書籍の詳細

そもそも山には名前はなかった。山に名前がついたのは人間の都合である。あるとき、誰かが「フジサン」とか呼びかけたのだ。では、なぜ「フジサン」だったのか。著者は、答えを求めて東アジアを歩き回る。町から里、そして人間臭い山々へ。やがて見えてくる山と人の文化や歴史……。日本文化史、民俗学、言語学、東アジア関係史など、著者の幅広い知識を駆使して解き明かされる、山名の謎。

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山名の不思議のレビュー一覧

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  • 発端は「外国人は富士ヤマと呼び、日本人は富士サンと呼ぶのはなぜか」という疑問だった。なるほど、山の名前には「ヤマ」「サン」「セン」の3種類がある。会津磐梯山、加賀の白山は「サン」。これに対し、浅間山、神奈川県の大山(阿夫利神社で知られる)は「ヤマ」だが、同じ大山でも伯耆大山は「セン」と呼ぶ。また同じ雲取山と書いても、東京の最高峰は「くもとりやま」で、福岡県直方の雲取山は「くもとりさん」となる。この不思議を東アジア史を視野に入れて現地踏査を行って追究したのが本書。興味深い現象や符合が数多く出てくるのだが、ここでは探求の入り口として3種類の呼び名の種明かしをしておこう――「サン」は唐時代の漢音そのまま。いわば空海ら遣唐使が持ち帰った発音に由来する。これに対し「セン」は時代をさかのぼって、呉音が流入したもの。呉は三国志にも出てくる中国南部地帯で、現在の江蘇省のあたり。日本で「セン」が多く使われているのは山陰地方で、このあたりの符合も興味深い。漢字文化の流入経路にあたる韓国では「サン」が使われているし、同じ漢字圏のベトナムでは「ソン」。もうひとつ面白い現象はミャンマーにある。ビルマ語では山脈をyomaといい、ヤマに非常に近い発音だということを著者は現地で直接確かめている。(2009/10/16)
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    投稿日:2009年10月16日