書籍の詳細

カジノに入れ込み、注ぎ込んだカネの総額106億8000万円。一部上場企業・大王製紙創業家に生まれ、会長の職にありながら、なぜ男は子会社から莫大な資金を借り入れ、カネの沼にはまり込んだのか。その代償として、塀の中に堕ちた男の懺悔がここに―

まだユーザーレビューはありません。最初のレビューを書いてみませんか?

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録のレビュー一覧

絞込み条件
  • レビュアー絞込み
表示形式
  • 表示件数
  • 表示順
  • それにしても106億8000万円です。大王製紙の創業家三代目がマカオやシンガポールのカジノで失ったカネは、猪瀬直樹前都知事の5000万円、みんなの党・渡辺喜美前代表の8億円――使途や意味あいがまったく違うし、単純に引き合いにだすのはどうかとも思いますが――とは比較にならない、想像を絶する巨額です。2011年11月22日、井川意高(いかわ・もとたか)大王製紙前会長が会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部によって逮捕され、身柄を東京拘置所に移されました。2011年9月7日、連結子会社7社から多額の資金を借り入れ続けていたことが発覚、9月16日に会長を引責辞任。以来、東京地検の任意による聴取を受けた末の逮捕状の執行でした。そして翌々年の2013年6月、最高裁で懲役4年の実刑判決が確定し、井川前会長は喜連川社会復帰促進センター(栃木県、PFI[プライベート・ファイナンス・イニシアティブ]方式による刑務所)で服役中ですが、このほどことの顛末を綴った懺悔録を出版しました。本書『熔ける―大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社刊)です。「熔」は鉱物がとける、とかすの意味です。普通「溶」が使われますが、あえて「熔」を使用することで自身の崩壊していく様をあらわそうとしたのでしょうか。井川前会長は小学生時代のほとんどを四国で過ごし、中学は東京の教育大学附属駒場中学校(のちの筑波大学附属駒場中学校)の入学試験に合格。高校までの6年間を同校で過ごして、現役で東京大学へ。法学部を卒業後、1987年に父・井川高雄(たかお)が社長として君臨している大王製紙に入社。三島工場次長、常務取締役(工務、開発担当)、専務取締役(家庭紙事業部長)、副社長(中国関連の特命担当、ホーム&パーソナルケア事業部)などを歴任。2007年4月より42歳で大王製紙取締役社長、2011年6月より大王製紙会長を務めました。日本でも有数の名門校から東大を経て、バブル崩壊などの苦難の時代を経営者として重責を担った井川前会長はなぜ、ギャンブルの泥沼にはまり、転落の道をたどることになったのか。井川氏は次のように綴っています。〈反省の意味を込め、これらの7社からいったいどれくらいの頻度でどれだけの資金を借り入れ続けてきたのか、詳細を明らかにしよう。我が事ながら、あらためてこうして一覧リストを眺めてみると、資金調達のエスカレートぶりに慄然とする。 総額106億8000万円の借り入れ金 【2010年】■5月12日 ダイオーペーパーコンバーティングから5億5000万円 ■6月1日 エリエールペーパーテックから2億5000万円 ■6月18日 エリエールペーパーテックから2億5000万円 ■6月23日 エリエールペーパーテックから4億5000万円 ■8月23日 エリエールペーパーテックから5億円 【2011年】■1月5日 ダイオーペーパーコンバーティングから7億円 ■1月14日 エリエールペーパーテックから4億円 ■2月9日 エリエールペーパーテックから4億円 ■2月9日 大宮製紙から6億円 ■3月11日 エリエールペーパーテックから2億円 ■3月24日 大宮製紙から3億円 ■4月6日 大宮製紙から3億5000万円 ■4月7日 エリエールペーパーテックから3億円 ■6月15日 大宮製紙から3億3000万円 ■6月23日 ダイオーペーパーコンバーティングから7億円 ■7月1日 いわき大王製紙から16億5000万円 ■7月14日 ダイオーペーパーコンバーティングから4億円 ■7月19日 いわき大王製紙から2億円 ■8月2日 いわき大王製紙から4億円 ■8月16日 大宮製紙から6億5000万円 ■8月16日 大宮製紙から5000万円 ■9月1日 ダイオーペーパーコンバーティングから1億円 ■9月2日 赤平製紙から3億円 ■9月5日 エリエールテクセルから4億円 ■9月6日 エリエールテクセルから1億5000万円 ■9月6日 富士ペーパーサプライから1億円 以上、合計106億8000万円。巨額の資金は、「LVSインターナショナルジャパン」というカジノ会社に直接送金した8億5000万円を除き、すべて私個人名義の預金口座に振り込まれ続けた。借り入れた金額がまちまちなのは、持ち株の比率や会社の大きさ、さらに会社がプールしている余裕資金の金額によって判断している〉よくこんなことがまかりとおったものだと思う。2011年3月の時点で20億円もの借金の事実に気づいた父の井川隆雄顧問は当然ながら烈火の如くに怒ったという。〈「コノヤロウ! お前は何をやっているんだ!!」借金の事実を知った父は、烈火の如く激昂した。私だけでなく、資金調達を許した子会社の役員にも電話をかけて怒り心頭に発したと聞く。「この借金はどうしてつくった!」「FXです」「FX? なんやそれは! なんでそんなにカネが要る!」(中略)「FXは少ない元手を使って何十倍ものレバレッジをかけて取引し、大きな利益を得ることができるんですよ。勝てば大きいですが、負けたときの振り幅もまた大きいのです。元手が小さくても、負けたときには何十倍も負けてしまいます」「バカヤロウ! そんなもん、バクチと一緒じゃないか!!」父の言うとおりだ。私はFXではなく、もっとタチの悪いバカラというバクチで連結子会社のカネを蕩尽(とうじん)していたのだから――。〉父親の叱責を受けたあとも、本人が述懐するようにカジノ通いが止まることはなく、総計106億ものカネが消えていったわけですが、それについての井川前会長の弁明はこうです。〈少し言い訳をさせてもらうなら、私の場合、書類を偽造してまで子会社から資金を引っ張っていたわけではない。その証拠に、借金については有価証券報告書にもきちんと記載されている。大王製紙の経理担当者や監査法人のトーマツの目にも留まっていた。私の事件と前後して起きたためか、何かとセットにして語られたオリンパスの巨額損失隠しおよび不正経理とは、根本的に事態が異なる。 会社を私物化していたとの批判に対しては、反論の言葉はない。監査法人から「この借り入れ金は何ですか?」と問われたときにも「資産運用している事業に必要でして……」と説明してごまかした。大株主であり会長を務める会社は、半分自分のものと考えてもかまわないだろう──。創業家の長男として、あまりにも大きな勘違いをしてしまったことを、今、心から反省している〉〈身勝手なもの言いかもしれないが、「返済しようと思えば、いつでも自分の金で返済できる」という甘い考えが私の中にあった。盗みとるような気持ちは、神に誓ってなく、時期を見て返済しようと考えていた。だからこそ、会社のカネと自分のカネを混同するという、経営者としてあるまじき行動に出てしまったのだが……〉実際、借金は完済されています。だから罪が減じられるわけではなく、井川前会長に執行猶予はつきませんでした。本書では事件報道(とくに週刊現代の佐野眞一レポート)に対する批判・反論や取り沙汰された芸能人との交際にも言及されています。東大五月祭(ごがつさい)で出会った初恋の妻と離婚、裸となって出直しを期す男が本当にいいたかったことは何か――。(2014/4/18)
    • 参考になった 2
    投稿日:2014年04月18日