書籍の詳細

月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしいというのだ。解決すれば、大物実業家を破滅させる証拠を渡すという。ミカエルは受諾し、困難な調査を開始する。全世界で6000万部の売り上げを記録した驚異のミステリ三部作第一部。電子書籍版が上下合本で登場。

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ミレニアムのレビュー一覧

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  • 作者の死後に書かれた奇跡の最新作
     漫画家を目指す若者にキャラクターの説明をするとき、いつも話すことがある。
     それは、優れたキャラクターの言いそうなこと、やりそうなことは、作者でない人間にも察しがつくということだ。例えばドラえもんは、いつだってどら焼きを食べている。しずちゃんは真昼から入浴していて、ジャイアンは嬉しいことがあると「おお心の友よ!」と叫ぶ。
     本作の主人公・リスベット・サランデルは、そういった意味において、お手本のようなキャラクターだ。154センチ42キロの拒食症の少年のような体躯、短く刈り上げた髪に、軟骨に空けられた幾つものピアス。ぴったりとしたパンクファッションの下の肌には、ドラゴンの刺青が大きく入れられている。食に興味がなく、めったに他人に心を開かず、ただし正義感はきわめて強い。特に高等な教育を受けたわけではないが、抜群の数学センスと、ハッキング能力を持つ。
    「ミレニアム」はシリーズ小説だ。第一作『ドラゴンタトゥーの女』がスウェーデンに次ぎ、ハリウッドでも映画化されたのは記憶に新しい。その四作目にしてシリーズ最新作が本作『蜘蛛の巣を払う女』だ。なぜ一作目でも二作目でもなく、私がここで四作目を推したのか。それは、ただ本作が最新作だからという理由ではない。
     すでに世界中のリスベット・ファンにはよく知られているように、本作は、作家スティーグ・ラーソンの死後に書かれた作品なのである。
     新シリーズの著者・ダヴィド・ラーゲルクランツは、やはりスウェーデンのジャーナリスト出身の小説家だ。
     一部の熱狂的なファンからは、批判の声もあったそうだ。発表直前には、ラーゲルクランツ自身が精神的に非常に追い詰められたらしい。しかし、本作の発売後、批判を上回る大きさの声で、「第三部までの文体とキャラクターが研究し尽くされている」との賞賛が届けられた。スウェーデン本国では、発売からわずか1週間で20万部を売り上げる快挙を成し遂げたことが、多くの読者の支持を得た何よりの証拠であろう。さらには、第二部、第三部より先に、この第四部の映画化がハリウッドで進められることになったという。
     作家・ラーゲルクランツの才能、そして並外れた努力が、優れた本作を生み出したことはいうまでもない。一方で、リスベットという、世にも魅力的な主人公のキャラクターが、ラーソンの死を乗り越えたのもまた真実である。キャラが作者を超えてしまう瞬間。エンターテインメント業界に身を置く人間にとって、ただ羨望しか感じないひとときだ。
     上下巻というと、構えてしまう方も多いかもしれない。けれど、ぜひ手にとって頂きたい。20世紀最高のキャラクターが才能ある作家と奇跡的な出会いの末、見事な生還を遂げた本作は、読んだ者を損させない究極の一作だ。
    投稿日:2016年05月27日