書籍の詳細

10億ドルかけてGMがつくった電気自動車はなぜ消えた?年収360万円の若者に2億円も貸し付けて焦げ付いたサブプライムローン!避妊方法を教えない「絶対禁欲教育」って何……、泥沼化したイラク戦争から帰国した兵士はどうなった?生活費に困った未亡人がキッチンで風邪薬から覚せい剤を合成?大統領選は相手候補の中傷合戦……。ありえない!と笑いながらも、惨憺たる医療保険や破綻した年金問題は、明日の日本の話じゃないかとヒンヤリする1冊。

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アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らないのレビュー一覧

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  •  2013年1月20日、オバマ米大統領の二期目の4年間がスタート、21日には首都ワシントンで就任式が行われましたが、それにしても「アメリカ」って、なんだろうか。iPadの画面に表示された『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文藝春秋、2012年8月31日に画像型配信、後にリフロー型に切り替え再配信)の表紙、明快すぎる書名を眺めながら考え込んでしまいました。
     著者の町山智浩さんは1962年生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州在住。映画評論や多彩なコラムを執筆している人気コラムニストです。
     町山さん、のっけからアメリカ人の無知さかげんをやり玉にあげて、本書序章をこう書き始めます。

    〈筆者が毎晩欠かさずに観るアメリカのテレビ番組は、夜11時半からの国民的トーク・ショー『トゥナイト』。この番組でいちばん面白いのは「ジェイウォーキング」というコーナーだ。司会のジェイ・レノが街頭の人々に、小学生レベルの質問をしていく。例えば北京オリンピックの最中には、こんな感じ。
    「今、オリンピックやっている国はどこですか?」「アメリカ? ・・・・・・じゃないのね・・・・・・」
    「ヒント。アジアです」
    「タイかしら?」
    「・・・・・・オリンピック発祥の地は?」「アメリカ?」
     答えているのは小学生とかチンピラじゃない。きちんとした服装の白人女性だ。レノは思わず尋ねる。「ところで職業は?」
    「大学生。教育学部よ。先生になるの!」
     ギャフン。スタジオの観客は大爆笑。(中略)
     この手の番組はあまりに面白すぎて、「ヤラセ」や「仕込み」じゃないの? と疑ってしまうが、これが現実だ。
     ナショナル・ジオグラフィック(全米地理学協会)が、2006年に18~24歳のアメリカ人に対して行った調査によると、88%は世界地図を見てもアフガニスタンの位置がわからず、63%はイラクの場所を知らなかった。
    「アメリカが外国に戦争をしかけるのは地理の勉強をするためだ」というジョークがある。パスポートをもっているアメリカ人は国民の2割にすぎない。他の8割は外国に関心がない。彼らが外国の土を踏むのは、銃を持って攻め込むときだけだ。
    「でも、外国の場所なんか、俺もあやふやだよ」という人は、さらにナショナル・ジオグラフィックの調査を見て欲しい。アメリカの地図を見てニューヨーク州の場所を示せない者が5割もいたのだ。
     これが世界一の覇権国家の将来を担う若者たちの現実である。〉

     あまりにも面白すぎて、引用では省略しましたが、街頭インタビューが流行(はや)りに流行って、以下のような抱腹絶倒なのですが、これで大丈夫なのか他人事ながら気になってくる珍問答が電波に乗って全米を席巻しているようです――。
    「今まで世界大戦は何回あった?」「三回?」
    「ヒロシマ、ナガサキといえば?」「ジュードー?」
    「ベトナム戦争でアメリカは勝った? 負けた?」「え? もちろん私たちの勝ちでしょ! ・・・・・・ベトナム戦争ってアメリカがしたんだっけ?」
    「9・11テロの犯人の宗教は?」「ヒンズー!」
    「アルカイダって何?」「テロリスト! イスラエルの」
    「この世界地図でイランを指差してください」その紳士が指差したのはオーストラリアだった――日本人でイランはここと言いながらオーストラリアを指差す人はあまりいないのではないでしょうか。ニューヨークの場所はともかく、東京の場所を知らない日本人はまずいないでしょう。
     著者は「無知なアメリカ人」がどうして生まれてきたのか、いつのころから発生してきたのかに思考をめぐらせ、文献をあたり、新聞、テレビなど当のアメリカ人が目を向けないメディアに目を光らせ、探求していきます。こうして、アメリカの笑うしかない現実――アメリカで生活しながら見聞きしたバカげたニュースを集めたのが本書です。
     目次を一読しただけで、私たちが知っているようで実はなにもわかっていないアメリカという国の素顔が見えてきます。安倍新首相は最初の訪問国としてアメリカを希望しながら、オバマ大統領側からは日程的に「日米首脳会談」は無理とすげなく断られてしまいましたが、そもそも「アメリカ」とは何か、これからの時代にどうつきあっていけばいいのか、を草の根の民の視点で再考するべき時なのかもしれません。バカげたニュースを集積した本書はそんな時がきていることを雄弁に物語っているような気がします。
     最後に著者の一言――「笑って読んで欲しいけど、ムカッときたらごめんなさい。ちなみに、リック・シェンクマン著『アメリカ人は嘆く われわれはどこまでバ カか?』(扶桑社、2012年12月28日配信)によると、自分たちの国が日本に原爆を投下した事実を知っているアメリカ人は49%にすぎないそうです」
    (2013/1/25)
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    投稿日:2013年01月25日