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暁の群像(下)

少林塾にはいった弥太郎は、後藤象二郎と知り合う。後に龍馬と「船中八策」を練り上げたあの後藤である。このコネで土佐商会の主任、長崎留守居役に抜擢され、明治維新以降は海運業をはじめた弥太郎、政府高官や外国人をカネと女の接待漬けにして強引に商売を広げる。西南の役では巨利を手にし、ついに日本の船の8割を手中にするまでに。西郷隆盛、井上馨、木戸孝允、桐野利秋ら精鋭きらめく群像劇において、岩崎弥太郎は何を演じたのか。一代で財を築いた、ど迫力人生!

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幕末期から明治維新、近代国家への道を歩む日本にあって、土佐の下級武士の出身ながら、日本最大の財閥、三菱グループの礎を築き上げた創始者、岩崎弥太郎を描いた作品は少なくありません。司馬遼太郎(『龍馬がゆく』)、村上元三(『岩崎弥太郎』)、本宮ひろ志(『猛き黄金の国』)などですが、経済学者でもあった直木賞作家・南條範夫による『暁の群像 豪商 岩崎弥太郎の生涯』(上・下)は、岩崎弥太郎を激動期に現れた英傑の一人としてではなく、煌めく元勲や政府要人との接点を徹底的に利用して商機を巧みにつかんでいったこと、そしてその商才がどう研ぎすまされていったのかを描いている点に大きな特徴があります。若き岩崎弥太郎の商売人としての才覚を最初に見抜いたのは、奉行を批判する落書きを咎められて牢にたたき込まれていた弥太郎と同房となった瀬左衛門という商人。禁制の品を売った咎で入牢してきた瀬左衛門が取り調べもないにもかかわらず、平然として焦慮の色もないのを不思議に思って「獄から出たくはないのか」と声をかけた弥太郎は、商人の思いもよらぬ答えに少し呆れると同時に少し感心します。これが商売人としての弥太郎の原点となる出会いです。少し長くなりますが、引用します。〈「ご禁制などと言うものは、事実そのままに守られましたならば、とても我々商いをやってゆけるものではありません。袖の下を使えば、いくらでもおめこぼしがあればこそ、商売も成り立つのでございます」(中略)「岩崎さまのことはだいたい、存じています。お若いこと故、無理もありませぬが、短気は損気でございます」「しかし、私は正しいことをしているのだ」「正しいことをしているお積りでも、こうして牢に入れられて、いつご赦免になるのか分からぬ有様では仕方がありますまい」「その通りだ」「外におられる方々に連絡して、お役人衆に、袖の下でも何でも使って、早く出していただくようになさいませ」「そんな曲がったことは出来ん」「世の中は、曲がったこと、間違ったこと、馬鹿げたことばかりでございます。あなたさまが、それをご自分で、叩き潰すだけの大きな力をお持ちでない限り、それに逆らうのはむだでございます。少なくともご損でございます。私ども商人は、良い悪いよりも、損か得かで、物事を判断して参ります。それより他に方法がございません。お武家さまとて、結局、おなじことなのではございませんか」〉こいつのいう通りだと思ったものの、それを口に出して是認するのは忌々しい。「壁に向かって何を考えているのか」弥太郎が聞くと、瀬左衛門は「算用の稽古をしている」と答えて、「一から百まで足すといくつになるか」と弥太郎に答えを求めます。暗算を試みたものの頭がこんぐらがるばかりで一向に答えが出てこない。〈瀬左衛門が微笑して、「五千五十でございます」「お前は、はじめから、その答えを知っているのだろう」「その通りでございます。しかし私が申し上げるようにお考えになれば、あなた様にも、一呼吸の間に計算できます」「どうするのだ」「一から百までを足すとしますと、一と九十九で百、二と九十八で百、三と九十七で百、こう考えてゆけば、四十九と五十一で百まで、四十九の百ができます。これで四千九百となりましょう。後に残ったのが、最後の百と、真ん中の五十、これを足しますと、五千五十となります」〉弥太郎は続けて問われた一から千までを足すといくつになるかを難なく暗算して見せます。算用問答だけではありません。牢中生活で瀬左衛門は「自分が正しいと言う信念だけでは世の中を渡ってゆけないこと、権力と言うものはむやみに抗(あらが)うよりはこれを利用する方が遥かに得策であること」などなど、実例を以て諄々と諭します。後年、瀬左衛門は弥太郎を引き立て商人への道を歩むきっかけをつくることになります。岩崎弥太郎は、明治維新後に廃藩置県、藩札廃止、西南戦争に際して巨額の利益を手にし、また饗応の手練手管を駆使して明治政府を牛耳っていた大久保利通、大隈重信に取り入り、結局日本の海運を制覇することに成功します。これが大三菱の基礎となっていくわけですが、その始まりが若き日に牢内で学んだ「商売人の心得」だったというのですから、人の人生、何がどこで幸いするかわかりません。(2012/5/11)
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