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日本人拉致、潜水艦侵入事件、テポドン発射など、北朝鮮が企てる対日浸透・有害工作を阻止するため、日夜闘い続けている外事警察。世間に知られることのない彼らの活動とはいかなるものか?KGBはじめ練達のスパイとわたりあい、ときに煮え湯を飲まされ、ときに人間的なおかしみを表出させるドラマの数々は興趣つきず、テロが頻発する国際社会への警鐘ともとれる。「あさま山荘」はじめ、未曾有の事件で現場を指揮した著者が綴った緊迫のルポルタージュ。実録危機管理。

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謎の独裁者・金正日 テポドン・諜報・テロ・拉致のレビュー一覧

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  • 巻頭に一葉の写真が掲載されています。世界的ベストセラーで映画にもなった『ジャッカルの日』著者フレデリック・フォーサイスと本書著者の佐々淳行氏が並んで立ち、「ウォッチャーより、キャッチャーへ フレデリック・フォーサイス」の直筆サイン。スパイものの作品『第四の核』に実名で登場したのは3人。ブレジネフ・ソ連書記長、サッチャー英国首相、そしてサッサ・アツユキということで、訪日したフォーサイスが当時防衛庁官房長だった佐々氏を訪ねた記念に撮られた一枚だそうです。20年の警察在職期間中、14年あまりを対諜報、国際テロ、スパイ、破壊活動との戦いに携わってきた佐々氏が英国情報機関の間でスパイキャッチャーとして高い評価を得ていたことをうかがわせるエピソードです。いずれにしても佐々氏以上に、日本の外事警察の内実を的確に伝えることのできる人はいません。北朝鮮、金正日の実像がどこまであきらかになっているかは読む人の事前情報量に左右される部分が大きいと思いますが、それ以上に面白く注目すべきは著者が明らかにした大事件勃発時の警察内部の混乱ぶり。第一報が正確かつ十分だったためしは一件もないと佐々氏は断言しています。三島由紀夫事件の第一報は「ミシマという酔っ払いが暴れている」だったし、「三菱重工爆破事件」はなんと「タクシー衝突、プロパンガス爆発、死傷者数名」というものだったそうです。極めつけは「金大中事件」。「神田のホテルグランドパレス第何号室にダンコン!!」です。同音異義語の多い日本語、阿部定事件のほうのダンコンなら警備局の所管じゃない、いったいどっちなんだ、というのが初動でした。その後、弾痕→自動拳銃→弾倉と訂正されていく。しかし、それとは別に国会議員からもたらされた「韓国の金大中先生が行方不明」という情報と「グランドパレスの弾倉」がまったくつながらない。その日が全国の警備公安関係に異動が発令された日だったことが混乱に拍車をかけた。金大中が姿を消したのがグランドパレスだったことがわかってようやく二つの情報が一つの事件だという認識に至った。そして後々まで内部の話題となったのがその日石川県警から異動で赴任してきたある警視。「金大中先生事件発生」という緊急メモを見て、「キンダイのナカ先生?それがどうしたのかな」と思ったそうです。金沢では金沢大学のことをキンダイと呼ぶそうで、ですから警視は「キンダイのナカ先生」と読んでしまったというわけです。佐々氏は危機管理ならぬマネジメントクライシス(管理危機)として戒めていますが、あまり外に出る機会のない外事警察の知られざる一面が活写されています。(2010/9/3)
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    投稿日:2010年09月03日