書籍の詳細

大正初期の東京の風景を詩情溢れる百枚の画と百編の短文とで表す「東京物語」。一種の東京歳時記であり、東京案内でもある。

まだユーザーレビューはありません。最初のレビューを書いてみませんか?

東京の印象のレビュー一覧

絞込み条件
  • レビュアー絞込み
表示形式
  • 表示件数
  • 表示順
  • 左ページに一枚の絵、右ページに文という構成の画文集で、おおかたは東京の地名に由来することが描かれています。1914年(大正3年)1月、当時文芸書を手がける一方で『赤門生活』や『早稲田生活』といった楽しめる本もだしていた南北社から出版された東京案内書は絵と文ともに詩情に富んでいて、大正初期の穏やかな感じが色濃く、100年後のいま読んでも愉しめる本です。もっとも筆者の本間國男は江戸の風情が薄れてきていることを嘆いているのですが、それでもそのころの東京には川端や谷など水辺がちゃんとありました。そして本間圀男の絵と文はそのような「水辺」が人々の暮らしに潤いをもたらしていることを伝えています。現在の東京に「橋」とつく地名は数多く残っていますが、川にかかっていることを感じさせるものは多くはありません。数寄屋橋などその痕跡すらなくなってしまっている地名もあります。この100年あまりの間に喪ってしまったものの大きさを痛感させられます。というわけで、本書をいれたiPadかiPhoneを手に東京巡りをしてみたいと思っているところです。伊皿子(現在の港区三田、高輪一帯。間近に東京湾を眺めることができた高台の町として知られていた)、日本橋、両国、お茶の水、目白台、鶴巻町・・・・・・何が残り、どこまで変わっているのか、興味はつきません。この本を見ながら、ゆっくり見てみたいのが東京駅です。「中央ステーション」と題し工事中の東京駅の絵に添えた一文は辛辣です。〈見給え、中央ステーションを・・・・・・実に不快な建物ではないか・・・・・・矢鱈(やたら)と技巧を弄(ろう)した屋根、非美術的な丸柱、瓦(かわら)と石との醜悪(しゅうお)なる色調――そうだ、牢獄(ろうごく)――囚人の吐息つく、暗い暗い牢獄そっくり〉本書出版の2か月後、1914年(大正3年)3月に辰野金吾らの設計による東京中央停車場(現在の東京駅)が完成しました。(2010/11/5)
    • 参考になった 2
    投稿日:2010年11月05日