東京近郊一日の行楽

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花袋は日露戦争のとき写真班として従軍し、その従軍記を著すなど紀行文を多く残した。本書はそのひとつで、時代は明治後期から大正初期。東京近郊の風景・風俗、事件・事故、花鳥風月、事物の来歴、文学的エピソードなどがこれでもかと盛り込まれた、なつかしい東京がある。

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花袋は日露戦争のとき写真班として従軍し、その従軍記を著すなど紀行文を多く残した。本書はそのひとつで、時代は明治後期から大正初期。東京近郊の風景・風俗、事件・事故、花鳥風月、事物の来歴、文学的エピソードなどがこれでもかと盛り込まれた、なつかしい東京がある。

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書店員のレビュー

『蒲団』『田舎教師』などの小説で知られる、自然主義派を代表する作家・田山花袋による、東京近郊の踏査ルポが本書『東京近郊 一日の行楽』です。最初に出版されたのは1923年(大正12年)。もっとも基になった本は1916年、18年に出されています。いずれにしても、大正時代半ばの東京を中心に日帰りあるいは1,2泊の小旅行をする人のために気鋭の作家が実際に自ら踏査をして書いたというすぐれものの東京紀行です。西郊を「丘」に、北郊を「田」に、南郊を「海」という仕組みで東京という都市の空間を押さえようと試みた花袋は、手近な西郊から本書を書き始める。代々木の自宅から電車を使わずに歩いて渋谷へ出て、そこから玉川電車の線をたどって二子玉川、溝ノ口ヘ足をのばしています。大橋、池尻、三軒茶屋から用賀、瀬田、玉川遊園といった停車場をへて終端駅につく。そこは河原と1町も隔てていない。田山花袋はここまできたら、川を渡らずに帰ってはいけないと強調しています。二子の渡から船に乗り、きれいな水を船縁にくんでみるのも一興だという。鮎の早く泳いでいく姿が見えることもあると書いています。そして二子の亀屋。鮎を食べさす旅館で田山は足繁く通ったという。田山花袋は紀行文の名手として名高いのですが、本書にもその特徴はよく表れていて、とくに会話の多い、軽妙な文章で読み物としても面白いものとなっています。紀行文に会話を導入する方法は、田山花袋の独創だそうです。同行者や旅先で出会った人たちとの会話が紀行文に華をそえていて、たんなるガイドブックではなくよくできた紀行文学として、ぜひご覧ください。(2011/2/11)
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