書籍の詳細

「湯治」は、江戸後期になると病気を治すほかに旅を楽しむことも目的とするようになった。今も湯治客でにぎわう有馬・熱海・箱根・草津と、今はない湯倉の温泉。当時の温泉町のようすと道中の風物をいきいきと描く紀行5編。

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江戸温泉紀行のレビュー一覧

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  • 日本の庶民の旅において、温泉旅行が欠かすことのできない存在だったのは、江戸時代から変わることがなかったようです。本書には江戸時代に出版された温泉旅行ガイドブックの草分けというべき紀行文が5篇収録されています。有馬温泉が2編、熱海・箱根、湯倉温泉(宮城県)、草津温泉がそれぞれ1編ずつ。現代の温泉の楽しみ方と大きく異なっていたのは、混浴の立ち湯が普通だったこと。「滑稽有馬紀行」に小男の入湯シーンがあります。〈湯壺の深さ、三尺八寸(おおよそ115センチ)も有ば、常体(つねてい)の人さえ肩までありて、男女共に立ちながら入湯するなり。まして才六は、はなはだの小男ゆへ、足をつまだて居ねば、口の中へ湯がはいるゆへ、大いに心配してむだ(無駄口・冗談)もでず。ことに其湯の中は若き女も一所なれば、どうやらはづかしき心もちにて、片角(かたすみ)に湯を呑(のま)ぬ用心している。 太郎「ヲウ、ふかい湯じや。才公、貴様のようなちんすう(背の低いことを嘲って言うこと)は、かいつぶりとおなじように、湯の中へ来ると、とんとちうの音もでん」〉。古い文体で少しとっつきにくい面もありますが、いずれも十返舎一九の「東海道中膝栗毛」(1801年・享和元年)とほぼ同時代の作品だけに滑稽本の流れを受け継いでいて面白く読めるものとなっています。(2010/1/29)
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    投稿日:2010年01月29日