書籍の詳細

原発事故や医療事故のニュースは後を絶たない.また検査や医療などで放射線を浴びる機会はますます多くなっている.被曝による傷害やがんのリスクはどのくらいあるのだろうか.遺伝への影響も気にかかる.安心して医療を受け,日常生活を送れるように,目に見えない放射線の実体や身体・環境への影響,さまざまな単位をやさしく解説する.

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放射線と健康のレビュー一覧

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  • 5月6日、新聞各紙は一斉に菅首相による「中部電力浜岡原発停止要請」を大々的に報じました。日本の最高責任者が東日本大地震から2ヶ月というタイミングで、高い確率で予測される東海大地震の震源域に立地することを理由に、防潮堤が出来上がるまでという限定付きながら「停止要請」に踏み切ったのですから、地震多発の国土のどこへ行っても原発だらけという日本列島の危機的状況にいやでも目が向きます。なにしろ、問題は目には見えない「放射線」です。それだけに、3.11以降、福島原発がもたらす放射線被害をめぐっては何が問題で、何は問題ではないのか――最も肝心なところが錯綜し、わかりにくいというメディア状況が続いています。校庭での活動を控えるように求めた政府に対し、ならば校庭の表土を削りとればいいだろうと工事を進めた福島県地元側の対立や、その問題に端を発して内閣参与の辞表を叩きつけた東大教授と政府見解に問題はない、教授の誤解だと切って捨てた菅政権側の茶番劇などはその最たる例でしょう。さて今回オススメの『放射線と健康』(岩波新書)――3.11後の日本社会にあって最も気になる放射線という問題を私たちの健康との関わりの視点から説明した好著です。2001年に出版されていましたが、東日本大震災直後の4月に緊急増刷と同時に電子化されました。著者の舘野之男(たてのゆきお)さんは議論の出発点として、「確定的傷害」と「確率的障害」とを分けて考えるように説いています。前者(確定的影響)は被曝量がある値(しきい値=閾値(いきち))を超えて初めて影響がではじめるタイプの影響です。逆にいえばこの値を超えなければその種の影響はでません。被曝量が増えれば増えるほどその影響の程度はひどくなります。「しきい値」というのは部屋の区切りのあの「敷居」からきた言葉で、安全と危険を分ける境界の線量という意味。放射線火傷などがこれにあたり、したがって確定的影響について著者は「放射線傷害」という言葉を用いて区別しています。これに対し、しきい値をもたないものが確率的影響で、これがいま不安の元になっているわけです。具体的には遺伝的影響と発がんで、普通の意味の「病気になる」とはかなり違って、「リスク」という考え方を基礎においた話になるというわけです。いうまでもなく、これはしきい値のない話で、どこまでは大丈夫という問題ではないというのが基本です。時代とともに変容してきた放射線障害について感情論を排して、わかりやすい言葉で説明している必読の書です。(2011/5/13)
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    投稿日:2011年05月13日