書籍の詳細

自殺した同級生の葬儀に故郷秋田を訪れた作家がふりかえる自らの生の軌跡。友と聴いたクラシック、仲間と励んだ雪の中の野球……万引事件や生家の破産を越えて胸に迫るのは懐しい思い出の数々。人生の終楽章を迎えて、自分を支えてくれた友人、父の愛、妻の献身に気づく。胸を打つ感動的な直木賞受賞作。

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それぞれの終楽章のレビュー一覧

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  • 本書『それぞれの終楽賞』は、阿部牧郎(あべまきお)が8回目の挑戦(ノミネート)で射止めた直木賞受賞作です。受賞時、54歳。官能小説などを量産し、中堅作家として脂がのりきろうという時代で、遅咲きの直木賞作家といえるかもしれません。1968年に『蛸と精鋭』で初めて候補となってから、1973年まで毎年のように候補となりながら直木賞の栄誉を逃し続けてきましたが、1987年に受賞、しかもほぼ満票でした。黒岩重吾、藤沢周平、平岩弓枝、陳舜臣ら名だたる名文家選考委員がこぞって高評価を与えていたことからもわかるように、完成度が高い、見事な作品です。主題は、高校時代の親友の葬儀で故郷秋田に帰った作家が、その急死の謎をたどりながら、自身の来し方を思い返し、友人たちの人生を描こう、描かなければならい、彼らを生かすことで自分も生きることができるという境地に至るまでの心のうつろいです。高校時代に興じた野球の記憶、万引きをして退学となった苦い想い出、今は亡き父の愛情、連れ添ってきた妻の献身・・・・・終楽章に入って、人生にとってもっとも大事なものの存在に気づいていく男の心情が、簡潔な文体で綴られていきます。選考委員の黒岩重吾は選評にこう書いています。「『それぞれの終楽章』が抜群で、受賞作は阿部氏以外にないだろう、と感じた。贅肉が取れた文章で描かれた人間模様には今の氏の年齢でなければ凝視できない人生への慈愛が滲み出ている。旧友の死を作為的なストーリーで追わず、彼の性格を抉って小説に構築したこともこの作品の格調を高めた」約500万人といわれる団塊世代の定年退職はすでに始まっています。人生の最終コーナーを曲がったとき、彼らは何に気づくのでしょうか。阿部牧郎が自身の体験を元に描いた男たちの終楽章。私たちの琴線にふれる感動作です。(2011/4/15)
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    投稿日:2011年04月15日