憲法と平和を問いなおす

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日本国憲法第九条を改正すべきか否か、決断を迫られる時代が近づきつつある。しかし、立憲主義、つまり、そもそも何のための憲法かを問う視点が見落とされてきた。その核心にある問いにたちかえり、憲法と平和の関係を根底からとらえなおす。情緒論に陥りがちなこの難問を冷静に考え抜くための手がかりを鮮やかに示す。

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日本国憲法第九条を改正すべきか否か、決断を迫られる時代が近づきつつある。しかし、立憲主義、つまり、そもそも何のための憲法かを問う視点が見落とされてきた。その核心にある問いにたちかえり、憲法と平和の関係を根底からとらえなおす。情緒論に陥りがちなこの難問を冷静に考え抜くための手がかりを鮮やかに示す。

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 戦後70年の今年――2015年(平成27年)は、後世の平成史にどのように記述されることになるのでしょうか。
 安倍政権と与党(自民党・公明党)は、7月15日に衆院平和安全法制特別委員会で集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案を強行採決、翌16日には衆院本会議で採決、参院に送付しました。これによって、「安保法案」――大多数の憲法学者が「憲法違反の法案」とした――は、仮に衆院通過から60日が過ぎても参院で採決されない場合、衆院の出席議員の3分の2で再可決できるという憲法の規定「60日ルール」が適用される条件が整いました。つまり国会会期を9月27日まで延長して法案成立を期した安倍政権・与党の計略通り、安全保障関連法案の成立は確実となりました。
 1946年(昭和21年)11月3日公布、その6か月後の1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法――「(日本国民は)政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と謳った前文と「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「国の交戦権は、これを認めない」とした第9条とによって平和憲法と呼ばれ、戦後日本の根幹となってきた――は正当な手続きを経ることなく、戦後70年の2015年に「解釈改憲」されたというわけです。
 政権・与党に対して法の専門家が疑問を突きつけ、市民、若者の反対の声が国会周辺を埋め尽くしましたが、安倍首相は決めるときには決めるのが政治とばかりに押し切りました。60年安保の時、岸首相は国会がデモ隊によって包囲されている中で、後楽園球場のプロ野球に熱狂している「声なき声」を聞くといってのけましたが、さすがその岸元首相を敬愛する祖父として間近に見ながら育ってきた安倍首相です。自主憲法を政治課題とした祖父以来の念願であった憲法の呪縛から抜け出して世界中どこへでも飛んで行って戦うことができる「普通の国」への第一歩を踏み出したといっていいでしょう。
 しかし――衆院の数を頼みにイケイケ状態だった流れは、明らかな変調を示していました。毎日新聞社が7月4日、5日に実施した世論調査では、ついに内閣不支持率が支持率を上回り、第2次安倍内閣発足後初めての逆転でしたが、その後朝日新聞を始め大手マスメディアの調査で支持率の逆転が相次ぎました。
 潮目の変化の直接的なきっかけとなったのは、6月4日に行われた安保法制についての参考人質疑で行われた3人の憲法学者、長谷部恭男(早稲田大学教授、はせべ・やすお)、小林節(慶應義塾大学名誉教授、こばやし・せつ)、笹田栄司(早稲田大学教授、ささだ・えいじ)の発言。3人揃って安保法案は違憲と断言したのですが、とくに長谷部教授は自民・公明両党推薦の参考人として国会に呼ばれていただけに衝撃は大きく、その場にいてテレビのニュース映像に映しだされた自民党の船田元・憲法改正推進本部長の苦虫をかみつぶしたような顔がなんとも皮肉で、忘れられません。

 長谷部教授は安倍首相が強行しようとする安全保障法案を憲法違反と明言したのはなぜでしょうか。ここに一冊の注目書があります。長谷部教授が東大教授時代の2004年に出版した紙書籍(第8刷)を底本に電子化され、2014年12月にリリースされた『憲法と平和を問いなおす』(筑摩書房)です。自民党の関係者たちは教授の著書にいっさい目を通すことなく、長谷部教授を参考人として推薦し、国会に呼び出したとしか考えられません。長谷部教授の考え方は現実に即したもので、それは「あとがき」を読んで品定めをして買うかどうかを決めようという適切な判断力の持ち主もいるであろうから、そのための判断材料を提供するつもりで書いたという「あとがき」によく表れています。引用します。

〈第一に、「憲法と平和」とくれば、憲法に反する自衛力の保持を断固糾弾し、その一日も早い完全廃棄と理想の平和国家建設を目指すべきだという剛毅にして高邁なるお考えの方もおられようが、そういう方には本書は全く向いていない。
 第二に、「憲法と平和」とくれば、充分な自衛力の保持や対米協力の促進にとって邪魔になる憲法九条はさっさと「改正」して、一日も早くアメリカやイギリスのように世界各地で大立ち回りを演じることのできる「普通の国」になるべきだとお考えの、自分自身が立ち回るかはともかく精神的にはたいへん勇猛果敢な方もおられようが、そういう方にも本書は全く向いていない。
「憲法と平和」というテーマで、以上の二大読者層に全く向いていない本だとなると、一体誰が購入するのか、疑問である。(中略)
・・・・・・筆者としては、以下のようなかなりトッポイ疑問のうち、いずれかがいままで一度でも心に浮かんだ方には、向いているのではないかと考えている。
(1)国家はなぜ存在するのか。国家権力になぜ従うべきなのか(それとも従わなくてもよいのか)。
(2)人が生まれながらに「自然権」を持つというのはいかにも嘘くさい。そんな不自然な前提に立つ憲法学は信用できないのではないか。
(3)多数決で物事を決めるのはなぜだろう。多数で決めたことになぜ少数派は従わなければならないのか。
(4)女性の天皇を認めないのは、男女平等の原則に反するのだろうか。
(5)憲法に書いてあることに、なぜ従わなければならないのだろうか。とっくの昔に死んでしまった人たちが作った文書にすぎないのに。〉

 筆者は「トッポイ疑問」といっています。しかし、どれも私たちが「憲法」や「政治」について分かったような気になっているものの実は説明できるほどには分かっていない、つまり何も分かっていないのですが、これからの日本をどうしていくかを考えたとき、何にもまして大事な基本的な疑問ではないでしょうか。それらの憲法の基本をわかりやく、ていねいに解説しているのが、本書です。
 安倍首相の応援団を自認している自民党若手議員たちの勉強会「文化芸術懇話会」で「沖縄の二つの新聞は絶対つぶさなあかん」「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」など、およそ民主主義国家の“選良”とは思えない発言が飛び交う時代です。政権与党の議員という立場でこうした発言をすることも、「言論の自由だ、どこが悪い!」という発想の国会議員の存在もいまや普通の状況のようです。
 そんな状況だからこそ、一人でも多くの日本人に読んでほしい本です。筆者の長谷部教授が「あとがき」でこの本には向かないとした「憲法と平和」というテーマの2大読者層、とくに〈憲法九条はさっさと「改正」して、一日も早く「普通の国」になるべきだ〉と考えている精神的にはたいへん勇猛果敢な人たちには、むしろ本書を読むことをおすすめしたい。

 長谷部教授の「集団的自衛権」についての考え方は以下のとおりです。
〈集団的自衛権は、自国の安全と他国の安全とを鎖でつなぐ議論であり、国家としての自主独立の行動を保障するはずはない。自国の安全が脅かされているとさしたる根拠もないのに言い張る外国の後を犬のようについて行って、とんでもない事態に巻き込まれないように、あらかじめ集団的自衛権を憲法で否定しておくというのは、合理的自己拘束として、充分にありうる選択肢である。〉

「これは安倍政権の考え方と食い違っている。ダメだ。本をつぶしてしまえ」とは、まさかいわないですよね。(2014/7/17)
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