食う。百姓のエコロジー

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「食う」といういとなみによって人間は何をし、これからどうしようというのか。米騒動をもたらした平成5年産の米も、日本各地の山の万年雪が大地に滲み込み10年かかって田を満たして、作られた。農業を行う側からの根源的問い。

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「食う」といういとなみによって人間は何をし、これからどうしようというのか。米騒動をもたらした平成5年産の米も、日本各地の山の万年雪が大地に滲み込み10年かかって田を満たして、作られた。農業を行う側からの根源的問い。

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「小鳥一羽がそこにいるためには、肉食昆虫が一二万匹、草木が一九五万本必要だという。想像もつかない量である。たかが虫や菜ッパを食って生きている小鳥一羽の命は、それだけの自然に支えられてある。(中略)菜ッパ少々ですますことのできない私たち人間の朝、昼、晩のごちそうを考えたときに、人間ひとりが生きるためにはいったいどれだけの自然を必要とするか、これは思いもつかない」――歌人にして埼玉県妻沼で農業を営んでいた田中佳宏さんは、その著『食う。百姓のエコロジー』で、地球環境についての興味深い知見を紹介しています。食物連鎖の考え方に基づいて行われたアメリカの研究をひいているのですが、小鳥一羽が存在するためには肉食昆虫が一二万匹、草木がなんと一九五万本も必要だというのです。自然の生態系は弱肉強食そのものです。しかし弱肉強食でありながら、誰をも絶対的強者にはしませんでした。そのようなものが現れれば、生きものの世界全体が潰れるからです。そのような生態系のなかにあっては五〇億を超える人間はそもそも生存を許されない存在なのだというのが著者・田中佳宏さんの立脚点です。人間はいったいどんな工夫をしてこれだけの数を持つに至ったか、人間が食うということは、人間以外のほかの生きものと、どこでどうちがってきたのか、そのことで何が起きたか、に思いを巡らせてほしい、というのが本書で著者が訴えている点です。生態系の基にあるのが「土」で、著者は百姓としてその「土」にこだわります。土はすべての生きものの遺体を分解します。遺体ばかりでなく、動物が餌としてとった余り物である排泄物、糞尿をも分解します。この分解によって、土は草木を育てるエネルギーを持ちます。この働きをしているのが、私たちの目には見えませんが、地中の微生物で、ですから地中の微生物こそは地上の生きものの運命を握っているのです。微生物が棲む、もう一つの生きものの世界である「土」は地上で生きるものにとって決定的な存在だというのです。その「土」が原発事故によって脅かされている3.11後の日本。自然界に存在しない放射性物質による汚染は今も止むことなく続いています。本書はその根源的な意味を問い直し、その罪を告発しているように思えます。(2011/6/3)
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