書籍の詳細

母とふたり、ボストンで暮らす15歳の少年ジェルミ。友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていた彼の日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。絵に描いたような理想の義父の中には、恐るべき悪魔の顔が潜んでいた。サンドラの幸福を盾に、ジェルミに肉体関係を迫ったのだ。苦痛と苦悩に満ちた地獄の日々が始まった。愛と憎悪、喜びと悲しみ…綾なす複雑な人間の感情を、萩尾望都が熟練のペンで描き切った壮大なるヒューマン・ドラマ、開幕。

総合評価
5.0 レビュー総数:3件
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残酷な神が支配するのレビュー一覧

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  • 匿名希望
    強烈な追体験
    本を読んでここまで強烈な追体験をしたのは初めてでした。フィクションのはずなのにまるで登場人物が本当に実在しているかのようです。肉薄したリアルな心理描写が痛いほど心に流れ込んできて、憑依でもしたかのようにどうしようもなく胸が苦しく、切なくなりました。今までいろんな作品を見てきましたが、そういった意味で自分の中では他の作品とは明らかに一線を画す存在です。
    • 参考になった 1
    投稿日:2017年02月11日
  • 匿名希望
    救済
     同性愛というよりは人間愛を描いているという評に大変共感いたしました。
     この作品は、思春期の私を救ってくれた作品の一つです。
    私は一時期、血縁者に継続的に性的ないたずらをされていた時期があり、実行には移さないまでも相手に明確な殺意を抱いていたこともありますし、他の家族やパートナーや友人に経験を打ち明けるか悩みもしました。一部に打ち明けたことにより様々な葛藤や問題も生じ、それを都度乗り越えてきたつもりです。周囲を完全に拒絶しようとしたり、登場人物同様、母親から無意識の強い抑圧を感じたり、誰も愛せないのではないかとか、自己肯定感の欠如に悩んだ時期もあります(性被害については秘密裡に問題は現在では解決しています)。
    登場人物にかなりの深度で感情移入して読んでいました。悲劇の主人公ぶるつもりはありませんが、この作品によって私の内面に救われた部分があるのは事実です。
    こんな私でも生きていて良いんだとか何か役に立つことはあると、当時思わせてくれたのはこの作品のおかげです。
    私の個人的経験はともかく、それだけ力がある作品だということです。
    意外に、構造的には普遍的な共感性を持った作品なのではと感じます。私は、性的マイノリティや同性愛やその表現についてはむしろ理解が浅い方かと思います。虐待描写は手が震えたりして未だに読むのに困難を覚えることもあります。
    しかし、この作品には普遍的な共感性があると言い切れます。
    その普遍的な共感性とは、思春期の危機からの生還であり、自己の確立であり、登場人物の様々な愛の形が人間愛に昇華している部分なのではないかと思います。
    キーワードにひるまず、先入観を捨てて、むしろ男性にこそ読んで欲しいです。
     性的マイノリティや生殖のあり方について目にする機会が増えました。この作品に関わらず、萩尾先生の作品群は、決して特定の思想や政治的意図に偏りすぎた物とは私は感じませんが、そんな今だからこそ、多くの方に触れて欲しいと思います。
    • 参考になった 5
    投稿日:2016年04月12日
  • 言わずと知れた少女漫画界の巨匠・萩尾望都先生の描く、性的虐待、ドメスティック・バイオレンス、同性愛、未成年の売春など、さまざまな社会的問題をテーマとした衝撃的な作品。
    萩尾望都先生と言えば、『トーマの心臓』『ポーの一族』など、耽美な少年たちの同性愛風味な作品を多く排出しておりますが、同性愛という意味ではこの作品は格が違います!
    まさか萩尾望都先生が…!?というような生々しい描写が満載で、パソコンの前で悶絶したほど。それもかなりハードな内容なんです。。
    もちろんそれがメインではなく、この作品の凄さは、その内容の深さにあります。
    ストーリーは、主人公の少年・ジェルミが、母の再婚をきっかけに、義父に性的虐待を受けるところから始まります。
    母親の幸せを願うばかりに誰にも救いを求められず、エスカレートする虐待行為に、次第にジェルミの心は壊れ、物語は最悪な事件へと向かっていきます。
    ジェルミがあまりにも可哀想で痛々しくて、読むのがかなり辛く、目を背けたくなるような場面も多々ありました。
    最近のBL作品のハッピーエンドな甘さに慣らされていた私は、この作品を読んであまりの衝撃に熱を出しました(笑)
    それほど魂に訴えかける力があります。
    でも辛いばかりではなく、物語後半は、ジェルミをどん底から救い出そうとする義兄・イアンと、トラウマから立ち上がろうとするジェルミの精神的な部分での深い繋がりも丁寧に描かれていて、最後は希望が持てるような終わり方になっています。
    また、この作品の見どころは、登場人物がとてもリアルだということ。
    人間の葛藤・憎しみ・嫉妬・裏切り・愛憎と、人の心のドロドロした部分が巧みに描かれています。
    心理描写がまた見事で、登場人物の感情が痛いほど伝わってきました。
    同性愛というよりは、様々な形での人間愛が描かれた作品ではないかと思います。
    少女漫画の域を超越した次元にある、文学的要素を多く含む素晴らしい名作なので、老若男女問わず、全ての方に是非読んでいただきたいです。
    • 参考になった 7
    投稿日:2009年08月28日