ドラフト1位 九人の光と影

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栄光のドラフト1位。しかし誰もが成功を収めるわけではない。その“称号”はその後の人生に、損だったか得だったか…。ブレービーに入った島野修、台湾に渡って後復帰、悲願の一勝を挙げた野中徹博、ホーナーの打撃投手となった黒田真二、暴漢に襲われ選手生命を縮めた荒川堯、プロ拒否した小林秀一…九つの様々なドラマ。

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栄光のドラフト1位。しかし誰もが成功を収めるわけではない。その“称号”はその後の人生に、損だったか得だったか…。ブレービーに入った島野修、台湾に渡って後復帰、悲願の一勝を挙げた野中徹博、ホーナーの打撃投手となった黒田真二、暴漢に襲われ選手生命を縮めた荒川堯、プロ拒否した小林秀一…九つの様々なドラマ。

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書店員のレビュー

「負け組への応援歌」との自負をもって、野球の世界を中心にノンフィクションを書いてきた気鋭の作家・澤宮優による、もっとも「澤宮優」らしいテーマ、対象にとことん密着して空間を共有して書くという、「澤宮優」らしい作品――『ドラフト1位―九人の光と影』が河出書房新社から刊行されたのは2008年12月。2011年の文庫化を経て2012年5月に電子書籍になりました。澤宮優は本書あとがきにこう書いています。〈私は好むにしろ好まざるにしろ、「ドラフト1位」という栄光を与えられた選手たちが、この十字架を負いながらどのように自分独自の人生を築き上げてきたのか記してみたいと思った。ドラフト1位は、栄光でもあり、見方を変えれば修羅にもなる。彼らは十代や二十代初めで、その十字架を背負った。そこで入団するか、拒否するか、人生の最大の選択もしなければならなかった。それが吉と出るか凶と出るかは、その後の彼らの野球人生が証明している。ただどういう結果が出ようと、彼らは死ぬまで、「ドラフト1位」という称号を背負いながら生きてゆかなければならない。それを宿業と捉えるか、発奮の材料とするか、人によって異なる。そんな彼らの人生を追い続けることは、平成不況の現代に大いに意味のあることだと考えた。野球の世界に限らず、誰もが、それぞれ固有の修羅を背負って生きているから、彼らの生き方は大きな参考になると思ったのである〉2012年のドラフト会議は10月25日に予定されています。注目の1位候補として週刊誌、スポーツ新聞などのメディアを賑わせている大阪桐蔭の藤波晋太郎投手、亜細亜大学の東浜巨投手、花巻東の大谷翔平投手たちを待っているのはどんな展開でしょうか。彼らは10月25日のドラマを経て、その後どのような野球人生を歩んでいくことになるのでしょうか。かつて彼らと同じようにこの運命の日をふるえる思いで迎え、そこで「1位指名」という十字架を背負うことになった9人の男たち。澤宮優は彼らのその後の軌跡を追い、九つの人生を淡々と、しかし温かく見つめて描きました。九つの人生――「1位指名」という栄光へのスタートラインに立った男たちは、しかしまったく異なる軌跡をたどることになります。そこには深い絶望感、挫折もあれば、苦渋の選択の末の再起の物語さえ生まれています。1968年(昭和43年)に巨人軍から1位指名された島野修は、高校時代に神奈川県の予選でノーヒット・ノーランを達成、甲子園でも活躍をして巨人に入団。将来を嘱望された投手でしたが、プロ選手としては実績が上がらず、阪急に移籍後、引退。その彼が、1981年(昭和56年)阪急が初めて作った球団マスコット「ブレービー」を被ることになります。「巨人のドラフト1位投手が恥ずかしくないのか!」といった心ないヤジも飛んでくる中、1998年(平成10年)まで1175試合、1試合も休むことなく、島野修はグランドに着ぐるみ姿で立ってファンサービスに徹しました。2010年5月に59歳の若さで亡くなった島野修は生前、著者のインタビューに応えて自らの人生を一言一言噛みしめるように語ってくれたそうです。続く8人は、「未完の大砲からスカウトになった慶應義塾大学・大森剛内野手」、「阪急を解雇され台湾で復活、日本復帰後悲願の1勝をあげた中京高校・野中徹博投手」、「ホーナーの打撃投手になった崇徳高校・黒田真二投手」、「西の福留、東の澤井と言われた銚子商業高校・澤井良輔内野手」、「1番、走れる捕手、慶應義塾大学・高木大成捕手」、「暴漢と“三角トレード”の早稲田大学・荒川堯内野手」、「巨人の1位指名を拒否した唯一の男、愛知学院大学・小林秀一投手」、そして「幻のドラフト1位? 慶應義塾大学・志村亮投手」です。最後の志村亮は、高校時代の神奈川県予選、甲子園、六大学野球の神宮球場でのクレバーな投球を記憶しています。1988年(昭和63年)のドラフト会議の超目玉だった志村がドラフト指名を断って普通に就職したことはニュースで知ってはいましたが、それが大手不動産会社、三井不動産で、そこでどんなサラリーマン人生を送ってきたのかは知るよしもありませんでした。入社が平成元年(1989年)ですから、もう24年の経験をもつ中堅ビジネスマン。余裕が出てきたからなのか、数年前にアマチュアのクラブチームで野球を始めて、いま休日は野球三昧だとか。とまれ、「ドラフト1位指名の男」たちを描いた「負け組への応援歌」ですが、描かれた9人、それぞれの「野球人生」は「負け組」ではありません。人生の「勝ち組」として心の内に誇りをもって生きているのだということが伝わってきて胸をうちます。イイ話です。(2012/10/19)
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