書籍の詳細

長年プロ野球を取材してきた筆者が、各回1人の一流プロ野球選手に直接取材を行い、天才たちの内面に迫る「週刊現代」の人気連載企画『二宮清純レポート』の書籍化。「田中将大はなぜ日本一の投手になれたのか」、「中村剛也が統一球を苦にしなかった理由」など、読めば彼らの成功哲学が見えてくる。他にも内川聖一、中田翔、谷繁元信、宮本慎也など、現役最高峰の選手ら選りすぐりの18篇を収録。

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天才たちのプロ野球のレビュー一覧

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  • 春一番がふいて、3月2日、プロ野球のペナントレースに先駆けて、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の熱戦の火ぶたがきって落とされました。山本浩二監督率いる日本代表、侍ジャパンは初戦ブラジルにかろうじて逆転勝利。先発したエース、田中将大(楽天)が初回に1点を失うなど、3月20日の決勝を目指す侍ジャパンの暗雲漂うスタートを目の当たりにして即座に脳裡をよぎった本があります。スポーツジャーナリスト二宮清純の『天才たちのプロ野球』です。二宮は、田中将大についてこう書き始めています。〈この日も立ち上がりに乱れた。主力選手が並ぶ相手打線に初回に3本のヒットを浴び、四球もからんで3失点。2回、3回と無失点で切り抜けただけに、出だしの不安が余計にクローズアップされた。'11年2月15日、キャンプ地である沖縄・久米島での紅白戦。「打たれたことで逆に収穫があった」。東北楽天のマー君こと田中将大(まさひろ)は冷静な口調で言った〉田中将大の立ち上がりの悪さは歴然としています。――初回・11点、2回・1点、3回・8点、4回・8点、5回・3点、6回・4点 7回・6点、8回・5点、9回1点。2ケタ台の失点は初回だけです。ピッチャーにとって初回と初球は永遠の課題であるとよく言われますが、日本のエースとしてステップアップを目指す田中将大にとって、この課題は避けては通れません。二宮はこう続けます。〈初回にまとめて3点も取られて、いったい何が「収穫」だったのか。淡々とマー君は言った。「ブルペンではできるだけ力みが出ないように投げていた。そのせいか立ち上がり、腕の振りが鈍かった。それが失点の原因だったと思います。そのことに気づき、2回以降は意識的に腕の振りを強くした。マウンドでの感覚をはっきりと取り戻すことができました」だが、先のデータを突きつけると、一瞬、表情が険しくなった。「初回にこれだけ失点してちゃいけませんよね。初回を3人で終わらせれば、こちらの攻撃のリズムも出てくる。初回については十分、意識しているつもりですが、逆に意識しすぎているのかもしれない・・・・・・〉本書紙版が刊行されたのは2012年4月ですが、もともとは2010年から2012年にかけて「週刊現代」に連載されたコラム記事です。この田中将大についての記事も2011年のキャンプ中のものですが、二宮清純は2013年のWBCの田中将大を見通していたかのようです。エースとして期待される田中将大ですが、開幕直前の強化試合に2回先発しながら2回とも初回に失点をして、不安視する声が高まっていました。それでも山本監督は不動の右腕エースとして初戦の先発に送り出したのですが、やはり初回、格下のブラジルに1点を献上して、不調を印象づけてしまった。しかし、この立ち上がりの悪さを2年前に指摘した二宮は同じ記事の中で、田中将大のもっとも田中将大らしいところをこう記しています。〈スイッチが入る――。マー君のピッチングについて聞くと、多くの関係者が異口同音にそう答える。たとえば現在の女房役・嶋基宏(もとひろ)は、こんな具合だ。「彼はランナーが得点圏にいくとワンギア入るんです。それまでは8割の力で投げていたのが、急に10になる」そこでマー君の投手成績を調べてみると被打率の悪さに対して防御率のいいピッチャーであることがわかった。より具体的に述べよう。'10年の彼の被打率はリーグワースト3位の2割7分なのに対し、防御率2.50はリーグ3位(いずれも規定投球回以上)なのだ。文字通り、彼はランナーを背負った段階で、スイッチをオフからオンに切り換えるのである。何やらカラータイマーが点滅し始めてから本領発揮するウルトラマンのようである。「本当はランナーを出さなければいいだけの話なんですけどね」マー君はそう言ってクスッと笑った〉ピンチにたってこそ、真価を発揮するという投手。二宮は田中将大論をこう締めくくります。〈まさしく快刀乱麻。スイッチが入った時のマー君は手がつけられない。ランナーを背負えば背負うほど、追い込まれれば追い込まれるほど、本領を発揮する修羅場の力自慢。(中略)'11年、マー君は立ち上がりに失点する悪癖を克服した。初回の失点はわずかに3。無難な立ち上がりがピッチングに安定感をもたらしていた。そして19勝を挙げ、“宣言”通り沢村賞を獲得した〉こんな若者となら組んでみたいと思う、年下のパートナーとして、これほど頼もしい男は他にはいない――これ以上はない、田中将大へのオマージュを知れば、そして、田中と並ぶ侍ジャパン、もう一人の右腕、前田健太(広島)、主砲・中田翔(日本ハム)ら、同書に登場する18人のプレイヤーたちの知られざる魅力を知れば、2013のプロ野球がまったく違った色、光景に見えてくるかもしれません。ちなみに18人のうち、巨人の選手は村田修一ひとりだけです。(2013/3/8)
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    投稿日:2013年03月08日