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フイチン再見! (10)
  • 完結

時代は「漫画の時代」になった。さらに漫画は動きはじめる。「テレビまんが」────── アニメーションがテレビ放送され、全国の少年少女達は熱狂する。上田としこは漫画家としてその最前線から退いたが、漫画家だった。故郷を失い、大切な人を失い、漫画家は明日、漫画を描くだろう。人が明日を生きてゆくのと同じく、描くだろう。上田としこの人生、堂々完結。そして漫画は──────

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フイチン再見!

「漫画家漫画にハズレなし」と評されるぐらい、ここ数年来、漫画家による漫画家をモチーフにした漫画がブームだ。多くは若かりし頃の自分をモデルにしたものや業界あるあるだが、村上もとか先生が描くとたちまち大河浪漫作品となり、その辺の作品とは一線を隔す。実在の女性漫画家・上田としこを実名モデルで主人公にし、大東亜戦争前後から始まっている。女性が生き辛かった時代を力強く前向きに進んで生きていく姿には心を打たれる。

書店員のレビュー

今年は戦後70年という、節目の年。『フイチン再見!』は戦争の影がちらつき始めた満州で育った漫画家・上田としこの物語。作者の村上もとかが、子供の頃に上田の代表作『フイチンさん』を読んで、おっちょこちょいだけど正義感が強い主人公と、ユーモラスで爽快なストーリーに魅了された過去が執筆の背景にあります。上田が漫画家を目指すという軸をメインに、幼少の頃や漫画家として活躍する時代がオーバーラップしながら描かれています。異国情緒あふれる戦前のハルピンと東京を舞台に、生き生きとした上田のキャラクターぶりがとても魅力的です。自分に漫画家としての素質があるのか、上田は不安気ながらも道を突き進みます。女流漫画家がまだ珍しく、長谷川町子がきらびやかに登場した頃のお話。働く女性の社会的地位も確立していなくて、戦争の緊迫した時局にありながら、漫画家を目指すのですから並大抵のことではありません。やがて、若い男は戦争に駆り出されて、世相の暗さが際立ちはじめます。上田は勤め先の会社で自分が描いたポスターを、社員達がニコニコしながら眺めているのを見て、悟ります。自分の目指すのは「励まし漫画」なのだ、と。このモチベーションが『フイチンさん』執筆につながっていくようです。今後の成り行きに目が離せません。蛇足ですが、本作を読んで『フイチンさん』を読みたくなる読者も少なくないようです。電子書籍化を待つばかりです。(2015/1/23)
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