アキラとあきら

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零細工場の息子・山崎瑛(あきら)と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬(かいどうあきら)。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった――。ベストセラー作家・池井戸潤による幻の青春巨篇がいきなり文庫で登場!!◆2017年7月、WOWOWにて最速ドラマ化決定!WOWOWプライム「連続ドラマW アキラとあきら」出演 : 向井理 斎藤工 小泉孝太郎 田中麗奈 賀来賢人 木下ほうか 堀部圭亮 / 松重豊 / 瀧本美織 永島敏行 尾美としのり 石丸幹二2017年7月9日(日)毎週日曜よる10時より放送 ※全9話 (第一話無料放送)

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零細工場の息子・山崎瑛(あきら)と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬(かいどうあきら)。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった――。ベストセラー作家・池井戸潤による幻の青春巨篇がいきなり文庫で登場!!◆2017年7月、WOWOWにて最速ドラマ化決定!WOWOWプライム「連続ドラマW アキラとあきら」出演 : 向井理 斎藤工 小泉孝太郎 田中麗奈 賀来賢人 木下ほうか 堀部圭亮 / 松重豊 / 瀧本美織 永島敏行 尾美としのり 石丸幹二2017年7月9日(日)毎週日曜よる10時より放送 ※全9話 (第一話無料放送)

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書籍の詳細
  • 書籍名: アキラとあきら
  • 著者名: 著:池井戸潤
  • eBookJapan発売日: 2017年05月17日
  • 出版社: 徳間書店
  • 電子書籍のタイプ: リフロー型
  • ファイルサイズ: 2.8MB
  • 関連ジャンル: 小説・文芸徳間文庫
  • 対応デバイス: WindowsMaciPhoneiPadAndroidブラウザ楽読み

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書店員のレビュー

 5月17日に紙書籍(文庫版、2017年5月21日初刷)と同時発売された池井戸潤の新作『アキラとあきら』(徳間文庫)。向井理、斎藤工主演でドラマ化(WOWOW7月9日スタート)の話題性もあって文芸ジャンルで好調な売れ行きを示しています。
「新作」としましたが、初出は「問題小説」2006年12月号~2009年4月号の連載。執筆時期で言えば、大ヒットドラマ「半沢直樹」の原作小説『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(ともに文春文庫、2013年8月2日配信)、直木賞受賞作『下町ロケット』(小学館文庫、2015年8月14日配信)よりも前で、その3作品よりも後になって――雑誌連載終了8年目に発刊されたオリジナル文庫。「幻の長篇」として池井戸ファンが長い間待ち望んできた作品です。
 主人公は、同じ「あきら」の名を持つ二人――伊豆河津の零細町工場経営者の息子として育つ山崎瑛(あきら)と、日本の海運業の一翼を担う東海郵船のオーナー一族の御曹司、階堂彬(かいどう・あきら)です。工場が倒産したため母と妹の三人で同じ静岡の磐田にある母の実家に夜逃げ同然で転がり込んだ山崎瑛は、幼少時に母など周辺から「アキちゃん」と呼ばれ、また磐田の小学校の同級生で、物語の後半で再会する生涯の友人、三原比呂志とは「アキラ」「ガシャポン」と呼び合う仲ですが、階堂彬が「あきちゃん」とか「あきら」と呼ばれることはありません。階堂家の人々――父の一磨(かずま)、母、二人の叔父たち――の会話では「彬」となっていて、こんなところからも二人の境遇の違いが浮かび上がってくるようです。

 さて、山崎瑛と階堂彬の二人は小学生時代に――河津駅前でかすかにすれ違います。慌ただしい引っ越しで愛犬チビを連れて行くことができなかった瑛少年は一人で磐田から戻ってみたもののチビには会えず、途方に暮れて駅まで戻った時のことです。「ぼく、ひとりかい? どこまで行くの?」若い駅員に訊ねられた瑛が咄嗟に駅舎を飛び出した。

〈耳を劈(つんざ)かんばかりのブレーキ音がしたのはそのときだ。振り向いた瑛の視界を、ヘッドライトの白い光芒(こうぼう)が染め上げる。
 気づいたとき、瑛は道路の真ん中で尻餅(しりもち)をついていた。
 ちょうど顔の前にクルマのフェンダーが迫っており、ピカピカに磨き上げられたボンネットの中でエンジンの回る音が低く響いている。
「大丈夫かい、君」
 そのときドアが開き、慌てた様子で運転手が飛び出してきた。
 黒っぽい上下の服を着、帽子をかぶった男だ。男は、まだ道路に座り込んだままの瑛を白い手袋をした手で起き上がらせてくれ、服についた埃を払ってくれる。
「怪我しなかったかい」
 あまりのことに瑛は答えられず、ただ小さく頷くことしかできなかった。(中略)
 道の真ん中に立っていた瑛は、そっと脇にどいて、見たこともないクルマを改めて眺めた。黒塗りの、見るからに高級そうなクルマだ。さっきは気づかなかったが、ボンネットの先端に、天使のような小さな像がついている。たぶん外車だ。クルマの後部座席の窓が開いて、小さな顔がこちらをのぞいたのはそのときだ。
 瑛と同じぐらいの歳(とし)の少年が、後ろのシートからじっとこちらを見ている。
 髪をおかっぱにしたその少年は、とても興味深そうな目で瑛をじっと見ていた。瑛の友達にはいない印象の子だった。見下すような目をしている。見るからに都会の金持ちの少年だった。その少年は、何か声をかけてくるかと思ったが、結局、一言も発しないまま、クルマは動き出した。〉

 伊豆の別荘で親しい取引先を招いて開かれる恒例のパーティに向かう途中のクルマ。その後部座席に乗っていたのは、私立小学校5年生の階堂彬と3年生の弟、龍馬(りょうま)です。瑛との一瞬の遭遇――彬少年はこんなふうに見ていました。

〈「とても淋(さび)しそうな顔してたな。迷子みたいだった」(中略)
 同じ歳ぐらいの子供だった。ずっと見入ってしまったのは、その子の目に、彬がいままで見たこともないような感情の塊(かたまり)が浮かんでいたからだ。
 単に悲しいというのではなく、単に困っているというのでもない。
 もっと突き詰めた、真剣な──そうだ、あえていえばきっと、「絶望」に近い、そんな目ではないか。
「迷子にはならないよ。きっと地元の子だろうし」
 彬はいった。時間は午後六時をとうに回っている。他所から来た子供があんな顔をして、ひとりでいるはずはない。〉

 後年、ともに東京大学経済学部を卒業した瑛と彬は就職先に産業中央銀行を選びます。東海郵船社長の長男でありながら、あえて定められた道には進まずバンカーの道を選択した彬。一方の瑛は、磐田の小学校、中学校を経て地元では一番の公立高校に進みますが、決して平坦な道ではありません。父親の再就職先の電機部品メーカーが経営危機に直面して一度は大学進学を諦めますが、同じ経験をしてきた若い銀行員の後押しもあって東大に進み、バンカーとなります。銀行員に必死の思いで融資を頼み込む父と母の姿。しかしそれをすげなく拒絶されて倒産、しばらく父と離れ離れに暮らした日々。そして自らは家業の倒産のためにせっかく入った東京の一流大学を途中退学して高卒資格で地元の信用金庫に入り、「瑛を大学に進ませたい」との思いから徹夜で作成した融資稟議書で支店長を説得してくれた若い行員。けっして忘れることのできない経験を積み重ねてきた瑛にとって、「バンカー」という選択には秘めた思いがあったのです。

 二人が入行した産業中央銀行――池井戸ファンならお分かりかと思います。「倍返しだ!」のフレーズで大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」(原作小説は先述の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』です)の舞台、つまり半沢直樹が所属する産業中央銀行は、『アキラとあきら』に先に登場していたことになります。
 同じ音の名前を持ち、全く異なる境遇に育ちながら、同じ銀行に就職した二人。3週間に及んだ新人研修の仕上げ――最後の5日間をかけて行われる融資戦略研修「融資一刀両断」。階堂彬と山崎瑛の直接対決は、物語前半のハイライトの一つと言える圧巻のエピソードです。新入行員300人が3人一組になって融資判断を競う予選を勝ち抜いて決勝に残った彬と瑛のチーム。決勝では彬のチームが会社役、瑛のチームが銀行役となった。会社役の彬チームは100ページ近くもある分厚い資料――本物の会社データを使って融資申込書を作成、銀行役の瑛チームはその融資申込に対して諾否の判断を下す。与えられる時間はそれぞれ8時間。
 損益計算書――売上げ、経費、利益状況・・・・・・子細に見ていった彬は思わず唸(うな)った。

〈「この会社、放っておくと来月ショートするぞ」
 彬はいった。「マジ? いくらだよ」
 栗原も必死になって資料をひっくり返している。
「ざっと見て、三千万から四千万円ぐらい。預金と入金予定だけじゃあ、支払い予定額が賄いきれない」
「げっ」(中略)
「オレたちが経営者なら、どうする?」
 彬はふと口にした。ふたりがはっとした顔でこちらを見た。そのふたりではなく、会議室の虚空を彬は眺め、そして繰り返した。
「もし、オレたちがこの会社を経営していたとしたら、どうすると思う?」
 ある考えが彬の胸に浮かんだのはそのときだった。「何かいいアイデアでもあるのか」
 きいた栗原の顔を、彬は見つめ返した。
「うまくいくかどうかはわからないが──オレにひとつ、考えがある」〉

 階堂彬の頭に閃(ひらめ)いたアイデアとは何か。そして、階堂の企みに対して融資をするかどうかを判断する銀行役の山崎瑛はどう出るのか。階堂のプレゼンテーションも山崎の分析もここではつまびらかにはしません。
〈スリリングだった。これ以上、何も言葉が浮かばない〉と審査委員長席の羽根田融資部長。
〈羽根田は真顔のまま続けた。「銀行は社会の縮図だ。ここにはありとあらゆる人間たちが関わってくる。ここに来る全ての人間たちには、彼らなりの人生があり、のっぴきならない事情がある。それを忘れるな、諸君。儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ。金貸しとバンカーとの間には、埋め尽くせないほどの距離がある。同じ金を貸していても、バンカーの貸す金は輝いていなければならない。金に色がついていないと世間ではいうが、色をつけなくなったバンカーは金貸しと同じだ。相手のことを考え、社会のために金を貸して欲しい。金は人のために貸せ。金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる。だが今日のところは私の説教などどうでもいい。いまは素直に、我らが誇れるバンカーが誕生したことを称(たた)えたいと思う。」〉

 池井戸潤作品に通底する「銀行」の二つの顔――金を人のために貸すバンカーか、金のために金を貸す金貸しかが熱く語られ、その言葉を胸に新人バンカーとして歩き出す二人の「あきら」の物語。

〈幼いころの君は、どんな音を聴いていた?
 幼いころの君は、どんな匂いを嗅いでいた?
 瑛の場合それは、油圧プレス機がたてる規則正しい音だった。
 瑛の場合それは、工場から漂ってくるぷんと鼻をつくような油の匂いだった。〉

 物語は、海からの風が懐かしい気分を運んでくるかのような文章で静かに始まります。少年時代に一度すれちがったことのある山崎瑛と階堂彬。バブルに浮かれ私利私欲が横溢する社会のなかで苦悩する日々も経験します。真っ直ぐで熱い気持ちを持つ若きバンカーだからこそ、その悩みは深くなります。
 山崎瑛は、アメリカでの心臓移植を待つ娘を持つ社長家族を救いたい一心で、債権回収に動く上司の指示に従わず、不渡りを出す前夜に預金の移し替えを社長に“指示”します。銀行員人生を投げ打って娘を、そして社長家族を救いたいと願ったのです。
 一族を離れて自分自身の人生を生きるという強い思いからバンカーの道を選んだ階堂彬はしかし、父の死後窮地に陥った東海郵船グループ再建のため東海郵船社長に転じます。運命に抗(あらが)うように生きてきた階堂彬が踏み出したかつてない試練の道。メインバンク産業中有銀行の担当者として階堂彬に向き合うのは、山崎瑛です。
 社長就任当日、経理部長の難波を伴って打合せに出向いた階堂彬を担当の水島カンナと共に山崎瑛が待っていました。
 面談後東海商会に向かうクルマのなかで、〈まだ、ウチにも運があるのかもな〉階堂は難波に語りかけます。〈あいつが稟議を書いてそれが承認されなかったら、他の誰がやっても通らない。もしあの山崎がウチを見放すことがあったらそのとき──東海郵船は終わりだ〉
 少年時代にすれ違い、新人時代の直接対決がいまや伝説となっている二人の「あきら」は起死回生の道をどう切り開くのか―――。

 部長室に入った山崎瑛は「なぜそこまでこだわる?」と問われて、父が会社を潰した少年時代のことから語り始め、〈青臭いと思われるかも知れませんが、私は、救える者であれば全力で救いたい。そう思っています。会社にカネを貸すのではなく、人に貸す。これはそのための稟議です〉こう訴えた。 山崎瑛の“人生をかけた稟議書”を押し黙ったまま読み終えた担当部長の不動公二(ふどう・こうじ)――情状酌量が一切通じないところからロボバンカーと揶揄(やゆ)されてきた男が告げた、ひと言とは?

 5年後――階堂彬からの誘いを受けて春の下田に向かう山崎瑛は、途中右折してミカン畑が連なる一本道に分け入った。妻と2歳になったばかりの長男、生まれたばかりの長女が一緒です。
 段々に続くミカン畑の急峻な斜面と、その向こうで無数の光を反射させている春の海。廃墟と化した工場も、住んでいた家の形跡も消え失せ、すべては自然に戻ってしまったかのようだったが、まぎれもなくそこは瑛の原風景だった。
 小説を読む愉しみがもう一つの人生を生きてみることにあるのだとしたら、『アキラとあきら』は、少年時代の一瞬の出会いから20年あまりの山崎瑛と階堂彬の生き様を通して極上の人生を私たちにもたらしてくれます。急に目頭が熱くなり立ち止まって落ち着くのを待ったことが幾度あったことか。読み終えたとき、二人の苦悩、哀しみはおろか、怒りさえも心地よく響いてくる。

 池井戸潤描くエンディングがいい。
〈幼いころの君は、どんな音を聴いていた?
 幼いころの君は、どんな匂いを嗅いでいた?
 その答えのすべてが──ここにある。〉

 ひとり静かに、極上の人生の物語の余韻に浸ってみてはどうでしょうか。(2017/6/16)

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