書籍の詳細

何気ない日常生活にひそむ、おかしさ、愚かしさ、そして愛の喜びと悲しみを、関西弁の味を心憎いまでに駆使して描く田辺聖子独自のユーモア世界……別れた夫婦が喧嘩をくり返しながら、いつのまにか元のさやにもどった「もと夫婦」、他に「求婚」「あじさい娘」「あめりか・じゃがたら文」「金蒔絵の雲」等9編を収録。■収録作品■もと夫婦/求婚/あじさい娘/あめりか・じゃがたら文/金蒔絵の雲/蒸発旅行/暗い花/首くくり上人/壇の浦

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もと夫婦のレビュー一覧

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  • 田辺聖子が紡ぐ物語には、「いやな奴」が登場しません。田辺聖子は好きな作家の一人ですが、彼女の小説をすべて読破したわけではもちろんありません。また「いやな奴」は見る人によっては「いい人」になってしまうことがまったくないとは言えませんから、これはあくまでも私の独断によれば、の話です。表題作の「もと夫婦」はなによりも「いやな奴」がでてこない、田辺聖子の世界を象徴する恋愛小説です。「愛」だ「恋」だといった、らしい言葉はまったくといっていいほどでてきません。三十路過ぎのオンナが、別れた年下のもと夫にわがままのし放題、言いたい放題で、もと夫はもと妻の身勝手な言い分、リクエストについつい応じて助けてしまう人の良さ。なにしろ、新聞記者の妻がフリーになって評論家として仕事がまわりはじめたとたん、炊事・洗濯・食事の世話と主夫化していた夫に離婚をもちかけます。夫はあっさり受け入れるのですが、この離婚から愛すべき二人の「恋愛」が始まります。その第一歩が端で見ている友人たちにとっては(読者にも)仰天の出来事――夫をアパートに残してマンションに移るもと妻の引越をもと夫が手伝うのです。その後ももと妻の勝手なふるまいは続き、もと夫の人の良さもエスカレートしていきます。そしてなにより、この愛すべきもと夫婦の「恋愛劇」をいい味にしているのが、二人がかわすネイティブ大阪弁です。この大阪弁のやりとりが、人をなんだかいい気持ちにさせてくれます。人間っていいなぁ、としみじみ思ってしまうから、不思議です。1964年に『感傷旅行』で芥川賞を受賞した6年後の1970年、脂ののった時期に「小説セブン」に発表されたのが「もと夫婦」で、その他8編の短編が収録されています。田辺聖子の世界を堪能してください。(2011/1/28)
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    投稿日:2011年01月28日