書籍の詳細

「努力している,もしくは努力せんとしている,ということを忘れていて,我がなせることがおのずからなる努力であってほしい」.何かをなそうとしても,ままならぬことの多いこの世の中で,いたずらに悩み苦しまずに,のびのびと勢いよく生きるにはどうすればよいか-人生の達人露伴の説く人生論.(解説=中野孝次)

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努力論のレビュー一覧

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  • 「成功者は皆自己の意志や知慮や勤勉や仁徳の力によって自己の好結果を収め得たことを信じて居り、そして失敗者は皆自己の罪ではないが、運命の然(しか)らしめたがために失敗の苦境に陥ったことを嘆じて居る。即ち成功者は自己の力として運命を解釈し、失敗者は運命の力として自己を解釈して居るのである。成功者には自己の力が大に見え、失敗者には運命の力が大に見えるに相違ない」――明治の文豪・幸田露伴が遺した名言です。仕事がうまくいかないことも、いい仕事につけないことも、すべては運命だからしょうがないと簡単に諦めたり、努力を放棄したりしがちな私たちには耳の痛い言葉です。本書『努力論』は、運命論的な風潮がはびこった明治末に幸田露伴が人の生き方を考え抜いて書き残した、ある種の「幸福論」です。いわゆるハウツー本とは一線を画した人生哲学です。文語的な文体で、辞書にのっていない言葉もしばしば出てきます。決して易しい本ではありませんが、大意はつかめます。要は、ままならぬことの多い世の中にあって、いたずらに悩み苦しまずに、のびのびと生きるにはどうしたらよいかを、明治の知性が説く基本は、運命を切りひらくのは自分自身だということ。加持祈祷や新興宗教のあやしげな託宣に頼っていてはいけないということ。いつまでも昔のままのダメな自分に留まっていては運命は切りひらけないということ。いわれてみれば当たり前のことのようですが、それを実践できる人はそう多くありません。露伴はそのための道を具体的に説いていきます。露伴によれば「福」には「有福」「惜福」「分福」があり、この三つの福はそれぞれ大事な考え方なのですが、いずれも一個人の心に関わる問題です。そして露伴はこれら三つの福以上に貴い、究極の幸福として「植福」を勧めています。自分だけが幸せになったのではだめで、社会に生きる人皆に幸せをもたらすことが理想の福だというわけです。露伴の説く「植福」こそは、3.11後の日本再生のキーワードではないでしょうか。露伴の娘として、その考え方を受け継いだ作家・幸田文の言葉シリーズ(全6巻)が4月29日にリリースされました。露伴の幸福論をわかりやすく伝える著作です。あわせてお読み下さい。(2011/4/29)
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    投稿日:2011年04月29日