書籍の詳細

虐待の家で育った少女が、笑顔を取り戻した──。貧困・虐待・スクールカースト・ドラッグ・性。現代の子どもたちが抱える問題の最先端が現れる「保健室」と、そこで彼らを支えて奮闘する「養護教諭」の活動に密着したルポルタージュ!

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ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアルのレビュー一覧

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  • 近年、子どもの貧困が注目されています。貧困家庭は社会的に孤立し、親が心身を病んでいたり、虐待やDVが行われたりしているケースも多いといわれています。社会的な問題意識の高さから、子どもの貧困について書かれた本が次々と出版されていますが、中学校の保健室を軸に、現在の子どもたちを取り巻く問題を丹念に取材して書かれたのが、本書『ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル』です。

    貧困家庭に育った子どもたちの多くは、家庭に居場所をつくれず、また標準的な中流家庭で育つ子どもたちが集まるという建前を前提とした学校の教室にもなじめません。また、貧困以外の理由でも「標準」から外れた子どもたちは、家庭や教室で十分にケアされないケースが多い。そうした子どもたちが居場所を求めて集まるのが、保健室だといいます。

    子どもは大変です。私は貧困家庭で育ったわけではありませんが、それでも子ども時代を思い出してみれば、大人と比べて生活範囲が狭く、学校と家がすべてで、この場でうまくやっていけなければ人生終わりだ、と思うほど閉塞感がありました。あの頃周囲から感じていた同調圧力は、大人になった現在の比ではなく、思えば自分の居場所を確保すべく、どう振る舞えばいいのかを考えることに、いつも必死になっていました。

    本書には、「保健室は、悩める子どもたちの居場所となっている」「保健室をみれば、いまの子どもが抱える問題がわかる」という問題意識のもと、保健室に集まるに至った子どもたちの様々なケースが、具体的に書かれています。

    例えば第2章には、家庭で父・母・姉から壮絶な虐待を受け、ものすごく苦しんだ女の子について書かれています。彼女は中学校の保健室で温かいケアを受けて立ち直り、卒業する間際に、保健室の先生にこんな手紙を書きました。「私は先生が大好きだし、今までで一番大切な先生だし、私の基本になっているんです」。実は、彼女はその後進学した高校では十分なケアを受けられず、ものすごいいじめを受けてしまいます。それでも、中学校の保健室での経験があったからこそ、逆境のなかでも自力で前に向かって進むことができたそうです。

    「私の基本になっているんです」この言葉が心に残りました。子どもにとって、大人たちから生きる「基本」を与えられるかどうかは、ものすごく重要だと思います。保健室は、言わば行き場をなくした子どもたちの命綱となっているのです。もし、その命綱が機能しなかったら……。

    保健室の先生こそが、各学校に一人ずつしか配置されていないケースが多く、孤立しています。様々な不安を抱えていたり、スキルにバラツキがあったりしています。また、子どもの問題を解決するには、どうしても家庭に介入しなければならないケースもあるのですが、それができないというもどかしさを感じている保健室の先生も多い。個々の保健室の先生の努力に、問題を抱えた子どもたちの命運が託されている、という現状を変えるための提言も、本書には盛り込まれています。

    子どもを取り巻く問題を解決するために懸命に努力している保健室の先生たちに頭が下がる思いです。また、このような良書を書いた著者にも感謝したい気持ちです。子どもを持つ親として、深く考えさせられました。
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    投稿日:2017年04月28日