書籍の詳細

日本の法人税は本当に高いのか?法人税が20%台まで下げられるのに、国民に負担を強いる消費税は、2017年には10%に上がる見込み。しかし、巨大企業が正しく納税すれば、消費増税分をはるかに上回る税収が得られるはずなのです。戦後間もなく国税庁に勤務し、その後は中央大学で税務会計学を創始、50年以上税研究に身を捧げた著者による渾身のレポート。法人税38.1%の時期、驚くべき低負担率だった35社の企業名、そのカラクリも明かされます。

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税金を払わない巨大企業のレビュー一覧

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  •  まず孫正義氏率いるソフトバンクと柳井正氏のもとで急ピッチの国際化を進めるファーストリテイリング(ユニクロ)の興味深い数字をご覧ください。両社の利益の大きさを考えると、その税負担額が驚くほど小さいという不思議な事実です。中央大学名誉教授(商学博士)の富岡幸雄氏がつきとめ、文春新書『税金を払わない巨大企業』で明らかにしました。同書は紙版が2014年9月20日に出版され、12月26日に電子版がリリースされました。〈ソフトバンク(ソフトバンクBB、Yahooなどを展開する持株会社):税引前純利益788億8500万円→法人税等(納税額)500万円 実行税負担率0.006%〉〈ファーストリテイリング(ユニクロ、ジーユーなどを展開する持株会社):税引前純利益756億5300万円→法人税等(納税額)52億3300万円 実行税負担率6.92%〉2月16日に所得税の確定申告が始まります。多くのサラリーマンは年末調整が行われ、すでにお手元に給与所得の源泉徴収票があると思います。医療費などの負担があって還付請求の準備をしている人も少なくないでしょう。雑誌が「払いすぎの税金を取り戻す知恵」などの特集を組む2月は、国民として負担している所得税の重さについ、ため息がもれてしまう季節です。そんな時に、利益が788億円もありながら支払った税金がたったの500万円という事実を突きつけられたら、「冗談じゃない!自分の払った税金を返してくれ」と言いたくなるのが素直な庶民感情です。富岡・中央大学名誉教授が明らかにした「税金を払わない巨大企業」は、ソフトバンク、ユニクロだけではありません。同書には「実行税負担率の低い大企業35社」が一覧表になって記載されています(2013年3月期。法定正味税率38.01%の時期)。1位は三井住友フィナンシャルグループ(三井住友銀行、三井住友カード、三井住友ファイナンス&リース、日本総合研究所、SMBCフレンド証券などを傘下に納める持株会社)実行税負担率0.002%(税引前純利益1479億8500万円→法人税等300万円)。前述のソフトバンクが0.006%の2位で、3位:みずほファイナンシャルグループ(みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券などを統括する持株会社)0.09%(2418億9700万円→2億2600万円)、4位:三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、三菱UFJリース、三菱UFJニコスなどの金融機関を傘下に納める持株会社)0.31%(1886億9900万円→5億7700万円)。メガバンクを傘下に納める持株会社が続き、5位みずほコーポレート銀行(2013年7月、みずほ銀行を吸収合併し、みずほ銀行に改称)2.60%、6位みずほ銀行(第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の分割・合併により誕生したメガバンク)3.41%とメガバンクが上位を占めています。続く7位がユニクロのファーストリテイリング6.92%。そして8位オリックス12.17%、9位三菱東京UFJ銀行12.46%と再び金融機関が並び、製造業にルーツを持つ企業でトップ10に入ったのは、10位のキリンホールディングス(飲料事業のキリンを中核とし、協和発酵キリン、小岩井乳業などを傘下に納める持株会社)12.50%だけでした。このあともANAホールディングス(11位)、住友商事(12位)、三菱重工業(13位)、小松製作所(14位)、富士重工業(15位)、丸紅(16位)、ニコン(17位)、日産自動車(18位)、サントリーホールディングス(19位)、阪急阪神ホールディングス(20位)と日本の名だたる有名大企業が続きます。最後の第35位は三井住友銀行で、実行税負担率は31.52%、税引前純利益6664億円に対し、法人税等が2097億円余り。ちなみに日本最強の企業トヨタ自動車の場合は、税引前純利益1兆4036億4900万円に対し法人税等が3916億7800万円、実行税負担率は27.9%、30%以下です。ここに見る35の有名大企業の実行税負担率は税法で定められている法定正味税率(38・01%)をはるかに下回っているのです。(その詳細をぜひ本書をひもといて確認してください)。さて、日本の大企業はなぜ、その巨額な利益に見合う税金を払わないですんでいるのでしょうか。富岡名誉教授の説明をみてみましょう。〈法人税は、原則として、当期の売上などの収入=「益金」から、売った商品の原価や人件費、経費などの「損金」を引いた利潤=「所得」に対してかけられます。法人の所得を基準に、法律に基づいて一定税率の税金がかかるわけです。 益金-損金=所得(ただし、益金が損金より多い場合) 所得×税率=税額  当然ながら、「所得」が多ければ支払う税金は多くなりますし、「損金」が多くて赤字になれば、税金は免除されます。〉としたうえで、法人税実効負担率を企業の資本金の規模別に分析した富岡教授はこう続けます。〈資本金1億円以下の法人には、中小企業に対する軽減税率(年所得800万円以下の部分は15%に軽減)が適用されるため、法定基本税率(25・5%)より低くなるのは当然といえます。ところが、資本金「100億円超」の巨大企業の法人税実効負担率(9.67%)が、「1000万円以下」の企業より半分以下であることが、日本の税制の問題なのです。大企業の法人税実効負担率が低いのは、企業が公表している利益と、税務上の課税所得に大きなギャップが存在するからです。このような差額が生じるのは、税務上で受取配当金のような「益金除外」や、繰越し欠損金を利益から差し引く「損金算入」などが行われているからです。これらの処理は、企業が抱える専門の会計担当者によって、税法の網の目をくぐり抜けるよう巧みに行われています。私が大企業の問題を取り上げるのは、日本の法人税制が大企業を優遇する一方で、中小企業には優遇措置が適用される条件が整っていないために、法定税率に近い税率が当てはめられているからです。日本の法人税の現状は、「巨大企業が極小の税負担」なのに対して、「中堅・中小企業が極大の税負担」となっていて、企業規模別の視点から見れば「逆累進構造」となっています。税制上の公平とは、所得が大きい企業が多く負担するという「応能負担」が原則です。その意味では、日本の税制の現状は、とても公平とは言えません。〉「日本は法人税が高い」というイメージが国内外に浸透しています。確かに日本の法人税制では、名目的な「法定正味税率」が高く設定されているためですが、とくに大企業が負担している税金は諸外国と比較しても決して高くはないことは、ソフトバンクなど35社の実例によって示されています。企業が納税する際の納税額は、前述のとおり「課税所得×税率」で算出されます。富岡教授はいいます。〈たとえ税率が高くても、課税ベースである課税所得を低く抑えることができれば、実際の納税額を少なくすることが可能です。実際に、大企業の納税額が少なく、実行税負担率が低いのは、課税所得を少なくできるからです。それだけに問題なのは、課税所得の正体なのです。課税ベースを“合法的に”少なく算定する仕組みとして、企業側の会計操作や優遇税制の拡大適用、巧妙な手口、それらに対応できない税法上の欠陥などがあります。企業が納税額を少なくする方法には、大きく分けて次の9項目があります。〉富岡教授のあげた9項目とは、以下の通りです。(1)企業の会計操作 (2)企業の経営情報の不透明さ (3)受取配当金を課税対象外に (4)租税特別措置法による優遇税制 (5)内部留保の増加策 (6)タックス・イロージョン(課税の浸蝕化)とタックス・シェルター(課税の隠れ場)の悪用 (7)移転価格操作(海外関連企業との取引価格の操作) (8)ゼロ・タックスなどの節税スキーム (9)多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ 企業が税金を少なくする方法は多種多様です。税務当局を上まわる知識を備えた優秀なスタッフを揃えて負担の軽減化をはかっているようです。〈確かに大企業といえども、タックス・プランニング(節税戦略)によって節税を図ることは正当な権利です。だからといって、タックス・ヘイブンなどを悪用したり、制度の不備を衝いた「避税」まで許されるのでしょうか。そもそも企業の社会的責任とは、本来、黒字を出して、雇用とともにより多くの税金を払うことで、国家の安全保障や国民の福祉などに貢献することです。それが社会の公器たる企業のあるべき姿です。ところが、今の日本では、また、多額の納税を行う企業を尊敬する社会的風土も失われています。企業経営者の側も、社会的責任感が欠如しています。2014年4月、日本公認会計士協会は、公認会計士のほぼ2人に1人(48.8%)が、担当している企業が業績や資産状況をごまかそうとする「不正」を一度は発見したと発表しました。なげかわしい限りです。〉安倍首相はアベノミクス成長戦略の柱として2015年度から法人減税を始めて、数年以内に法人税を20%台に下げる方針を打ち出しました。それによる税収減をどう補うのか。個人や中小企業への一層の課税強化となってくるのは明白――富岡教授の警鐘に耳を傾けるべき時です。(2015/1/23)
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    投稿日:2015年01月23日