書籍の詳細

情報革命の先頭を走る男の生きざまを活写した、感動の評伝! 裸一貫から立ち上がり、いまや世界を見据える事業家となった孫正義。その原点となる少年時代に始まり、アメリカでの青春期、ソフトバンクの創業、インターネットや携帯電話事業への進出から、アリババの上場そしてロボット事業に至るまで――波乱に満ちたその半生を、四半世紀にわたって孫を密着取材してきた作家・井上篤夫が熱い筆致で描く。100年、200年、300年続いていく企業をめざす孫正義とソフトバンクは、いまや単なる「携帯電話カンパニー」ではない。もはや会社そのものがシリコンヴァレーのような存在であり、孫正義ははるか遠くを見つめているのだ。世界初の感情認識パーソナルロボット、Pepper(ペッパー)の発売に合わせて、さらに徹底した追加取材を行い、ベストセラー「志高く 孫正義正伝 完全版」に大幅加筆してパワーアップした「新版」。読めば勇気と活力が湧いてくる決定版!

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志高く 孫正義正伝 新版のレビュー一覧

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  • 「孫正義」の名前を最初に耳にしたのは、1979年にシャープからポータブル電子翻訳機「IQ3000」が発売されたときですから、もう35年以上も前のことです。
     当時話題の商品だったIQ3000をさっそく買ってきて感嘆したことを昨日のことのように覚えていますが、この世界初の電訳機を試作してシャープに提案したのが、20歳の若き孫正義でした。学生の立場でありながら、試作機を手にアメリカから一時帰国をして関連会社を回り、最後の最後にシャープの技術本部長・佐々木正専務の心をつかみ、契約を取り付ける。1977年のことです。
     先頃、文庫新版が出た『志高く 孫正義正伝 新版』(井上篤夫著、実業之日本社)は、日本のIT分野のフロントランナー孫正義の第一歩となる佐々木との出会いをこう描いています。場所は、奈良県天理市のシャープ中央研究所。佐々木は研究所所長だった。

    〈孫は慎重に風呂敷包みをほどいた。
     孫が説明をはじめると佐々木の表情が一変した。
     佐々木はこの機械に大きな可能性を見た。孫という人物の大きさも看破していたのかもしれない。
     佐々木の眼が鋭く光った。「おもしろい!」
     コンピュータソフトを知りつくしている佐々木には、このアイデアは画期的なものに映った。さらに孫は、改良を加える必要があることも説明した。
     還暦を過ぎていた佐々木には孫の外見は幼く映ったが、内面に秘めた強烈な意志は見えていた。いまどきの若者にはないほど考え方が着実でしっかりしている。
     佐々木は若者の真剣な顔、真剣な眼差しをおぼえている。
    「他社に売り込みに行ったのに相手にされなかったので、最初は元気がなかったが、試作品のデモをしはじめると表情が一変した。自分なりの信念を持っている。金儲けにきたんじゃないとわかった」
     佐々木は、こういう若者はめったにいない、育てなければならないと思った。
     若いころから「夢を持つことが新製品開発の第一歩」と信じてきた佐々木にとって、孫はまさに夢を持った若者であった。学生ではあるが、経営に対する考えがきちんとしていることにも佐々木は感心した。
    「この男の熱意に賭けてみよう」
     佐々木は孫に惚れ込んだのである。
     特許の契約金として即座に四〇〇〇万円が支払われることになった。
     はじめての契約が成立した。(中略)
     さらに佐々木はドイツ語版、フランス語版の翻訳ソフトの開発を孫に依頼する。
     契約料の合計はおよそ一億円。ちなみに孫はこの額をドルに換算して「一〇〇万ドルの契約」という表現を好む。
     孫が大企業を向こうにまわして、しかも日本で生まれてはじめて勝ち取ったお金である。
     青春の汗と知恵と努力の結晶であった。〉

     後にシャープ副社長となる佐々木正は、日本の電子工学分野の発展に大きな足跡を残した日本有数の研究者でしたが、その佐々木をして「この青年に賭けてみよう」と思わせた孫正義の試作機は2年後に「IQ3000」と名付けられて、世界初の電訳機として市場に送り出された。これがデジタルビジネスの革命児、孫正義の原点となった。

     在日韓国人三世(現在は日本に帰化)として九州で生まれた孫正義少年は、やがて高校を中退してカリフォルニアに留学。電訳機開発でビジネスチャンスをつかんで、デジタルビジネスのフロントランナーとして日本を引っ張っていくリーダーに成り上がっていく。翻訳や外国の実業家や俳優などのインタビューレポートなど多彩な執筆活動で知られる本書著者は、孫正義の生き様を社会状況のなかに位置づけて立体的に描き出すことに成功しています。小学校高学年から現在までの孫正義を軸に日本社会がどう変化してきたか、デジタルビジネスがどう発展してきたかを綴ったクロニクルとなっています。

    『志高く 孫正義正伝』が初めて出版されたのは2004年5月でした。2007年7月に『志高く 孫正義正伝 完全版』と改題・改訂(2010年12月文庫化)された内容をさらに推敲のうえ、第三部に4つの章(37夢の実現、38三〇〇年先の未来、39金の卵を産むガチョウ、40笑顔)を書き加えたのが本書『志高く 孫正義正伝 新版』です。新たに書き加えられた部分は、2006年のボーダフォン日本法人(現・ソフトバンクモバイル)の買収、2015年2月の感情認識型ロボットPepper(ペッパー)発売まで、孫正義に関する最新情報を細大漏らさずフォローしたもので、孫正義研究には欠かせない内容となっています。ここに描かれている孫正義の生き方、考え方のなかに、私たちは不透明な日本社会のこれからを考えるためのヒントを読み取ることができるはずです。(2015/3/27)
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    投稿日:2015年03月27日