書籍の詳細

文字遣い種別:新字新仮名底本名1:こころ底本出版社名1:集英社文庫、集英社底本初版発行年1:1991(平成3)年2月25日底本名2:底本出版社名2:底本初版発行年2:入力者:j.utiyama校正者:伊藤時也

総合評価
5.0 レビュー総数:1件
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こころのレビュー一覧

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  • 真性孤立特異点である自己意識としての私
    夏目漱石の『こころ』を読んでいるときだった。高校二年のときだった。
    そのことに気がついてしまったのだ。


    どうしようもない真性孤立特異点として
    自己同一の独房に幽閉されている
    〈わたし〉


    03.10
    08.06
    08.09
    08.15
    的時空間に晒され
    自己同一も糞もありゃしねー
    と呻くような〈わたし〉




    ゆらいでいる
    〈わたし〉
    がいることを。

    漱石は
    私が
    そういう
    世界にいきつくことに
    気がついていたのだ
    と私は思った。

    先生の愛と自死は、
    そんな〈わたし〉としてある自己意識の寂寥に由来するものだろう。それは寂しいなんてもんじゃない。
    あの当時
    国家や天皇への殉死ぐらいを持ってこなかったら埋めようのない寂寥。
    多分家族愛は破綻していた漱石のこの時期だから。

    モーツァルトにはまだ音楽という宇宙があった。
    バッハには音楽を捧げる神があった。
    ベートーベンは最後に人間をいや人類を信じることができた。

    カフカは?

    カフカは、
    自己自身の自己同一性を
    信じようとしたカフカは、
    それが無惨にも瓦解していると審判され、無限遠点にある城への軌道を歩かされ、
    しかも断食芸人の笑劇を演じさせられ、
    そして一匹の毒虫を仮装させられ
    死に絶えた。

    復活も
    救済も
    ありはしない。

    リセットさえ
    許されない

    やはり
    あいつは
    神の子に
    いや
    大工の子に
    すぎなかったのだろう

    であるならば
    こんな私たちに
    何が残され
    何ができるというのだろうか

    泣きながら
    歌い
    笑い尽くし
    あなたを
    とことん
    愛すること
    いがい
    何ができるというのか

    漱石の
    こころ

    そんなことを
    思わせる
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    投稿日:2014年05月09日