変りものの季節

400円 (税別)

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石油会社勤務の独身OL・坂爪亜矢子のピンチを救ったのは、何と、社内では、変わり者、役立たずと言われる新入社員の3人組。亜矢子のまわりで起きる不審な事件。その裏にあるのは会社乗っ取りの陰謀か?真犯人は誰?亜矢子とダメ社員?の4人組が事件解決に乗り出す。

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石油会社勤務の独身OL・坂爪亜矢子のピンチを救ったのは、何と、社内では、変わり者、役立たずと言われる新入社員の3人組。亜矢子のまわりで起きる不審な事件。その裏にあるのは会社乗っ取りの陰謀か?真犯人は誰?亜矢子とダメ社員?の4人組が事件解決に乗り出す。

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書店員のレビュー

 軽妙なストーリー展開と謎解きの意外性――赤川次郎らしさがたっぷりの『変りものの季節』は、1995年双葉社刊行の紙書籍を底本に電子書籍化された長編ミステリー。石油会社OLの坂爪亜矢子(さかづめ・あやこ)が取引先の印刷会社社員の不審死に巻き込まれ、変りものの新入社員3人組とともにその謎を解いていく物語です。
 とにかく坂爪亜矢子と新人3人がフツーではないところが、作品の大きな魅力となっています。少し長くなりますが、その人物像をピックアップしてみましょう。
 まず、坂爪亜矢子――。
〈坂爪亜矢子、二十七歳。くり返すが独身。かつて恋人の一人や二人、いなかったわけではない。スラリとした体つき、長身ではないが、足は長い方。美人――というのは我が目の評価。まあ、恋人ができてふしぎじゃない女性ではあるが、目下のところは「空(あ)いている」。忙しいせいもある。今は仕事が面白いのだ。特に、この春からは部下が一度に三人もできてしまった。おかげで目の回る忙しさ。部下がいるといえば聞こえはいいが、要するに新入社員の教育係〉

 というわけで、広報課所属の坂爪亜矢子のもとに配置された3人の新人です。一人目の木下征男は、不器用でドジ!
〈「木下(きのした)君」と、亜矢子は呼んだ。
「木下君!」
「は、はい!」
 机に向かってボーッとしていた木下征男は、飛び上がるように立ち上がったが、その勢いで、車輪のついた椅子がシューッと滑って行き、通りかかった女の子にぶつかった。
「キャッ!」
 両手に一杯書類を抱えていたその子は、足を取られて引っくり返り、書類は辺り一面に飛び散ってしまった。
「ご、ごめんなさい!」〉

 二人目の小西夕紀は子供っぽさの残る20歳。春に短大を出て入社して来た。
〈・・・目の前に背中を見せて座っている小西夕紀を呼んだ。
「ちょっといい?」
「はあい」と、振り向いた小西夕紀は、サングラスをかけていた。
 亜矢子は面食らって、「どうしたの? それ・・・・・・」
「あ、すみません」と、サングラスを外すと、真丸な顔に大きな目。
「目が疲れて、週刊誌に、日本の家は明るすぎる、って書いてあったんで、サングラスをかけてみたんです。でも、だめですね。これかけてちゃ、文字が読めない」
「じゃ、やめた方がいいわね」〉

 三人目、名門国立大学の文学部を出た白河顕治(けんじ)は、25歳の“文学青年”。
〈「白河さん」と、亜矢子は言った。
「どこへ行ってたの?」
「屋上です」
 二十五歳というのが信じられないほど老け込んだ感じの白河はそう言って、「一度死んだんです、僕は」と、難しく眉を寄せる。
「あ、そう」これくらいのことではびっくりしない。
「屋上で日の光を浴び、風の囁きを聞く内、再び細胞がよみがえって活動を始めたんです。現代人は、生きるために空や風が必要なことを忘れている。天井(てんじょう)とエアコンの風だけで生きているのは、ガラス箱に入れられたモルモットと同じです」
 と、白河は言った。「人々の心に必要なのは『詩』です。詩こそが人間を人間に帰してくれるんですよ」
 二十五というのに、もう髪には大分白いものが混り、顔色も青白くて全体に生気がない〉

 どうして三人が三人とも、そろって、「変わりもの」なのか。仕事を教え込もうとするものの、「のれんに腕押し」「ぬかに釘」の状態で、どうにもならない・・・・・・頭に来ていた坂詰亜矢子ですが、ある日、やっかいな問題に巻き込まれていきます。印刷会社の担当者・松木が電話してきて、話しておきたいことがあるので、時間を作って欲しいという。翌日に会社近くの喫茶店で落ち合うことにしたが、待ち合わせの時刻になっても松木は現れない。そしてその日の夜、亜矢子の部屋を刑事が訪れ、松木が死体となって発見されたことを告げます。
 亜矢子の会社から100メートルほど離れたビルの屋上から墜落死したという。自殺ではなく、何者かによって突き落とされたのが目撃されていた。
 松木の死は、亜矢子に話そうとしていたことが関係するのか。不安にかられる亜矢子宛に、夜遅くファックスが届きます。死んだはずの松木からのファックスでした。

〈俺が話したかったのはね、その植字工のことだ。奴も実は自殺したんじゃなく、殺されたらしいってことなんだ。ぜひあんたと会って、詳しい話を、と思ってたけど、もうその時間がない。あんたは公平で頭のいい人だ。ぜひ、あのじいさんの敵をとってやってくれ。これが俺の遺言だよ。どうか聞いてくれ〉

 死者からの便りに唖然とした亜矢子は、翌日の昼休みに3人組をレストランに招集。亜矢子からファックスを見せられた白河が「筆跡は貴重な証拠になる」と言って、レストランと親しい小西夕紀にコピーをとってもらうように頼みます。文学青年が機知に富んだ意外な側面をのぞかせて、亜矢子と三人組の謎解きが始まります。
 軽快なテンポとユーモア、職場の人間関係、男女の機微が絡み合う赤川ミステリーの真骨頂がいかんなく発揮された佳作です。双葉社版のほかに、2003年に文庫化された紙書籍を電子化した角川書店版もリリースされています。(2013/7/26)
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