書籍の詳細

フラ、レイと並び、ハワイの文化を象徴するハワイアンキルト。その誕生から今日に至る歴史を通じ、キルトに込められたさまざまなメッセージを教えてくれる。実践編では、ハワイアンキルトの約束事や用語、道具などの解説をはじめ、作品制作にあたって注意すべきことなどを、写真を用いながらわかりやすく解説する。また、ハワイ各島を代表する植物と色をテーマにした作品紹介などもある。巻末にはキルト教室とアンティ(先生)の、ハワイ文化における関わりについてページを割いている。

まだユーザーレビューはありません。最初のレビューを書いてみませんか?

キルト・ストーリーのレビュー一覧

絞込み条件
  • レビュアー絞込み
表示形式
  • 表示件数
  • 表示順
  • ハワイに布地を初めて紹介したのは、探検家として歴史に名を残した英国海軍士官ジェームズ・クック、通称キャップテン・クックでした。1778年にキャップテン・クックがヨーロッパ人として初めてハワイ諸島を訪れたとき、ハワイでは布地らしいものといえば、ワウケの樹皮を叩いてなめし、模様をつけたタバ(カバ)か、バンダナスの葉を干して織ったラウハラマットくらいのものだったそうです。クックは1979年に先住民との争いで命をおとしますが、その後1820年以降、キリスト教の布教を目的にニューイングランドから移ってきた宣教師の妻たちによってハワイに裁縫技術がもたらされ、それとともにたくさんの種類の生地がハワイに入ってきたようです。木綿、絹、ウールなどが主だったもので、これらを用いてキルトがつくられるようになります。「ハワイアンキルト」の誕生です。本書『キルト・ストーリー』は、19世紀半ばに始まるハワイアンキルトの歴史・文化的意味からそのデザイン意匠、作り方までをコンパクトに解説した入門書です。著者の藤原小百合アンさんはオハイオの高校に留学していた時にキルトに出会い、後に大学を卒業してハワイでの生活を始めて、ハワイアンキルトに魅せられて以来、かれこれ20年以上もの間「ハワイアンキルト中毒」にかかっているという筋金入りのキルトデザイナー、キルターです。アメリカ本土のキルトが端切れを幾何学模様につなぎ合わせたピースワークに綿と裏地を重ね合わせて三層として縫い合わせるのを基本としたのに対して、気候的に温かさを重視する必要性がなく、また端切れもあまりなかったハワイでは、ピースワークができないため、1枚の生地を切って作る、現在のようなスタイルが出来上がってきたそうです。面白いのは、ハワイではもともと暖を取る必要はありませんから、キルトは実用の品としてつくられてきたわけではなく、手法の細かさからアートとして発展してきたという点です。特別な日のベッドカバー――嫁ぐ娘のために、あるいは生まれた孫のためにと代々伝えられてきた手作りのアートだというのが著者の見方です。〈伝統的なハワイアンキルトには3つの原則があります。1.2色の生地を使うこと。2.雪の結晶のようなシンメトリーのデザインを使う事。3.波の波紋のようなエコーキルトを施すこと〉もともと実用性よりも装飾性が大事とされるアートであり、それゆえある種の精神性を帯びてきます。〈伝統的なハワイアンキルトのデザインは植物の花、葉、実などが主に使われます。他には、歴史的な出来事、宗教的な要素、美的なもの、抽象物などもデザインには使われました。反対にタブーとされたのは、四足の動物や人間などのデザインです。これらはデザインに描き、キルトをしていくうちに、魂がキルトに宿ってしまうとされ、縁起が悪いものとされました〉ハワイアンキルトの最もポピュラーなデザインはパンノキ(ulu)です。パンノキはポリネシアンの人たちにとってとても大切な食料源であったのですが、大きな木にはたくさんのパンノキの実がなるところから、「成長」「グッドラック」の意味をもっており、そんなところからハワイアンキルトの標準的なデザインとして広く使われるようになったのではないか、筆者はこう推定しています。こうしたデザイン上の由来も含めて、ハワイアンキルトからは「ハワイ」の原像が見えてきます。もう一つのハワイを知ってしまった著者による『キルト・ストーリー』はそのまま、ワイキキやノースショアといった観光スポットとはまったく別の、もう一つのハワイに私たちを誘う格好のガイドになっています。そして、本の内容と同時に注目していただきたいのは、この本が紙では出版されずに、まず電子書籍として世に出たという点です。多種多様なハワイアンキルト、そのデザインの元となった花や葉の写真もふんだんに収録されています。しかもすべて、きれいなカラー画像。それがきれいなレイアウトでわかりやすく配置されています。ここでその一端をご紹介できないのが残念ですが、まず紙から出そうと考えていたらカラー写真は使えなかったのではないでしょうか。しかしせっかくのカラー画像をモノクロに変換して印刷したのでは、キルトの価値、デザインや意匠の美しさ、楽しさを読者に伝えることが難しくなります・・・・・・著者や出版者のこだわりが結実した本――電子書籍です。7月20日発売のebookjapanオリジナル書籍のハワイシリーズ、同時にもう2冊『ウクレレの誕生』『ハワイ諸島の自然』もリリースされています。(2012/8/10)
    • 参考になった 2
    投稿日:2012年08月10日