書籍の詳細

一強と持ちあげられ、自民党総裁として異例の三選を取り沙汰されてきた安倍晋三総理大臣。その権勢に陰りが見え、支持率が急落した原因は、何といっても学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題だった。総理自らが「腹心の友」「四十年来の親しい友人」という加計氏側に有利に運ぶように、政治的な圧力はあったのか。次々と明らかになる文科省の内部文書や、前事務次官の告発などで、追い詰められた総理はついに解散に打って出た――。徹底した取材を元に、疑惑の全貌を明らかにするノンフィクション。政界・官界・業界団体・地方自治体などの利害が複雑に絡み合った糸を解きほぐし、現在の日本の最高権力の驚くべき核心に踏み込む力作だ。第一章 第二の加計学園第二章 悪友サークル第三章 加計の野望第四章 海外進出の手助け第五章 政治とビジネス「商魂」第六章 国家戦略特区というレール第七章 下村文科大臣の献金疑惑第八章 前川の乱「疑惑の核心」第九章 内閣府VS文科省第十章 延期された学部の設置認可終章 政権延命の末

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悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞のレビュー一覧

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  •  どこからどう見ても茶番劇である。
     安倍晋三首相の「腹心の友」が掴み取った獣医学部新設。昨2017年7月の衆議院閉会中審査で、「腹心の友」加計孝太郎理事長との関係を問われた安倍首相は「今治市の獣医学部が加計学園だと知ったのは2017年1月20日」と答弁しました。
     首相肝いりの国家戦略特区での認可がヤマ場を迎えた2016年1年間だけでも安倍首相と加計孝太郎理事長は7回も食事もしくはゴルフを共にしていたという厳然たる事実(詳細は後述)があります。それにもかかわらず二人の間で獣医学部新設問題が話題に上ったことは一度もなかったと安倍首相は言い張ったのです!
     1年の間に7回も会食やゴルフを繰り返しながら加計理事長が13年以上にわたって取り組んできた宿願の獣医学部新設が話題にすらならなかったというのは、どう考えても不自然だ。誰が聞いても嘘とわかること──作り話ではなかったか。
     国会で追及された安倍首相は食事代、ゴルフ代を自分が持つこともあれば、加計理事長が払うこともあったと認めてしまった。もしその場で獣医学部の件を話し合っていたとしたら「供応」になってしまいます。安倍首相には国家戦略特区に関する決定権限があるのだ。そのため獣医学部の問題が話題になっていたとは口が裂けても認めるわけにはいかず、苦し紛れの弁明でごまかそうとしたのです。もはや国会の場で演じられた茶番劇と言うほかない。

     日本の最高権力者と腹心の友を深い闇が包み込んでいる。その闇に分け入り、徹底取材によって加計疑惑の核心に迫る森功の新著『悪だくみ』(文藝春秋、2017年12月15日配信)が、面白い。悪巧みの中心にいるのは言うまでもなく、安倍首相と加計理事長の二人です。リラックスしてソファーにもたれ、ワイングラスを手に持ち、ポーズを決めている二人が写るブックカバーのカラー写真からは「悪巧み」が匂い立ってくるようです。この写真、もともとは安倍昭恵夫人がフェイスブックになぜか、「男たちの悪巧み」と題してアップしていた2015年クリスマスイブパーティのときのもの。
     昨年7月末に逮捕された森友学園の籠池夫妻は、保釈が許されずに勾留されたまま2018年を迎えました。その森友とセットで「モリ・カケ疑惑」と呼ばれる加計学園問題は、表面化したのが森友の後だったことからマスメディアは「第二の森友」と騒ぎ立てたが、実は加計の方が安倍首相との関係は長く、深い。むしろ、森友を「第二の加計」と呼ぶべきなのだと、著者の森功は指摘する。第一章「第二の加計学園」から引用します。

    〈昭恵の(瑞穂の國記念小學院)名誉校長就任には、前段がある。昭恵を名誉校長として迎え入れようという発想は、籠池独自の発案ではない。日頃から各種団体の講演やゲストに招かれ、どこへでも出向く昭恵は、森友以外にも学校法人の名誉職を引き受けてきた。その一つが、兵庫県神戸市に開園した加計学園グループ「御影インターナショナルこども園」である。
    「小学校を開設されるなら、すごくよい教育をしている学校があるから、見学に行ってみてはどうですか」
     瑞穂の國記念小學院の名誉校長を引き受けるにあたり、昭恵は森友学園理事長の籠池をそう誘った。自らが名誉園長としてさまざまな行事に参加してきた加計学園の御影インターナショナルこども園を手本にするよう、籠池に示唆したといえる。
     そしてこの年の十月十四日、籠池は夫人の諄子(じゅんこ)や長女の町浪(ちなみ)を引き連れ、御影こども園を視察に訪れた。
    「お金儲けばかり考えている雰囲気やった」
     驚いたことに、視察後、籠池の妻諄子が、そう昭恵にメールを送っていたことまでのちに明らかになる。馴れ馴れしく鼻っ柱の強い詢子らしい逸話でもある。(中略)
     加計学園の獣医学部開設が問題になったとき、マスメディアは「第二の森友」と騒ぎ立てた。繰り返すまでもなくその理由は、森友学園の瑞穂の國記念小學院と同じく、昭恵が加計学園の御影こども園の名誉園長になっていたからにほかならない。しかし順序から言えば、それは逆である。森友学園の籠池は、加計学園を真似て、昭恵を新設小学校の名誉校長に据えようとしたに過ぎない。
     またそれだけではない。籠池夫妻が御影こども園の視察をした翌一六年二月十三日のことだ。
    「英数学館小学校も見に行かれたらいいですよ」
     安倍昭恵は籠池に電話し、広島県福山市の「広島加計学園英数学館小学校」を見学するよう薦めた。実際、籠池ファミリーは電話から二日後の十五日、広島まで出向いて小学校を視察している。
     加計学園の存在は、巷でいわれてきたような「第二の森友」というより、むしろ森友を「第二の加計」と呼ぶほうがふさわしい。安倍政権を追いつめた二つの疑惑には、あまりに共通点が多い。〉

     共通点も多いが、決定的な違いがある。安倍昭恵夫人の薦めなどがあって加計学園の後を追いかけた森友の籠池夫妻は塀の中に勾留され、真似をされた加計理事長は4月獣医学部開校のカウントダウンに入った。安倍首相と一面識もなかった籠池泰典元理事長とヤマ場の年に7回も酒食などを共にする加計孝太郎理事長の運命の分かれ道──二人の“接触”の記録を本書に沿ってなぞってみよう。第二次安倍政権が発足した明くる2013年以降、二人の名前が出てくる全国紙の首相動静を拾い上げたものです。
    [2013年]
    (1)11月18日午後6時33分、東京赤坂の日本料理店「佐藤」にて加計孝太郎学校法人加計学園理事長らと食事。
    [2014年]
    (1)6月17日午後6時30分、東京・芝公園のフランス料理店「クレッセント」にて三井住友銀行の高橋精一郎副頭取、学校法人加計学園の加計孝太郎理事長らと食事。
    (2)12月18日午後7時4分、東京・銀座の中国料理店「飛雁閣」にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計学園の加計孝太郎理事長と食事。
    (3)12月21日午後6時55分、東京・赤坂の日本料理店「燻」にて昭恵夫人、加計孝太郎学校法人加計学園理事長らと食事。
    [2015年]
    (1)8月15日午後5時40分、山梨県鳴沢村の別荘にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長、本田悦朗内閣官房参与らと食事。
    (2)8月16日午前7時、山梨県富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長、本田悦朗内閣官房参与とゴルフ。
    (3)9月21日午前7時57分、山梨県鳴沢村の「鳴沢ゴルフ倶楽部」にて加計学園の加計孝太郎理事長、友人、秘書官とゴルフ。
    [2016年]
    (1)3月18日午後6時36分、東京・赤坂の日本料理店「佐藤」にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長と食事。
    (2)7月21日午後6時25分、山梨県富士河口湖町の焼き肉店「鉄庵」にて渋谷耕一リッキービジネスソリューション社長、加計孝太郎学校法人加計学園理事長と食事。
    (3)7月22日午前7時19分、山梨県山中湖村の「富士ゴルフコース」にて渋谷耕一リッキービジネスソリューション社長、加計孝太郎学校法人加計学園理事長らとゴルフ。
    (4)8月10日午後6時21分、山梨県富士河口湖町の居酒屋「漁」にて加計孝太郎学校法人加計学園理事長、秘書官らと食事。
    (5)8月11日午前6時42分、山梨県山中湖村のゴルフ場「富士ゴルフコース」にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長らとゴルフ。
    (6)10月2日午後6時、東京・宇田川町の焼き肉店「ゆうじ」にて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、増岡聡一郎鉄鋼ビルディング専務、加計孝太郎学校法人加計学園理事長らと食事。同席昭恵夫人。
    (7)12月24日午後6時2分、東京・丸の内の鉄鋼ビルディング南館内のエグゼクティブラウンジにて高橋精一郎三井住友銀行副頭取、加計孝太郎学校法人加計学園理事長、昭恵夫人らと食事。(いずれも肩書は当時のもの)

     著者の森功は〈全国紙の首相動静で確認できただけでも、二人は今治市の国家戦略特区構想が大詰めを迎えた一六年一年間に七回も膝を交え、語り合っている〉とまとめているのですが、2014年3回、2015年3回だったのが、認可問題がヤマ場を迎えた2016年になると7回に倍増しているのです。申請の話はしていないと言い張る安倍首相の言葉を信じろというのは無理があると思うのが普通だろう。

     疑惑が発覚して以降、一切の説明を拒んで沈黙を続けてきた加計理事長は2017年11月10日、文科省の答申を受けて「本日、13年以上にわたって構想実現に取り組み、愛媛県、今治市とともに構造改革特区で15回、国家戦略特区で1回の計16回に及ぶ申請の結果、ようやく岡山理科大学獣医学部に係る答申が文部科学省より発表されました。(中略)獣医学部設置を発想してから、紆余(うよ)曲折を経て、今回の答申にようやくたどり着きました」とコメントしました。
     確かに長い道のりでした。加計学園にとって獣医学部は計16回の申請を重ねた今治以前の前史があったと本書は明かしています。2001(平成13)年秋に加計学園の東京進出の橋頭堡となる千葉科学大学構想(千葉県銚子市)が動き始めますが、構想には当初獣医水産学部が含まれていました。結果的には薬学部、危機管理学部の2学部でスタートするのですが、獣医学部新設はこの時から加計理事長が抱き続けてきた野望でした。そして加計孝太郎による学校法人経営の歩みに寄り添うかのように、安倍晋三の足跡が、くっきりと刻まれている──筆者はそう指摘しています。

     なぜ、獣医学部なのか。〈第五章 政治とビジネス「商魂」〉より引用します。

    〈岡山理大のオープンキャンパスで配られていた獣医学部のチラシを見ると、そこには初年度の入学金や授業料が掲載されていた。獣医学科の入学金が二十二万円、年間授業料が百五十万円、そこに実験実習費の二十八万円と施設整備費の五十万円が加わり、合計二百五十万円となっている。定員百六十名(引用者注:最終申請では定員を140名に縮小)としているので、初年度に限っても四億円が大学の収入となる。二年目からは入学金がかからないが、授業料などで一人当たり二百四十三万六千円となっている。仮に六年生まで学生が埋まれば、年間十九億四千八百八十万円、トータルでざっと二十三億円が大学に転がり込む計算になる。
     また、獣医学科のほか定員六十人の獣医保健看護学科も併設されるので、こちらの初年度の授業料などが百五十三万円。同じように計算すると、加計学園には初年度九千百八十万円、四年生まで埋まると年間三億五千六百四十万円の収入となる。二つの学科を合わせると、年間収入は実に二十七億円に上るのである。〉

    “正規の学費”だけで年間27億円が見込まれるというわけですが、実は入ってくるのはそれだけではないという。筆者は、日本獣医師会顧問の北村直人(元自民党代議士)の解説によって大学ビジネスの実情に迫ります。

    〈「受験生はまず既存の十六大学を目指すでしょう。そこで引っかからなかったら、加計へ行く。仮に定員が計画どおりの百六十人だとすれば、法律上半分の八十人を推薦枠で入学させることができます。その場合、入学希望者に寄付金を持ちかけるのではないでしょうか。獣医学部に行かせるような家庭は裕福でしょうから、一人三千万円くらいの寄付を集めるのも、それほど難しくはない。寄付する側は、そのほとんどが税控除の対象になるので、節税効果もあります。で、三千万円を八十人から集めると、それだけで二十四億円。補欠合格という形で、あとから寄付金を募る手もありますので、かなりの金額が加計さんのポケットに入ることになるでしょうね」
     おまけにそこへ国からの私学助成も加わる。加計学園でなくとも、私学にとって獣医学部が垂涎の的になるはずだ。〉

     4月の開校を待つ今治市の獣医学部キャンパス。192億円という巨大な資金が投じられ、その半分が血税で賄われています。
    〈加計学園問題の本質は、忖度政治ではない。教育の自由化や特区という新たな行政システムを利用した権力の私物化、安倍をとりまく人間たちの政治とカネにまつわる疑惑である。〉
     著者の森功は『悪だくみ』をこう締めくくっています。
     加計学園からパーティ券代という名の裏献金を受け取っていた元文科大臣の下村博文代議士とその妻、落選中は千葉科学大学客員教授を務め、後に首相補佐官として国家戦略特区の獣医学部新設を強力に押し進めた萩生田光一代議士、そして安倍昭恵夫人。安倍首相と加計孝太郎理事長を取り巻く人間たちがはたした役割とはなんだったのか。

     1月22日に通常国会が始まります。しかし政府与党からは森友のモも、加計のカも出てきません。野党が真っ先に奮闘すべきは、「アベ友」への利益誘導を図る権力の私物化の徹底解明である。「モリ・カケ疑惑」を忘れさせようとする、いかなる策略も許してはならない──強い思いに貫かれた調査報道の好著をいまこそお読みいただきたい。(2018/1/19)
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    投稿日:2018年01月19日