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第155回(2016年上半期)芥川賞受賞作36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

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コンビニ人間のレビュー一覧

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  • 芥川賞・直木賞の季節がやってきました。先日、第156回の両賞候補作が明らかになり、2017年1月19日に受賞作の発表となります。ここで、前回の芥川賞作品を振り返ってみようと思います。

    第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さんは、純文学新人賞はすでに野間文芸新人賞と三島由紀夫賞を受賞していて、この芥川賞受賞によって晴れて“三冠王”となりました。代表作のひとつ『殺人出産』では、10人産めば1人殺してもいいという世界を描くなど、作家仲間から呼ばれている「クレイジー沙耶香」というあだ名通り、独特の作風が特徴です。

    受賞作の『コンビニ人間』は、子供の頃から周囲と感覚が違っていた女の子が主人公。死んだ鳥を見つけたら、ふつうの子供だったら可哀想だから埋めてあげようとか、気持ち悪いから逃げようというふうになると思いますが、この主人公は「お父さん、焼き鳥好きだから、今日、これを焼いて食べよう」となる。万事がこんな感じだから周囲から浮いてしまい、次第に自分の殻に閉じこもってしまいます。

    そんな主人公が大学時代に出会ったのが、コンビニバイト。マニュアルが支配する世界では、マニュアル通りに行動していれば“人間”として扱ってもらえます。実際にコンビニバイトを続けている村田沙耶香さんによる“コンビニ愛”あふれる描写とともに、主人公が活き活きとコンビニバイトに励む姿が描かれています。

    マニュアルなど社会の規範に翻弄される弱い人の悲劇をジメッとした文章で描いた文学作品が多いなか、『コンビニ人間』は逆に、喜々としてマニュアル人間になっていく主人公をカラッとした文章で描いている。だからといってマニュアル人間を肯定しているわけではなく、読めば現代人の悲しさがジワッと伝わってくる。そこが新しいと思いました。ラストも圧巻。「読書芸人」たちもオススメする傑作です。
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    投稿日:2016年12月30日