とまらない(新潮新書)

600円 (税別)

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「僕が学びつつあること、つまりサッカーを20代で理解してしまう選手もいる。でも未完成な僕には広がる余地もある。だからまだまだ先があると思うんだ」。震災復興支援チャリティーマッチでの印象的なゴール、自身のJリーグ最年長記録を更新し続けるゴール、そして、数字には表れないプレーと、「サッカー人」としての思索……。歩みをとめようとしない「キング・カズ」自身による、前人未到の領域での前進の記録。

カゴに追加 600 円(税別)

「僕が学びつつあること、つまりサッカーを20代で理解してしまう選手もいる。でも未完成な僕には広がる余地もある。だからまだまだ先があると思うんだ」。震災復興支援チャリティーマッチでの印象的なゴール、自身のJリーグ最年長記録を更新し続けるゴール、そして、数字には表れないプレーと、「サッカー人」としての思索……。歩みをとめようとしない「キング・カズ」自身による、前人未到の領域での前進の記録。

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書店員のレビュー

三浦知良、47歳。1993年のJリーグ発足当時からプレーを続けている唯一のプロ選手で、いうまでもなく最年長現役Jリーガーです。そのカズが日経新聞に連載しているコラムが本にまとめられ、電子書籍でも読めるようになりました。『やめないよ』『とまらない』の2冊(いずれも新潮新書)です。私の脳裡にはカズの二つのプレーが刻み込まれています。Jリーグが始まって様変わりした日本のサッカーがワールドカップ初出場をかけて臨んだアジア地区最終予選。1993年10月28日、日本代表はイラクとの最終戦ロスタイムに同点ゴールを決められて、ほとんど掌中にしていた1994年アメリカ大会への出場権を逃しました。待ち望んだ「歓喜の瞬間」の寸前で一転して「悪夢」のどん底に落とされて日本中が沈み込みました。イラクの選手がヘディングしたボールがゆっくりとした軌道を描いて日本のゴールに吸いこまれていった、その瞬間は「ドーハの悲劇」と呼ばれるようになります。私の脳裡に刻み込まれている“映像”は、その数秒前に始まります。カタールのドーハから送られてくる深夜のテレビ中継に釘付けとなった日本中のファンが試合終了の笛をいまか、いまかと待っていた時――コーナーキックを得たイラクの選手がすばやく近くにいた選手に短いパスを送ります。ショートコーナーです。パスを受けたイラク選手がドリブルに入り、近くにいたカズが慌てて対応に入りますが、間に合いません。カズの精一杯伸ばした足先をかすめるようにしてゴール前に上げられたボールはイラク選手の頭にピタリとあって、放物線を描いて日本のゴールへ。そしてゴールキーパーの松永成立が呆然として見送ったボールがゴールラインを越えた……1分にも満たないこの暗転のシーン。イラクの選手のセンターへのクロスがスライディングしながら必死に伸ばしたカズの右足の先を抜けていったシーンはまるでスローモーションフィルムのようにゆっくりモードで繰り返し再生されるのです。カズはその後、1989年のワールドカップ・フランス大会出場に挑むアジア予選を日本代表のエースフォワードとして闘いアジア予選を勝ち抜きます。しかしワールドカップ初出場を果たしたフランス大会の舞台にカズの姿はありませんでした。本大会直前のスイス合宿の最後に発表された最終メンバーからはずされたのです。プロサッカー選手としての限界を指摘する声も聞かれ始めます。しかし、カズはただひたすらサッカーを生きていきます。そうした日常をたんたんと綴ったのが『やめないよ』であり、その続編となる『とまらない』です。ブラジルから日本に帰って来て以降、カズは多くのゴールをあげてきました。ドーハの悲劇で終わるアメリカ大会のアジア最終予選で、日本代表はアジア予選で初めて韓国を1-0で破り本大会出場にあと一歩のところまで迫るのですが、この韓国相手に貴重な1点をあげたのはカズでした。数多くのゴールのどれよりも、記録ではなく深く印象に残るゴールシーンとして記憶しているのは、2011年3月11日の東日本大震災の直後、3月29日に大阪長居スタジアムで行われた復興支援チャリティマッチであげたゴールです。二つ目の脳裡に刻まれたカズのプレーです。この時のことを、カズはこう綴っています。少し長くなりますが、『とまらない』から引用します。〈これまでいろんなゴールを決めてきたけれど、こんなに喜ばれたのは記憶にない。「カズ、ありがとう」「言葉にできない」「ほんと、涙が出るよ」……。今まで体験したことのない、特別な感覚。こういう1点というものがあるんだなと、しみじみ思う。後日、「カズ」を知らない小学生がカズダンスをマネしていたと聞き、うれしくなった。僕が想像したよりずっと、慈善試合〔2011年3月29日に大阪・長居で行われた「震災復興チャリティーマッチ」〕でのゴールは大きくて、重かった。闘莉王選手(名古屋)がボールに競ると感じたときには体が反応していた。目の前の空間にボールが落ちてくる。道がぱっと開けたようで、体が覚えているままに僕はシュートを放っていた。無意識のうちにボールのバウンドをとらえ、コースを選んでいる。それは「判断」を超えた、迷いの一切ない、いわばフォワードの本能だった。「今までで一番胸を打ったカズダンス」と知人は言ってくれた。最後に振り上げた人さし指が、震える指から発する思いのようなものが、いつもと少し違っていて、泣けてきたという。Jリーグの歩み、日本代表の歴史、1998年ワールドカップに行けなかったこと。日本サッカーにまつわる歓喜も哀愁も背負ったまま、僕はサッカーをやっているのだろう。あの試合に注がれていたのは、見守る人々のそうした「思い入れ」。そして被災されて今なお苦しんでおられる方々の、何かを求め、欲する思い。それらに運ばれたゴールだった。大きな大きなゴールに、みなさんがしてくれたんだ。祝福とともに「カズ、あんなに足が速かったっけ」とからかわれる。僕やトレーナーは言い返す。「あのくらい走れるよ。あのタイミングで珠が出てくれば決められる。ちゃんと練習しているんだから」サッカーに対する態度や考え方が今日までぶれなかったからこそ、あのゴールに至っている。やはりすべてはつながっている。素晴らしいです、サッカーは。そして僕のサッカーは続く。あのゴールも「一つのゴール」になる。リーグ戦でもまた心に残るゴールを一つでも多く挙げ、みんなで祝杯をあげたいですね。もっと愛されるゴールを目指して。まあしかし、あれ以上のゴールというのは、なかなか……。〉カズの会心の笑みと晴れやかなカズダンスが眼前に甦ります。Jリーグの歩み、日本代表の歴史、1998年ワールドカップに行けなかったこと。日本サッカーにまつわる歓喜も哀愁も背負ったまま、僕はサッカーをやっているのだろう――とその想いを綴るカズへの共感。同じ時代を、同じ空気をすってきたという思いが読む者の心を静かに満たしていきます。この共有された思いこそが47歳の現役サッカー選手・カズを支え、私たちを支えてくれているのではないでしょうか。再び、カズの述懐――。〈クロアチアで無職になったころ、1カ月ほどヨーロッパを放浪した。面白かったなあ。いろんな国で練習やテストに加わって。またやりたいよ。46歳で「何しにきたんですか」と言われてね。そこにはチャンスが転がっているものだから。イングランド2部ボーンマスの練習試合にも行った。周りはトウモロコシ畑、でも芝生は最高のスタジアム。僕が3点入れて4─0で勝った。僕を売り込む代理人は鼻高々だ。ただ「試合前の午前練習がイマイチ」と難癖を付けられ、結局オファーはなかったんだけどね。でも代理人は「サウサンプトン関係者が見ていたぞ」とささやくわけ。ブラジルには何百ものチームがあり、練習ひとつでも誰かの目に留まる。サントスに始まりコリチーバなどに渡って再びサントスに戻れたのも、行く先々で僕を見ている人々がいたからだ。億万長者になるチャンスがここにあると、どこにいても思っていた。だから常に全力になれた。今でも変わらず、そう思う。これ、横浜FCのサブ組の練習試合だって同じだよね。だからうちの選手に言うんだ。「大学生相手でも何であろうと、どこで誰が見ているか分からないぞ。たまたまヨーロッパの人が来ていて、俺たちを気に入るかもしれないだろ」横浜FCから日本フットボールリーグのチームへ期限付き移籍する若手が「戻ってこれるよう頑張ります」と抱負を述べた。「違うよ」と僕。「頼むから戻らないでくれ、と向こうで言われるように頑張るんだよ」かつてブラジルの地方のクラブは契約を終える僕に言ってくれた。「倍の給料を出す。残ってくれ」そうであったから、僕も次のステップ、高いレベル、先の人生へ行けたはず。(中略)誰かが見ている。あると思っている人間には、チャンスはある。世界が近くなった今、なおさらだよね。〉「僕はサッカーを生きている」気負いもなくそういえるカズは、だから47歳の今、輝いています。これまでのどんなときよりも輝いて見えます。(2014/9/26)
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