日本伝説集

武田 静澄

インタープレイ

600円 (税別)

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平安時代の代表的歌人の一人で、美人の代名詞となっている小野小町が滋賀県大津市の逢坂山の山かげ深い庵で零落の晩年を過ごしたという伝説があることをご存知でしょうか。少し長くなりますが、武田静澄著『日本伝説集』から引用します。〈老いさらばえた姿のどこかに、なおつややかな匂いをただよわせているこの老女こそ、一世の佳人小野小町のなれの果てであったという。(中略)天下に艶名をうたわれた美女も、いまは大津八丁の街道筋に、みるかげもない老醜の身をさらして、上り下りの旅人によびかけ、その注文にこたえて、得意の歌をさらさらと書き、わずかな喜捨をうけるという、かわりはてた身の上となった。小野小町が身をよせた関寺は、現在の長安寺の寺内で、ここの草庵に数奇にとんだ一生を終わったというのである〉関寺の近くにある月心寺には百歳堂といって百歳の小野小町をうつしたと言い伝えられる醜怪な木像が安置されているそうです。もっとも小野小町伝説は大津だけでなく全国各地に拡がっていて、小野小町複数説もあるということですから、伝説はやっぱり面白い。『日本伝説集』は日本の各地に残る伝説、昔話70編あまりを収集編纂した貴重な文献ですが、私たち一般の人間にとってありがたいのは、きわめてわかりやすい現代語に「翻訳」されていること。そして、テーマ別に分類・整理されている点も、伝承の世界に初めて接する読者には、うれしい編集上の配慮です。「第一章 幽霊・妖怪にまつわる伝説」、「第二章 人畜・獣をめぐる伝説」、「第三章 神通力にまつわる伝説」、「第四章 親子の愛をめぐる伝説」、 「第五章 男女の愛をめぐる伝説」、「第六章 人生の流転を語る伝説」という章立てで、興味のあるところから自由に選んで読み進めることができるようになっています。伝説が言い伝えられてきた町の名前やゆかりの神社仏閣名が必ず付記されていますから、冬休みの旅行の際に立ち寄ってみるのも一興ではないでしょうか。(2010/12/10)
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