は主人公の少年フミオが色んな女性から誘われる話ですね。

フミオからは誘わない…というか、誘うキャラクターが想像できないという感じがありました。少なくとも主人公には、作者である自分の中にある一面を投影するので、そうなると、受け身にならざるをえないんです。
 彼が体験する異性とのエロい体験と、それと同時にあやしい犬とが混ざり合っちゃって、頭のなかで一緒につながる。リアリティの違うものが並列されてしまうということ、かな。

――フミオを惑わす一匹とふたりの女性をどのように考えられたのでしょうか

犬は、ミステリアスな【謎】そのものだと思うんですよ。ヒナコの方はわりと普通というか常識的な女の子。兄貴の彼女は…なんだかよくわからないただの怖い女ですかね。

――フミオを振り回す兄貴の彼女の意図が見えないのが怖いですね。

彼女は主人公に対して怖い面しか見せてきてない感じがあって、わかりやすく悪者なんです。でも、ああいう面が隠されていたら嫌だ、もっとスゲー怖いなって思います。

(『美しい犬 (上)』より)

出来の良い兄貴の彼女。兄貴の不在を狙ってフミオを誘惑しようとする(『美しい犬 (上)』より)

ネーム原作からシナリオ原作へ

――『美しい犬』の原作はネームでつくられていたのでしょうか?

ネーム原作ではなくて、シナリオ原作というかプロット原作。全て文章です。『少年Y』のときはネーム原作でしたね。

――自分の文章が絵になるのを見てどのような感想をもたれましたか

なるほど、こうなるのか!って感じで面白いです。自分じゃ描かない構図とかたくさんありましたね。
 あと、セリフ自体にあまり自分を出したくなくて、『美しい犬』はモノローグを減らして、難しい言い方をしないようにしています。あまり、この作者らしいと思わせるような手クセっぽいセリフ回しをしたくなかったというか …主人公は割と即物的な言い回しをしていると思います。
 一切セリフがなく無言のままで進展するシーンも多く、オオイシ先生に表情とか見せ方で表現してもらいました。

――キスしようとしているところを犬に見られるシーンなど、セリフのない印象的なシーンも多いのですが、どのようにシナリオに書かれているのでしょうか

雰囲気を伝えるために、ショートショートの小説っぽく書いていたと思います。
 キスシーンは細かく「嫁と一緒にいるところを愛人に見られるイメージです」って注釈を入れていました。犬に連れられて山に入るところは「メーテルについていく鉄郎のイメージ」とか。これこれこういうことを意図していますとか、そういった書き方もしていました。

(『美しい犬(下)』より)

ヒナコとキスする寸前のフミオを、犬が冷たい目で見つめている(『美しい犬(下)』より)

――もう一つの原作作品『少年Y』はどのような経緯で生まれたのでしょうか

『サナギさん』を連載していた頃に、原作をやってみないかという話があって、その時に第一話のネームだけは出来たんですよ。でも第二話以降がまったく出来なくて、そのまま放置していました。それが、いつのまにか連載が決まっちゃって「やべえ考えないと」って感じですね。

――『少年Y』のようなシチュエーション・スリラーものは好きだった?

そうですね。映画の『Cube』(ヴィンチェンゾ・ナタリ監督 1997年公開)とか好きですね。第一話に出てくる【四方の壁が迫ってくる映画】は、『Cube』の類似タイトル映画(※)のことですからね。

――『美しい犬』は最後までぼんやりとした流れを決められていたとのことですが、『少年Y』も最後まで構想されて始めたのでしょうか

連載が決まったので、急いで一巻分までのネームを作ったんですよ。ラストもなんとなくイメージできていたので、「その間をどうしよう」というのが連載中でしたね。【グッズ】のアイデアがすぐ出てくるわけではないので、毎回大変でした。

(『少年Y(5)』より)

『少年Y』では主人公たちが超常的な力を持つグッズを用いた奇妙なゲームに命をかけることになる(『少年Y(5)』より)

――ネーム原作とシナリオ原作の違いはどこにあるのでしょうか

手間という意味ではシナリオの方が楽ではありますけど…。シナリオのほうが、あくまでシナリオ部分を担当するって割り切りがあって、自分の領分がはっきりしています。
 ネームまでやったり細かいことに口を出したりすると、どんどん自分の理想の形を要求しがちになっちゃうんだけど、それは、あまりよくないなと思っています。それって突き詰めれば、自分で描けよって話になりますから。

※『Cube』は、立方体で構成された謎の空間に閉じ込められた男女が、トラップを避けながら脱出を図る作品。話題となった結果、「cube」をもじった作品が多く出回った

次のページへ社会から切り離されたユートピアへの憧憬

©ハジメ/オオイシヒロト(秋田書店)
©ハジメ/とうじたつや(秋田書店)

ハジメ作品はこちら

美しい犬

美しい犬

高校2年生・森澤フミオの日常は、ある日を境に一変する。級友の巨乳、年上女性の痴態、白く美しい犬…。思春期の性は静かに崩壊し…!? 背徳トリビュートサスペンス!!

購入・詳細

少年Y

少年Y

転校初日、栗原ユズルが初めての教室に足を踏み入れると、教室にいる全員が死んでいた…。呆然とするユズルの前に現れたのは、自称・神様見習いの少女・ワビコ。ワビコはユズルに、死んだ人間の中から生き返らせる一人を選べとせまる。まだ、顔も名前も知らない人たちの中から、どうやって一人を選び出せばいいのか? 命をかけたゲームがはじまる

購入・詳細

施川ユウキ作品はこちら

このエントリーをはてなブックマークに追加

▲トップへ