書籍の詳細

ニッポンの性と生を変える!東京大学文学部在学中に、上野千鶴子ゼミに所属した著者・坂爪真吾氏は、新宿・歌舞伎町などで性風俗産業に関わる人々を取材。関わった人すべてを不幸にする風俗業界の惨状と問題点を明らかにした研究論文「機械仕掛けの『歌舞伎町の女王』」を発表した。大学を卒業後、誰もが安全な性サービスを受けられるインフラ作り――新しい「性の公共」を求めて、障害者への射精介助を行なう非営利組織「ホワイトハンズ」を起業する。物議を醸した「処女童貞卒業合宿」などをめぐって警察や行政と激しいバトルを繰り広げながら、それでもなお精力的に活動を続ける理由とは何か――。現在、全国18都道府県でケアサービスを提供している1981年生まれの著者が、その尋常ならざる情熱を初めて綴った奮闘記。

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セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱のレビュー一覧

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  • 1981年生まれの若者が、東大卒業後、就職をせずに非営利組織「ホワイトハンズ」を立ち上げました。2008年のことです。事業目的は障害者の「性の問題」の解決。その主要な手段として「射精介助」のサービスを前面に打ち出しました。セックスの選択肢は恋愛と風俗しかないのか――若者のラジカルな問いと実践活動が警察や地方自治体の固定観念という名の厚い壁に穴をあけて、ニッポン社会の「性」のありようを根底から変え始めたようです。本書『セックスヘルパーの尋常ならざる情熱』は、この若者、坂爪真吾さんの起業奮闘記で、「セックスヘルパー」とは何か、誰も取り組んでこなかった事業を思い立ったきっかけは何か、起業するまでの苦労、困難な壁は何だったか、どう乗り越えてきたかなど着想から起業、実践に至るまでのすべてが余すところなく綴られています。そもそも「射精介助」とは何か。著者は「自力での射精行為が物理的に困難な男性身体障害者に対して、本人の性に関する尊厳と自立の保護、そして性機能の健康管理を目的として、介護用手袋を着用したスタッフの手を用いて、射精の介助を行うサービス」と定義しています。射精介助の目的は、「障害者の性欲の処理」や「障害者のセックスの相手をすること」ではなく、性機能の健康管理を通した、障害者のQOL(quality of life=人生の質)の向上にあるというわけです。では実際にどう行われるのか。少し長くなりますが、「性の介護」のひとこまを引用します。介助者は地元の訪問介護センターに勤務する33歳の女性(文中では川本さん)。服装は、普段の訪問介護の時と同じです。利用者は市営住宅で一人暮らしをしている脳性まひの男性(47歳、文中では青山さん)。四肢障害のため自力で射精をうまく行うことができません。そこで1年ほど前から月1回ケアを利用しています。〈ケア時間は30分。はじめに、お湯で絞ったタオルで陰部全体を清拭する。清拭の際には、きちんと男性器の包皮を剥いて、内部の垢をきれいに洗い落とす。次に勃起の介助を行う。介護用手袋を着用した手で、陰部全体をやさしくもみほぐして、勃起を促す。陰嚢と肛門の中間部分=会陰部を中心に刺激すると、陰部全体の血行がよくなり、勃起が促進される。川本「このくらいの速さ、強さでいいですか?」青山「ええ、大丈夫です」川本「全身の力を抜いて、楽にしてくださいね」ズボンを脱がせる際、コンドームを装着する際などには、必ず、その都度「これから、お脱がせしますね」「これから、お付けしますね」等の声かけを行い、相手に安心感を与えられるよう心がけている。精液飛び散り防止用のコンドームを着用した後に、射精の介助に入る。人肌程度に温めたローションを手のひらになじませ、陰茎をやさしく握って、上下にこする。川本「そろそろ、出そうですか?」「う~ん、もうちょっと・・・・・・」川本「射精したくなったら、いつでも出して大丈夫ですよ」射精までの時間は人によって様々だ。開始してから1分足らずで射精する人もいれば、服用している薬の副作用のために、1時間近くかかる人もいる。平均時間は、約10分程度。高齢の人は勃起力が弱く、陰茎が本当に勃起しているのかどうか、はっきり分からない場合もあるが、そうした場合でも、一定の時間ケアを続けていけば、射精まで到達することが多い。今回は、15分で問題なく射精に導くことができた。射精後、性機能の健康管理の目安として、利用者に精液量を知らせる。川本「今日は、いつもよりたくさん出ましたね」青山「そうでしたか? おかげで、スッキリしました」なお、射出される精液量は、体調やホルモンバランスによって変化するので、その分量のみで、性機能の正常・異常を判断することはできない。射精後は、陰茎を軽く握って、内部に残っている精液をもれなく搾り出す。射精後の陰茎及び亀頭は非常に敏感になっているので、清拭はやさしく丁寧に行う。清拭後は、乾タオルで水気をとり、下着とズボンをはいてもらう。時間が余った場合、お茶を飲みながら雑談をして過ごす〉現在の障害者福祉に関するすべての制度やサービスは「障害者には性がない」ということを暗黙の前提として作られている、というのが著者の主張です。「障害者に、性欲があるはずがない」「障害者が、セックスをするはずがない」「障害者が、妊娠・出産するはずがない」「障害者が、性暴力被害に遭うはずがない」こうした無知や偏見が蔓延している今、生きていくために不可欠な「最低限度の性の健康と権利」すら、満足に得られない状態に追いやられているというわけです。東大でフェミニズムの論客、上野千鶴子教授のゼミで学んだ著者は、新宿歌舞伎町ほかのフィールドリサーチを経て「障害者と性」の状況を変革する、壮大な実験に着手しました。その情熱とプラグマティックな実践力から目が離せません。(2012/10/26)
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    投稿日:2012年10月26日