書籍の詳細

海上自衛隊の本質とは??。創設の全容が、今明らかになる。海外戦時派遣など活動が大きく広がる海上自衛隊。その創設の全容を記した機密文書「Y文書」全九冊。一般に知られることなく保管されていた「Y文書」をNHK取材班が独自に入手。終戦直後からの旧海軍軍人グループの再建工作、そして米国との機密活動など、海上自衛隊という組織の本質を追及した迫真のノンフィクション。

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海上自衛隊はこうして生まれた 「Y文書」が明かす創設の秘密のレビュー一覧

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  • 田中真紀子さんが「パパ、しっかりしなさいよ」と背中を押したのかどうかはわかりませんが、夫である田中直紀防衛相の迷走ぶりは見るに耐えない惨状でした。とりわけ、大臣になって初めて臨んだ衆議院予算委員会で、憲法9条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるにもかかわらず、なぜ自衛隊をもつことができるのかという問いに対して田中防衛相は答えることができなかった。朝日新聞主筆の若宮啓文氏の記事(2月5日付け朝刊の「座標軸」)によれば、質問者の自民党・石破茂代議士があきれて、2項冒頭に「前項の目的を達するため」と挿入した芦田修正が自衛隊を合憲とする根拠となったと教えると、大臣は「私自身は理解しておりません。先生のご知見を拝聴しながら、よく理解したいと思います」と答えたそうです。「前項の目的」とは、9条1項の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」をうけてのもので、国権の発動による戦争などを目的としないのだから、自衛隊をもてるという解釈が自民党時代から一貫して日本の政府の立場となってきています。自衛隊の存在をめぐる憲法解釈は日本の政治に携わる以上、熟知しているべき基本的な知識です。官僚に任せておいてもいい技術論ではありません。さて、今回紹介する『海上自衛隊はこうして生まれた 「Y文書」が明かす創設の秘密』は、防衛問題の基本中の基本である憲法9条と自衛隊問題を理解していないと言ってのけた防衛大臣に、ぜひともお読みいただきたい一冊です。著者であるNHK報道局「自衛隊」取材班のスタッフたちがそれまで封印されてきた海上自衛隊創設に関する重要記録を入手、海上自衛隊は誰のどのような意図に基づいて創設されたのかを徹底追跡したドキュメンタリー作品です。海上自衛隊は1952年4月海上保安庁内に海上警備隊として産声をあげました。2年前の1950年には朝鮮戦争勃発をうけて警察予備隊(陸上自衛隊の前身)が創設されていました。そういえば、田中大臣、国会答弁でこの「警察予備隊」を「警察予備軍」と言い間違えて野党から痛烈なヤジを浴びていました。それはともかく、警察予備隊と海上警備隊は1954年に防衛庁が新設されると同時に、合流して「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」に改組され、今日に至っているのですが、陸上自衛隊と海上自衛隊はその成り立ちが異なり、そこから組織としての性格も大きく異なっているようです。一言で言えば、陸上自衛隊が旧陸軍関係者をシャットアウトして旧内務官僚の手によって創設されたのに対し、海上自衛隊創設は旧海軍人脈による海軍の再建を目指すものだったということです。そしてそこには常に同盟関係にあるアメリカの存在がありました。つまり日米海軍の人脈ネットワークが秘かに進めた日本海軍の再興だったのです。取材班を代表して藤木達弘チーフ・プロデューサーは「終わりに」にこう書いています。〈海上自衛隊の活動は拡がり続けている。二〇〇二年十二月には、議論があった最新鋭イージス護衛艦「きりしま」が、アフガニスタンの対テロ支援の後方支援としてインド洋に向けて出港、二〇〇三年三月、海上自衛隊がインド洋で実施している燃料補給活動を米英以外に拡大することを政府が決定した。そして二〇〇三年五月、小泉首相は国会で「自衛隊は実質的に軍隊」と述べるに至っている〉自民党から民主党への政権交代後もこの動きに変化はありません。議論に耐えられないお粗末な大臣で大丈夫なのか。海軍復活を目指して海上自衛隊が創設されて60年。改めてその原点を見つめ直した労作です。(2012/2/17)
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    投稿日:2012年02月17日