書籍の詳細

著者は、つい数年前まではしがない洋服屋の店主でした。しかし平成不況の嵐は、容赦なく彼が経営する零細店舗を直撃したのでした。店の売上は急激に下降し、同時に借金取りに追われる身となり、やがては店舗の閉鎖を余儀なくされました。しかし50歳を目前とした著者には、ほかには転職のあてもなく、そんな悶々としたアタマを切りかえるために、ある日彼は、ほんの手慰みのつもりで、ひとつの小さな模型の小屋をつくったのでした。それは、ものすごくボロっちい、むかしのポンプ小屋でした。

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しぶ~い木造機関庫をつくるのレビュー一覧

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  • 『しぶ~い木造機関庫をつくる』という書名から想像したのは、こだわりの男がマニアックな趣味の世界にひたりきった幸せな物語でした。そのこだわりは尋常のものではなく、確かに想像通りの手作りの、濃厚な男の世界がそこには確かにあったのですが、本を読み進めていくうちにどうも男の余暇、レジャーで終わる単純な話ではないようだと気がつきます。著者の芳賀一洋さんは団塊の世代で、パルコなどにショップをだすアパレル経営者でしたが、1990年代半ば、バブル崩壊とともに商売の先行きが悪化。住宅リフォームへの転進を模索したものの、うまくいかない。暗い毎日をすごしていた時に、ほんの手なぐさみのつもりでつくった「小屋」が、その後芳賀さんを造形作家への道に導くことになるのですから、人生の転機とはいつ、どんな形でやってくるのか、わからないものです。一言で「小屋」と芳賀さんは言っていますが、この「小屋」が尋常のこだわりではありません。実物の八〇分の一の精巧さ、使用する木材のほとんどは素材の段階でオイル・ステインの原液(プロのペンキ職人から分けてもらったもの)を染み込ませるようにして筆塗りをしたそうです。ミリ単位の精巧な機関庫完成後の微妙な色合いはこうして用意されたわけですが、これはほんの一例です。本書は素材の用意から「小屋」完成に至るまでの詳細な記録です。写真、パーツの設計資料などの図も多数収録されています。ここまでのこだわりがあったからこそ、芳賀さんの八〇分の一モデルが評判を呼んだのだと実感できる一冊です。実際、芳賀さんには栃木県真岡市から「昭和初期の真岡駅」の制作依頼がきます。さらに宮城県石巻市からの注文で、若き石ノ森章太郎が暮らしたマンガ家アパート「トキワ荘」を制作。これらの作品は真岡駅コンコースや石巻市の石ノ森萬画館に陳列されているそうです。(2011/1/28)
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    投稿日:2011年01月28日