書籍の詳細

欲望を滅ぼし、死を克服する道を説く。人間ブッダは苦行を離れ、悟りを開いた。伝道を決意したブッダは「不死は得られた」と高らかに宣言した。形ある一切のものは無常であり、苦しみであり、我ならざるものであると明らかな智慧をもって見るとき、人は苦しみから離れ、清らかなる道を見る。ブッダは悟りの内容を説き、清浄行の実践に生涯をかけた。

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ブッダの人と思想のレビュー一覧

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  • 2011年6月2日、結局は否決でけりがつけられた「菅内閣不信任案」をめぐる永田町の騒動――成熟した市民社会における「政治闘争」とはかけ離れた「我欲」むき出しの醜悪さに、愛想がつきたという想いを多くの人が持ったのではないでしょうか。もともと、政治屋がやることはこんなものと達観している人も少なくなかったのかもしれません。そんな「選良」たちの言動を見ていて、今なぜ「ブッダ」がブームになっているのか、の理由がそこにあるのではないか、そんな思いがしてきました。手塚治虫の漫画を原作とするアニメ映画「手塚治虫のブッダ-赤い砂漠よ!美しく-」がヒットし、映画公開に先駆けて4月26日に東京国立博物館で始まった「手塚治虫のブッダ展」も多くの人を集めているそうです。イーブックジャパンでも4月頃から手塚治虫『ブッダ』(全14巻)が売上げを大きく伸ばしています。ブッダの何が日本人の心をとらえているのでしょうか。今回紹介する『ブッダの人と思想』は、インド哲学、仏教思想研究の第一人者であった中村元(東京大学名誉教授)が死の1年前に残した貴重な著作。とっつきにくい学術書とは違って、最高レベルのブッダ論がなじみやすい口語体で展開されていることが特筆すべき点です。中村教授によれば、ブッダの教説の根本は「自らその意(こころ)を浄める」清浄行にあります。清浄行とは、人間存在に深く巣くう無明煩悩の浄化です。ブッダはこの我執、妄執の克服を繰り返し繰り返し説きました。これこそがあらゆる仏道の根本で、言い換えればブッダは「我有り」の自己から「我無し」の自己への転換を説き続けたのです。今日私たちの文明は、「我有り」の欲望充足を基本とした文明です。この消費を基本とした生活様式は、必ずや資源の無駄遣い、環境破壊、動植物の乱獲、海洋や大気汚染などへ突っ走る危険をはらんでいます。利益と権力のあくなき追求は、人種差別を生み、さらに宗教のエゴイズムと結びついて、内乱や戦争に発展していきます。こうした暴走を止めるには、私たちの価値観の根本的転換が必要だというわけです。「我有り」の価値観から「我無し」の価値観への転換であり、「我有り」の文明から「我無し」の文明への転換です。ブッダこそは、今私たちが必要とし、そこに再生への可能性を求めようとしている価値観を体現した存在と言っても言い過ぎではありません。一方、菅首相も鳩山前首相も、小沢一郎氏も、永田町のすべてのプレイヤーは「我有り」の自己そのものというべき姿をさらけだしました。その妄執が深ければ深いほど「ブッダ」が灯す一条の光は輝きを増します。私たちが今「ブッダ」に惹かれるのはその意味で自然なことなのではないでしょうか。(2011/6/10)
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    投稿日:2011年06月10日