書籍の詳細

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。読後、きっとこのタイトルに涙する。デビュー作にして2016年本屋大賞・堂々の第2位、75万部突破のベストセラー待望の文庫化!

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君の膵臓をたべたいのレビュー一覧

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  • 小学生の頃だったか中学生の頃だったか、突然、それまで当たり前だったことの一つひとつが、当たり前ではないような感覚にとらわれてしまうことがありました。なぜ、自分はあの人ではなく自分なのか? なぜ、自分はここにいるのか? なぜ、自分はこの学校に通っているのか? なぜ、自分はこの人たちと関わっているのか……。普通に生きていることが自明なものでなくなっていく、そして生きるということはどういうことなのだろうと考えてしまう、危うい感覚。私はこの作品を読んで、この感覚を思い出しました。素晴らしい青春小説を読んでその作品世界にどっぷりつかっているとき、よくこの感覚を思い出すのです。

    内気で草食で小説好きの高校生の僕と、活発で人気者のクラスメイトの女の子・桜良が主人公。ある日僕は、病院で一冊の文庫本を拾います。それは、その病院に通っていた桜良が密かに綴っていた日記帳で、そこには、彼女が膵臓の病気のため、余命いくばくもないことが書かれていました。僕は、桜良が親友にも知らせていない秘密を知ることになり、その後、桜良の半ば強引な誘いにより、二人は何度も行動を共にします。そのなかで、二人は、生きること、そして人を愛するということについて、何度も語り合います。

    難病の女の子と文学少年という組み合わせから、ものすごくシリアスな展開を想像してしまうかもしれませんが、この作品は会話を中心に、テンポよく展開していきます。この設定や展開のため、ライトノベルや携帯小説のようだと評されることもありますが、生と死、愛といった哲学的なテーマを扱っており、それでいて観念的にならず、具体的なエピソードが丹念に(そしてコミカルに)描写されているので、純文学のファンの方々にも興味深く読んでいただける作品だと思います。

    この作品では「死」というものを、難病の桜良だけが直面しているものではなく、実は誰にでも、明日にでも訪れるものと捉えられています。そして、難病だろうが健康だろうが関係なく、普遍的な生きる意味、そして愛するということの意味を、登場人物が自分の言葉で掴み取ろうとしていく過程が、素晴らしいと思いました。

    そして、「君の膵臓をたべたい」。このタイトルが本当にすごいと思います。インパクトがあるから、だけではありません。このタイトルが、まさにこの物語そのものを表しているからです。これほどまでに内容とタイトルがマッチしている作品は、ないと思います。

    この作品は、小説投稿サイト「小説家になろう」の人気連載が書籍化されたものです。2016年本屋大賞で2位となり、2017年4月に文庫化、7月は映画公開ということで、いま再び話題になっています。
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    投稿日:2017年05月19日