書籍の詳細

一匹狼の新聞記者が外国人犯罪集団に挑む!『STORYBOX』誌で2010年~2011年に連載された同名小説の単行本化。『二度目のノーサイド』(小学館文庫/2009年)に続く単行本を電子化!本社から横浜支局に飛ばされてきた、一匹狼の新聞記者・甲斐明人。着任早々、後輩記者の謎の失踪を追うことに。スクープを取材していたらしい彼の足取りを追ううちに、女性刑事・浅羽翔子と出会う。そして失踪の陰に、新興してきた外国人犯罪集団の存在が浮かび上がってきた。さらに警察内部にも危険な香りが漂いはじめ・・・・。堂場瞬一氏作家生活10周年の記念すべき年に刊行された本格警察小説。

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  • 県警記者クラブのサブキャップの任にある入社2年目、全国紙横浜支局・二階康平記者がアポを取っていた取材時間に現れず、そのまま姿を消した。二階記者の行方を追うことになるのは、肌のあわない上司と衝突して横浜支局に都落ちとなった一匹狼の事件記者。著者・堂場瞬一自身、2012年末に退社するまで20年以上読売新聞記者だっただけに、社会部記者の人物造形、新聞社という組織の細部の描写が秀逸なのは、ある意味当然かもしれません。が、この作品はそれだけではなく、新聞記者の目からみた「警察」という組織の実態、警察官という存在を冷徹に描ききった警察小説としても出色の出来映えです。物語の舞台となっている神奈川県警といえば、女性被疑者への猥褻行為や後輩女性警察官に対するセクハラ、さらには事件のでっち上げなどの不祥事が連続して起こり、挙げ句の果てには「不祥事隠蔽マニュアル」と称する手引き書を部内配布していたという不祥事が露見、県警本部長が引責辞任するという前代未聞の事態を引き起こしたこともあるいわく付きの県警です。その神奈川県警記者クラブに詰める事件記者の失踪。しかも、近々「大きな記事」を書くと周囲に語っていた直後、取材約束をすっぽかしてそのまま消息を絶った――記者の身にいったい何が起きたのか。いうまでもなく、これは小説、フィクションですから、神奈川県警で実際に起きていることをそのまま描いているわけではありませんが、「不祥事の百貨店」とも揶揄される神奈川県警が舞台とあれば、読者の連想はいやでもかき立てられます。本社社会部から左遷された一匹狼・甲斐明人(かい・あきひと)が横浜支局に赴任したところで、失踪事件が発生。甲斐が失踪した記者の捜索にあたることになります。〈その夜、二階はとうとう掴まらなかった。翌日も、支局にも県警クラブにも顔を出さない。電話も相変わらずつながらなかった。「ちょっと部屋を見てきましょうか」昼前、甲斐は浜田に申し出た。「ああ?」夕刊用の原稿を処理していた浜田は、モニターを見据えたまま気のない返事をした。「いいよ、放っておけよ」「二日目ですよ? 念のためです」「だったら勝手にやっておいてくれ」浜田が、追い払うように手を振った。「どうせ暇なんだろうし」あんたは能力以上の仕事を抱え過ぎだ。いや、そもそも能力が低いんだ。口の中で文句を噛(か)み殺し、甲斐は支局を出た。支局員に目を配ることもできないなんて・・・・・・。一時間後、甲斐は、二階が失踪(しっそう)したと確信していた〉たった一人で二階記者の行方を追い始めた甲斐記者に神奈川県警内部から協力者・浅羽翔子刑事が現れ、事態は動き始めます。行方不明となっている二階記者が密着取材をして記事を書いたという。甲斐はその浅羽刑事に二階記者の人となりを教えて欲しいと申し出る。〈五段抜きのカラー写真で紹介された女性刑事は、少なくともこのサイズで紹介するだけの価値がある被写体だった。すっと背筋の伸びた長身を、体にぴったりと合ったグレイのパンツスーツに包んでいる。後ろで髪を縛っているので、ほっそりした綺麗(きれい)な顎の線が露(あらわ)になっていた。大きく、そして涼しげな目。少し肉感的な唇。写真を撮られ慣れているように、笑顔は自然だった〉甲斐の前に現れた28歳の巡査部長――浅羽翔子は”冷たい刑事“だった。記事に添えられたポートレイトでは感じ取れなかった、鋭い気配が彼女の周りに渦巻いていた。浅羽翔子は眼鏡(めがね)の奥から冷たい視線を甲斐に投げてきた。〈「警察に泣きついてきたわけですか」「こういうことは警察の仕事じゃないのかな」「普通の仕事の人なら、ね」翔子が腕を組んだ。「新聞記者が警察を頼るようになったらおしまいですよ」「俺も納税者なんだけど。あなたの給料はそこから出ていることをお忘れなく」「そういうことを言われて低姿勢になる人もいるかもしれませんけど、私は違いますから」〉内心の怒りを何とか抑え込んで、二階の人物像を問う甲斐に対して、当初「あなたの会社の人でしょう? 部外者の私に聴くのは、筋違いだと思いますけど」とにべもなかった浅羽翔子だが、甲斐の困り果てた様子に、ふいに口調を変えていった。「何か事情がありそうですね」刑事部屋を出て車に誘った――。甲斐の胸の奥では「真面目に捜査をしていないように見える県警」への疑念が大きくなっていきます。そこに飛び込んできた「刑事の自殺」の情報。しかも二階記者と接点があった刑事だった。〈翔子が階段のところで待ち構えていた。(中略)すり抜けて階段を下りようとしたが、翔子に腕を掴まれた。しばし目線が絡み合った後、甲斐は腕をふるって彼女の戒めから逃れた。「何が言いたい?」「(自殺した)時松さん、自宅療養なんかしていませんよ」「何だって?」「精神的に調子が悪かったのは事実ですけど、毎日ちゃんと出勤してました」「じゃあ、課長が嘘(うそ)をついたっていうのか」「そういうことになりますね」(中略)「それをどうして、俺に教えてくれるんですか」「それは・・・・・・」翔子の顔に、初めて見る戸惑いが浮かんだ。「ちょっと、外で会えませんか」〉二階記者失踪の背後に見え隠れする神奈川県警の黒い影。一匹狼の事件記者と28歳の女性刑事のコンビは、その影にどこまで迫れるのか。(2013/6/28)
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    投稿日:2013年06月28日