十字架の王女 特殊捜査班カルテット3

680円 (税別)

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藤堂率いる国際的犯罪組織と、日本最大の暴力組織”本社”の銃撃戦に巻きこまれ、消息を絶った藤堂の娘・カスミ。助からなかったのか、父の下で犯罪者として生きると決めたのか――捜査班はカスミを捜し出し、藤堂を捕えるため、抗争の鍵を握る男・村雲の行方を追う。捜査のうちに行き着いたのは、ある極秘の議定書の存在だった。今までの潜入捜査と四人の過去が繋がる衝撃、感動の完結編が待望の書籍化! 解説・吉田伸子

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藤堂率いる国際的犯罪組織と、日本最大の暴力組織”本社”の銃撃戦に巻きこまれ、消息を絶った藤堂の娘・カスミ。助からなかったのか、父の下で犯罪者として生きると決めたのか――捜査班はカスミを捜し出し、藤堂を捕えるため、抗争の鍵を握る男・村雲の行方を追う。捜査のうちに行き着いたのは、ある極秘の議定書の存在だった。今までの潜入捜査と四人の過去が繋がる衝撃、感動の完結編が待望の書籍化! 解説・吉田伸子

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書籍の詳細

書店員のレビュー

 大沢在昌『生贄のマチ 特殊捜査班カルテット』。2015年9月25日に電子版と同時に発売された紙版(角川文庫版)のオビには、「3ヵ月連続刊行!」の惹句に続いて『解放者 特殊捜査班カルテット2』10月25日発売予定、『十字架の王女 特殊捜査班カルテット3』11月25日発売予定とあります。「警察小説の名手 渾身の新シリーズ始動!」のコピーがいやでも目に飛び込んできます。
 その第1弾が、「渋谷デッドエンド」と表題作「生贄のマチ」からなる本書。直木賞受賞作「新宿鮫」の鮫島警部が国家公務員Ⅰ種試験合格のキャリアでありながら、警視庁新宿署で役職にもつかずに犯罪に挑む一匹狼という、これぞハードボイルドという存在であるのに対し、新シリーズの主役は孤独な三人の若者と「クチナワ」と名乗る車椅子の警視正。クチナワは「朽ちた縄」に形状が似ているところからついた蛇の別名です。蛇に足はありません。車椅子の警視正のパンツは、膝から下が折りたたまれています。
 物語は、三人の若者の一人、タケルを襲った8年前の“出来事”から始まります。「渋谷デッドエンド」から引用します。

〈塾から帰ってきた、午後六時三十分。本当なら、暖かな光が満ち、夕食のおいしそうな匂いがドアを開けたとたんに鼻にとびこんでくる筈(はず)だった。
 だが鍵(かぎ)のかかっていないドアを開け、まっ暗な家の中に足を踏み入れたとき、タケルの鼻孔にさしこんできたのは、まったく別の匂いだった。
 鉄錆(てつさび)の匂いと糞便(ふんべん)の混じった悪臭。手さぐりで玄関の明りのスイッチを入れた瞬間、世界はまっ赤に染まった。〉

 その年の春、タケルの一家は郊外にある小さな一戸建てに越したばかりでした。玄関に入ってすぐの位置に階段があって、タケルと妹のミツキの部屋のある二階へと通じています。

〈その階段に赤い川が流れていた。中腹に、頭を下にした姿で、仰向(あおむ)けのミツキが横たわっている。目をみひらき、口を大きく開けて。
「お母さん!」
 とっさにタケルの口を突いたのはその言葉だった。だが玄関以外はまだ闇に閉ざされた家の中で、タケルの叫びに応(こた)える者はいなかった。
 靴を脱ぎすて、家にあがった。ひどく不安だった。何かがちがう。まちがった場所にきているような気がした。それもすぐにでもでていかなければならないくらい、ひどくまちがった場所にきてしまったのではないか。
 それでも毎日の習慣がタケルをリビングに向かわせた。あがって右手にあるリビング。ソファがあり、テレビがおかれ、夕食のあとは家族でサッカーや野球を見ていた部屋。タケルにとっては、家庭そのものだった部屋。
 壁を掌(てのひら)がすべり、スイッチを探りあてる。シャンデリアが点(とも)った瞬間、タケルは大声をあげた。
 父と母がいた。これまで見たどんな映画よりもいっぱい血を流した姿で。喉(のど)を裂かれた父は、半分首がもげかけ、腹を切り裂かれた母は、どんよりとした瞳(ひとみ)でエプロンの上に広がった内臓を見おろしている。
 まちがってる、まちがってる、まちがってる!
 タケルは大声をあげながらくるりと向きをかえ、裸足(はだし)で玄関をとびだした。〉

 8年後――砕け散っていたタケルの心は、元の姿とはまるでちがう形に再構成された。
〈破片をかき集め、接着剤のようにいびつな形でくっつけたのは怒りだった。怒りは獣を生んだ。〉
 闇に身をおくとき、体の中に生まれた獣が巨大化するのを実感するタケル。ゴミ溜めのような世界に生息する何千匹というゴキブリ(のような犯罪者)を叩き潰すのが自分の存在理由と考え、獲物狩りの日々を送る18歳のタケルがクチナワに出会います。

〈「警察は無能だ。そう考えたお前は、自ら報復に乗りだすことにした。体を鍛え、格闘技を学び、街で犯罪者を見つけだしては血祭りにあげる。法を無視した野蛮な行為だ。野蛮な上に、ひどく効率が悪い」〉
〈「もっと効果のある戦い方をしたいと思わんか。意味があるかどうかはわからん。だが、効果はある。いきあたりばったりに街で見つけた犯罪者を痛めつけるよりは──」〉
〈「何をさせたいんだよ」
「戦う気があるのか?」〉
 クチナワは、革のジャケットから紙切れを抜き出してタケルに渡します。携帯電話の番号以外、何も記されていません。
〈「明日、電話をしてこい。イエスでも、ノーでもだ。逃げるなよ」
 タケルは目を上げた。
「俺は逃げたことなんてないぜ。どんなにやられてもな」
「だろうな。それがお前の愚かさだ」〉

 謎の警視正クチナワによって“リクルート”されたタケルに与えられた最初のミッションは、DJとして帝国建設に成功した中国残留孤児三世リンのイベント会場への潜入。リンの背後で糸を引いているのは塚本という男。塚本の資金源は彼が“本社”と呼ぶ組織で、塚本はイベント会場で“本社”が卸したドラッグを売る。“本社”は関西に本部のある大組織で、塚本はれっきとした組員。その塚本がミッションのターゲット――。

〈「やるのかやらないのか」
 クチナワの声が厳しくなった。
「やったら俺はム所送りにならない、そういうことか」
「それだけじゃない。この二年以上に効果のある狩りをしたことになる。塚本の卸すドラッグは、末端で年間に三億円を上回る。お前が今まで潰したプッシャー全員のアガリをあわせたところでその十分の一にも満たん」
「俺は何もプッシャーだけを潰してきたわけじゃねえ」
「私もドラッグディーラーだけを狙っているわけじゃない。塚本にはその先がある」
「──わかった」
 タケルは吐きだした。
「やるぜ。そいつらを潰してやる」
 クチナワは小さく頷(うなず)いた。
「お前は今日から私のチームのメンバーだ。なった以上、任務が終わるまでは一切、指示に逆らうことは許さない」
「ふざけんな、何がチームだ。俺はマッポじゃない」
「だれが警官にしてやるといった。お前にはバッジも手錠もない。たとえ今夜パクられたって、誰も助けになどいかん。〉

 バッジも手錠も持たない非正規部隊の誕生です。イベントのチケットを渡されたタケルは、金曜日の夜、平和島の「ムーン」に潜り込み、そこで二人に出会います。
 一人は、カスミ。復讐を胸に“塚本の女”を演じている17歳。クチナワが用意した何十人という候補の中からタケルを選んだのはカスミだった。タケルの写真データをクチナワから受けとっているが、タケルはその存在を知らされていない。カスミは自身のことを「悪魔の血をひく女」と言っています。カスミの前にクチナワが現れたのは2年前だった。
 もう一人は、中国残留孤児三世のホウ。日本名アツシ。20歳そこそこだが、母方の祖父に厳しく言葉をしつけられたためきれいな中国語(標準語)を使いこなし、ボディガード役として常に兄弟分ともいうべきDJのリンと行動を共にしています。イベント会場のVIPルームにトカレフを手に飛び込んできたホウにタケルが回し蹴りを命中させたのが、二人の初対面。
 タケル、ホウ(アツシ)、そしてカスミ。混乱するイベント会場で塚本の破滅を狙う三人の若者の思いが交錯し、炸裂する――「渋谷デッドエンド」で出会った三人がそれぞれの過去を背負いながら“仲間”になっていきます。警視庁警視正クチナワと三人のチーム「非正規部隊」が担うことになる命懸けの任務とは?
 表題作「生贄のマチ」――クチナワによって組織されたカルテットが、中国人がつくりあげた“治外法権の町ミドリ町”に日本の警察やヤクザに追われていると偽装して潜り込みます。場所は川崎市川崎区。およそ2000人の中国人が暮らすと推測されるミドリ町の周辺地域で3か月の間に女子児童4人の死体が発見された。性的暴行は受けていないが、首を絞められて殺されていた。近隣の住民には、該当する児童はおらず、4人全員がミドリ町の住人だった可能性が高く、捜査が難航しています。閉ざされた町の中でいったい何が起きているのか? かつての香港・九龍(クーロン)城を思わせる、警察が立ち入れない犯罪者の巣窟。その不可視の町に偽装潜入する――それがカルテットの初回任務です。
 物語展開のスピード感はこれまでの大沢作品のはるか上をいきます。三人の若者による非正規部隊を物語の中心にすえることによって、大沢在昌は従来の警察小説の枠組みを超えて新たな冒険小説の領域に踏み出しました。直木賞受賞の本格ストーリーテラーが、青年マンガやライトノベルのファン層をも魅了する新たな物語の世界を創出しました。新シリーズ始動です。10月25日配信開始予定の第2弾『解放者』、11月25日配信開始予定の第3弾『十字架の王女』も楽しみです。(2015/10/16)
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